著者
平尾 和子 西岡 育 高橋 節子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.363-371, 1989

タピオカパールは, 調理に際して煮くずれしやすく, 芯が残りやすいなどの問題点があり, その加熱方法はむずかしい.透明感や歯ごたえがあり, 煮くずれが少なく, 芯のないタピオカパールを得るためのより簡便な加熱方法を知る目的で本実験を行った.<BR>加熱方法は, 湯煎による加熱の湯煎法と魔法瓶を用いるポット法について比較し, 顕微鏡観察, 物性測定および官能評価の結果から浸水効果や加熱方法を検討した.結果は次のとおりである.<BR>1) タピオカパールは, 加熱に際しての浸水効果は認められず, 浸水することなく, 直接ふりこんで加熱するほうが煮くずれしにくい結果となった.<BR>2) 加熱方法では, ポット法が湯煎法に比べて煮くずれせず, 弾力があり, 芯のない煮上がりとなるなど, 物性値においても, 官能評価においても最も好まれた. 魔法瓶を用いるポット法は, 加熱途中の攪拌や湯を補うなどの手間もかからず, しかも形状やテクスチャーのよいタピオカパールを得ることができるなど, 簡便かつ効果的な加熱方法と考えられる.<BR>3) 湯煎法のうち, 水にふり込んで加熱する水湯煎法は, 熱湯にふり込む熱湯湯煎法に比べて加熱時間が短縮され, とくに2時間加熱することにより, 透明で歯ごたえのある試料が得られた.
著者
米山 陽子 三星 沙織 黒瀬 真弓 平尾 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2022年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.12, 2022 (Released:2022-09-02)

【目的】近年、菓子類にも健康機能を付加するものが増えているが、米菓には少ない。本実験では、生活習慣病の予防に効果的でありながら、日本人の1日の摂取目標量が不足している食物繊維に注目し、糖質が主成分である米菓への水溶性食物繊維を添加することによる影響について検討した。【方法】既報の方法を用いて、国産米菓用うるち米をロール法粉砕した米粉(40メッシュ)に、水溶性食物繊維イソマルトデキストリン((株)林原)を5%および10%添加したせんべいを調製した。物性は,テクスチャー測定と破断特性測定(RE2-3305B:山電(株))を行い、実体顕微鏡((株)島津理化STZ-171)による組織観察も行った.官能評価は7段階評点法を用い、教職員専門パネル10~20名で評価した。【結果・考察】米粉にイソマルトデキストリンを10%添加すると、焼成前の生地は付着性が低下し、せんべいはコントロールに比べて破断応力およびもろさが大となった。せんべいの生地の硬さとせんべいの破断応力・もろさの間には、それぞれ危険率5%で有意の相関が認められた。実体顕微鏡による組織観察では、イソマルトデキストリンを添加したせんべいは組織が緻密で細かい気泡が多く観察された。官能評価では、試料間に有意の差はなくコントロールと同等の評価を示したが、自由記述においては、10%添加することにより、サクサク感やザクザク感などの好ましい食感を示す旨の記述がみられた。これらの結果より、せんべいの副原料の一つとしてイソマルトデキストリンを添加することは、新たな付加価値を付与するとともに、「高い旨」の栄養強調表示に相当する10%を添加してもコントロールと同等に製造できることが示唆された。
著者
平尾 和子
出版者
一般社団法人 日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.2-13, 2021-02-20 (Released:2021-06-01)
参考文献数
56

糖質および糖質を含む食品(糖質含有食品)は,主食や副菜,デザートに広く用いられ,調理には欠かせない素材である.これまで糖質含有食品を対象とし,調理科学的視点からその食品の理化学的性質および利用特性,調理操作により生じる食品の変化の解明などを目的として,第一に,調理の実習で生じた疑問の解明,第二に,新しい糖質素材の理化学的性質や利用適性の解明・提案,第三に,澱粉に対する副材料(糖類,タンパク質,脂質など)添加による相互作用の解明など,大きく三つのテーマについて研究を行ってきた.研究対象とした糖質含有食品は,米,雑穀,タピオカパールなどの粒状食品,粉状の小麦粉や米粉および馬鈴薯,トウモロコシ,キャッサバ,サゴなどの澱粉(天然・加工)およびこれらを用いた加工品,各種糖類など多種多様である.本稿では,これまでの研究のうち,パール状澱粉における新たな調理操作法(ポット法)の確立,大麦混合飯の炊飯条件の基準の提案および各種大麦の利用法,さらにはシェッフェの単純格子計画法を用いた澱粉ゲルに及ぼす分離大豆タンパク質と大豆油の影響の検討および結果を示す三角図の簡易描画法の提案など,研究の一部を紹介する.
著者
平尾 和子 武井 婦貴恵 米山 陽子 高橋 節子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.49-54, 2005

