著者
池貝 隆宏 三島 聡子 小林 幸文
出版者
日本環境学会
雑誌
人間と環境 (ISSN:0286438X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.2-14, 2019-10-02 (Released:2020-04-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

神奈川県沿岸のマイクロプラスチック汚染状況を把握するため,相模湾4地点及び東京湾1地点の海岸で漂着マイクロプラスチックの調査を行い,漂着状況の空間変動と時間変動を調べた。空間変動については,満潮線の漂着状況の特徴が海岸間で大きく異なることが分かった。この差は,外洋由来ではなく,内陸の発生源由来のマイクロプラスチックの影響を強く受けたことにより生じたと推定された。満潮線に漂着したマイクロプラスチックの一部は海風により内陸側へ輸送されるが,その傾向はペレットで顕著に表れた。また,満潮線に漂着するマイクロプラスチックのサイズ分布は,沿岸を漂流するマイクロプラスチックに比べて大きいものの割合が高くなることが分かった。時間変動については,気象の影響として沖から陸に向かう風向の強風が長時間続いたときに漂着量が増加し,台風時の漂着量は平時の3倍に達することが分かった。季節変動では,相模湾沿岸では季節風の影響を受け,沖から陸に向かう風が卓越する春期に沖合の漂流マイクロプラスチックが陸域近くに輸送されてその密度が高くなるため,漂着量が増加すると推定された。一方,マイクロプラスチックの材質構成は,期間を通じて大きな変化は見られなかった。2つの海岸で漂着が確認された小粒径の発泡ポリスチレン球の由来を推定したところ,クッション材として利用される微小発泡ビーズの可能性が高いと推定された。こうした製品の適正な処理が重要であることが示唆された。
著者
堀上 大貴 小林 幸司 村田 幸久
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.155, no.6, pp.395-400, 2020 (Released:2020-11-01)
参考文献数
46

血管は正常時,高分子を透過させずに酸素や栄養素などの低分子のみを透過させる.しかし,組織で炎症が惹起されると血管の透過性は亢進し,血漿中の高分子や水分が血管外に漏出する.これが免疫細胞の浸潤や炎症性メディエーターの産生の引き金となって炎症をさらに進行させる.血管透過性の亢進は,炎症を背景にもつ疾患の進行に深く関わるが,その制御機構については未だ不明な点が多い.血管透過性の制御に関与する細胞として,血管を構成する内皮細胞と血管壁細胞の2つが挙げられる.内皮細胞は血管の内腔側を覆い,内皮バリアを形成する.一方血管壁細胞は収縮・弛緩することで下流組織の血流量や血圧を調節する.内皮バリアの強化と血管の収縮は透過性を抑制する要因であり,内皮バリアの崩壊と血管の弛緩は血管透過性を亢進する要因となる.プロスタノイドは炎症刺激に応じて産生される低分子生理活性脂質であり,痛みや発熱,細胞浸潤などを引き起こす他,血管透過性にも大きな影響を及ぼす.本稿では,炎症性生理活性脂質として広く知られるプロスタグランジン(PG)E2をはじめとして,PGI2,PGF2α,PGD2,トロンボキサン(TX)A2が血管透過性に与える影響について,内皮細胞や血管壁細胞に発現する各々のGタンパク質共役型受容体の発現量やその働きに注目して整理してみたい.
著者
田中 佳子 小林 幸子 関 保
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.137-144, 2011 (Released:2012-02-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【緒言】書字・読字障害をもつ発達障害児に対し、視覚的補助具の処方と学校への働きかけにより、QOLが向上した症例を報告する。【症例】13歳男児。眼鏡作製目的で来院したにも関わらず、母親の書字障害等の訴えから、本人も自覚しない羞明感が明らかとなった。本児は学校生活においてトラブルを抱えていたため、小児科を受診したところ広汎性発達障害と診断された。書字・読字に対しては、遮光眼鏡の使用により改善が見られ、遮光用の虹彩付きコンタクトレンズの有効性もコントラスト感度測定により認められた。【考察】発達障害は脳の機能障害であり、知的に問題がなく視覚障害がないにも関わらず、読字、書字、計算障害といった学習障害を来たすことがある。また、知覚の過敏性も特徴の一つであり、本児は視覚過敏が羞明というかたちで現れたものと思われる。光の過敏性に関してはScotopic sensitivity syndromeとの関連が示唆された。この場合、遮光眼鏡や虹彩付きコンタクトレンズがフィルターの役割を果たし、光に対する過敏性を和らげ感覚の調整を図れたことが、書字等の改善に繋がったものと考えた。発達障害は公立の小中学校の児童の6.3%に疑いがあるという報告もあり教育上問題になっている。眼科的所見がなく、本人に見えにくさの自覚がないことが多いため見過ごされる可能性があり、注意を払う必要がある。そして、その対応には小児科・精神科・学校との連携が重要である。
著者
林 幸 渡邊 玄 永田 和宏 島田 幸一
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
まてりあ (ISSN:13402625)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.364-367, 2008-07-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1
著者
三橋 洋子 小林 幸子 ミツハシ ヨウコ コバヤシ サチコ Youko Mitsuhashi Sachiko Kobayashi
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
no.40, pp.139-149, 2000-03

