著者
大西 隆 松行 美帆子 瀬田 史彦 片山 健介 金 昶基 林 和眞
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、逆都市化時代に予測される課題を示し、その改善と持続可能な都市圏実現のためにどのような地域計画が必要かを明らかにすることを目的とした。成果として、(1)特に人口の安定と地域イノベーションに着目して、指標をもとに都市圏の特徴を明らかにした。(2)定住自立圏等の地域政策の有効性を検証するとともに、都市構造に関わる意思形成プロセスの構造化を試みた。(3)大都市圏郊外の計画手段を明らかにするとともに、地方都市圏における地域計画の実践的提案を行った。
著者
奥田 花也 片山 郁夫 佐久間 博 河合 研志
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

Brucite (水酸化マグネシウム)は蛇紋岩の主構成鉱物の一つであり、超苦鉄質岩の水和反応によって形成される。これまでbruciteは粒径が非常に小さく天然環境で観察されにくいことから注目されてこなかったが、近年の研究では含水下マントルウェッジにおいてantigoriteと安定に共存し(Kawahara et al., 2016)、さらにマントルウェッジでの長期スロースリップがbruciteの形成に伴う高有効法線応力によって説明される可能性も示唆されている(Mizukami et al., 2014)。さらに、bruciteの存在はマントルウェッジ中の岩石の摩擦の安定性を変える可能性がある。このようにbruciteは水和した超苦鉄質岩帯における地震活動に影響する可能性があるが、bruciteの摩擦特性はこれまであまり調べられていなかった。本研究では一連の摩擦実験によりbruciteの基礎的な摩擦特性を報告する。摩擦実験は粒径70 nmの合成試薬を用いて広島大学の二軸摩擦試験機により行った。大気乾燥下と含水条件下の両方で、様々な垂直応力下(10, 20, 40, 60 MPa)で実験を行った。最大の剪断変位は20 mmであり、実験初期の剪断速度は3 μm/secとした。33 μm/secでのvelocity step testを数回行い、それぞれのstepから速度状態依存摩擦構成則(RSF)を用いて定量的に摩擦の不安定性を解析した。乾燥下において、定常状態の摩擦係数はおよそ0.40であり、不安定滑り(velocity-weakeningまたはstick-slip)が全ての垂直応力で観察された。剪断変位が2 mm程度において摩擦係数に明瞭なピークが観察され、このピークの摩擦係数は垂直応力に反比例した。含水下においては、ピークの摩擦係数は乾燥下と同様垂直応力に反比例したが、摩擦係数自体は乾燥下の場合より低かった。垂直応力が10と20 MPaの場合はvelocity-weakeningが観察されたが、40と60 MPaの高い垂直応力の場合はvelocity-strengtheningに変化した。こう垂直応力での安定滑りは100 MPaの垂直応力での先行研究と調和的である(Moore & Lockner, 2007)。RSF則のaとbの値は乾燥下の場合の方が含水下の場合より小さく、臨界すべり距離dcも乾燥下の場合の方が含水下の場合より短かった。Antigoriteはbruciteよりも高い摩擦係数を示すため、bruciteの不安定な摩擦挙動は含水した超苦鉄質岩帯において地震を引き起こす可能性がある。なお本研究では温度依存性については調べていない。発表では、実験したガウジの微細構造観察を通して摩擦特性のメカニズムについて考察を行い、実験結果と先行研究でのモデルから天然の超苦鉄質岩帯における地震活動について議論する予定である。
著者
樋高 由久 古江 幸博 田村 裕昭 永芳 郁文 本山 達男 川嶌 眞之 尾川 貴洋 片山 隆之 川嶌 眞人
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.443-446, 2012-09-25 (Released:2012-11-27)
参考文献数
10

γネイルを用いた骨接合術後に二次骨折をおこした3例について報告する.〈症例(1)〉87歳,女性.施設で転倒し,左大腿骨転子部骨折を受傷.初回手術後35日目に転倒し,再骨折を認めた.〈症例(2)〉52歳,男性.施設入所中転倒し,左大腿骨転子下骨折を受傷.初回手術後38日目に転倒し,再骨折を認めた.〈症例(3)〉79歳,男性.ベッド上で左股関節痛により体動困難となり,左大腿骨転子下骨折を認めた.初回手術後182日目に転倒し,再骨折を認めた.全例がネイル先端から遠位横止めにかかる二次骨折であり,遠位横止め部位にかかる応力の集中が二次骨折に関与していることが考えられた.しかし,捻転力による二次骨折,ネイルの回旋や沈み込みによる変形や疼痛などの合併症を避けるためには,遠位横止めは必要であり,遠位横止めの是非は今後の検討が必要と考えられた.