サゴ澱粉の物性に及ぼす卵黄粉末添加の影響についてとうもろこし澱粉, 馬鈴薯澱粉と比較し, 澱粉懸濁液の粘度特性, ゲルのテクスチャー, 保型性および離水率を検討しTable2に示した.実際の調理面からレモンパイフィリングを調製して官能評価を行い, サゴ澱粉の調理素材としての適性を検討した.<BR>1) サゴ澱粉懸濁液の粘度変化は卵黄粉末30w/v%添加により最高粘度, 冷却25℃の粘度が無添加より増加した.<BR>2) サゴ澱粉ゲルの硬さ, 凝集性は卵黄粉末30w/v%添加により低下し, 付着性は添加, 無添加にかかわらず認められなかった.<BR>3) サゴ澱粉は卵黄粉末添加により, 他の澱粉に比べて保型性の低下が最も少なく, 形状保持に役立つ.また冷蔵による離水率はわずかに低下を示した.<BR>4) レモンパイフィリングの官能評価の結果から, 「特性評価」ではサゴ澱粉は有意に光沢があると評価された.「嗜好」では味, 硬さ, べたつき, 弾力性, 総合評価の項目では小麦粉が最も好まれたが, サゴ澱粉は硬さ以外の項目で小麦粉に次いで好まれ, とうもろこし澱粉にも近い嗜好性が認められた.
著者
平尾 和子 西岡 育 高橋 節子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.363-371, 1989-05-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14

タピオカパールは, 調理に際して煮くずれしやすく, 芯が残りやすいなどの問題点があり, その加熱方法はむずかしい.透明感や歯ごたえがあり, 煮くずれが少なく, 芯のないタピオカパールを得るためのより簡便な加熱方法を知る目的で本実験を行った.加熱方法は, 湯煎による加熱の湯煎法と魔法瓶を用いるポット法について比較し, 顕微鏡観察, 物性測定および官能評価の結果から浸水効果や加熱方法を検討した.結果は次のとおりである.1) タピオカパールは, 加熱に際しての浸水効果は認められず, 浸水することなく, 直接ふりこんで加熱するほうが煮くずれしにくい結果となった.2) 加熱方法では, ポット法が湯煎法に比べて煮くずれせず, 弾力があり, 芯のない煮上がりとなるなど, 物性値においても, 官能評価においても最も好まれた. 魔法瓶を用いるポット法は, 加熱途中の攪拌や湯を補うなどの手間もかからず, しかも形状やテクスチャーのよいタピオカパールを得ることができるなど, 簡便かつ効果的な加熱方法と考えられる.3) 湯煎法のうち, 水にふり込んで加熱する水湯煎法は, 熱湯にふり込む熱湯湯煎法に比べて加熱時間が短縮され, とくに2時間加熱することにより, 透明で歯ごたえのある試料が得られた.
著者
古谷 彰子 三星 沙織 平尾 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.50, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】大麦種子には水溶性多糖類の(1,3)(1,4)-β-グルカン(β-グルカンと略)が胚乳部細胞壁に分布しており,血中コレステロールや血糖値,中性脂肪の低下作用,アレルギー反応を鎮め,ガンなどの腫瘍を抑える効果などが報告されている。近年,アメリカ(FFA)やフランス(EFSA)でもヘルスクレームの許可が試みられており,国際的にも注目の栄養素である。しかし,大麦は茹でる調理法(湯取り法)が主流であり,喫食時のβ-グルカンの大幅な損失が否めない。本実験では大麦を用い,その調理法を変化させてβ-グルカン含量を定量し,より美味しく損失の少ない調理法を検討した。【方法】大麦はうるち種押麦(カナリヤ 業務用,永倉精麦(株))を使用した。調理器具は炊飯器(Panasonic SR-HD103)を用い,炊き干し法と湯取り法の2種の調理法を用いた。炊き干し法の最適加水量は,順位法による官能評価により決定した。湯取り法の加熱条件は押し麦の5倍量(重量比)を加水し,物性測定を行って,炊き干し法と同様の硬さが再現できる加熱時間とした。双方のβ-グルカン量をAOAC公定法のβ-グルカン測定キット(Megazyme社)を使用して定量し比較した。物性測定は,テンシプレッサー(My BoyⅡ,㈲タケトモ電機製)を用いて1粒法による低・高圧縮測定・解析をした。【結果】加水量2倍および3倍の炊き干し法炊飯押麦飯はすべての項目で加水量1倍よりも有意に好まれた。炊き干し法では加水量の違いによるβ-グルカン量の差が見られなかったが,湯取り法では炊き干し法と比較して有意に減少し,加水量の増加に伴い減少の割合が高くなった。以上より,押麦のβ-グルカンの損失を少なくし,効率よく美味しく喫食するためは炊き干し法が効果的であった。湯取り法を使用する場合は,麦の3倍量(重量比)程度まで加水量を少なくして茹で, 炊き干し法に近似の方法で調理することにより, β-グルカンの損失を防ぐことが可能と考えられた。
著者
江木 伸子 廣瀬 理恵子 平尾 和子 野田 誠司 齋尾 恭子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00088, (Released:2023-06-05)

