著者
片山 直樹 熊田 那央 田和 康太
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.127-138, 2021-07-28 (Released:2021-10-01)
参考文献数
107
被引用文献数
1

鳥類の生息地としての水田生態系の機能を明らかにするため,国内を中心に既往研究を整理した.その結果,水田は年間を通じ,多くの鳥類に採食場所を提供していることが示された.水田だけで生活史を完結させる種は少なく,草地や森林等の生息地の異質性が鳥類の種多様性を支えていた.しかし,戦後の農業の集約化は,水田の生息地としての質を低下させ,鳥類の生息・分布にも深刻な影響をもたらした.1970 年代以降の休耕・耕作放棄に伴う植生遷移は,鳥類の群集組成を大きく変化させた.水田性鳥類を保全するためには,有機栽培,冬期湛水,江や魚道の設置等の様々な環境保全型農業が有効であることが示唆された.これらの知見は,応用生態工学会の関係者が今後,水田生態系の保全を計画・実行する際に活用可能である.

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著者
片山広子 著
出版者
竹柏会出版部
巻号頁・発行日
1916
著者
馬場 典子 片山 隆志 香西 武 米澤 義彦
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.168-175, 2013 (Released:2019-09-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

中学校新学習指導要領では,理科の第2分野に新しく「遺伝の規則性と遺伝子」の内容が加えられ, 生徒実験として,食塩水と台所用洗剤を用いた簡便法による「DNA の抽出」が提案されている.本研究は,中学校における DNA の抽出実験について,これまでに報告されている材料と方法を再検討し, 中学校でも実施可能な DNA の抽出実験の材料と方法を提案することを目的として行われた.また,報告されている簡便法によって抽出されたものが DNA であることを確認するために,抽出物のUV吸収スペクトルを測定し,市販の DNA 抽出キットによって抽出した DNA と比較した.その結果,DNA の抽出液として,4%食塩水と5%SDS溶液の混合液(24:1)を用いること,材料としてはブロッコリーが適していることが明らかになった.また,抽出物が DNA であるか否かについてはジフェニルアミン法によって確認できることを確かめた.さらに,改良した方法を用いて行った附属中学校での授業実践をもとに,教科書の記述内容の変更を提案した.
著者
片山 由美 月田 早智子 南出 和喜夫 岸下 雅通
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.49-52, 1995

今回, 院内感染と医療従事者の衣類について検討すべく, 京都大学本医療技術短期大学部学生のキャップの汚染状態を調査した. 菌分離は, 病棟実習中の本学短期大学部3回生36名を対象にキャップの7ヵ所をスタンプして行った. 同時に被検者全員の手指からの分離も行った.<BR>菌分離者は36名中75%の27名であり, そのうち1名のキャップから<I>Staphylococcus aureus</I>が分離され, MRSAであった. その他, キャップや手指からの分離菌種は表皮ブドウ球菌, 真菌類, その他の細菌が占めていた.<BR>キャップの使用期間と菌分離の関係は明確には解らなかったが, キャップの汚染源として使用者の手指・病院環境・医療機器などが考えられ, キャップのみならず医療従事者の頭部は汚染されているという認識をあらためて得た.<BR>本調査において, 表皮ブドウ球菌やその他の細菌がその多くを占めていた.さらに表皮ブドウ球菌などのCNSがすでにメチシリンに耐性を持ち, 院内感染の主流になりつつあるという事実を再確認した. 今後, 院内感染起因菌の変遷に伴い, 感染防止行動の基本である手洗いを徹底させるとともに, 医療従事者の衣類に関する感染防止行動指針の確立が必要と思われる.
著者
松川 康夫 張 成年 片山 知史 神尾 光一郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.137-143, 2008 (Released:2008-03-23)
参考文献数
60
被引用文献数
39 37

我が国のアサリ Ruditapes phillipinarum の総漁獲量は,1960 年には 10 万トンであった。その後,一部に漁場の埋め立てによる減少があったにも関わらず,1982 年には 14 万トンまで増加したが,1984 年から激減して,1994 年にはわずか 3 分の 1 程度(5 万トン)になり,その後もこの水準が続いている。著者らはアサリの生態や資源に関する報告を総括し,1984 年以降のアサリ漁獲量の激減の主要因を過剰な漁業活動,すなわち親貝と種貝用の稚貝に対する過剰漁獲と結論づけた。それ以外にも,周年の過剰操業による底質擾乱は,稚貝の生残率低下を助長した可能性が高いと考えられる。
著者
片山 直美 山下 雅道 和田 秀徳 三橋 淳 Space Agriculture Task Force
出版者
日本宇宙生物科学会
雑誌
Biological Sciences in Space (ISSN:09149201)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.48-56, 2006 (Released:2007-04-13)
参考文献数
17