3 0 0 0 OA 物理階梯

著者
片山淳吉 編
出版者
文部省
巻号頁・発行日
vol.上, 1876
著者
片山 由加里 小笠原 知枝 辻 ちえ 井村 香積 永山 弘子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.20-27, 2005-06-20 (Released:2012-10-29)
参考文献数
25
被引用文献数
10 6

本研究の目的は, 看護師の感情労働測定尺度 (Emotional Labor Inventory for Nurses: ELIN) を開発することであつた. 本研究では, 看護師の感情労働を, 患者にとつて適切であるとみなす看護師の感情を表現する行為と定義した. 始めに, 文献とインタビューに基づいて57の質問項目を選定し, 看護師60名と学生66名が項目の適切性を評価した. さらに, 項目分析によつて削減した50項目のELIN原案を看護師436名に調査した. 因子分析の結果,「探索的理解」,「表層適応」,「表出抑制」,「ケアの表現」,「深層適応」の5因子から構成するELIN (26項目) が示された. 内的整合性はCronbach's α (0.92), 安定性は再テスト法 (r=0.72) によつて確保した. 基準関連妥当性は, ELINとEmotional Labor Scale との相関 (r=0.48)と, 看護師と学生のELINの比較によつて確認した. 構成概念妥当性は, 共有経験尺度と共有不全経験尺度によつて確認した. 以上により, ELINの信頼性と妥当性がおおむね支持された.
著者
佐藤 遼 片山 健介 大西 隆
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.3, pp.859-864, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
6
被引用文献数
2

本論文は、日本の地域間所得格差構造について既往の研究よりも細かい地域単位で分析を行い、地域圏の内側の格差について実態を解明したものである。まず、市区町村単位の平均所得のデータを用いて1980年から2005年までの6時点で各地域圏内の所得格差をタイル尺度により測定した結果、近年特に大都市圏内での所得格差拡大が著しく、それが日本全体の格差拡大にも大きな影響を与えていることが明らかになった。次にそれを引き起こした地域構造的な要因について首都圏を例に分析した結果、人口の増加量が多い市区町村で平均所得も増加している傾向が確認できた。これは1990年頃の地域間格差の拡大時には見られない新しい現象であった。人口の転入超過量とその年齢構成によってクラスター分析を行った結果、特に都心回帰現象に伴う都心部への人口流入量が大きく、郊外部や地方部からの人口を吸収していた。また、地域によって流入している人口の所得階層に差があり、結果として地域間で所得階層による居住地の分化が進み、小さいスケールでの地域間所得格差が拡大していることが明らかになった。
著者
片山 隆裕 カタヤマ タカヒロ KATAYAMA TAKAHIRO
出版者
西南学院大学学術研究所
雑誌
西南学院大学国際文化論集 (ISSN:09130756)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.1-13, 2017-02

2013年7月に,訪日し短期滞在(15日以内)するタイ人とマレーシア人への観光ビザ取得が免除される措置がとられた。新成長戦略の柱の1つとして「観光立国」を掲げる日本政府は,経済成長を続けるアジア圏の中でも,特に近年,中間層の所得が急速に増加し,成長を続けるタイとマレーシアからの観光客に増やしたいという狙いがあっての措置とされる。タイ人の訪日観光客数を他のアジア主要国からの観光客数と比較してみると,2012年時点では年間約26万人と,韓国(約157万人),台湾(約133万人)など比べると,決して多いとは言えなかった。韓国,台湾からの観光客数はさらに増加傾向にあるが,他方,中国からの観光客数は尖閣諸島領有権問題などの影響を受け,減少傾向にある。しかしながら,2013年以降のタイからの観光客が大きく増加し,ビザの免除措置がとられてからは,45万人(2013年),65.8万人(2014年),77.7万人(2015年)と,年々着実に急増している。このほかにも,訪日タイ人観光客急増の理由としては,もともと親日国である上に,バンコクを中心としてタイ国内にさまざまな日本文化があふれていること,日本関係のイベントが頻繁に開催されていること,日本・タイの航空便の増便など,様々な理由が考えられる。中でも「一生行くことがないであろう県全国1位」(マイナビフレッシャーズ)の佐賀県へのタイ人観光客の急増ぶりは,全国平均の増加率をはるかにしのいでおり,300人(2013年),1480人(2014年),5180人(2015年)と急増している。では,なぜ今,「はなわさんの歌以外に思いつくものがない」(男性23歳),「アクセスが悪いので,旅行先として選びにくい」(女性26歳),「九州地方に行くとしたら,他の県が優先になる」(男性35歳)などと評される佐賀県にタイ人観光客が急増しているのだろうか?本稿では,そうした訪日タイ人の増加を,ミクロな視点から九州の佐賀県に絞って考察し,佐賀を訪れるタイ人観光客が急増した理由として,タイ映画・ドラマというコンテンツの広告効果について検討することを目的としている。まず初めに,近年におけるコンテンツツーリズムとフィルムツーリズムの概況を述べる。次に,日本とタイの交流史について触れ,現代の日タイ関係と映画『クーカム』とその中でタイ人人気俳優が演じる日本兵コボリのタイ人への影響を述べる。その上で,近年公開された幾つかのタイ映画・ドラマを取り上げ,その宣伝・広告効果と訪日タイ人観光客の観光行動との関係についての考察を行うものとする。
著者
峯岸 正勝 熊倉 郁夫 岩崎 和夫 少路 宏和 吉本 周生 寺田 博之 指熊 裕史 磯江 暁 山岡 俊洋 片山 範明 林 徹 赤楚 哲也
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.51, no.594, pp.354-363, 2003 (Released:2003-09-26)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

