著者
新井 紀子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

コンピュータサイエンスにおいて、最も中心的な問いのひとつが、与えられた関数(グラフ)を計算するための最も効率のよいアルゴリズムは何か?と言う問題である。これは、ひとつには「P=?NP」問題に集約される。この課題に対して、ロジックからのアプローチとしては、次の2つが考えられる1.与えられた命題論理の体系に対し、その体系では多項式サイズの証明が存在しないような定理群を発見する2.与えられた2つの命題論理の体系が相対的にどちらの方が証明効率がよいか本研究においては、タブロー法とレゾリューション法の証明の複雑さに関して研究を進めた。この2つの体系は、多くの自動証明機のエンジンとして採用されていることを追記しておく。その結果、1970年代から未解決であった、さまざまなタブロー法のバリエーション間の相対的証明効率の問題を完全解決した。まず、自動証明機のエンジンとして最も採用されているclausal tableauというタブローは一般的なタブローに比べて、superpolynomial-timeな遅延があることを発見した。また、resolution法はタブロー法に比べてexponentialのスピードアップがあると信じられてきたが、それは誤りであり、resolution法はタブロー法に比べて、擬似多項式時間分しかスピードアップしないことを論理的に証明した。一方、本研究においては、clausal tableau法にシンメトリーという推論を付け加えることによって、新しい体系SCRを構築し、その証明力についてさまざまに考察した。結果、resolutionでは短く証明できない多くの組み合わせ論的な問題がSCRでは多項式サイズの証明があることがわかった。SCRはタブロー法をベースとしているため、自動証明に応用することができ、これをGodzillaという自動証明機として実現した。
著者
新井 紀子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

初等中等教育向けに、学校のICT機能のワンストップシステムの研究開発を行った。特に、学校のICT機能のうち、(1)ポータル機能(2)校務の情報化(3)教育の情報化(4)広報の情報化をワンストップで実現できるシステムNetCommons3.0の研究開発を行った。(3)の教育の情報化には、情報モラル・情報リテラシー教育だけでなく、作文・プレゼンテーション指導、基礎学力定着、グループウェアによる知識共有などを含む。
著者
菅原 真悟 新井 紀子
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第23回 (2009)
巻号頁・発行日
pp.3E3NFC21, 2009 (Released:2018-07-30)

情報共有や協調学習を支援するために、さまざまなWebベースの教育情報システムが開発され、教育現場に導入されている。これらのシステムは、学びの場におけるユーザ参加型ウェブサービスであるといえる。本研究では、学生がこのようなシステムをどのように活用するのかを分析すると共に、学生間のつながりや学習過程を可視化するツールを開発することで、学生の主体的な学びを引き出すことを目的としている。
著者
新井 紀子 川本 佳代
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.155-163, 2004 (Released:2004-06-01)
参考文献数
7
被引用文献数
4 3

「e-教室」プロジェクトは,新井らが開発を行った「Net-Commons」という情報共有ポータルシステムを活用して,研究者・教員らが協力しながら,中高校生とともにインターネット上に通常のカリキュラムを超える,高度な学びのコミュニティを創出する試みである。「Net-Commons」は,テキストと画像を組み合わせて投稿することができる掲示板を中心に据えながら,インターネット上で提供されているデジタルコンテンツを柔軟に活用するオンライン協調学習環境を提供している。「Net-Commons」が提供する柔軟なページレイアウト機能により,コミュニティの状態に最適なページレイアウトをWeb上から簡単に実現することができる。学習支援者は,学習状況を観察しながら,さまざまなe-ラーニングツールの組み合わせ(Blended Learning)を自由に試みることができる。「e-教室」に参加している学習者は,学習支援者とともにコミュニティを形成しながら,インターネット上の学びの空間を体験する。「e-教室」の学習ログを解析した結果,「e-教室」での活動を通じて,学習者の (1) 論理的思考力 (2)(書き言葉による)コミュニケーション能力 (3) プレゼンテーション能力が向上したことが観察された。
著者
川本 佳代 新井 紀子 内田 智之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.73-78, 2005-11-05 (Released:2017-11-17)
参考文献数
10

オンライン上でカリキュラムを越えた学びを実現してきた「e-教室」をSSH指定校に導入することにより、高度な学びを目的とするオンラインと対面式の授業とのブレンディッドラーニングを実践した。本稿はその方法と効果を明らかにしている。投稿内容、レポート、アンケートを分析した結果、主な効果として、(1)クラス全体及び個人の解答に至る過程を中心とする記述力が向上したことから高度な学びが実現し、(2)相当数の生徒の数学に対する興味が深まり、数学に対する考えがより肯定的になり、(3)通常の授業よりも「深く考えられる」「面白い」と感じたという点があげられ、「e-教室」導入の意義があったといえよう。
著者
岡 真由美 新井 紀子 深井 小久子 木村 久
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.113-117, 1995-08-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
14

