著者
三橋 洋子 小林 幸子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.139-149, 2000-03

永平寺の修行僧の食事には曹洞宗の開祖・道元禅師によって書かれた「典座教訓」の精神が根底にある。そこには「僧の役割の一つである炊事,調理を分担する典座は仏に仕える修行の心に通じる」と書かれており,そこに説かれている「赴粥飯法」の精神から現在失われがちな食に対する感謝や自然の恵みに対する謙虚な態度を学ぶことができる。永平寺で実際供されている食事はどのようなものか,またそれらはなぜ食する人々の心を捉えるのであろうか。今回その調査のため永平寺に赴き参籠した。永平寺典座・山脇氏の好意により修行僧に供される食事の献立を入手することができた。それによると,小食(朝食)は粥,胡麻塩,沢庵といった質素なもの,中食(昼食)・薬石(夕食)は主食,汁物,平,小皿で様々な食材,調理法を用いたバラエティーに富んだ内容であった。使用される食材は穀類,野菜類,果実類,豆類,きのこ類,海草類などで,当然のことであるが肉,魚,卵,乳製品は使用されておらず修行僧の一日の摂取熱量は1,000∿1,200kcal程度である。その中で健康を維持し毎日の厳しい修行を持続させることができるのは精神修行によるものが大きい。しかしそれだけでなく若い修行僧にも受け入れられるような食材料,調理法の工夫がなされていることも献立を見て知ることができる。食材に対する愛と感謝の気持ち,食べてもらえる喜びすなわち喜心,老心,大心の「三心」にこそ永平寺の精進料理が尊ばれる理由があることが修行僧の生活の中から伺うことができる。
著者
林 幸史 小杉 考司
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
pp.1627, (Released:2018-06-15)
参考文献数
29

This study attempted to investigate the differences in tourists’ perceptions of destination images based on their past travel experiences. Tourism research suggests that past travel experiences affect present tourist behavior in terms of travel career and number of visits. In this study, we consider the tourist as a person seeking mastery through travel experiences and use measures of guest experience from 47 prefectures in Japan. Five hundred respondents living in Osaka were asked to complete a questionnaire via the Internet. Respondents had to identify 10 destination images and write about their travel experiences in as many of the 47 prefectures as they had visited. The main results were as follows: (1) respondents were classified into four clusters according to their travel experiences, (2) tourists who had traveled to more prefectures had an image of the destination based on geographical location and destination characteristics, and (3) tourists who had previously visited a particular destination and had been to more prefectures had a clear image of the destination. Based on these results, the process through which tourists develop expertise was discussed.
著者
北山 泰広 江丸 貴紀 星野 洋平 小林 幸徳
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第53回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.323, 2010 (Released:2011-02-03)

現在,日本では高齢化社会の進行に伴い,ロボット技術を利用した歩行訓練機による介護・介助の必要性が高まっている.本研究ではオムニホイールを利用した全方位移動ロボットを想定し,重心のずれを考慮した軌道制御シミュレーションを行うことによって安心・安全なロボットを実現することを目的とする.本講演では制御対象が冗長な系であることに着目し,設計者が指定する拘束条件のもとで最適な制御を行うことを目指す.
著者
小林 幸治 吉野 眞理子 山田 孝
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.31-40, 2009-06-25
被引用文献数
1

病院の作業療法で行われている,脳血管障害者の心理社会面への具体的な支援の内容と支援における問題点を探索的に明らかにするため,病院勤務の作業療法士(OTR)を対象に自由記述式設問を含んだ質問紙調査を行った。434名を無作為抽出し,129の回答を得た。KJ法を用いたカテゴリー化から,支援の内容5項目,支援上の問題点5項目,他職種との連携で配慮する点4項目の大カテゴリーを見出した。支援の内容は[治療的な関わり方],[個人・環境因子への関わり],[心理面の専門的支援],[チームでの関わり],[作業活動・集団の活用]の大カテゴリーがあり,OTRは[治療的な関わり方]を最も重視していると思われた。支援上の問題点は[クライエント側の問題],[障害受容を促す],[OTR側の問題],[環境・制度上の問題],[OTR-クライエント関係における問題]があった。これより,OTRにはナラティブリーズニングを用いての,クライエントの主観的側面に着目したモデルや評価法を用いることや,クライエントとの協業や他職種との連携における実践技術が必要になると思われた。
著者
赤堀 肇 石川 智治 小林 幸夫 宮原 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.260, pp.1-8, 1999-08-27
被引用文献数
9

