著者
清水 亮
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.406-423, 2018 (Released:2019-12-31)
参考文献数
45

軍隊を経験した人々が戦後社会の形成にいかに関わっていたかは歴史社会学の重要な探求対象である. 本稿はその一端を戦友会の記念空間造成事業の担い手から考察する.事例として, 旧海軍航空兵養成学校予科練の戦友会の戦死者記念空間の造成過程を取り上げる. 予科練出身者は総じて若く, 社会的地位も高くなかったにもかかわらず, なぜ大規模な記念空間の造成を比較的早期に達成できたのか. 先行研究は, 集団が共有する負い目といった意識面から主に説明してきた. これに対して本稿は, 各担い手が大規模な事業を実現しうる資源や能力などの社会的な力を獲得していく, 戦前から戦後にかけての過程を, 特に軍隊経験に焦点を当てて探求する.事業を主導した乙種予科練の戦友会幹部は, 予科練出身者の独力のみならず, 軍学校時代に培われた年長世代の教官との人脈を起点としつつも, 軍隊出身者に限らない政財界関係者とのネットワークから支援を引き出していた. 戦友会集団の外部にあたる地域婦人会のリーダーは, 戦時中の軍学校支援の経験等を背景として, 造成事業において組織的な行動力と, 戦友会内部を統合する政治力を現地において発揮した.本稿は記念空間造成事業の大規模化の説明を通して, 負い目という意識の「持続」を重視する先行研究に対して, 軍学校や婦人会などの組織における軍隊経験を背景とした資源や能力の「蓄積」という説明図式をオルタナティヴとして提出した.
著者
田中 康夫 細井 志郎 清水 亮子 桐ヶ谷 忠司 笹尾 忠由 水野 惇雄 河村 太郎 中澤 裕之
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.323-328_1, 1997-10-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

薬品臭トマトの原因物質を究明するたあにトマト及びその栽培土壌を採取してGC-FPD及びGC/MSにより検討した. いずれの試料からもトルクロホスメチル (以下: TLCM) 及びTLCMの分解生成物の2,6-ジクロロ-p-クレゾール (以下: 2,6-DCPC) を検出した. その値は, 土壌でTLCMが0.02~2.2μg/g, 2,6-DCPCが0.03~0.15μg/g, トマトでTLCMが0.01~0.02μg/g, 2,6-DCPCが0.01~0.02μg/gであった. この2,6-DCPCは2,4-ジクロロフェノールと同様のフェノール臭を呈し, トマトの薬品臭の原因物質は2,6-DCPCであると推測された.
著者
清水 亮洋 富樫 陸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020)
巻号頁・発行日
pp.1H4OS12b02, 2020 (Released:2020-06-19)

クーポンマーケティングにおけるUplift Modelingの正しい評価とは何でしょうか?昨今、クーポンマーケティングの費用対効果を向上させるために、Uplift Modelingの適用例が増えてきています。多くは、Uplift Modelingを用いることで、本当にクーポンが必要な人だけにクーポンを配り、費用対効果を向上することを目的としています。しかし、実際にはUplift Modelingにおける評価指標とクーポンマーケティングにおける費用対効果の構造を正しく把握しなければ、きちんと費用対効果を向上することができない可能性があります。私たちは、従来のUplift Modelingの評価指標が正しく費用対効果に結びつかない例を提示し、これを解決することのできる新しい評価指標を提示します。
著者
小野 雅琴 清水 亮輔
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.68-78, 2018-09-30 (Released:2018-12-14)
参考文献数
28

制御焦点理論は本来,促進焦点を有する個人はポジティブな結果を重視した判断を行う一方で,予防焦点を有する個人はネガティブな結果を重視した判断を行うというテーゼを提唱する理論であるが,拡張の結果として,促進焦点を有する個人は感情的に結果を判断しようとする一方で,予防焦点を有する個人は認知的に結果を判断しようとするというテーゼも提唱されている。このテーゼを援用することによって,本論は,口コミ発信者に対する妬みが口コミ受信者による推奨製品の忌避に帰着すると説く最新の口コミ研究の主張を部分的に反駁し,促進焦点を有する個人はそうである一方で,予防焦点を有する個人はむしろ推奨製品を採用する傾向にあると主張する。消費者実験を行って収集されたデータを用いてANOVAを行ってテストしたところ,仮説は首尾よく支持された。
著者
清水 亮
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.241-257, 2021 (Released:2022-12-31)
参考文献数
67

冷戦期にアメリカで確立した軍事社会学は同時代の軍隊・軍人・民軍関係などを中心的主題とし,軍事組織への積極的な社会調査を実行し,西側諸国を中心に国際的に普及した.これに対して日本では軍事社会学は長らく輸入されず,総力戦の社会的影響や経験・記憶の探究を中心に近年「戦争社会学」というかたちで学際的な研究が集積しつつある.しかし,日本にも社会学の軍隊研究は存在し,軍事社会学を参照した研究者も皆無ではない.本論の目的は,軍事社会学を参照した社会学者による軍隊研究の検討を通して,国際的に普及している軍事社会学と,日本社会学の軍隊研究との位置関係ならびに,ありえた接続可能性を明らかにすることにある.まずアメリカにおける軍事社会学の確立と各国における受容状況,日本の社会科学の隣接分野における軍事社会学との接点について検討した.そして冷戦期日本社会学における軍事社会学の参照状況として,従来から注目されてきた文化論的な戦争研究に加え,産業社会学からの組織・職業論の理論枠組みへの関心,ならびに教育社会学のエリート論からの実証研究の試みを明らかにした.それらは相互参照がなく孤立していた.しかし,軍事社会学の枠組みの直輸入でも,狭義の政軍関係論的展開でもなく,日本社会学との接続および戦後日本特有の実証的研究対象の発見によって,軍隊と社会の関係性に関するユニークな認識を生産しえたものだった.
著者
清水 亮 丹藤 雄介
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.40-50, 2022-02-01 (Released:2022-03-12)
参考文献数
7

