著者
小林 道彦
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.488-523, 600-602, 1989-04-20

Conventional understanding about the 1907 Japanese government's "Imperial Defense Policy" may be summarized in the following three points. 1)This policy shows the extent of the "political independence" of the "military" after the Russo-Japanese War. 2)The conflict between army's "state of Asia" position and the navy's "island empire" position was not dissolved by this policy. 3)Therefore, the army's demand for 25 divisions and the navy's demand for 8 battleships and 8 armour-clad cruisers, an "excessive" military buildup, were both included in the section which outlined military power necessary for national defense. This article aims at reconsidering the above conventional evaluation of the "Imperial Defense Policy", through examining the 'defense environment' and the process by which the post Russo-Japanese War military buildup policy was formed. The author's conclusions are as follows. 1)After the Russo-Japanese War, the "defense environment" became very favorable for Japan because of the virtual disarmament of the Russian navy and of Japan's obtaining a lease over Kwantung region (northeastern China). Under this "new situation", the supreme commanders of the army and the navy shifted from a defensive to an offensive position, in their "1906 Strategic Plan for Imperial Army". Up until this time such a "Plan" was annually formulated upon a hypothetical attack on the Japanese mainland. In contrast, from this time, they began to plan an attack on Mainland China. It should be also noted that both the army and the navy regarded Russia as a real enemy. 2)The favorable turn which took place in the 'defense environment' influenced the planning of the Military Armament Management Plan. Due to the Russian army's retreated from Manchuria more speedily than Japan had expected, a compromise was struck between Yamagata's demand for 25 peace time divisions and Kodama's demand for 19 ; and the army's expansion target was put at 20 divisions for the time being. Due to the disappearance of an urgent "threat" from Russia, and the Russian ships which Japan got as spoils of war, naval strength was maintained as that expansion of the level. 3)The "Imperial Defense Policy" was formulated under close cooperation between the army and the navy. In order to respond to the "new situation" after the Russo-Japanese war, the conception of "small imperialism" was discarded, and the army was conceptualized as a direct military force assuring the maintenance and expansion of the Japanese interests on the Continent, while the navy was put in the context of an assisting force in such expantion through securing sea-lanes to the Continent. In terms of the necessary military force, 19 peacetime divisions and 5 battleships and 7 armour-clad cruisers were decided as the consequence negotiations between the military and the Ministry of Finance. In other words, this decision on the amount of armaments was realized only after agreement was received from the civil government. Therefore, the civilian part of the government did have something to do with this decision. Consequently, the process of deciding the "Imperial Defense Policy" does not prove the political autonomy of the "military" at that time.
著者
小林 道彦
出版者
史学研究会
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.p673-704, 1985-09
著者
松元 和伸 小林 薫 森井 俊広 中房 悟
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.139-148, 2016
被引用文献数
1

キャピラリーバリア(以下CB)は,砂層とその下部に礫層を重ねた土層構造であり,浸出水を抑制するための降雨浸透制御技術の一つとして利用されている。砂層と礫層の保水性,透水性などの違いによってCB機能は発揮されるが,実験による検証はCB層境界面が平坦であることが前提となっている。しかし,実施工時に広範囲の層境界面の平坦性を実験と同等に確保することは,施工工程やコストに大きく影響し,品質管理上の課題でもある。そこで,CB構造の展開を図っていく上で,CBの遮水機能つまり,限界長に及ぼすCB層境界面の不陸の影響を定量化しておくことが実務面で非常に重要となる。本論文では,上記課題の検討のため,これまで筆者らの研究で得られているCB境界面が平坦な場合のCB限界長と,新たに実験を行う層境界面に不陸のある場合のCB限界長との比較を行った。その結果,規則的な限定的条件下の不陸ではあるが,砂層と破砕貝殻層の層境界面の不陸は,実施工で発生するであろう30mm程度の規則的な不陸であれば,CB限界長等に影響を及ぼさないこと(CB機能も喪失しないこと)を明らかにした。
著者
小林 直弥
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
no.47, pp.57-71, 2008