我々は高度感性情報を再現できるオーディオ・システムの開発を目的に、それに必要な未知の重要な物理要因を探求する研究を行なっている。これまでの我々の研究により、ディジタル・オーディオ・システムにおける音質劣化要因の一つとして「時間伸び縮み歪み」を発見した。ディジタル・オーディオ・システムにおける時間伸び縮み歪み発生の原因の一つとしてディジタル・オーディオ・インタフェースで生じるjitterが考えられる。そこで、本稿では、ディジタル・オーディオ・インタフェースのビット・ストリーム全体にjitterを強制的に付加し、高度感性情報の再現に注目した主観評価実験を行った。実験時間の関係で、88.6ps, 886psの2種の大きさのjitterを与えてみたが、付加したjitter振幅が88.6psと微少の場合であっても、高度感性情報の再現度が大きく損なわれることが明らかになった。
著者
小野 泰正 林 幸雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.126, pp.93-96, 2008-12-10

大規模な問題を分散処理で効率良く解くためには問題の分割粒度と相互依存関係によって分散処理システムを考えなくてはならない. ネットワークダイナミクスの問題の多くはパラメータ問題でありその相互依存度が低く粒度の細かい分割ができる. この特徴を使ったスケーラブルな分散環境を作り負荷の異なる問題を効率良くために動的負荷分散を行う. 結果, 簡潔な記述による分散処理環境の構築と効率の良いネットワークダイナミクスシミュレーションを提案し, そのシステムを使った結果, AS ネットワークでのサイバーテロに相当する攻撃に対しての危険を示唆する.Dependence and granularity is important for task divide of distributed processing of large and complex network analysis. It almost is the issue of parameter, so it can be split to low interdependence and the small granularity. We make distributed computing suitable for such a lot of careful tasks. It promotes efficiency of network dynamics simulation. We examined about dange of the cyberterrorism by the experiment that became possible by the system. Result, We warn that, AS network are in a dangerous state for cyberterrorism.
著者
宮林 幸江
出版者
宮城大学
雑誌
宮城大学看護学部紀要 (ISSN:13440233)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.33-42, 2008-03

人間は多分に科学者のような論理〜実証モードではなく、物語モードで生きているとするナラティブセラピーに注目し、言語化も文章化にもなかなか馴じまない死別経験者の人生観を木の葉、幹として、擬人化して語らせる形で生死観の確認を促し、その結果を確認することを本研究の目標とした。方法では、まず導入ストーリーを読み上げ、寓話allegoryの作成を依頼した。次いで書かれた記述の内容分析を行った。喪失の対象者は配偶者、子供、親の15人。死後経過平均1.6年(SD1.4)。死因は自殺3人。事故死1人、病死10人、不明(死産)1人であった。回答者の平均年齢は48.5歳(SD13.0)その結果、まず1。葉の思い(推測による故人の思い)として最多のコアカテゴリーは"残される者へ"と"絶望"で7割、幹の思い(遺族自身の思い)として最も多いのは、"悲しみ・孤独"と"思慕"でそれぞれが8割を越え、3.物語の展開(今後)は"再会"が6割強近く、記述では「また一つの木になろう」、「人は生まれ死んで行く」、「土に返る」、「ずっと一緒」など輪廻転生の考えを据え心の安定を図っていた。全体に逝った人々への心情を思いやり、自らの人生観をためらいなしに綴り、9割以上の参加者が、死生観をまとめあげることに成功していた。
著者
小林 幸司 後藤 春彦
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.528, pp.147-154, 2000-02-28 (Released:2017-02-03)
参考文献数
14