【目的】先行研究において,栄養管理プロセスにおける栄養診断コード(Nutrition Diagnosis Code: NDC)の明確な違いを示すことが,栄養診断実施の促進に必要と考えられた。そこで,妥当性かつ一致性の高いNDC選択のためのフロー図(NDCフロー図)の開発に取り組むこととした。【方法】NDCフロー図は,エネルギーや栄養素摂取量に関係する第1NDC(P1)が導かれる部分と,第1NDCで示される栄養問題の根本的な原因を示す第2NDC(P2)が導かれる部分の二部構成とした。青森県内95病院の管理栄養士・栄養士の長に,提示した模擬患者症例についてNDCフロー図を用いて,栄養診断を実施してもらい,NDCフロー図の妥当性等を評価した。【結果】回答率は43.2%であった。模擬患者Aでは,P1, P2ともに正答率が80%以上,妥当と考える割合は90%を超えていた。他方,模擬患者Bでは,P1で正答率が約40%,妥当と考える割合が約90%,P2ではそれぞれ10%,50%であった。NDCフロー図の難易度は,有用性に比べて低い評価であった。【結論】NDCフロー図は,その有用性は期待されたものの,妥当で一致性の高いNDC選択のためのツールとしては改善が必要であり,特に体重や検査値に関するNDCや行動と生活環境領域の選択に課題があることが示された。
著者
清水 亮
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.9, pp.25-34, 1996-06-05 (Released:2010-04-21)
参考文献数
18

The Hanshin-Awaji Earthquake did great damage to inner-city area. A lot of discussions about the revival have been done in one year. In this paper, the revival in the inner-city area is considered especially focusing to the problem of aging society. The rapid aging in the inner-city community has become a social problem before the earthquake. Taking into account the influence of this situation on the damage of the earthquake, we have to consider this problem seriously aiming at the revival. Then this is an important problem common to the community formation not only in the struck area but also in a megalopolis of the future.
著者
原勢 二郎 太田 国照 清水 亮 竹下 哲郎
出版者
社団法人日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.1520-1527, 1990
被引用文献数
2 7

Orientation distribution in the 17%Cr stainless steel rough rolled with inter-pass time of 10s (specimen A) and 30s (specimen B) respectively were investigated utilizing SEM-ECP (selected area electron channeling pattern).<BR>Large colonies, groups of grains with the same orientation, of {100} <011>orientation are found in the specimen A after rough rolling. It is proposed to be formed by the poor static recrystallization during rough rolling due to the short inter-pass time and the suppression effect of static recrystallization caused by the &alpha;-&gamma; transformations immediately after the final pass of the rough rolling.<BR>Large ridging is observed in the cold rolled and annealed specimen A.<BR>The cause of the large ridging is considered to be due to the large colonies of {100} <011> orientation inherited from the rough rolled stage and scattered asymmetrically along the central line of the specimen thickness.
著者
清水 亮輔 上田 要一 岡野 秀夫 高石 和則 赤澤 周平
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】<br> 近年、食品添加物が「無添加」又は「不使用」である旨を表示した食品が多く販売されており、テレビコマーシャルや企業のホームページで協調されている例も多い。これらは、食品添加物を使用しない食品を望む一部の消費者向けの食品として開発、販売されてきたものであるが、このような表示により、食品添加物使用の意義、有用性、安全性に対する誤解を招くとともに、食品添加物を用いた加工食品全般に対する信頼性を低下させているおそれがある。今回、このような懸念を明確にして問題提起することを目的とし、一般消費者を対象にアンケート調査を行った。<br>【方法】<br> 人口比で割り付けた15~74歳の一般消費者1600人(男女各800人)を調査対象とし、「無添加」「不使用」と表示された食品に対する安全性の認識や、表示の規制に対する意見等について、インターネットを用いた選択式のアンケート調査を行った。<br>【結果】<br> アンケート調査の結果、「○○○無添加」や「○○○不使用」と表示された食品は、食品添加物○○○を使用した食品より安全と思っている回答者が約半数あった。このことから、このような表示が多くの消費者に対し食品添加物の安全性について誤解を招いていることが明らかとなった。<br> また、「無添加・不使用」とされた食品添加物が有害のおそれのないと国が認めたものであることや、それらの食品添加物と同一成分や同じ機能の成分が当該食品に含まれている場合があることを回答者に伝えた後、「無添加」や「不使用」の表示に対する規制についての意見を問うたところ、約6割が優良誤認を招くこのような表示を規制すべきと回答した。