基礎型間歇性外斜視に対してボツリヌス毒素療法を施行し,過矯正眼位が出現した後,良好な治療経過を認めた症例と過矯正眼位が出現せず斜視の再発を認めた症例を比較し,経過良好例よりボツリヌス毒素療法の視能矯正について検討した。良好例の治療前眼位は,30ΔX(T)',25ΔXTであった。ボツリヌスを右眼外直筋へ2回注入し,斜視角は減少したが残余角を認めた。第3回目は両眼外直筋に注入し,70ΔET',68ΔETとなったが5か月後4ΔE',4ΔEに改善し,約2年間良好な眼位を保持した。不良例の治療前眼位は,30ΔX(T)',35ΔXTであった。ボツリヌスの注入は,注入量を漸増しながら右眼外直筋に計4回行った。眼位は,6ΔX',6ΔXに改善したが外斜視の再発を認めた。ボツリヌスの両眼外直筋への注入により,両眼内直筋のトーヌスが一時的に増強し輻湊が賦活されたため良好な眼位保持が,可能であったと考えられた。
著者
粂野 文洋 小濱 裕太 新井 紀子
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.143-145, 2014-08-25

近年の Web サイト構築においては,コスト削減等の効果を狙い,Web に関する様々な機能があらかじめ提供されている Content Management System が利用されるケースが増えている.しかし,非常に多くの CMS が公開されており,その内容も多様であることから,ユーザの要求に合致した効果的な CMS を合理的に選択することは難しい状況となっている.本実践論文では合理的な CMS 選択を支援するためのユーザ・開発企業に共通なソフトウェア特性指標を提案する.本指標は複数の Web サイト構築事例における要求分析を行い,代表的な CMS が持つ品質特性を ISO/IEC25010 の品質特性の項目を参考に整理し,策定したものである.
著者
藤田 彬 松崎 拓也 登藤 直弥 新井 紀子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.366, pp.17-21, 2014-12-16

機械翻訳器の日常会話翻訳に対する性能を評価する試みについて紹介する.前もって日本語に機械翻訳された英語の対話文完成問題を被験者が解き,その得点を用いて翻訳器の外的な評価を行った.300名超の被験者を集めた大規模な調査により,評価対象とした翻訳器のうち一つが「人間が文脈を考慮せずに行った翻訳」と同等の性能を有することが明らかになった.本発表では,この調査の内容及び結果を詳述するに加え,一般的に用いられる内的な評価(自動・手動)との比較結果を紹介する.また,人間の対話理解において重大な障害をもたらす翻訳誤りとそうでない誤りを分類し,定量的に分析した結果を報告する.
著者
新井 紀子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.598-599, 2017-06-15
著者
武田 英明 南 佳孝 加藤 文彦 大向 一輝 新井 紀子 神保 宇嗣 伊藤 元己 小林 悟志 川本 祥子
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

本発表では筆者らが現在進めている生物種に関連するデータをLinked OpenData化する試みについて紹介する。生物種の情報は生物多様性問題や環境問題において重要であるが、様々な分野に関わるため、相互にうまくリンクする仕組みが必要である。このためにはLinked OpenDataの方法が有効と考えて現在基盤システムを構築している。この構築にあっての課題や現状について説明を行う。
著者
横山 大輔 瀧川 円 小野 しずか 新井 紀子 古吉 三紀 古吉 直彦
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.161-166, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

【目的】糖尿病眼筋麻痺は予後が比較的良好といわれているが微小な偏位や自覚症状の残存する症例をしばしば経験する。今回当院の糖尿病眼筋麻痺について臨床所見ならびに予後とその関連因子について検討した。【対象と方法】対象は2004~2013年に糖尿病眼筋麻痺と診断した14例である。発症年齢33~91歳。検査は交代プリズム遮閉試験、Bagolini線条鏡を用いた融像野試験、眼球運動検査、ヘモグロビンA1c(HbA1c)等を行った。深井らの後天性眼球運動障害の治癒基準に従った8)。経過観察期間は1か月~2年である。【結果】眼筋麻痺は全例が一側の単独神経麻痺を生じ、3例に他の神経に再発を認めた。内訳は動眼神経7眼、滑車神経4眼、外転神経6眼であった。治癒例は14例中10例(71%)であった。治癒までの期間は平均2.6か月であった。残存例は4例(29%)であった。残存例は、発症から5か月以上経過しており、動眼神経麻痺の上下筋障害が多かった。発症時のHbA1c7%以上は14例中11例(79%)に認めた。発症時のHbA1cが7%以上、血糖コントロール不良例、糖尿病罹病期間5年以上の症例に残存が多かった。また2例は眼筋麻痺発症が糖尿病発見の契機になった。【結論】糖尿病眼筋麻痺で残存例を29%に認めた。血糖コントロールは予後に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
川添 愛 宮尾 祐介 松崎 拓也 横野 光 新井 紀子
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

コンピュータによる世界史問題への解答、特に自然言語文の選択肢の真偽を判断する問題への解答を支援する世界史オントロジーを紹介する。このオントロジーでは、イベントの成立に関わる諸条件を記述することにより、、高校レベルの世界史の知識と常識的な判断能力を持つ人間ならば必ず「ありえない」と判断するようなイベントを記述した偽文を、コンピュータが「偽」と判定できるようにすることを目指す。
著者
新井 紀子 坂内 悟
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.533-544, 2011

科学技術振興機構が提供してきた研究開発支援総合ディレクトリ(ReaD)と,情報・システム研究機構が提供してきたResearchmapは2011年11月をもって正式統合を果たし,ReaD&Researchmapとして新たなサービスを開始した。本稿では,研究資源・研究情報が各時代のニーズおよび技術の下でどのように収集・利活用されてきたかを概観するとともに,研究資源が発生時点からデジタルであるようなボーンデジタル時代に学術研究情報のエコシステム(循環型情報活用基盤)を今後いかに確立すべきかについて述べる。