There are many organizations of companies from same hometowns at Naha-city, Okinawa prefecture. But these days, their action has been declined because of the reason of being aged and decrease of immigrants. Firstly, I researched the role and the specialty of the company. From the result of this research, I proved the declination of the company's action is not the same as declination of the company itself, and the importance of school-mate-connections. Secondary, I understood the specialties of the company and picked up some characteristic lifestyles, and clarified that their thinking tendency depends on the term from their leaving to today.
著者
林 幸史 青野 明子
出版者
日本コミュニティ心理学会
雑誌
コミュニティ心理学研究 (ISSN:13428691)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.53-68, 2020-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
33
被引用文献数
1

Photo-Based Communication (PBC) is an educational program that aims to increase self-expression ability and self-esteem through communication activities using photographs. It is composed of two sub-programs: “Discovery” and “Taking Photos to Express Thoughts”. The objective of this research project was to determine the psychological and educational effects of PBC on participating children. To that end, study was conducted. Study was a questionnaire survey of 29 students in the fifth and sixth grades of elementary school. The results of the survey showed that children felt an extremely high degree of satisfaction with participation in PBC, and that participation in PBC caused them to improve the self-esteem through photographic expression, as well as to understand that they and their friends see things in different ways. Some thoughts on the effects of PBC on children and the significance of using PBC in the classroom are offered here based on these results.
著者
上床 喜和子 須佐美 隆史 井口 隆人 大久保 和美 岡安 麻里 内野 夏子 髙橋 直子 松林 幸枝 阿部 雅修 末永 英之 森 良之 髙戸 毅
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.26-36, 2016-04-15 (Released:2016-05-20)
参考文献数
32

Acromegaly is caused by growth hormone excess owing to a pituitary adenoma after completion of growth and tends to lead to mandibular prognathism. In this paper, two patients with mandibular prognathism caused by acromegaly and treated by surgical-orthodontic treatment are reported. The first case was a 36-year-old male who was referred to our hospital to correct mandibular prognathism and malocclusion after resection of the tumor in the pituitary gland. The second case was a 26-year-old male who was referred from an orthodontic clinic for orthognathic surgery. He had not been diagnosed as acromegaly but a typical double-floor of the Turkish saddle was found in the lateral cephalogram. Blood tests revealed acromegaly. Surgical-orthodontic treatments were performed after resection of the pituitary adenoma and confirmation of normal level of blood growth hormone (GH) and somatomedin C. In both cases, multi-bracket appliances were worn and bimaxillary osteotomy (Le Fort I osteotomy for maxillary advancement and bilateral sagittal splitting ramus osteotomies for mandibular setback) was carried out to secure the intraoral space for the enlarged tongue. After post-surgical orthodontic treatment, the treatment results were good and stable in both cases. These cases showed that surgical-orthodontic treatment for patients with acromegaly after pituitary adenoma resection is reliable. The importance of careful examination of the craniofacial shape in patients with mandibular prognathism to detect acromegaly is emphasized.
著者
楢林 幸一
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.18-25, 2013 (Released:2014-02-28)
参考文献数
21
被引用文献数
1

マイクロフィルムの保存方法及びデジタル時代のマイクロフィルムのニーズと技術的傾向について説明する.
著者
林 幸史 藤原 武弘
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.17-31, 2008 (Released:2008-11-14)
参考文献数
63
被引用文献数
3 2

本研究の目的は,日本人海外旅行者の観光動機の構造を明らかにし,訪問地域・旅行形態・年令層による観光動機の違いを比較することである。出国前の日本人旅行者1014名(男性371名,女性643名)を対象に観光動機を調査した。主な結果は以下の通りである。(1)観光動機は「刺激性」「文化見聞」「現地交流」「健康回復」「自然体感」「意外性」「自己拡大」の7因子構造であった。(2)観光動機は,年令を重ねるにつれて新奇性への欲求から本物性への欲求へと変化することが明らかになった。(3)アジアやアフリカ地域への旅行者は,今までにない新しい経験や,訪問国の文化に対する理解を求めて旅行をする。一方,欧米地域への旅行者は,自然に触れる機会を求めて旅行をすることが明らかになった。(4)個人手配旅行者は,見知らぬ土地という不確実性の高い状況を経験することや,現地の人々との交流を求めて旅行をする。一方,主催旅行者は,安全性や快適性を保持したままの旅行で,外国の文化や自然に触れることを求めて旅行をすることが明らかになった。これらの結果を踏まえ,観光行動の心理的機能について考察した。
著者
林 幸司 内野 健一 井上 雅弘
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.117-127, 2005-02-25 (Released:2012-12-11)
参考文献数
19