1930年代から40年代にかけ、戦前の日本で大変な人気を博していた舞踊家がいた。その名前は、朝鮮人の舞踊家「崔承喜(チェ・スンヒ)」である。日本では「サイ・ショウキ」の名前で知られ、多くの広告に抜擢されたり、また、世界ツアーや、歌舞伎座公演などを開催するなど活躍したという。さらに、未だ「創作舞踊」という概念が確立できてはいなかった時代にあって、その草分けである石井漠に舞踊を習い、日本、朝鮮、中国において活躍したこの崔承喜は、時代に翻弄されながらも、現代に新しい舞踊創造への働きかけを続けた人物である。このたび、著者の中国における海外研修において、崔承喜の足跡に加え、中国での活動の断片をまとめた考察が本稿である。
著者
土井 研人 木村 哲 小林 寛伊 荒記 俊一
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.113-117, 1997-09-10
被引用文献数
1

二つの独立に機能している一般外科A, Bの臨床分離菌および抗菌薬使用状況を比較した. その結果, 分離菌では創感染部位などからの分離患者数において, <I>Staphylococcus aureus</I>, <I>Enterococcus faecalis</I>が外科Bのほうが有意に多く, 抗菌薬使用においては外科Bでの第三世代セフェム系抗菌薬の使用頻度が外科Aより多いことがわかった. このことから両外科の分離患者頻度の差は, 第三世代セフェム系抗菌薬の使用によりグラム陽性球菌が選択的に増殖した結果と考えられる.
著者
津留 壽昭 木村 哲二 小林 繁夫 乾 忠孝
出版者
The Surface Finishing Society of Japan
雑誌
金属表面技術 (ISSN:00260614)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.230-234, 1976
被引用文献数
3

By using N, N-dimethylformamide(DMF), an aprotic polar solvent, the electrodeposition of lead from PbCl<sub>2</sub>-DMF and Pb(NO<sub>3</sub>)<sub>2</sub>-DMF solutions was studied. The deposits of lead gave rise to the welldefined dendrites, when the electrolysis was carried out in higher concentration bath and at higher current densities, while at lower current densities (-3mA/cm<sup>2</sup>), the deposits became dark-gray and smooth. The dendrites of lead were of 2D [110], 3D [110] and 2D [100] types. The deposits from PbCl<sub>2</sub>-DMF solutions were the isolated nuclei of the layer growth (hexagonal, tetragonal and trigonal deposits), when temperature was higher than 40°C. The deposits from Pb(NO<sub>3</sub>)<sub>2</sub>-DMF solutions were white powder when temperature was higher than 50°C, while at 100°C the dendrites were not observed. The X-ray analysis of the deposits of crystalline lead had well-defined diffraction patterns. By the addition of thiourea and 2-butyne-1, 4 diol to Pb(NO<sub>3</sub>)<sub>2</sub>-H<sub>3</sub>BO<sub>3</sub>-DMF baths, semi-bright and smooth lead deposits were obtained. They had fine grains in crystal structure and were found to have the strong preferred orientation of (220). The grain size of the deposit was 150-350Å. From these results the optimum condition for the electrolysis was as follows: Pb(NO<sub>3</sub>)<sub>2</sub>: 100g/<i>l</i>, H<sub>3</sub>BO<sub>3</sub>: 10g/<i>l</i>, (NH<sub>2</sub>)<sub>2</sub>CS: 4g/<i>l</i>, HOCH<sub>2</sub>C≡CCH<sub>2</sub>OH: 3g/<i>l</i>, temperature:room temperature, current density:0.5-1.0mA/cm<sup>2</sup>, plating time: 60min, current efficiency: ca 50%.
著者
小林 一幸
出版者
公益社団法人日本ガスタービン学会
雑誌
GTSJガスタービンセミナー資料集 (ISSN:13418491)
巻号頁・発行日
no.33, pp.113-120, 2005-01-24

