著者
園田 茂 椿原 彰夫 田尻 寿子 猪狩 もとみ 沢 俊二 斎藤 正也 道免 和久 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテ-ション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.p217-222, 1992-03
被引用文献数
8

入院リハビリテーションを施行した脳血管障害患者(入院時61名,退院時49名)を対象に,FIMおよびBarthe1 Index (BI)によるADL評価を行った、FIMの合計点とBIの合計点の間の回帰係数は0.95であり,FIMはBIと同程度に妥当な評価表である可能性が示唆された.BIの満点に対応する回帰直線上のFIM合計点は満点には至らず,FIMはADLが自立に近い患者におけるリハビリテーションの余地を示しやすいと考えられた.さらにFIMの各項目ごとに,それぞれを従属変数として重回帰分析を行った.独立変数にはFIMのコミュニケーションと社会的認知の項目の合計点(認知合計),Brunnstrom stage等を用いた.入院時のADLには認知合計の寄与が大きく,退院時には麻揮の寄与が大きかった.
著者
澤 俊二 南雲 直二 嶋本 喬 磯 博康 伊佐地 隆 大仲 功一 安岡 利一 上岡 裕美子 岩井 浩一 大田 仁史 園田 茂
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.325-338, 2003

<b>目的</b>&emsp;慢性期脳血管障害者における種々の障害の長期間にわたる変化の実態を明らかにする目的で,心身の評価を入院から発病 5 年までの定期的追跡調査として実施した。調査は継続中であり,今回,慢性脳血管障害者における入院時(発病後平均2.5か月目)および退院時(発病後平均 6 か月目)の心身の障害特性について述べる。<br/><b>対象および方法</b>&emsp;対象は,リハビリテーション専門病院である茨城県立医療大学附属病院に,平成11年 9 月から平成12年11月までに初発の脳血管障害で入院した障害が比較的軽度な87人である。その内訳は,男64人,女性23人であり,年齢は42歳から79歳,平均59歳であった。方法は,入院時を起点とした,退院時,発病 1 年時,2 年時,3 年時,4 年時,5 年時の発病 5 年間の前向きコホート調査である。<br/><b>結果</b>&emsp;入院から退院にかけて運動麻痺機能,一般的知能,痴呆が有意に改善した。また,ADL(日常生活活動)と作業遂行度・作業満足度が有意に改善した。一方,明らかな変化を認めなかったのは,うつ状態であり入退院時とも40%と高かった。また,麻痺手の障害受容度も変化がなく,QOL は低いままであった。逆に,対象者を精神的に支える情緒的支援ネットワークが有意に低下していた。<br/><b>考察</b>&emsp;発病後平均 6 か月目である退院時における慢性脳血管障害者の特徴として,機能障害,能力低下の改善が認められたものの,うつ状態,QOL は変化がみられず推移し,また,情緒的支援ネットワークは低下したことが挙げられる。したがって,退院後に閉じこもりにつながる可能性が高く,閉じこもりに対する入院中の予防的対策の重要性が示唆された。
著者
山田 佳代子 園田 茂
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.329, 2011-04-15

●概要 ミラーセラピー(mirror therapy)とは,鏡を使用して運動の視覚フィードバックを与える治療法である.ほぼ矢状面で両肢間に鏡を設置し,鏡に映された一側肢が鏡に隠れた反対側肢の位置と重なるようにする(図).切断や麻痺などの患側肢の遠位部に健側肢の映った鏡像がつながって見えることで,患側肢が健常な実像であるかのように感じさせながら運動を行う.1995年にRamachandran1)が上肢切断者の幻肢痛の軽減に有効であると初めて報告した.その後,脳卒中患者の麻痺改善や下肢幻肢痛,複合性局所性疼痛症候群,腕神経叢引き抜き損傷患者の疼痛軽減効果などが報告されている2).
著者
園田 茂 才藤 栄一 道免 和久 千野 直一 木村 彰男
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.273-278, 1993-04-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
11
被引用文献数
5 2