Concept of space agriculture is developed for habitation on Mars. Space diet is designed and evaluated with nutritional point of view. Combination of rice, soybean, sweet potato, green-yellow vegetable (represented by Komatsuna), silkworm pupa, and loach was found to fill the nutritional requirements.
著者
夏原 由博 中西 康介 藤岡 康弘 山本 充孝 金尾 滋史 天野 一葉 李 美花 片山 直樹
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.231, 2020 (Released:2020-12-24)
参考文献数
47

本研究ではサギ類を水田の生物多様性の指標と位置づけ、環境保全型稲作によるサギ類の個体数増加の効果を検証することを目的とした。滋賀県野洲市、高島市、愛知県豊田市のそれぞれで、慣行農法による稲作水田と特別栽培または有機栽培の水田を選び、2014年から2016年まで昼行性サギ類(アオサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ)の個体数とその主要な餌となる魚類、オタマジャクシの個体数をトラップおよびすくい取りによって調査した。また、滋賀県で取り組まれている堰上式魚道の効果を検証するために、2016年に野洲で魚道水田と魚道の設置されていない水田の比較を行った。サギ類個体数と魚類個体数は慣行水田と比較して有機水田で多く、オタマジャクシ個体数は農法による差が認められなかった。有機水田は慣行水田で行われている輪作をしないことや農薬不使用のため魚類(主にドジョウ類)の個体数が多いことがサギ類を増加させたと考えられた。魚道の設置は魚類個体数を増加させ、ダイサギとチュウサギの個体数を有意に増加させたがアオサギは差が認められなかった。アオサギは稚魚より大きな餌を好むためと考えられた。また、オタマジャクシ個体数は魚道水田で少なかったが、カエルが魚類のいる水田を避けて産卵するか、卵やオタマジャクシが魚に捕食されたと考えられた。
著者
岡崎 由佳子 片山 徹之
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.151-156, 2005-06-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
46
被引用文献数
4 8

フィチン酸は, ミオイノシトールに六つのリン酸基が結合した化合物であり, そのリン酸基が無機質の吸収抑制に関与すると考えられ, 一般的に抗栄養因子と位置付けられている。一方, ビタミン様物質であるミオイノシトールは, 抗脂肪肝作用を有することが知られている。著者らは, フィチン酸のイノシトール骨格に着目し, フィチン酸がミオイノシトールと同様に抗脂肪肝作用を有することや, フィチン酸によるこの効果が現実に摂取しているレベル付近で発揮されることを明らかにした。また, ミオイノシトールとフィチン酸が共通して抗がん作用を有することも報告されている。さらに, 最近の研究からフィチン酸が哺乳動物細胞内における常成分で, 哺乳動物の脳に結合タンパク質が存在し, 細胞内小胞輸送に関与している可能性が考えられている。著者らは, これらの結果からフィチン酸が栄養的にみてビタミン様物質の前駆体あるいはビタミン様物質そのものとして機能しうるのではないかと考えている。
著者
中島 務 寺西 正明 片山 直美 加藤 正大
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.197-203, 2011 (Released:2011-08-01)
参考文献数
28

The first visualization of endolymphatic hydrops in patients with Ménière's disease was performed using three-dimensional fluid-attenuated inversion recovery (3D-FLAIR) imaging with a 3 Tesla MRI unit after gadolinium contrast agent (Gd) was injected intratympanically. The 3D-FLAIR MRI could differentiate the endolymphatic space from the perilymphatic space, but not from the surrounding bone. By optimizing the inversion time, the endolymphatic space, perilymphatic space and surrounding bone could be separately visualized on a single image using three-dimensional real inversion recovery (3D-real IR) MRI. Using 3D-FLAIR and 3D-real IR MRI, various degrees of endolymphatic hydrops were observed in the basal and upper turns of the cochlea and in the vestibular apparatus after intratympanic Gd injection. Recently, visualization of endolymphatic hydrops became possible 4 h after intravenous Gd injection in patients with Ménière's disease. We applied a heavily T(2)—weighted 3D-FLAIR technique to detect Gd more sensitively for evaluation of endolymphatic hydrops after an ordinary amount of Gd was administered intravenously. Thus, newly developed MRI techniques have contributed significantly to the evaluation of endolymphatic hydrops. The intravenous administration of an ordinary amount of Gd is routinely done clinically. The relationship between endolymphatic hydrops and clinical symptoms will be investigated widely using new techniques.
著者
星 正治 坂口 綾 山本 政儀 原田 浩徳 大瀧 慈 佐藤 健一 川野 徳幸 豊田 新 藤本 成明 井上 顕 野宗 義博 原田 結花 高辻 俊宏 七條 和子 遠藤 暁 佐藤 斉 大谷 敬子 片山 博昭 チャイジュヌソバ ナイラ ステパネンコ ヴァレリー シンカレフ セルゲイ ズマジーロフ カシム 武市 宣雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