永平寺の修行僧の食事には曹洞宗の開祖・道元禅師によって書かれた「典座教訓」の精神が根底にある。そこには「僧の役割の一つである炊事,調理を分担する典座は仏に仕える修行の心に通じる」と書かれており,そこに説かれている「赴粥飯法」の精神から現在失われがちな食に対する感謝や自然の恵みに対する謙虚な態度を学ぶことができる。永平寺で実際供されている食事はどのようなものか,またそれらはなぜ食する人々の心を捉えるのであろうか。今回その調査のため永平寺に赴き参籠した。永平寺典座・山脇氏の好意により修行僧に供される食事の献立を入手することができた。それによると,小食(朝食)は粥,胡麻塩,沢庵といった質素なもの,中食(昼食)・薬石(夕食)は主食,汁物,平,小皿で様々な食材,調理法を用いたバラエティーに富んだ内容であった。使用される食材は穀類,野菜類,果実類,豆類,きのこ類,海草類などで,当然のことであるが肉,魚,卵,乳製品は使用されておらず修行僧の一日の摂取熱量は1,000∿1,200kcal程度である。その中で健康を維持し毎日の厳しい修行を持続させることができるのは精神修行によるものが大きい。しかしそれだけでなく若い修行僧にも受け入れられるような食材料,調理法の工夫がなされていることも献立を見て知ることができる。食材に対する愛と感謝の気持ち,食べてもらえる喜びすなわち喜心,老心,大心の「三心」にこそ永平寺の精進料理が尊ばれる理由があることが修行僧の生活の中から伺うことができる。
著者
小林 幸雄
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

縄文時代の繊維質胎漆製品である"赤い糸"は、糸の製作技術、漆などの膠着材や彩色用赤色顔料などの素材、さらには工程全体に関わる技術などが体系的に具現化されている。それらの技術内容には、縄文時代の人々の生活や文化を復元する上で有効な情報が含まれている。本研究では、縄文時代の"赤い糸"を自然科学的手法によって具体的に検討し、製作技術に関わる材質や技法などの知見を得ることができた。
著者
蟻川 奈緒子 チェンバーズ ジェームズ 林 幸太郎 内田 和幸 苅谷 卓郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.77-82, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

メルケル細胞癌を含む多発性皮膚腫瘍が発生した15歳齢の猫の臨床転帰および病理所見について報告する。腰背部に皮膚腫瘤を認め,病理組織検査からリンパ節転移を伴うメルケル細胞癌と診断した。背部にも多発性皮膚病変を認め,病理組織学的にボーエン様表皮内癌,基底細胞癌,および皮膚肥満細胞腫と診断した。第154病日に斃死し,病理解剖にて骨盤腔内にメルケル細胞癌の浸潤病変を確認した。本論文では,他の複数の皮膚腫瘍との併発がみられた猫のメルケル細胞癌の病理解剖および組織検査所見の詳細を述べる。
著者
小林 幸夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.338-340, 1999-12-25 (Released:2017-02-10)
参考文献数
7
被引用文献数
5

量の概念と測定の意味を習得することは自然界の法則を見いだすために重要な課題である。しかし中学,高校,大学のどの段階でも,測定の意味に即した量=数値×単位という根本の関係を深く学習する機会が乏しい。教科書,学術誌では量と単位の関係があいまいであり,特に内包量を含む数値計算に誤解が生じている。高校物理,大学教養物理の段階で量の概念を学習項目に取り込み,測定の意味を強調した上で教科書の量の表記を見直すことを提案する。
著者
林 幸史 藤原 武弘
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.17-31, 2008
被引用文献数
2