大豆分離タンパク質 (SPI)の部分的酵素加水分解が乳化安定性に影響することは既に報告されている.著者らは市販の部分的加水分解された大豆タンパク質素材を用いて,乳化安定性の高いエマルションの調製について報告した.本報の目的は,数種の熱帯果実の果汁をSPIに直接反応させることにより,SPIから保形性および安定性の高いエマルションを調製することである.その結果,パイナップル,キウイ,イチジク,メロン,パパイア(未熟)の果汁をSPIと反応させることにより,擬塑性流動を示し,保形性のある安定なエマルションを,パパイン酵素と同様に調製できることを明らかにした.本研究の範囲において,果実の種類,産地,熟度,果汁とSPIの反応条件により,エマルションの外観,SDS–PAGEによるタンパク質分解物のパターン,流動曲線による物性等が変化した.電気泳動パターンでは11Sの酸性サブユニットの消失とエマルションの安定性との関係が示唆された.
著者
平尾 和子
出版者
一般社団法人 日本家政学会 食文化研究部会
雑誌
会誌食文化研究 (ISSN:18804403)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.25-32, 2008 (Released:2022-03-09)
参考文献数
17

Persimmon juice, which is extracted from premature persimmons, has been used traditionally as a waterproofing agent, an antiseptic, and a substance preventing the formation of moisture and mold. Moreover, it has been used since medieval times in production of paper, yam, cloth, wood and other materials used in daily life. This research focuses on the possibilities of future utilization of persimmon juice in the Japanese dietary life. The use of persimmon juice in Japanese culture dates back to the Edo period. Although use declined shortly after World-War II, it has been clear that its use in the modem diet has continued to progress as it has been passed down generations. The period between 1994 and 2008 saw the publication of 6 papers on the extraction, and 49 on the culinary application of persimmon juice. In total,165 papers discussing the topics of persimmon juice in general have been published. The apparent interest in this substance lends credence to my belief that a society eager to attune itself with nature will take to the use of a persimmon based polyphenol antioxidant. In order to ensure that this tradition is handed down to future generations, improving the extraction and utilization methods of persimmon juice is essential while retaining traditional practices. Furthermore, familiarizing the public with the term “persimmon juice” and encouraging its broader use in society, as well as investigating alternative utilization methods would greatly assist not only its preservation but also further development.
著者
高橋 節子 近堂 知子 平尾 和子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.100-106, 2013 (Released:2013-10-18)
参考文献数
21
被引用文献数
5