脳血管障害において,機能障害評価は必須である.しかし既存の評価法は十分とは言い難かった.そこでわれわれはBuffalo symposiumの勧告に準じて機能障害評価法Stroke Impairment Assessment Set (SIAS)を作成した.SIASは運動,腱反射,筋緊張,感覚,可動域,疼痛,体幹,高次脳,健側機能評価を含んでいる.このSIASを用いて発症4週以内の脳血管障害患者66名を評価し,クラスター分析にて群分けを行った.SIASの得点分布は弛緩性完全麻痺を示す得点以外はほぼ均等であった.またクラスター分析にて全般低下群,健側機能良好群など予後予測に有用と思われる4群に分けられた.以上よりSIASは簡便で有用な機能障害評価表と考えられた.
著者
兼安 一成 大塚 和之 瀬戸口 泰弘 中原 毅 園田 茂代 麻生 功
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌. E, センサ・マイクロマシン準部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. A publication of Sensors and Micromachines Society (ISSN:13418939)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.119-124, 1998-02
参考文献数
6
被引用文献数
1 3

A CO<sub>2</sub> sensor was set up by using Na<sub>3</sub>Zr<sub>2</sub>Si<sub>2</sub>PO<sub>12</sub> (NASICON) as a solid electrolyte, Li<sub>2</sub>CO<sub>3</sub> as a carbonate phase. The EMF (Electromotive force) was linear to the logarithm of CO<sub>2</sub> concentration and hardly depended on interfering gases by using a zeolite filter. The &Delta; EMF (EMF<sub>Air</sub>-EMF<sub>Gas</sub>) was stable even after the test of unpowered exposure to a high humidity atmosphere. The CO<sub>2</sub> monitor in which the CO<sub>2</sub> concentration is calculated by the &Delta; EMF using a new renovating system of the standard EMF was developed as a monitor for air quality control. The output of the monitor indicated a good agreement with that of the usual NDIR analyzer at the field-test in the office.
著者
千野 直一 園田 茂 道免 和久 才藤 栄一 木村 彰男
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.119-125, 1994-02-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
13
被引用文献数
81 171

脳血管障害による機能障害は多岐にわたっているために,多面的かつ簡便な機能評価法は少ない.ここに提唱するStroke Impairment Assessment Set (SIAS)は日常臨床で用いる理学・神経学的診断法を主体として,機能項目別に単一手技(single-task assessment)にて評価し,機能段階は0点から3,あるいは5点法とするものである.評価項目には運動機能,筋緊張,感覚,ROM,痛み,体幹,視空間認知,言語機能,健側肢機能を含む.また,レーダ・チャートにて脳卒中患者の各機能障害の程度を一瞥でとらえることもできる.統計学的に検者間の信頼性にも問題がなく,リハビリテーション医療での応用は広いものと考える.
著者
澤 俊二 磯 博康 伊佐地 隆 大仲 功一 安岡 利一 上岡 裕美子 岩井 浩一 大田 仁史 園田 茂 南雲 直二 嶋本 喬
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.325-338, 2003 (Released:2014-12-10)
参考文献数
41
被引用文献数
3

目的 慢性期脳血管障害者における種々の障害の長期間にわたる変化の実態を明らかにする目的で,心身の評価を入院から発病 5 年までの定期的追跡調査として実施した。調査は継続中であり,今回,慢性脳血管障害者における入院時(発病後平均2.5か月目)および退院時(発病後平均 6 か月目)の心身の障害特性について述べる。対象および方法 対象は,リハビリテーション専門病院である茨城県立医療大学附属病院に,平成11年 9 月から平成12年11月までに初発の脳血管障害で入院した障害が比較的軽度な87人である。その内訳は,男64人,女性23人であり,年齢は42歳から79歳,平均59歳であった。方法は,入院時を起点とした,退院時,発病 1 年時,2 年時,3 年時,4 年時,5 年時の発病 5 年間の前向きコホート調査である。結果 入院から退院にかけて運動麻痺機能,一般的知能,痴呆が有意に改善した。また,ADL(日常生活活動)と作業遂行度・作業満足度が有意に改善した。一方,明らかな変化を認めなかったのは,うつ状態であり入退院時とも40%と高かった。また,麻痺手の障害受容度も変化がなく,QOL は低いままであった。逆に,対象者を精神的に支える情緒的支援ネットワークが有意に低下していた。考察 発病後平均 6 か月目である退院時における慢性脳血管障害者の特徴として,機能障害,能力低下の改善が認められたものの,うつ状態,QOL は変化がみられず推移し,また,情緒的支援ネットワークは低下したことが挙げられる。したがって,退院後に閉じこもりにつながる可能性が高く,閉じこもりに対する入院中の予防的対策の重要性が示唆された。
著者
川原 由紀奈 園田 茂 奥山 夕子 登立 奈美 谷野 元一 渡邉 誠 坂本 利恵 寺西 利生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.297-302, 2011 (Released:2011-06-07)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

