著者
李 悦子 瀧本 朋美 尾崎 修治 松本 真弓 竹内 恭子 松本 俊夫
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.448-455, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
23
被引用文献数
2 3

Flow Cytometry(FCM)を用いたA,B抗原検査は,個々の血球の抗原密度の定量的な測定が可能であり,亜型検査における有用性が示されている.我々は徳島県に多く存在するcisA2B3型15例におけるA,B抗原の密度分布をFCM法で測定するとともに,カラム凝集法や試験管法などの測定結果と比較した.cisA2B3型血球はA1B型対照血球と比較し,A抗原はカラム凝集法4+で対照4+と差を認めず,試験管法は256~512倍と対照1,024倍より低値であった.FCM法ではmean fluorescence intensity(MFI)は25.8~73.1(陽性率92.7%~99.4%)と比較的均一な抗原分布を示し,対照87.6(陽性率99.6%)と比べて抗原減弱を認め,赤血球当たりの抗原数は7万~85万と推定された.B抗原はカラム凝集法2+~3+で対照4+より弱く,試験管法は4~128倍で対照512倍より低値であった.FCM法のMFIは0.7~4.3(陽性率11.5%~77.3%)と対照59.9(陽性率99.7%)と比較し抗原量が著しく低い領域に血球が幅広く分布しており,赤血球当たりの抗原数は<1~38万と推定され,個体差も大きいことが明らかになった.FCM法は抗原量の定量とその分布についても詳細な判定が可能であり,ABO亜型の診断においてきわめて有用と考えられた.
著者
大西 裕 品田 裕 曽我 謙悟 藤村 直史 高橋 百合子 稲継 裕昭 遠藤 貢 川中 豪 浅羽 祐樹 河村 和徳 仙石 学 福島 淑彦 玉井 亮子 建林 正彦 松本 俊太 湯淺 墾道
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、選挙ガバナンスが民主政治に与える影響を、比較政治学的に解明しようとするものである。本研究は、国際比較と日本国内の自治体間比較を通じて、選挙管理という研究上の大きな空白を埋める。調査結果、常識的見解と異なる二つのことが明らかになった。第1に、選挙の公平性、公正性は、国際的に推奨される選挙管理機関の独立性のみでは達成できず、より複雑な扱いが必要である。第2に、日本では選挙管理委員会の業務は画一的で公平、校正であると考えられてきたが、委員会や事務局の構成のあり方によって大きく左右される。それゆえ、市区町村によってバリエーションが発生している。
著者
片岡 正次郎 佐藤 智美 松本 俊輔 日下部 毅明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.740-757, 2006 (Released:2006-10-20)
参考文献数
62
被引用文献数
2 19

大規模地震を含むマグニチュード5以上の地震の強震記録約11,000波を用いて,地震動の最大加速度,最大速度,SI値,計測震度及び加速度応答スペクトルの距離減衰式を作成した.この距離減衰式は,モーメントマグニチュードと震源距離のほか,スペクトルインバージョンにより推定された加速度震源スペクトルの短周期レベルをパラメータとした回帰式である.短周期レベルをパラメータとした場合には,そうでない場合と比較して,顕著にばらつきの小さい距離減衰式が得られた.また,短周期レベルと地震モーメントとの関係を整理し,その地域性を考察するとともに,地震のタイプごとの関係式を提案した.
著者
幸福 智 久保 雄広 北村 立実 松崎 慎一郎 松本 俊一 山野 博哉 西 浩司 菊地 心 吉村 奈緒子 福島 武彦
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.235-243, 2020-09-28 (Released:2020-11-30)
参考文献数
27

本研究では,全国の一般市民及び霞ヶ浦流域の住民を対象にウェブアンケート調査を実施し,霞ヶ浦が有する生態系サービスについて,選択型実験(コンジョイント分析)を用いて経済価値評価を実施した.選択型実験では,漁獲量(供給サービス)・湖岸植生帯(調整サービス)・希少種(基盤サービス)及び水質(文化的サービス)の 4 つの属性からなる選択セットを提示し,望ましい案を選択してもらうようにした.調査の結果から,生態系サービスが劣化した状態,現状及び 2040 年の将来の値(良好な状態)の水準の値を設定し,値の変化に対する支払意思額(WTP)を求め,これに人口を乗じて生態系サービスの経済価値を求めた.霞ヶ浦の生態系サービスに対する経済価値は,現状は全国では 1 兆 302 億円,県では 253 億円,流域では 70 億円, 2040 年の将来(望ましい状態への改善)の場合は,全国では,1 兆 4,264 億円,県では 324 億円,流域では 89 億円という結果となった.
著者
西 浩司 久保 雄広 北村 立実 松崎 慎一郎 松本 俊一 山野 博哉 幸福 智 菊地 心 吉村 奈緒子 福島 武彦
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.245-256, 2020-09-28 (Released:2020-11-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では,ベスト・ワースト・スケーリング手法(BWS)を用いて,霞ヶ浦が有する代表的な生態系サービス(農産物,水産物,飲料水等の供給サービス,気候の調整サービス,観光,景観等の文化的サービス,多様な動植物の育成等の基盤サービス)の重要度を明らかにすることを目的として,全国及び霞ヶ浦流域を対象にしたウェブアンケートを実施した.BWS では,霞ヶ浦の生態系サービス(恵み)の組み合わせを変えて選択肢として提示し,最も重要と思うもの(Best)と最も重要でないと思うもの(Worst)を選んでもらうことを複数回繰り返すという方法で実施し,Best と Worst の選択回数の比率を生態系サービスごとの重要度の評価の指標とした.霞ヶ浦については調整サービスの「水質の浄化」,供給サービスの「水の供給」,基盤サービスの「生物の生息場所」など,湖沼の水環境保全により維持される生態系サービスが重要と評価された.この結果を食料の供給(農産物,水産物)とのトレードオフの可能性も踏まえて,今後の施策の検討へ反映することが必要と考えられた. また,今後の観光振興策の検討に資する情報を得るために,同じ手法を用いて霞ヶ浦周辺の観光地を訪れている人に現地アンケートを行い,生態系サービスの重要度を評価した.「農産物」,「水産物」に加え「生きもの」が重要と評価されたされたことから,生きものの保全をブランド化した産物の創出等が振興策として有効ではないかと考えられた.
著者
松本 俊彦
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.432-437, 2020-04-01

