著者
山室 信一 小関 隆 岡田 暁生 伊藤 順二 王寺 賢太 久保 昭博 藤原 辰史 早瀬 晋三 河本 真理 小田川 大典 服部 伸 片山 杜秀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究においては、女性や子ども更には植民地における異民族までが熱狂をもって戦争に参与していった心理的メカニズムと行動様式を、各国との比較において明らかにすることを目的とした。そこでは活字や画像、音楽、博覧会などのメディアが複合的に構成され、しかも複製技術の使用によって反復される戦争宣伝の実態を明らかにすることができた。そして、このメディア・ミックスを活用する重要性が認識されたことによって、外務省情報部や陸軍省新聞班などが創設されることとなった。戦争ロマンの比較研究から出発した本研究は、戦争宣伝の手法が「行政広報」や「営利本位の商業主義」に適用されていく歴史過程を明らかにすることによって、総力戦という体験が現代の日常生活といかに直結しているのかを析出した点で重要な成果を生んだ。

11 0 0 0 OA 食用色素の化学

著者
片山 脩
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.620-631, 1974-08-01 (Released:2009-11-13)
被引用文献数
1 1

食事は芸術であるという考え方は, フランス人だけのものではないように思う.日本料理の形のよさ, 色どりの美しさ, また微妙な味付は芸術にふさわしいものであろう.食品の評価には衛生的, 栄養的因子もさることながら, 味, 香, 色, 形, 口ざわりなど, いわゆる官能的価値も重要因子として関係してくる.したがって加工食品においては, これらの質の改良を目指して技術の開発が進められてきた.とくに加工度の進んだ最近の食品では, 機械的処理と化学物質の添加処理が複雑に組合わさった方式で製造される.したがって化学物質を用いずしては, その加工法が成立しないという場合が非常に多い.食品の着色や変色の防止についても多くの工夫がなされ, 古くは天然の動植物体あるいは鉱物に含まれる色素が着色のために用いられた.しかし19世紀中頃にいたって合成染料であるタール系色素が開発され, その染着力の強さ, 色の鮮かさ, 均質性, 安定性の高いこと, 安価であることなどの長所が大きくその用途を拡張したが, 食用にも多種類のタール系色素が利用されるようになった.わが国においても昭和39年には24種類のタール系が許可されていた.しかしタール系色素には発ガン性など毒性をもつおそれのあることが指摘され, アメリカ, その他でタール系色素の使用が制限されはじめたことから, 日本においても昭和40年に赤色1号, 赤色101号, 41年には赤色4号と5号, 橙色1号と2号, 黄色1号と2号および3号が, また42年には緑色1号, 45年に緑色2号, 46年に赤色103号, 47年に紫色1号が使用禁止となり現在では, 後述のような11種が残されるのみとなった.これら残されたタール系食用色素は一応かなり安全性が高いと考えられているが, 確定的な結論はなお今後の検討にまたねばならない.このようにタール系色素の使用がいちぢるしく制限されるようになったため, 再び天然色素の利用が注目されるようになり, そのための原料の検索, 製剤化, 利用面の開拓などの研究や技術開発がさかんになろうとしている.こうした事情を考慮すると, これからの食用着色料はタール系色素と天然色素のそれぞれの特徴を生かし, 組合わせた状態で使用されるという方向に進むものと思われる.本稿では, タール系色素を中心として述べるが, 天然色素についても主なものの構造, 性質等について解説することにしたい.
著者
片山 慶隆 Yoshitaka Katayama
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.167-182, 2014-09