〔目的〕2006年以降より回復期リハビリテーション病棟での訓練時間は1日上限6単位から9単位に増加した.このことから訓練量増加の効果をADLとの関係で検討した.〔対象〕回復期リハビリ病棟に入退棟した脳卒中患者で,2005年度の5~6単位の群122名と2008年4月から9月の7~9単位の群41名とした.〔方法〕2群間の入退棟時FIM運動項目合計点(FIM-M),FIM-M利得(入院時-退院時FIM-M),FIM効率(FIM-M利得/在棟日数)と自宅復帰率の関係を比較した.〔結果〕7~9単位の群は5~6単位の群に比べFIM-M利得,FIM効率,自宅復帰率が有意に高かった.〔結語〕訓練増加がADL改善に効果的であると考えられる.
著者
渡邉 誠 奥山 夕子 登立 奈美 川原 由紀奈 木下 恵子 佐々木 祥 辻 有佳子 園田 茂
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.383-390, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
14
被引用文献数
3 4

【目的】診療報酬改定により可能となった訓練量増加がADL改善に及ぼす影響を年齢別に検証した.【方法】当院回復期リハビリ病棟に入退棟した脳卒中患者で,一日の訓練単位上限が6単位(2時間)の時期に5~6単位の訓練を行った106名(6単位群)と訓練単位上限が9単位の時期に7~9単位の訓練を行った130名(9単位群)を対象とし,入退棟時のFIM運動項目(FIM-M),FIM-M利得,FIM-M効率を比較した.年齢別に3群,入院時FIM-M得点層別に2群に層別化し分析も行った.【結果】FIM-M利得,FIM-M効率は9単位群で有意に高かった.FIM-M低得点層で70歳以上と60~69歳のFIM-M利得,FIM-M効率,高得点層で70歳以上のFIM-M利得が9単位群で有意に高かった.【結論】訓練量の増加はADLをより改善させ,その程度は60歳代のFIM-M低得点層と70歳以上の高齢者で顕著であった.
著者
登立 奈美 園田 茂 奥山 夕子 川原 由紀奈 渡邉 誠 寺西 利生 坂本 利恵
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.340-345, 2010-07-25 (Released:2010-09-14)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2

【目的】診療報酬改定による訓練量の増加と運動麻痺改善との関係を検証した.【方法】当院回復期リハビリ病棟に入退院した脳卒中患者で,1日の訓練単位数上限が6単位(2時間)であった時期に5~6単位の訓練を行った122名(6単位群)と,訓練単位数上限が9単位であった時期に7~9単位の訓練を行った41名(9単位群)を対象に入退院時のStroke Impairment Assessment Set(SIAS)の麻痺側運動機能5項目を比較した.入院時運動麻痺の重症度別に3群に層別化した分析も行った.【結果】入退院時のSIAS得点は9単位群で有意に高かったが,SIAS利得には有意差を認めなかった.入院時下肢中等度麻痺群と上肢軽度麻痺群において退院時SIASとSIAS利得が9単位群で有意に高かった.【結論】麻痺程度を層別化して検討することで1日6単位から9単位への訓練量増加により運動麻痺改善が認められた.
著者
園田 茂 椿原 彰夫 出江 紳一 高橋 守正 辻内 和人 横井 正博 斎藤 正也 千野 直一
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.637-639, 1991-06-10

はじめに 近年,非典型的な筋力低下を呈する症例がリハビリテーション科に依頼され,治療に当たることが少なくない.そして,患者は簡単に「心因性」と診断される傾向があり,そのような代表的疾患として重症筋無力症があげられる. 重症筋無力症はその症状の動揺性から時に転換ヒステリーと誤診されやすい1,2).また,この疾患の特徴として,発症や増悪の契機に心理的要因が大きく関与しているため3),患者や医療者に与える誤診の影響は少なくない. 我々は「心因性」歩行障害と診断され,リハビリテーション医療が必要であるとして紹介された重症筋無力症患者を経験し,安易に「心因性」,「ヒステリー」と断定することの危険性を痛感した.そしてリハビリテーション医学の分野における診断学の重要性を再確認したので,若干の考察とあわせて報告する.
著者
舟橋 怜佑 前島 伸一郎 岡本 さやか 布施 郁子 八木橋 恵 浅野 直樹 田中 慎一郎 堀 博和 平岡 繁典 岡崎 英人 園田 茂
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10516, (Released:2017-06-13)
参考文献数
35