生米粉および α化もち米粉の和菓子用米粉7種の特性は,ラピッドビスコアナライザーによる加熱・冷却時の粘度および糊液のテクスチャー測定より求め,ショ糖添加の場合と比較した。また練りきり,ういろう生地の調製法の違いが物性に及ぼす影響についても検討した。その結果,白玉粉ともち粉,上新粉と上用粉はそれぞれ近似の粘度および糊液のテクスチャーを示した。白玉粉の粘度は上新粉に比べて低いが,最高粘度を示す温度は75℃と上新粉よりも低く,低温で糊化しやすいことを示した。α化もち米粉の上南粉は白玉粉,もち粉に近似のテクスチャーを示し,寒梅粉は粘度が低く,軟らかい糊液であった。練りきりは練りあんにぎゅうひを加えることにより,硬さ,凝集性が大となり成形性を増し,保型性を高める効果を示した。ういろう生地は,熱いうちに混捏したものが,また副材料は小麦澱粉に比べてくず澱粉を使用したものが,破断応力,破断エネルギーはともに大きい値を示し,こしのある生地が得られた。
著者
古谷 彰子 大西 峰子 三星 沙織 米山 陽子 平尾 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.31, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】ワラビの根から抽出されるワラビ澱粉は、高価で保存性も悪い。わらび餅の調製に用いるわらび粉の市販品には安価な甘藷澱粉やクズ澱粉が混合されているもタピオカ澱粉を利用したものが多い。しかし、これらの澱粉は安価であるという利点はあるものの、ワラビ澱粉で調製した本わらび餅とは食味・食感がかなり異なっていた。本報告では、加工タピオカ澱粉を用いて、本わらび餅に近い食感のわらび餅の調製法を検討した。【方法】澱粉は、未加工タピオカ澱粉(NT)、リン酸架橋タピオカ澱粉(P)、Pの酵素処理澱粉(PE)、アセチルリン酸タピオカ澱粉(AP)、APの酵素処理澱粉(APE)の5種(グリコ栄養食品(株))とし、上白糖(三井製糖)と蒸留水を用いてわらび餅を調製した。加水量は各澱粉の水分量を求めて調整した。またシェッフェの単純格子計画法を用い、NTと2種の加工タピオカ澱粉(PE、APE)を3成分として配合割合の異なる9つの格子点を設定した。物性測定はクリープメータ((株)山電)、官能評価は本わらび餅を対照として、つり合い不完備型ブロック計画法を用いて行った。【結果】官能評価の嗜好では、PEとAPEを用いたものが総合評価の項目で有意に好まれたが、どちらも本わらび餅の食感とは異なっていた。そこで、シェッフェの単純格子計画法を用いて3種澱粉(NT、PEおよびAPE)の配合割合の影響を検討したところ、格子点⑦のNT:PE:APE=1:1:1の配合割合のわらび餅が本わらび餅に最も近い物性値を示した。官能評価の特性評価においても、弾力と口どけの項目で有意にあると評価された。嗜好においても、本わらび餅と同様に「好き」「非常に好き」と評価され、有意に好まれた。
著者
齋藤 寛子 平尾 和子 佐藤 恵美子 宮地 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】山形県は三世代同居率が国内で最も高く(厚労省 平成30年報告)、生産年齢人口の有業率が女性は84.9%で全国2位(総務省 平成29年就業構造基本調査)である。そのため共働きが多く、食事作り担当者は祖父母という家庭も示唆され、地域や家庭における行事食が伝承されやすいと推察される。本報告では山形県内の4つの地方(庄内、最上、村山、置賜)に伝わる行事や食がどのように伝承されているかを検討した。</p><p>【方法】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」で行った聞き書き調査、山形県の郷土料理に関する出版物および継続中の調査結果から、特徴的な行事と料理並びに食文化の背景について分析した。</p><p>【結果】山形県は4つの地方毎に伝承された行事や食があり、年中行事では年越し、正月、農作業に関する四季の行事など、また通過儀礼では冠婚葬祭のしきたりに関わる料理が伝わっている。正月の雑煮に入れる餅は県内でも地方によって異なり、最上・村山・置賜地方は四角の焼いた餅、海に面した庄内地方は丸餅を焼かずに用いるが、丸い形は北前船の影響があると考えられる。また、庄内地方では12月の大黒様の御歳夜に黒豆を用いた料理などを準備し、ごま豆腐やうどんのあんかけなどを作る祭りも伝わっている。一方、内陸部の最上、村山、置賜地方では「ひょっとして良いことがありますように」と願いを込め、正月にひょう干しの煮物を準備する。村山地方の人日の節句には、積雪のため七草など青物が調達できないことから、芋がらを入れた納豆汁を作る。また置賜地方ではお歳取りや祝儀の膳には祝い魚として鯉の甘煮を準備する。いずれの地方でも特徴ある行事食が伝承されていることがわかった。</p>
著者
平尾 和子 米山 陽子 濱西 知子 高橋 節子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.24, 2004