本稿は、1902年の日英同盟成立から、韓国が保護国化された1905年の第二次日韓協約に至る日英関係を検討した。特に、従来あまり検討されてこなかったイギリスの対韓政策を実証的に明らかにした。従来、イギリスは日本の韓国支配を後押ししたとされてきた。しかし実際には、イギリスは日本による韓国への進出を防いで、その独立を維持する援助を行なうつもりだったのである。だが、日露戦争勃発を機にイギリスの政策に変化が見られるようになった。戦争前は、韓国の立場に同情を示していたイギリスも、韓国への失望や伊藤博文訪韓への高い評価もあって、日本の韓国支配に理解を見せたのである。そしてイギリスは、伊藤の韓国支配における手腕に期待し、イギリスの植民地支配の「成功例」であるエジプトのクローマー卿になぞらえて期待をかけていた。これは、「非近代的な」韓国の問題点が日本を近代化させた伊藤により解決されることへの期待だったのである。
著者
片山 正彦
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.41-53, 2006-03-01

豊臣政権期には、「在京賄料」といわれる知行が存在する。在京賄料とは、豊臣政権の傘下に入った諸大名が、上洛の際に必要な費用や在京中の費用を賄うための知行であるといわれる。これは豊臣政権による諸大名への上洛催促に対応していることから、諸大名統制の一環であると考えられ、天正十四年(一五八六)以降に豊臣氏と主従関係を結んだといわれる徳川氏もその例外ではないと思われる。在京賄料の宛行は、豊臣政権にとって重要な政策であることは明らかだが、これに関する研究はほとんど皆無といってよい。最近、豊臣政権が家康に宛がったとみられる近江在京賄料に関する史料(「九月十七日付家康書状」)が発見された。この史料は家康から豊臣秀吉家臣の木下吉隆・長束正家に宛てた書状である。この史料は分析の結果、天正十七年に比定され、この時点で家康への近江在京賄料が宛がわれた事実を確認できる。本稿では、天正年間における豊臣政権の在京賄料に関する分析を行うにあたって、その材料として「九月十七日付家康書状」を挙げ、この書状の分析を行いつつ、秀吉から家康へ宛がわれた近江の知行に関する考察を行いたい。
著者
片山 寛之 植木 邦和 曾我 実 松本 啓志
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.55-59, 1974-03-25
被引用文献数
2

水田雑草の生物学的制御におけるアシアカブトエビの除草効果について野外実験を行ない,つぎの結果をえた。1)雑草は10種類発生したが,その種類数は対照区ではカブトエビ処理区の2倍に近かった。また,各実験区に共通して発生した雑草を,生育本数をもとに,カブトエビの除草効果の高い順にあげると,アブノメ,ホソバヒメミソハギ,ミズキガシグサ,コナギ,ミズハコベの順であって,これらの雑草に対するアシアカブトエビの除草効果は非常に顕著なものがあった。2)カブトエビは1m^2当り25個体を放飼したが,20日後には約4分の1に減少し,40日後には,全処理区に僅か1個体が残存していた。3)カブトエビの有効活動期間は,一般に自然状態のもとで発生するものより短期間と考えられ,個体群密度も1m^2当り25個体と低かったにもかかわらず,きわめて除草効果が高かったことは,カブトエビの除草機構が発芽初期における機械的なものであって,田植後早期にやや大形の個体を放飼したことが関与しているものと考えられる。4)雑草害は対照区に顕著に発現したが,カブトエビ処理区には被害らしきものは認められず,両区の水稲生育の間に有意な差があった。本実験を行なうにあたり,有益なご助言をいただいた農林省農業技術研究所の松中昭一博士に対し謝意を表する。
著者
片山國嘉編
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
1882
著者
片山 正昭
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1_35-1_47, 2008-07-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
49
被引用文献数
2

高周波信号を電力線に重畳することで通信を行う電力線通信には,多種多様な用途や方式がある.本稿では,電力線通信の研究を振り返る.特に最も一般的な,商用電源の低圧配電線や屋内配線を用いる電力線通信を中心に電力線通信での信号チャネルの特異性について述べ,そのような環境での通信方式の幾つかを紹介する.更に低圧商用電源以外の電力線を用いるシステムの幾つかを紹介し,電力線通信が実用面における可能性だけでなく,学術的,技術的にも興味深いものであることを解説する.
著者
片山 直美
出版者
日本宇宙生物科学会
雑誌
Biological Sciences in Space (ISSN:09149201)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.21-26, 2007 (Released:2007-12-26)
参考文献数
16