本研究の目的は,日本人海外旅行者の観光動機の構造を明らかにし,訪問地域・旅行形態・年令層による観光動機の違いを比較することである。出国前の日本人旅行者1014名(男性371名,女性643名)を対象に観光動機を調査した。主な結果は以下の通りである。(1)観光動機は「刺激性」「文化見聞」「現地交流」「健康回復」「自然体感」「意外性」「自己拡大」の7因子構造であった。(2)観光動機は,年令を重ねるにつれて新奇性への欲求から本物性への欲求へと変化することが明らかになった。(3)アジアやアフリカ地域への旅行者は,今までにない新しい経験や,訪問国の文化に対する理解を求めて旅行をする。一方,欧米地域への旅行者は,自然に触れる機会を求めて旅行をすることが明らかになった。(4)個人手配旅行者は,見知らぬ土地という不確実性の高い状況を経験することや,現地の人々との交流を求めて旅行をする。一方,主催旅行者は,安全性や快適性を保持したままの旅行で,外国の文化や自然に触れることを求めて旅行をすることが明らかになった。これらの結果を踏まえ,観光行動の心理的機能について考察した。<br>

1 0 0 0 OA 月面環境試験

著者
星野 健 松本 甲太郎 四宮 康雄 片山 保宏 藤原 勉 若林 幸子 岡田 達明 久保田 孝 大槻 真嗣 岩田 隆浩 Hoshino Takeshi Matsumoto Kotaro Shinomiya Yasuo Katayama Yasuhiro Fujiwara Tsutomu Wakabayashi Sachiko Okada Tatsuaki Kubota Takashi Otsuki Masatsugu Iwata Takahiro
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発資料 = JAXA Research and Development Memorandum (ISSN:13491121)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RM-06-008, 2007-03-30

月の1日は地球の1日=24時間を単位とすると29.5日である。従って、月の昼は14.75日、夜は14.75日となり、月の赤道付近のレゴリスの温度は、昼は120度Cまで上昇し、夜は-180度C以下まで降下すると言われている。月面に軟着陸した探査機やローバが長期間その機能を維持するには、昼間の高温に耐えなければならないのは当然である。加えて、約15日間続く夜間を乗り越え、次の昼には活動を再開しなければならない。さて、現在我々が利用出来る機器は上記の厳しい温度環境に対し、どの程度の耐性を持っているのだろうか。高温側のデータは揃っていると言えるが、-180度Cという低温側のデータはほとんど無いというのが実情である。そこで、温度制御の出来る宇宙環境模擬装置を用いて、高真空の月面まで含めた月面環境試験を実施する事にした。
著者
林 幸一
出版者
広島大学マネジメント学会
雑誌
広島大学マネジメント研究 (ISSN:13464086)
巻号頁・発行日
no.21, pp.10-11, 2020-03-26
著者
林 幸史
出版者
一般社団法人 交通科学研究会
雑誌
交通科学 (ISSN:02881985)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.18-23, 2020

本稿では,魅力ある観光地域づくりのための調査手法として,観光写真調査法が有益であることを述べた.観光写真調査法(TPM)は,従来の魅力調査では,捉えることが困難であった感性や直観を魅力評価に反映させた手法であり,個人が観光地に対して抱く集合的・個別的イメージ(魅力)および,個々の観光資源に付与された価値を把握することができる.TPMの実施手続きを解説するとともに,奈良をフィールドとしたTPMの実践例を紹介した.最後に,着地型のコミュニティ・ツーリズムでの観光振興におけるTPMの応用可能性について議論した.
著者
伊藤 友文 柴田 康二 森田 英憲 杉村 寛 加藤 春哉 小林 幸司 佐々木 岳嗣
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.137-141, 2021 (Released:2021-01-26)
参考文献数
4

従来のHVエンジン始動時ショック制御は,2つのモータジェネレータ(MG)で独立に駆動系の制振を行い,それぞれの定数を実車で適合してきた.今回,実車レスのモデルベース開発実現の為,2つのMGを協調させ制御系全体を制御するモデルを構築し,制振効果の増大が可能な新制御であるMG協調制振制御を開発した.