池島炭鉱は1959年8月から2001年11月に閉山するまでの42年間採掘を続けた炭鉱で,主に島の南西部の海底下で採掘を行っていた.採炭の奥部化に伴い坑内湧水の量も増え,出水によって作業を中断したこともあった.当炭鉱の湧水の特徴として,以前から時間の経過と共に水量が減少すること,同一箇所においては水質が変化しないことなどが知られていた.これらの事象を整理し,実測のデータから当炭鉱の坑内湧水の特徴を検討した.その結果,(1)湧水箇所では溶存イオン濃度の関係から,3つの型に分類できること,(2)湧水量は指数関数的に減少すること,(3)池島南西沖では,主要坑道の西側に多量の水を含む帯水領域が存在し得ることを示した.
著者
小林 幸夫
出版者
関西法政治学研究会
雑誌
憲法論叢 (ISSN:24330795)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.123-142, 2005-12-17 (Released:2018-01-10)

In the Western Occupied Germany after the 2nd World War the occupation army government provided the German administrative agencies for occupation control, which meant also the trial of the later German political machines. And to discover the Western Democratic Federal system suitable for Germany was attempted between the Occupation army government and the Germam authorities, or among the German authorities. My monograph dealt with the German "Bundesrat" in such attempt, until the Herrenchiemsee convention just before opening the assembly to enact German Fundamental Law.
著者
小林 幸夫
出版者
関西法政治学研究会
雑誌
憲法論叢 (ISSN:24330795)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.79-96, 2002-03-23 (Released:2018-01-10)

Nowadays in general the so-called "dead vote" is disliked and unpopular. But the electoral systems in which electors take no notice of dead vote are known to us. They are the majoritarian representation system, above all things the single-member district system, in other words first-past-the-post system. Here the focus is brought on the representation of the whole people, accordingly the integrated Will of the People. On the contrary, in the proportional representation system the reflection of the Will of the People, in reality of each party composing the Will of the People is aimed at. Its motive is to decrease the dead vote. But by overdecreasing appeared the unstable multi-parties political situation. Consequently, newly the technique to produce the dead vote, for example so-called exclusion barrier clause, was tried. In this essay I have intended to see about not only the minusimages, but also the significance of the dead vote.
著者
梅本 晋 野口 剛 堤 壮吾 小林 幸太 逢坂 公人 岸田 健
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.160-167, 2019-07-20 (Released:2020-07-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

(目的) がん微小環境によるサイトカイン分泌の結果,末梢血リンパ球数(absolute lymphocyte count:ALC)の減少が起こるとされる.我々は抗癌剤治療を施行した進行性尿路上皮癌症例におけるALCと治療効果,予後との関連性について検討した. (対象と方法) 2011年1月から2018年4月までに,根治手術不能または根治術後再発転移例に対し当院でプラチナ製剤による化学療法を施行した63例を後方視的に検討した. (結果) 観察期間中央値は12.2カ月で,38例(60%)が癌死し,全生存期間の中央値は15.3カ月であった.非奏功群(SD+PD)における平均ALCは,奏功群(CR+PR)よりも有意に低値であった(1,312/μL,1,666/μL,p = 0.004).奏効性予測における至適リンパ球数をROC曲線で検討するとcut-off値は1,460/μLとなり,リンパ球数減少群(ALC <1,460/μL)は非リンパ球数減少群よりも全生存において有意に予後不良であった(p = 0.001).全生存に対する多変量解析では,リンパ球数減少が独立した予後不良因子であった(HR 3.46,p=0.002). (結論) プラチナ製剤による化学療法を施行した進行性尿路上皮癌において,治療開始時のリンパ球数減少は効果不良および予後不良因子であった.