著者
松崎 文昭 吉野 修之 梁木 利男 松本 俊 中島 英夫 西山 聖二
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.291-298, 2000-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10

化粧品において皮膜剤として用いられてきたエチルセルロースについて, その両親媒性構造に着目し, 乳化剤としての可能性を検討した。種々の油分を用いて乳化を試みた結果, エチルセルロースが極性油をW/O乳化可能であることが見出された。蛍光ラベル化したエチルセルロースを用いた評価系の結果から, エチルセルロースは界面に吸着層を形成すると同時に連続相に構造体を形成することで, W/O型エマルションを安定化することが示唆された。このエチルセルロースを用いたW/O型エマルションは, イソステアリン酸とカルボキシメチルセルロースNaの添加によりさらに安定化し, 化粧品として要求されるレベルまで安定化できることがわかった。本基剤の特長は, 従来乳化が困難であった極性油を安定にW/O乳化できる点にあるため, サンスクリーン剤への応用を次に試みた。この結果, エチルセルロースは乳化剤として作用し, エマルションが調製されると同時に, 塗布後は皮膜剤として作用し, 高い耐水性を与えることが示された。
著者
青木 裕志 浅見 志帆 飯野 瑞貴 小倉 加奈子 坂口 亜寿美 松本 俊治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1266-1270, 2016-12-01

はじめに ホルマリンは,1890年Blumにより固定液への応用が試みられてから今日に至るまで,病理標本作製においては欠くことのできない固定液となり,病理組織学の発展に多大な貢献をもたらしてきた.その理由として,取り扱いが容易なうえ,細胞形態を良好に保持し,さまざまな検索目的に対する汎用性に優れる点が挙げられる. 当初,ホルマリンは単に水で希釈しただけの固定液として使用されていたが,免疫組織化学など新しい検査技術が導入されるに従い,より精度の高い染色結果が要求されることとなり,固定液の組成にさまざまな研究が加えられてきた.Lillieによって報告された中性緩衝ホルマリンは,現在使用されている固定液の主流となっている. ホルマリンは優れた固定液である反面,人体に対しては強い毒性を示す化学物質でもある.法規上“医薬用外劇物”や“特定化学物質第二類”に指定され,その取り扱いや作業環境の管理には,法的な厳しい規制が課せられている1,2).このように,医療従事者へのホルマリン曝露が問題視され,作業環境の改善が求められるなかで,調整済ホルマリン固定液(市販品)が普及してきた背景がある. 調整済ホルマリン固定液(市販品)は,メーカーにより若干異なるが,約3年の使用期限が設けられている(図1).これは,ホルマリンが永久的に不変のものではないことを意味している.つまり,保管の過程で徐々に性状が変化し,劣化が進み,十分な固定効果が期待できない時期がいずれやってくるということである.使用期限切れのホルマリンを使用することは,程度の差はあれ,組織標本の質を落とし,病理診断の精度に影響を及ぼす可能性をもっている. 本稿では,期限を過ぎたホルマリンの使用により起こり得るリスクや,必要以上の劣化を進めないために保管に際してどのような注意を払えばよいのかを,ホルマリンの性質を踏まえながら解説したい.
著者
松本 俊吉
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-13, 2007-07-30 (Released:2009-05-29)

In order to contextualize the subjects the contributors discussed in the workshop by giving them some backgrounds, first (§1) I will relate how the relationship between biology and physics has been dealt with in the philosophy of biology so far, intending to make a connection with Mr. Morimoto's argument. Then (§2) I will provide some historical background on how such concepts considerably, if not exclusively, distinctive of biology as 'function', 'purpose', or 'design' have been the targets for philosophical considerations so far, building a connection to Mr. Otsuka's argument. Finally (§3) I will present my little analysis of the problem of the scientific status of some 'historical sciences' Mr. Minaka is concerned with from a somewhat different angle from his.
著者
松本 俊彦
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.158-168, 2019

<p>非自殺性自傷とは,感情的苦痛の緩和や他者に対する意思伝達や操作などの,自殺以外の意図からなされる,故意の身体表層に対する直接的損傷行為を指す。この行動は,DSM-Ⅳ-TRの時代までは,境界性パーソナリティ障害の一症候としてのみ認識されてきたが,DSM-5では,この行動は境界性パーソナリティ障害とは独立した診断カテゴリーとなった。このことは,従来の,自傷を限界設定の対象と見なす考え方から,自傷それ自体を治療の対象とする考え方と,治療理念の変化が生じたことを意味する。</p><p>本稿では,まず非自殺性自傷に関する臨床概念の歴史的変遷を振り返り,今日における非自殺性自傷の捉え方へと至る過程を確認したうえで,物質使用障害などの嗜癖,ならびに自殺との異同を論じ,最後に,DSM-5における非自殺性自傷の診断カテゴリーの意義と課題について筆者の私見を述べた。</p>
著者
加藤 美由紀 岡崎 亮 松本 俊夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.792-794, 1991-07-15