【目的】みたらし団子用たれは、一般的に馬鈴薯澱粉などの天然澱粉が用いられており、その保存期間は短い。そこで本研究においては、耐老化性や低温保存安定性に優れた化工小麦澱粉を用いて団子用たれを調製し、馬鈴薯澱粉、天然小麦澱粉を用いたものと、物性ならびに官能評価による食味特性を比較し、保存方法および利用性についても検討した。<br>【方法】試料とした化工小麦澱粉はMidsol 4, Midsol 46の2種を用い、天然小麦澱粉Midsol 50 (ともに米国MGP社製) および馬鈴薯澱粉(ホクレン社製)と比較した。たれの調製は澱粉濃度9%とし、ショ糖は全液量の40%、醤油は10%とした。各澱粉の粘度はラピッドビスコアナライザー(RVA)により求め、糊の物性はテンシプレッサーを用いて測定した。凍結・解凍安定性は、RVAで調製した試料を室温に20分間放冷後、-20℃で22時間凍結、室温で2時間解凍を1サイクルとし、1から7サイクル繰り返した試料について物性測定を行い、調製直後と比較した。官能評価は評点法により検討した。<br>【結果】1)化工小麦澱粉2種は天然小麦澱粉に比べて、粘度上昇開始温度は低く、最高粘度、冷却50℃時の粘度がともに高く、糊の付着性は大きい値を示した。2)化工小麦澱粉は凍結・解凍後の糊の物性変化および離水は認められなかった。3)醤油の添加により、いずれの澱粉も最高粘度は低下した。4)ショ糖と醤油を加えたたれは凍結・解凍に伴い、馬鈴薯澱粉では硬さ、凝集性、付着性、ねばさの値の変化が大きいのに対し、化工小麦澱粉はこれらの変化が少なく凍結・解凍安定性が認められた。5)官能評価の結果から、化工小麦澱粉を用いたたれは、馬鈴薯澱粉および天然小麦澱粉に比べて高い嗜好を示した。
著者
江木 伸子 平尾 和子 廣瀬 理恵子 斎尾 恭子 村上 昌弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.225-235, 2016-05-15 (Released:2016-06-30)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