放射線による発がんなどのリスクは、ほぼ広島・長崎の被ばく者の調査により評価されてきた。その結果は国際放射線防護委員会(ICRP)での議論を経て、国内法である放射線障害防止法に取り入れられている。しかし原爆は一瞬の被ばくであるが、セミパラチンスクでは長時間かつ微粒子による被ばくである。従ってそのリスクは異なっている可能性がある。本研究は共同研究による被曝線量とリスク評価である。測定や調査は、1.土壌中のセシウムやプルトニウム、2.煉瓦、歯、染色体異常による被曝線量、3.聞き取り調査による心理的影響、4.データベースの整備とリスク、5.微粒子効果の動物実験などであり、被爆の実態を解明した。
著者
井元 淳 甲斐 尚仁 真名子 さおり 片山 亜有 新貝 和也 千住 秀明
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.385-390, 2012-12-28 (Released:2016-04-25)
参考文献数
38

本研究では,誤嚥性肺炎発症の因子を考察し,その予防や発症後のアプローチの検討を行うため,誤嚥性肺炎患者と非誤嚥性肺炎患者の唾液分泌量と日内リズムについて明らかにすることを目的とした.対象は誤嚥性肺炎で入院となった10名(誤嚥群)と,その他の疾患で入院となった10名(非誤嚥群)の計20名(年齢87.9±7.9歳)であった.方法として唾液分泌量,摂食・嚥下能力,食事の種類,身体活動性などを評価した.その結果,誤嚥群では摂食・嚥下能力とともに身体活動性が低いことで誤嚥性肺炎のリスクが高まっていた.また唾液分泌量の日内リズムでは夜間の唾液分泌量は両群とも低下していた.以上の結果から,誤嚥群では口腔環境の不良による肺炎発症のリスクを高めていることが示唆された.本研究によって,肺炎の発症を予防するためには,唾液分泌量の増量と睡眠前の口腔ケアなどによる口腔環境の改善を図ることの重要性が示された.
著者
片山 善博
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.168-173, 2007

図書館本来の機能,つまりミッションは,民主主義社会の国民・住民の「自立支援」を「知的インフラ」という側面で支えることである。真の民主主義社会の実現には,政府と国民との間でできるだけ広範な情報共有が必要であると同時に,政府が発信する情報だけでなく,いわば「対抗軸」ともいうべき客観的資料や政府案への問題点を論じた資料など,バランスの取れた情報環境が必要である。また,重要な政策決定を審議する際,失敗事例,諸外国事情を含め,基礎となる資料や情報は不可欠である。それらの情報環境を担うのが図書館であり,図書館のミッションといえる。そして,それらの情報へのアクセスを的確に行うのが司書の役割である。
著者
蘆田 玲子 田中 幸子 井岡 達也 片山 和宏
出版者
一般社団法人 日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.30-37, 2017-02-25 (Released:2017-03-17)
参考文献数
19
被引用文献数
2

膵臓癌における死亡者数は年々増加傾向にある.血液マーカーなどの有効なスクリーニング方法がない現状では無症状の被検者に対する超音波検診が早期膵癌発見のために非常に重要である.しかし検診領域における膵癌発見率はいまだ十分とは言えない.現在消化器がん検診学会を中心に腹部超音波検診判定マニュアルが作成され,超音波検診の精度向上にむけて普及が行われている.また早期膵癌の拾い上げには地域中核病院と連携病院間での膵癌危険群の啓蒙と腹部超音波検査を用いた積極的なスクリーニングが有用である.そして嚢胞や膵管拡張といった高危険群を囲い込み,膵精密超音波検査を中心とした膵検診システムを用いて経過観察を行うことにより早期膵癌を発見できる可能性がある.今回腹部超音波検査での膵臓描出の工夫と共に,腹部超音波検査による膵癌早期診断の現状を報告する.
著者
片山 めぐみ 柿山 浩一郎 張 浦華
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.105-112, 2011-11-30
被引用文献数
1

本研究は、動物園における歩行移動時の高揚感に影響を及ぼす経路の物理的要因について実験により検証し、高揚感の上昇に効果的な経路デザインについて考察することを目的とする。実験には、高揚感の上昇・下降に従ってボタンを押すと経過時間と共にデータが保存されるツールを開発した。実験経路には、動物の生息地を探検しているように環境がデザインされている動物園経路を採用し、歩行移動時の動画を被験者に提示した。実験終了後に高揚感が変化した理由について変化地点ごとに聞き取りを行った。実験結果として、視界を遮ったり暗くすることで先の空間に期待を抱かせ、さらにその先に何か発見や驚きがあることが高揚感の上昇に繋がることを読み取ることができた。このことから、展示空間までの経路を効果的にデザインするには、行く手を遮る要素(カーブや暗闇)などによって十分に期待を持たせ、その先に発見や驚きを与える要素(印象的な形態の樹木や岩、滝、光など)の設置をひとつのループとして経路上に配置していくことが効果的と考えられる。