【目的】リハビリテーション(リハ)目的で入院した右被殻出血患者を対象に,半側空間無視の有無やその検出法に関与する要因について検討した.【対象と方法】対象は回復期リハ病棟に入院した右被殻出血103 名で,発症から評価までの期間は40.5±27.4 日.発症時のCT より血腫型を評価し,血腫量を算出して,半側空間無視がみられたかどうかや,その検出法を診療録より後方視的に調査した.【結果】半側空間無視は103 名中58 名(56.1%)でみられた.血腫量が多く,血腫が内包前後脚または視床に及ぶ広範な場合に半側空間無視は高率にみられた.半側空間無視の検出率は消去現象と注意で最も高く,次いで模写試験,視空間認知の順であった.【結論】回復期リハの時期でも被殻出血の半数以上に半側空間無視を認め,その発現には血腫量や血腫型が関与した.半側空間無視の検出に複数の課題を用いることで,見落としを大きく減らすことができた.
著者
佐々木 祥 渡邉 誠 奥山 夕子 登立 奈美 木下 恵子 寺西 利生 園田 茂
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Bb0533-Bb0533, 2012

【はじめに、目的】 2006年度診療報酬改定により、回復期リハビリテーション病棟における訓練単位数の1日上限が9単位に引き上げられた。我々は回復期リハビリテーション病棟の脳卒中患者において、診療報酬改定前の2005年度より、改定後の2008年度の方がADL改善効果が高いことを示してきた。これらの報告はFunctional Independence Measure運動項目(FIM-M)の総得点での比較であるが、FIM-Mは項目毎に難易度が異なることが報告されており、それによる訓練効果も一様でないことが予測される。そこで、今回我々は脳卒中片麻痺患者の訓練量増加がFIM-M各項目に与える影響について検討したので報告する。【方法】 対象は当院回復期リハビリ病棟に入・退棟した60歳以上の初発脳卒中片麻痺患者のうち保険診療上の訓練量が1日上限6単位であった2005年4月1日から2006年3月31日までの211例と、1日上限9単位であった2008年4月1日から2009年8月31日までの304例である。入棟期間中の1日平均訓練単位数を算出し、STを除くPTとOTの単位数が5から6単位であった1日上限6単位の症例を6単位群、7から9単位であった1日上限9単位の症例を9単位群とした。発症から当院入棟までの期間が60日以内、訓練に支障をきたす重篤な併存症がなく入棟中に急変増悪しなかった患者に限定し、最終的な対象者は6単位群73例、9単位群76例であった。性別は6単位群で男性46名、女性27名、9単位群で男性38名、9女性38名であった。原疾患は6単位群で脳梗塞39名、脳出血34名、9単位群で脳梗塞41名、脳出血27名であった。年齢、発症後期間、在棟日数、FIM-M項目毎の入・退棟時得点、FIM-M項目毎の退棟時得点から入棟時得点を引いた値(FIM-M利得)を2群間で比較した。統計は年齢、発症後期間、在棟日数にはt検定を、各項目の入・退棟時FIM-M得点とFIM-M利得にはマン・ホイットニーU検定を、性別、原疾患にはカイ2乗検定を使用した。有意水準はp<0.05とした。【倫理的配慮、説明と同意】 患者情報の学術的使用に関する同意は入院時に書面で確認した。【結果】 6単位群、9単位群の順に年齢71.7±6.3歳、70.6±6.5歳、発症後期間33.5±12.1日、31.9±13.0日、在棟日数60.9±26.8日、61.2±26.6日であり、2群間の差は認めなかった。各項目の入棟時得点は移乗(浴槽・シャワー)で9単位群の方が有意に高かったが、他の項目では差がみられなかった。退棟時得点は食事と階段で差がみられなかったが、他の項目では9単位群の方が有意に高かった。各項目のFIM-M利得は排尿・排便コントロールでは差はみられなかったが、その他の項目では9単位群の方が有意に高かった。【考察】 本研究では、脳卒中片麻痺患者の訓練量増加によるFIM-M項目別の改善効果を検討した。川原ら(2011)は訓練量を増加することでFIM-Mを改善させると報告している。今回のFIM-M項目別検討においても、訓練量を増加した方が全体的にFIM-Mは改善する傾向を示しており、特に4項目以外(食事、排尿・排便コントロール、階段)の項目で高い改善を示した。辻ら(1996)は脳卒中障害者のFIM-Mの自立度は排尿・排便コントロール、食事で高く、階段で低いと報告している。今回、食事の退棟時得点、排尿・排便コントロールのFIM-M利得で有意差がみられなかった理由として、FIM-M項目の中では比較的低難易度で自立しやすい項目であり天井効果が働いたことが挙げられる。階段の退棟時得点で有意差がみられなかった理由として、階段は入院時から平均得点が低く、FIM-M項目の中で高難易度であることから、床効果が働いたのであろう。以上より、訓練量増加はFIM-M各項目を全体的に改善させることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 今回の研究により、理学・作業療法の訓練量増加がどのADL項目に影響を及ぼすか検証することができた。今後はどの訓練内容が効果的であったかなど、質的な検討が必要である。
著者
園田 茂人
出版者
中央大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

