著者
松本 俊明 植竹 富一 色摩 康弘 中村 孝明
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.19, no.7, pp.7_14-7_26, 2019 (Released:2019-11-29)
参考文献数
26

再生可能エネルギーの固定費買取り制度により,配電設備に接続される太陽光発電などの小規模電源設備が増加している.このような分散型電源は,送配電線の事故や災害時の電力供給支障を改善する効果が期待されている.一方,地震災害時には需要家も損傷する可能性が高く,これに伴い常時に比べ需要電力は低下する.需要と供給の差を供給支障と考えれば,分散型電源の供給力や需要家損傷による需要電力低下が,供給支障電力にどのような影響を与えるか,これを把握することは,配電網の防災対策や災害対応を検討する上で必要な課題である.本論では分散型電源が配置された配電網において,需要家損傷を考慮した地震時の供給支障電力の評価方法を提案する.また,発災初動期の電圧変動による配電線の解列を考慮するとともに,配電線のFragility Curveを被災事例に基づき統計的に評価する.提案手法の適用性の検討として,JST-CREST126系統モデルを取上げ,需要家損傷や分散型電源による供給支障への影響を考察する.
著者
北村 立実 松崎 慎一郎 西 浩司 松本 俊一 久保 雄広 山野 博哉 幸福 智 菊地 心 吉村 奈緒子 福島 武彦
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.217-234, 2020-09-28 (Released:2020-11-30)
参考文献数
68

多くの人々が霞ヶ浦から多様な恩恵(生態系サービス)を受けていることから,今後も持続的に利用していくために,その内容や享受量の変遷を把握するとともに,生態系サービスの価値を経済的に可視化することで,政策の意思決定や行動に反映させるなどの適切な湖沼・流域管理に結びつける必要がある.そこで,本研究では霞ヶ浦の生態系サービスの項目を整理し,享受量の変遷を把握することで特徴を明らかにするとともに,代替法を用いて生態系サービスの経済評価を試みた.その結果,生態系サービスを供給サービス,調整サービス,文化的サービス,基盤サービスの 4 つに大別し,生態系サービスのフローの構成として,自然資本,人工資本,人的資本の 3 種の資本を介して得られていると定義した.また,生態系サービスの享受量の推移の特徴として,取水や洪水調節などの人間活動を豊かにする項目は増加したものの,魚種や植物などの生物多様性や人々が霞ヶ浦と触れ合うような項目が減少したことが明らかとなった.さらに,2016 年の霞ヶ浦の生態系サービスの経済的な価値として1,217.3 億円/ 年と見積もられ,供給サービスや調整サービスで高い傾向にあり,文化的サービスや基盤サービスは貨幣換算できない項目が多かった.一方,経済的な価値を算出する上でいくつか課題も明らかとなったことから,今後はこれらの課題解決に向けた研究も必要である.
著者
松本 俊吉
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.55, pp.90-112,23, 2004-04-01 (Released:2009-07-23)
参考文献数
14

The objective of this article is to clarify the nature of the methodological position called adaptationism in evolutionary biology (that is, a position holding natural selection to be ubiquitous and the most powerful as a mechanism of the evolution of life) and to discuss the problems that relate to it. To this end, I will first set forth the controversy having been waged on the legitimacy of adaptationism, originally initiated by Gould and Lewontin in 1978 and having been joined by mainstream neo-Darwinists ever since. Then I will put forward some framework for evaluating this controversy, namely, the idea of taking adaptationism to be a research program in Lakatos' sense. In the second section, I will review, somewhat critically, how adaptationistic thinking is exemplified in the sociobiological research program advocated by E. O. Wilson and his followers. In the third section, I will give some considerations on the possibility of the model of cultural evolution (memetics) as a complement to the one-sidedness of the genetically-biased sociobiological explanation of human culture.
著者
久田 嘉章 久保 智弘 松澤 佳 松本 俊明 田邉 朗仁 森川 淳
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_104-4_126, 2012 (Released:2012-09-28)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

2011年東北地方太平洋沖地震の広義の余震と考えられている2011年福島県浜通り地震(Mj7.0)では、大規模な地表地震断層が出現し、多大な建物被害が発生した。この地震は正断層の活断層帯の地震であるが、周辺で観測された強震動や距離減衰式による検討から、逆断層の地震と比べて特に地震動が弱くはなかったことを確認した。さらに、地表地震断層と震源近傍の強震による建物への影響を調べるため、地表断層のごく近傍において建物の悉皆調査を行い、191棟の建物被害の特徴を整理した。その結果、建物の大きな被害は地表断層の直上による地盤変状(断層すべりや地盤傾斜)に起因し、強震動による甚大な被害は殆ど無く、断層の近傍で推定される震度も6弱から5強程度であることが分かった。また地表地震断層の直上の建物では、最大で80 cmにも達する断層すべり変位の影響により、大きな変形や傾斜による被害が生じたが、耐震性に劣る1棟の寺院の山門を除き、倒壊した建物は無かった。
著者
宇佐美 貴士 松本 俊彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1139-1148, 2020-08-15