はじめにあなたは今,ひそかに薬物問題に悩んでいて,漠然と「このままではマズい」と感じている。しかし他方で,うまくコントロールできている点を無理に探し出して安心しようとしたり,問題を職場環境のせいにして,「次年度異動すれば状況はよくなる」と自分に信じ込ませようともしている。日々,気持ちはこの両極をあたかもヤジロベエのように揺れ動きつつ,「これが最後の1回」と自分にいいきかせるのを,もう何回,何十回も繰り返してきたことだろう。いや,ちがう。もしかするとあなたは自己嫌悪のあまり自暴自棄になり,すでに「いざとなったら死んでしまえばよいのだ」と背水の陣を敷いているのかもしれない。 私は今,この文章を,現在進行形で薬物問題に悩む麻酔科医に向けて書いている。
著者
藤堂 清 松本 俊二 佐藤 智昭
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.213-219, 1990-03-01
被引用文献数
3

We are developing an intelligent development environment for knowledge systems based on ES/SDEM (Software Development Engineering Methodology for Expert Systems). The environment provides not only development tools such as editors or debugger, but also knowledge base called Knowledge Ware (KW) which can be used on different applications. KW is written using an object-oriented language on Common Lisp, and will provide the following advantages. ・User can build up expert systems rapidly using differential programming technique. ・Adding the parts made for an expert system to KW, it is easy to use the same parts for developing another expert systems. In this paper, the approach for building KW and the function of KW will be shown.
著者
山口 豊 中村 結美花 窪田 辰政 橋本 佐由理 松本 俊彦 宗像 恒次
出版者
東京情報大学
雑誌
東京情報大学研究論集 (ISSN:13432001)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.13-20, 2014-03-01

近年、教育界において自傷行為が数多く報告されている。自傷行為については、わからないことが多く、予防支援のためには、心理的要因を検討することが望まれる。そこで、本研究では、自傷行為と心理特性との関連を予備的に検討する。関東地方A高校2年生1クラスの39名に対し、2010年11月に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は(1)属性(性別)(2)学校について(学校満足度)・家庭について(居心地・愛着)(3)故意に健康を害する行為(経験・念慮)の有無(4)自傷行為(経験・念慮)の有無( 5)心理的要因に関する尺度(5項目)であった。結果は、次のとおりである。(1)喫煙(経験1人・念慮3人)、飲酒(経験18人・念慮3人)、ダイエット(経験4人・念慮6人)、過食嘔吐(経験8人・念慮3人)、過量服薬(経験0人・念慮2人)であった。(2)自傷行為有(経験4人・念慮3人)、無32人であった。(3)特性不安、抑うつ、自己否定感の各尺度値が基準値を超え、特性不安尺度、抑うつ尺度、自己否定感尺度間に強い正の相関がみられた。(4)自傷行為(経験・念慮)と心理特性尺度との相関については「抑うつ」「自己否定感」において有意、「特性不安」において有意傾向であった。(5)自傷行為(経験・念慮)有無2群における心理特性については、有群が無群に比して「抑うつ」「自己否定感」において有意に、「特性不安」において有意傾向で課題が見られた。これらのことから、次のことが考えられる。心理的課題を抱える生徒は複数の心理的問題を同時に抱え、学校生活の大変さがうかがわれた。健康を害する行為や自傷行為の一定数は、そのことに関連している可能性が推察される。特に、自傷行為(経験・念慮)については、統計学的に心理的課題との関連が推測され、対象者の一部が、自傷行為という行為を通して、心理的課題に独自に対応しているのではないかと考えられる。自傷行為予防支援に向けての本格的調査が必要である。
著者
松本 俊吉
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.47, pp.286-295, 1996-05-01 (Released:2009-07-23)

かつてカントやフッサールが夢見たような超越論哲学の理想-すなわち、いかなる先入見をも排去した純粋な反省的思惟によって我々の認識の<普遍的構造>を取り出し、それを基礎に万人の認識行為が準拠すべき規範を提示し、さらにそれに則って我々が現実に所有している信念や知識を正当化しようという企図-は、遂行不可能な非現実的な理想であったというのが、知識を論ずる近年の哲学的言説の共通了解となりつつあるようである。そうした趨勢に棹さすものとしては、歴史主義、文化相対主義、知識社会学、プラグマティズム、進化論的認識論、自然主義など様々な思潮が見出され、上述のような理想を抱く哲学的立場-本稿で我々はこれを<哲学的認識論>と呼ぶことにする-は、あたかも四面楚歌の如き状況に置かれている。ところでこれらの諸思潮は概して、哲学的認識論の立場を<廃棄>し、哲学的認識論固有の問題構制などは初めから存在しなかった、ないしは問題とするに値しないものであった、という類の論法をとりがちであるのに対し、私見によれば、自然主義の主張はその最も原理的なレベルで、哲学的認識論の立場と相対峙するように思われる。本稿は、こうした見地からこの両者の対立点を明確化し、それについて検討を加えつつ、哲学的認識論の基本的発想の、現代においてもなお否定し去ることのできない有効性を示そうとするものである。