分離大豆タンパク質(SPI),酢,大豆油,水の乳化により調製した大豆タンパク質添加エマルションのレオロジー的性質を酢の添加量および添加順序を変えて調べた.その結果,部分的加水分解したSPIは,乳化後,酢を添加することにより,元のSPIに比べて,高い保形性および安定性と滑らかな物性を持つエマルションを調製できることがわかった.SPI,大豆油および酢と水の適当な配合比を調べるために,Schefféの単純格子計画法を適用して,10種類の配合比で作られるエマルションの物性を検討した.安定した保形性を持つ混合比は部分加水分解SPI ; 4.0∼16.7%,大豆油 ; 36.0∼55.0%,酢 ; 5.0%,水 ; 36.0∼45.5%の範囲にあり,これらは擬塑性流動を示した.チキソトロピー特性値,降伏値,粘稠性係数,流動性指数などの値は混合比により変わり,ホイップクリーム様,マヨネーズ様,クリームチーズ様などの乳化特性を示した.混合比が部分加水分解SPI ; 10.4%,大豆油 ; 42.3%,酢 ; 5.0%,水 ; 42.3%のエマルションは,それが大豆たん白利用食品として相応のタンパク質含量を持ち,平均粒子径や流動性指数など物性値が適当なことから後の実験に選択した.このエマルションに砂糖を添加すると,砂糖の添加量が多くなるに従いニュートン流動を示すようになり保形性は失われた.しかし,砂糖を加えて乳化してから,酢を添加することによりエマルションの形状の変化を抑制することができた.またこのように調製したエマルションは焼成することが可能になったので,焼成菓子やマヨネーズ様食品を試作した.これら実験を通じて,著者らは食材を添加する順序が顕著に,かつ,微妙に調製後のエマルションや食品の物性に影響することを認めた.
著者
齋藤 寛子 平尾 和子 佐藤 恵美子 宮地 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】山形県は昔から米作りが盛んであり、農作業の合間の小昼や一服のおやつは、疲れた身体を癒し、生産性の向上も担う大切な食であった。また、学校を終えて帰宅した子どもたちにとって、おやつは昔も今も楽しみであり、大切な栄養補給である。加えて、歴史的背景から、西廻り航路の港であった酒田市は、早くから京の和菓子が伝えられ、隣接する城下町であった鶴岡市は、雛菓子、お盆菓子、正月の祝い菓子など現在も昔と変わらずに食べられている。そこで本報告では、山形県の家庭におけるおやつについて、その実態を調査し、伝承された食べ方などをまとめることを目的とした。<br />【方法】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」に於いて行った聞き書き調査及び山形県の郷土料理に関する出版物からの料理の抽出、さらに継続して行っている調査結果などから、季節、行事及び県内の地域区分等でおやつを分類し、その特徴について分析した。<br />【結果】山形県の家庭料理におけるおやつは約50品集録された。「ケ」の食のおやつには、うるち米やもち米を材料とするものが多く、きな粉餅、味噌餅、白餅もおやつとして認識されており、硬くなった餅は油であげたり、炒ったりして味付けし、あられとして食べられている。醤油で煎り煮した玉こんにゃくや寒天を用いた寄せものは、おかずだけではなくおやつにもなる料理である。「ハレ」の食のおやつには、上巳の節句のくじら餅、草餅、鶴岡の練り切り等で作るお雛菓子、端午の節句には灰汁巻きと灰汁を用いない笹巻2種と笹団子及び小正月の団子などが分類された。昔からのおやつは、食材は限られるものの、調理法や味付けに工夫が見られ、山形のおやつは豊かであったことが推察された。
著者
平尾 和子 三星 沙織 井上 葉子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成22年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.164, 2010 (Released:2010-08-27)

[目的] 米粉を用いた揚げ衣の吸油量を求める基礎研究として,異なる加水倍率で天ぷら衣を調製後油揚げし,衣の重量変化および鍋内の残油量から吸油量を数量化するモデル実験を試みた。官能評価は米粉及び小麦粉で調製した揚げ衣の食味特性と嗜好について行った。 [方法] 米粉(2007年茨城県産コシヒカリ,ロール法粉砕,(株)波里)あるいは小麦粉(薄力粉フラワー,日清製粉(株))に蒸留水(以後,水とする)または卵液(水温15±1℃)を粉重量の1.6~2.4倍加えて衣(以後,バッターとする)を調製した。卵液は全卵(市販品,約52g)を濾した後,重量に対して3倍量の水を加えて混合した。バッターの物性測定はクリープメーター(RE2-3305B,(株)山電)で行った。バッターをクッキングシートに約4g平らに乗せ,大豆・なたね混合油((株)J-オイルミルズ製)を用いて170±2℃で2分間揚げた後網上で5分間油切りし,揚げ衣の重量を測定した。鍋内の残油量はバッターを約10個揚げた毎に測定した。官能評価は色,厚さ,硬さ,サクサク感,味,油っぽさ等の項目を食味特性と嗜好について7段階評価法により行った。パネルは本学学生および教職員30名とした。 [結果] バッターの硬さおよび付着性は,米粉・小麦粉ともに加水量が多くなるに従って減少し,同じ加水量では米粉バッターは小麦粉に比べて硬さおよび付着性がともに大となった。揚げ衣の重量減少量は米粉の方が小麦粉よりも大であった。また米粉の残油量は小麦粉に比べて多かったことから,米粉衣の吸油量は小麦粉衣に比べて少ないと推測された。官能評価では米粉衣は水,卵液のいずれも油っぽさがないと評価され,この項目で好まれた。以上のことから,米粉衣は吸油量が少なく,油っぽさの少ない衣であると考えられた。
著者
米山 陽子 平尾 和子 濱西 知子 高橋 節子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.54, 2005 (Released:2005-09-13)