抄録 わが国における10代の薬物乱用の実態を調査するために,全国の有床精神科医療施設を対象に実施した病院調査から得られた10代の薬物関連精神障害症例71例を比較検討した。危険ドラッグは2014年調査の48%から2018年調査で0%へと低下し,市販薬は2014年調査の0%から2018年調査で41.2%へと増加し,乱用薬物が危険ドラッグから市販薬へと推移していた。2014年の危険ドラッグ乱用群と2018年の市販薬乱用群を比較すると,学歴やICD-10 F1分類の下位診断カテゴリー,併存障害が異なり,臨床現場において,新たな薬物乱用層が出現していることが示唆された。得られた知見から今後のわが国の薬物乱用防止教育と精神科医療に求められることについて考察を行った。
著者
松本 俊彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.133, no.6, pp.599-615, 2013-06-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
26
被引用文献数
3 6

In Japan, a national countermeasure has been forwarded since the enactment of the Basic Act on Suicide Countermeasures in 2006 and the Comprehensive Suicide Prevention Initiative in 2007. The distinctive policy of the Japanese countermeasure is expressed as the word, “comprehensive,” which means that suicide prevention may not only be carried out only by mental health measures but also by comprehensive measures including chance of administrative practices. This policy is proper, although mental health measures appear to be too simple inclining to psychiatric treatments for the classic type of “depression” by a pharmacotherapy. The authors have insisted that mental health measures including psychiatric treatments are also required to be more comprehensive. This paper describes that benzodiazepine (BZ)-abuse problems including overdosing by suicidal intents have got worse recently as psychiatric clinics have increased and most of BZ abusers obtain the abused drugs form psychiatrists. This current situation indicates that pharmacists need to monitor psychiatrists' prescribing behavior and qualities of psychiatric treatment is required to be refined, suggesting pharmacists may be one of the “Gate Keeper,” as supporting resources for suicide prevention. Additionally, this paper explained that basic attitudes and responses acquired by pharmacists as a supporter for suicide prevention.
著者
松本 俊彦
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.158-168, 2019-04-01 (Released:2020-02-28)
参考文献数
28

非自殺性自傷とは,感情的苦痛の緩和や他者に対する意思伝達や操作などの,自殺以外の意図からなされる,故意の身体表層に対する直接的損傷行為を指す。この行動は,DSM-Ⅳ-TRの時代までは,境界性パーソナリティ障害の一症候としてのみ認識されてきたが,DSM-5では,この行動は境界性パーソナリティ障害とは独立した診断カテゴリーとなった。このことは,従来の,自傷を限界設定の対象と見なす考え方から,自傷それ自体を治療の対象とする考え方と,治療理念の変化が生じたことを意味する。本稿では,まず非自殺性自傷に関する臨床概念の歴史的変遷を振り返り,今日における非自殺性自傷の捉え方へと至る過程を確認したうえで,物質使用障害などの嗜癖,ならびに自殺との異同を論じ,最後に,DSM-5における非自殺性自傷の診断カテゴリーの意義と課題について筆者の私見を述べた。
著者
松本 俊太 松尾 晃孝
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.84-103, 2011 (Released:2017-06-12)
参考文献数
37

本稿はこれまで研究が手薄であった,国会議員個人の委員会での発言を分析する。 委員会の研究は,議事手続の一部としての観点や,与野党の対決の場としての観点からのものが中心であったが,本稿は,議員個人にとっての委員会という観点を追加し,委員会で発言することは議員の再選・党内での出世・専門性の発揮にとって有用であることを論じる。このことを実証するために,まず,Perlスクリプトにより衆議院の各常任委員会の会議録を解析し,議員の発言量を委員会ごとに測定し,議員発言のデータ・セットを作成した。次に,その発言量の決定要因についてTobit modelによる計量分析を行う。分析の結果,議員個人,政党政治,議員の専門性の活用という3つの側面が発言の量を決定する要因として重要であることを示す。併せて,1994年の小選挙区比例代表並立制の導入に伴っ て,議員の発言量のパターンが変化していることも示す。
著者
久保 田清 栗栖 真悟 鈴木 寛一 松本 俊也 保坂 秀明
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.195-201, 1982-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 5

油脂を含む食品を調合製造するさい原材料になると考えられる8種の植物油(大豆油,菜種油,トウモロコシ油,落花生油,ゴマ油,ヤシ油,綿実油,オリーブ油)と,これらより調合製造されている市販のサラダ油と天ぷら油について,流動特性と密度の測定を,温度10~60℃において行った。流動特性の測定には,管型粘度計を使用した。いずれもニュートン挙動を示した。本実験結果に対しては,粘度および密度の温度関係式は次のように表わすのがよいという結果になった。K=a exp(b/T3)ρ=a+b Tここで,Kは粘度(g/cm・sec),ρは密度(g/cm3),T温度(0K)である。