Q急性膵炎では,低カルシウム血症が特徴とされます.カルシウムが低下する機序についてご教示ください.
著者
赤澤 正人 松本 俊彦 勝又 陽太郎 木谷 雅彦 廣川 聖子 高橋 祥友 川上 憲人 渡邉 直樹 平山 正実 亀山 晶子 横山 由香里 竹島 正
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.550-560, 2010 (Released:2014-06-12)
参考文献数
37
被引用文献数
1

目的 わが国の自殺者数は,平成10年に 3 万人を超えて以降,11年に渡りその水準で推移しており,自殺予防は医療や精神保健福祉の分野に留まらず,大きな社会的課題となっている。本研究では心理学的剖検の手法で情報収集がなされた自殺既遂事例について,死亡時の就労状況から有職者と無職者に分類し,その心理社会的特徴や精神医学的特徴の比較•検討を通じて,自殺既遂者の臨床類型を明らかにし,自殺予防の観点から有職者ならびに無職者に対する介入のポイントを検討することを目的とした。方法 心理学的剖検の手法を用いた「自殺予防と遺族支援のための基礎調査」から得られたデータをもとに分析を行った。調査は,自殺者の家族に対して独自に作成された面接票に準拠し,事前にトレーニングを受講した精神科医師と保健師等の 2 人 1 組の調査員によって半構造化面接にて実施された。本研究で用いた面接票は,家族構成,死亡状況,生活歴,仕事上の問題,経済的問題等に関する質問から構成されていた。なお,各自殺事例の精神医学的診断については,調査員を務めた精神科医師が遺族からの聞き取りによって得られたすべての情報を用いて,DSM-IVに準拠した臨床診断を行った。本研究では,2009年7 月中旬時点で23箇所の都道府県•政令指定都市から収集された自殺事例46事例を対象とした。結果 有職者の自殺者は,40~50代の既婚男性を中心として,アルコールに関連する問題や返済困難な借金といった社会的問題を抱えていた事例が多かった。無職者では,有職者に比べて女性の比率が高く,20~30代の未婚者が多く認められ,有職者にみられたような社会的問題は確認されなかった。また,有職者では死亡時点に罹患していたと推測される精神障害としてアルコール使用障害が多く認められたのに対して,無職者では統合失調症及びその他の精神病性障害が多く認められた。結論 自殺予防の観点から,有職者に対しては,職場におけるメンタルヘルス支援の充実,アルコール使用障害と自殺に関する積極的な啓発と支援の充実,そして債務処理に関わる司法分野と精神保健福祉分野の連携の必要性が示唆された。一方で,無職者に対しては,若い世代の自殺予防に関する啓発と支援の充実,統合失調症と自殺に関する研究の蓄積の必要性が示唆された。
著者
松本 俊吉
出版者
The Philosophical Association of Japan
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
no.47, pp.286-295, 1996

かつてカントやフッサールが夢見たような超越論哲学の理想-すなわち、いかなる先入見をも排去した純粋な反省的思惟によって我々の認識の<普遍的構造>を取り出し、それを基礎に万人の認識行為が準拠すべき規範を提示し、さらにそれに則って我々が現実に所有している信念や知識を正当化しようという企図-は、遂行不可能な非現実的な理想であったというのが、知識を論ずる近年の哲学的言説の共通了解となりつつあるようである。そうした趨勢に棹さすものとしては、歴史主義、文化相対主義、知識社会学、プラグマティズム、進化論的認識論、自然主義など様々な思潮が見出され、上述のような理想を抱く哲学的立場-本稿で我々はこれを<哲学的認識論>と呼ぶことにする-は、あたかも四面楚歌の如き状況に置かれている。<BR>ところでこれらの諸思潮は概して、哲学的認識論の立場を<廃棄>し、哲学的認識論固有の問題構制などは初めから存在しなかった、ないしは問題とするに値しないものであった、という類の論法をとりがちであるのに対し、私見によれば、自然主義の主張はその最も原理的なレベルで、哲学的認識論の立場と相対峙するように思われる。本稿は、こうした見地からこの両者の対立点を明確化し、それについて検討を加えつつ、哲学的認識論の基本的発想の、現代においてもなお否定し去ることのできない有効性を示そうとするものである。