【目的】玄米飯ならびに玄米桜飯を家庭用炊飯器により、加水温度を変えて短時間で炊飯する方法を検討した。玄米は吸水率が低く浸漬が必要であるが、浸漬時間を短くする目的で玄米に熱湯を加えて炊飯する方法と水で1時間浸漬後炊飯する方法を比較した。また、玄米の種類ならびに加水温度の違いが物性および食味特性に及ぼす影響について検討した。【方法】試料玄米は低アミロース米「たきたて」と「あきたこまち」の2種を用いた。玄米450gを洗米水切り後、National IH炊飯器 SR-A10Fに入れ熱湯を加え直ちに炊飯する場合(熱湯法)および水に1時間浸漬した後炊飯する場合(水浸漬法)の2種について比較した。加水量は1.8倍とし、桜飯の調味料は塩、醤油および酒を炊飯直前に加えた。飯の物性は改良型テンシプレッサーによる低・高圧縮2バイト法を用いて、集団粒法にて測定を行った。官能評価は加水温度の異なる玄米2種の飯および桜飯について評点法を用いて行った。【結果】物性測定において、「あきたこまち」は熱湯法が水浸漬法に比べてこし・粘りがある飯となり、桜飯においては付着・粘りがある飯となった。「たきたて」は玄米飯、桜飯ともに加水温度による差は認められなかった。官能評価の結果から「たきたて」の玄米飯は光沢・色・粘り・のみこみやすさがあり、硬さがないと評価され、嗜好において光沢・色の項目で「あきたこまち」よりも好まれた。「たきたて」の桜飯では光沢・ねばり・のみこみやすさがあり、硬さがないと評価され、嗜好では光沢・味・硬さ・弾力・粘り・のみこみやすさおよび総合評価の7項目において好まれた。しかし、玄米飯、桜飯ともに熱湯法と水浸漬法の差は特性評価、嗜好ともに認められず、熱湯法による炊飯は時間短縮が可能と考えられた。
著者
平尾 和子 高橋 節子
雑誌
Sago palm (ISSN:13473972)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.14-20, 1996-10-30
参考文献数
8
被引用文献数
6
著者
平尾 和子 三星 沙織 近堂 知子 竹内 由紀子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 70回大会
巻号頁・発行日
pp.80, 2018 (Released:2018-07-28)

【目的】山形県庄内地方では、もち米を笹に包んで煮る「笹巻」と呼ばれる粽が作られている。酒田市周辺では単に湯煮するので白色であるが、鶴岡市周辺では灰汁を用いるために黄色である。本研究では、庄内地方に二種の笹巻が作られるようになった経緯、笹巻作りの現状を調査するとともに笹巻の食文化を次代に伝承する方法について検討した。【方法】文献の渉猟は鶴岡市歴史資料館等で行った。電話調査は平成28年9月~11月に、山形県、新潟県、秋田県、宮城県、福島県の計192ヵ所の市役所・町村役場を対象として行った。アンケート用紙による調査は、平成28年11月~平成29年4月に電話調査で同意が得られた対象を中心に行い、520部を配布して507件の回答を得た(回収率97.5%)。【結果】灰汁を使用した黄色の笹巻に関する記録は、天明8年(1788)の『悪作付書記』が今回確認できた最古の記録であった。電話及びアンケート調査から、庄内地方では現在でもほぼ全ての家庭で笹巻が食べられており、時期は端午の節句の時期であった。自家製造は2世代同居、3世代同居の家庭で主に行われていた。また、使用する笹や紐の種類と扱い方、笹巻の形、加熱時間など、調理法および食べ方に各家庭の特徴が存在することが確認できた。今後、この食文化を伝承する取り組みとしては、動画サイトやDVDに製造工程の画像を残す、各地区婦人部に伝承の協力を仰ぐ方法などが有効であると考えられた。