We scope space exploration beyond the low Earth orbit, such as manned activities on Moon and Mars. The advanced life support system is required to create and maintain living environment in outer space by providing foods, cloths and habitat. We shall prepare effective measures for promoting health and preventing illness, as well. Since astronauts would be exposed to various stressful situation, it is highly requested to feed them healthy meal with a good balance of its nutrients, which maintain inner environment of digestive organ at its proper condition. It is also important to prevent diarrhea and constipation, or to enhance willpower and physical strength of astronauts, by feeding them with good nutritious and ingestible materials. The lactic acid bacterium beverage (containing 80 billion Lactobacillus casei shirota) was given, every day for one month, to 10 healthy female subjects (20.4 ± 0.51 years old) who suffer constipation, together with another 10 subjects for the control with dead bacteria in the same beverage. Status of their constipation was examined by their reporting of number of evacuation, shape of the evacuation, their self awareness on their status. The average stool frequency increased in both the experiment and the control group from the first week of administration. In the experiment group, six among ten subjects showed improvement of clear constipation. Since seven out of ten control subjects did not show improvement in their constipation, administration of live lactic acid bacterium is effective for improving constipation. The L-casei shirota lactic acid bacterium stock helps the action of Bifidobacterium bifidum to keep bowels in normal state. Without proper population of Bifidobacterium bifidum, such conditioning is not effective. Administration of both bacterium species is required in such case. In the future space missions, intake of the lactic acid bacterium would be one of effective measures to maintain astronaut's bowel in good condition and contribute to enhance their health and productivity in their task of space exploration.
著者
片山 卓也
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.3_33-3_46, 2019-07-25 (Released:2019-09-25)

国民年金法の述語論理による記述と定理自動証明システムZ3Pyによる検証に関するケーススタディついて述べた.法令の作成は伝統的に人手により行われて来たが,近年法令が大量に作られるようになり,その品質の維持には計算機科学,特にソフトウェア工学や人工知能で培われた技術を応用することが有効であると考えられる.本稿では,法令を意図した通りに正しく作る上で,法令の形式的記述と自動検証技術が有効であることを確認する目的で,国民年金法の基本的条文の述語論理による記述と,そのSMTソルバーZ3Pyによる検証を試行した結果を報告する.法令の文章上の複雑さは別にすると,その論理的深度は深くなく,このような方法が誤りの無い法令を作る上で有効な方法になり得ることが分かった.
著者
熊谷 岳文 木平 孝高 藤村 よしの 宮後 憲 片山 千亜季 松谷 望 井上 裕文 鶴田 泰人 吉富 博則 佐藤 英治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.140, no.4, pp.577-584, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

Elneopa NF No. 1 and No. 2 infusions are complete parenteral nutrition solutions packaged as four-chambered bags. They have been used for home parenteral nutrition, with insulin injected into the bags for patients whose blood glucose becomes elevated. In this study, the stability of insulin in No. 1 and No. 2 bags was investigated. The quantity of insulin in Elneopa NF No. 2 was significantly lower than that in Elneopa NF No. 1. When insulin was injected into the upper chamber of either product, decreases in insulin levels were not observed. In contrast, the levels of insulin injected into the lower chamber of both products significantly decreased, with a larger difference in Elneopa NF No. 2. As the amino acid content is different between No. 1 and No. 2, amino acids may be considered a potential cause for the degradation of insulin in the bags. In addition, decreases in insulin levels were observed as the solutions passed through infusion sets just after flushing began, with both Elneopa NF No. 1 and No. 2. In conclusion, the concentration of insulin injected into the Elneopa infusion bags decreases, especially in No. 2 bags, and insulin is absorbed by the infusion sets.