2003年12月、米国パワージェン・インターナショナル・カンファレンス(ラスベガス)においてMercury 50商業化モデルの正式発表がなされました。最新仕様は(ISO条件時)、定格4,600kW、発電効率38.5%(総合効率70%、追炊時90%)、蒸気量5.6t/h以上、窒素酸化物排気量9ppm以下(O_2=15%)、等となっています。米国エネルギー省の21世紀先進がスタービン開発プログラムのもと、4〜5MWクラスで一桁のNOxレベルと従来比15%以上の熱効率向上および低オペレーティングコストを目標にソーラータービンズ社で開発が進められて来た本機は、1997年の同カンファレンスにおいて初めて発表されました。その後米国、フランス、オーストラリアでよりハイレベルの信頼性、保守性、および耐久力を商用Mercury 50に課す事を目的とした過酷なフィールドテストを累計48,000時間超かさねて来ました。このフィールドテスト結果は再生器の構造設計の完成度、素材のアップグレード等にフィードバックされています。再生器の材質は信頼性向上を目的に初期の347ステンレスからインコネル625に変更され性能向上を目的に初期型より全長を711mm延長しています。同様にコンプレッサーとタービンセクションにも改良が施されました。コンプレッサーは可変案内翼付の10段軸流式で圧力比9.9、空気流量17.9kg/sとなっておりタービンは高負荷化により軸流式で2段を実現しています。回転体もより安定した特性を得るために152mm初期型より全長を短縮しています。燃焼器はリラー社の次世代燃焼技術のマイルストーンとなるべく開発されました。超希薄予混合方式(Ultra Low Premix: ULP)燃焼器を採用し燃焼器入口空気温度が高い再生サイクルに適したものとなっています。ソラータービンズ社では従来より実績のある予混合希薄燃焼器のSoLoNOxを1000台以上のガスタービンに搭載しフィールドに提供しています。累計の運転時間は2,200万時間を越えています。Mercury 50はコージェネレーション、CHP(combined heat and power)、BCHP(Building Cooling, Heating and Power)などの分散電源用途をターゲットとしています。現在のところ北米を中心に販売活動を開始し、カリフォルニア州内で2件の顧客開拓を実現。エネルギーサービス会社を通じ、大規模病院に現在設営中、年度末の竣工を予定。また,大手通信会社にも2005年上期の竣工を予定しています。
著者
山本 紗規子 吉田 哲也 齊藤 優子 佐々木 優 矢野 優美子 小林 正規 佐藤 友隆
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.193-197, 2015 (Released:2015-08-27)
参考文献数
11

スナノミ症はTunga penetransと呼ばれるスナノミが感染して生じる寄生虫性皮膚疾患である.スナノミはアフリカ,南米,西インド諸島を含む熱帯,亜熱帯の乾燥した砂地に生息する.雌の成虫が宿主の皮膚に侵入し“ネオゾーム”と呼ばれる腫大した構造を呈し,これがスナノミ症を引き起こす.スナノミ症の好発部位は足の爪周囲や趾間であり,症状は刺激感や瘙痒,疼痛を生じることが多い.治療はノミの除去である.スナノミ症は細菌による二次感染をおこすため,感染に対しては抗生剤の投与を行う.スナノミ症は通常,蔓延地域への渡航歴や,特徴的な臨床所見,病変から虫体や虫卵を確認することで診断できる. KOH直接鏡検法を用いて虫体や虫卵を確認し診断に至ったスナノミ症の1例を報告する.患者は67歳男,タンザニア連合共和国に仕事で滞在中,左足第�趾爪囲の色調の変化に気がつき急遽日本に帰国し当科を初診した.初診時,左足第�趾の爪は一部爪床から浮いており爪周囲は暗紫色調を呈し浮腫状であった.趾先部の中心に黒点を伴う角化を伴った黄白色の結節を認め,スナノミ症を疑い変色部位を爪とともに一塊に切除した.自験例では皮膚の変性,壊死が強く臨床的には虫の存在は明らかではなかったが,KOH直接鏡検法を用いたところ虫体の一部と多数の虫卵を認めることができスナノミ症と診断した.病理組織でも虫体構造物を確認した.感染部位を摘出後,軟膏による潰瘍治療と抗生剤の内服で軽快,治癒した. 病変部位から虫がはっきりと見えない場合,KOH直接鏡検法はスナノミ症の診断に有用である.
著者
槌野 正裕 荒川 広宣 小林 道弘 中島 みどり 高野 正太 山田 一隆 高野 正博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1750, 2015 (Released:2015-04-30)