本研究では、研究代表者が以前「在京県人会に見られるネットワークの構造とその機能」(1990年度文部省科学研究費助成金・奨励研究(A))プロジェクトで行った調査の成果を受けて、県人会組織に所属する個人を対象に、その出身背景、東京地域への流入プロセス、就職経路と転職過程、同郷人との交流、現在の出身地との結び付き、同郷意識などの項目に関して質問票調査を行った。具体的な作業としては、まず最初に、1993年の夏に秋田県と鹿児島県からの出郷者を対象に、合計6人、一人3時間程度のヒアリングを行い、これをもとに調査票の質問項目の確認作業を行った。次に、県人会に所属している人たちを結び付ける活動について、具体的に東京新潟県人会の事務局を対象にヒアリングを行い、同時に今回の質問票調査の協力を取り付けた。もともと留置法による調査を考えていたが、調査の効率性と対象者のばらつきを考え、郵送法による調査へと変更した。結局調査の対象者は、東京新潟県人会に属する400人となったが、すでに対象者には質問票を配布してある。本年5月中旬までには質問票の回収作業を終わらせ、このデータをコンピュータに入力した後、7月〜8月くらいには、基礎集計がまとまるものと期待される。この結果は、それ独自に論文としてまとめられると同時に、東京大学の苅谷剛彦助教授のグループと連動し、戦後日本の社会形成に関する大規模プロジェクトへとつなげてゆく計画がある。
著者
阿古 智子 小島 朋之 中兼 和津次 佐藤 宏 園田 茂人 高原 明生 加茂 具樹 諏訪 一幸
出版者
学習院女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

急成長を続ける経済発展、世界の投資を吸収し続ける中国市場、その拡大する市場を武器にした外交戦略、等々、いまや中国を抜きには世界もアジアも、また経済も政治も語ることはできない。しかし一方では、日中間をはじめとして、さまざまな緊張要因をも中国は作り出している。中国国内に目を向けると、経済発展の裏で貧富の格差は拡大し、また腐敗は深刻化し、人々と政府との緊張関係は時には暴動となって表れている。こうした中国の国内、国際問題は、一面からいえば全て中国政治および社会の統治能力(ガバナビリティ)と統治のあり方(ガバナンス)に強く関連している。本研究は、現代中国の政治、社会、経済におけるガバナンス構造とそのための制度形成に注目し、中国社会がどのような構造問題に直面しているのか、またどのように変わろうとしているのか、という問題について、国際的学術交流をつうじてとらえ直そうとしたところに意義がある。本年度は、2009年2月9-11日にフランス・現代中国研究センターとの共催で、香港フランス領事館文化部会議室にて、総括を行うための第3回国際ワークショップを開催した。オーストラリア国立大学、香港バプティスト大学、米・オバリンカレッジなどの研究者らと共に研究成果を発表し、現代中国のガバナンスの特徴と変容について、経済・社会・政治の各分野から、積極的に議論を行った。ワークショップで議論した内容は、今後、フランス・現代中国研究センターの発行する学術誌に各々の論文や特集として発表するか、メンバー全員の論文を一つにまとめ、1冊の書籍として刊行することを目指している。日本の研究者が海外に向けての発信力を高めるという意味でも、当研究は一定の成果があったと言える。