【背景】我々は,大腸肛門病の専門病院として,第42回当学会より,理学療法士の視点で直腸肛門機能についての研究を継続している。研究結果から得られた知識を基に,治療の質向上を図っている。今年度は,大腸肛門リハビリテーション科による便秘外来の開設に伴い,理学療法士も排便障害を主訴として受診された方に対して,バルーン排出訓練を行っている。特に,ROMEIIIF3領域の症例に対して介入し,排便姿勢や骨盤底筋群の弛緩方法,腹圧の加え方などを指導して,快適な排便を目指して治療を行っている。今回,医師から指示された症例に対して,バルーン排出訓練をポータブルトイレで実施し,訓練の際に直腸内の圧変化と息み時間を評価したので以下に報告する。【対象と方法】バルーン排出訓練を理学療法士も介入して実施した女性6例(平均年齢77.7±9.6歳)を対象とした。バルーン排出訓練では,患者はシムス体位で臥床し,シリコン製のバルーンを肛門から挿入する。肛門管を過ぎて直腸内にバルーンを留置し,airを50ml送気したものを疑似便に見立て,通常の排便のごとく息んで排出する。訓練中には,一連の圧変化をスターメディカル社製直腸肛門機能検査キットGMMS-200で評価する。訓練は下記の方法で行い,1.から5.を比較検討した。患者は,1.airを送気して便意を感じた状態で起き上がり,ポータブルトイレへ移動する。移動が完了したら,2.背筋の伸ばした伸展座位で排出する。3.排出ができなければ前屈座位で排出する。4.伸展座位で排出できた症例も前屈座位での排出を同じように実施する。訓練終了後に,パソコンのモニターを用いて,5.排出までの息み時間を計測した。また,一連の排便動作における圧の変化を説明し,腹圧の加え方や骨盤底筋群の弛緩を促した。【結果】1.臥位からポータブルトイレへ着座した時点で,直腸圧が21.8±6.9cmH2O上昇した。2.伸展座位での排出では,2例が可能(94.9±161cmH2O)であり,4例は不可能(90.5±44.1cmH2O)であった。不可能な4例は,直腸圧が高まっていても排出ができない症例が2例,直腸圧が高まっていない症例が2例であった。3.前屈座位での排出では,4例が可能(120.8±22.5cmH2O)であり,2例が不可能(73.1±28.1cmH2O)であった。伸展座位で直腸圧が高まっても排出できなかった2例は排出可能であった。また,排出不可能であった2例のうち,1例は伸展座位でも排出できない症例であり,1例は普段から伸展座位でしか排出できない症例であった。臥位,伸展座位,前屈座位の全ての姿勢で排出できた症例の息み時間は,臥位10.5秒,伸展座位5秒,前屈座位3秒でバルーンの排出が可能であった。5.伸展座位と前屈座位で,排出までに息んだ時間は,排出が可能な場合は9.0±5.7秒,9.5±4.4秒,不可能な場合は15.1±10.5秒,9.8±3.2秒であった。全体で排出可能な場合は,9.5±4.4秒,不可能な場合は13.3±8.7秒であった。【考察】今回,バルーン排出訓練での直腸圧の変化と息み時間を比較した。まず,着目したことは,臥位と座位では直腸圧が変化している点である。臥位よりも座位では,直腸圧つまり腹圧が21.8±6.9cmH2O上昇した。このことは,オムツを着用したままの臥位での排便ではなく,便意を逃さずトイレへ誘導し,便座へ着座してから排便を促すことが重要であることの根拠になると考える。また,伸展座位では排出可能,不可能にかかわらず同程度の直腸圧であったが,前屈座位では排出が可能な例で直腸圧が高く,不可能な例では低い傾向であった。排出までに息んだ時間は,排出可能な場合は9秒,不可能な場合は伸展座位で15秒,前屈座位では10秒と伸展座位で排出できない場合は長く息んでいた。我々の過去の研究では,肛門内圧は骨盤前傾位で高く,後傾位で低くなること。前屈座位では伸展座位よりも肛門直腸角が鈍角になりやすいことを報告しており,出口である骨盤底筋群は伸展座位で弛緩が困難なため息みが長くなり,前屈座位では弛緩し易いために息みが短かったと考えられる。これらの結果から,前屈座位では腹圧が適度に上昇し,骨盤底は弛緩するため排出が行い易くなったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】理学療法士が排泄についての生理を知識として持つことで,在宅生活を送るための支援につながり,生活の質を高めることが出来ると考えている。