The Structures and Materials Research Center of the National Aerospace Laboratory of Japan (NAL) and Kawasaki Heavy Industories, Ltd. (KHI) conducted a vertical drop test of a fuselage section cut from a NAMIC YS-11 transport airplane at NAL vertical drop test facility in December 2001. The main objectives of this program were to obtain background data for aircraft cabin safety by drop test of a full-scale fuselage section and to develop computational method for crash simulation. The test article including seats and anthropomorphic test dummies was dropped to a rigid impact surface at a velocity of 6.1 m/s (20 ft/s). The test condition and result were considered to be severe but potentially survivable. A finite element model of this test article was also developed using the explicit nonlinear transient-dynamic analysis code, LS-DYNA3D. An outline of analytical method and comparison of analysis result with drop test data are presented in this paper.
著者
大角 欣矢 花岡 千春 塚原 康子 片山 杜秀 土田 英三郎 橋本 久美子 信時 裕子 石田 桜子 大河内 文恵 三枝 まり 須藤 まりな 中津川 侑紗 仲辻 真帆 吉田 学史
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近代日本の洋楽作曲家第一世代を代表する作曲家の一人、信時潔(1887~1965)に関する音楽学的な研究基盤を確立するため、以下の各項目を実施した。①全作品オリジナル資料の調査とデータベース化、②全作品の主要資料のデジタル画像化、③信時旧蔵出版譜・音楽関係図書目録の作成、④作品の放送記録調査(1925~1955年のJOAKによる信時作品の全放送記録)、⑤作品研究(特に《Variationen(越天楽)》と《海道東征》を中心に)、⑥明治後期における「国楽」創成を巡る言説研究、⑦伝記関係資料調査。このうち、①から⑤までの成果は、著作権保護期間内の画像を除き原則としてウェブにて公開の予定。
著者
福永 聖子 片山 徹也 庄山 茂子
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.25-34, 2014-05

同一の料理工程画面を用いて、異なるフォントや配置のテロップを作成し、女子大生を対象に可読性やおいしさ感にどのような違いがみられるか検討した。料理名と材料名のテロップを5種類のフォントで組み合わせた25画面の印象では、「可読性」ではゴシック体、「料理に調和している」では行書体と楷書体の画面の評価が高かった。料理画面に「最もふさわしいフォント」では楷書体が選ばれた。このことから、可読性より和食の料理に調和するフォントが重視されたことが明らかとなった。さらに、楷書体を用いて、料理名と材料名の配置を変えた32画面の印象評価では、料理画面に「最もふさわしいテロップの配置」は、左上に料理名、右下に材料名であった。テレビ番組のテロップにおいては、視聴者の視線が左上から右下へ移動していると考えられた。また、テロップを黙読し終える平均時間には32画面間に有意差はみられなかった。
著者
片山 知史 秋山 清二 下村 友季子 黒木 洋明
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.688-693, 2015 (Released:2015-08-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1

東京湾において漁獲したクロアナゴ 189 個体とダイナンアナゴ 448 個体について,耳石横断切片法によって年齢を査定した結果,クロアナゴの年齢は 1+から 6+の範囲であり,2+から 4+までの年齢群が優占していた。ダイナンアナゴは,0+から 11+の範囲であり,特に 5+から 8+の個体が主体を成していた。ダイナンアナゴは,6+以上の全長 1000 mm を超える個体も多く,マアナゴと比べても大きく成長する魚種であると考えられた。両種の雄の割合は,2-6% であり,性比が雌に著しく偏っていた。
著者
杉本 史惠 片山 順一
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.18-28, 2014-04-30 (Released:2015-03-19)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究は,体性感覚プローブ刺激と聴覚プローブ刺激に対するP300の振幅がトラッキング課題の難度を反映するか検討し,この難度の効果がプローブ刺激のモダリティによって異なるかを調べた。実験参加者はトラッキング課題中に,体性感覚または聴覚オドボール課題を二次課題として行った。手首と指への電気刺激と,2種類の音刺激を標準(呈示確率.80)または標的(.20)プローブ刺激として呈示した。参加者は標的プローブ刺激に対してマウスのボタン押し反応を行った。標的刺激に対するP300振幅は体性感覚と聴覚プローブどちらに対しても,トラッキング課題の難度が低い場合に比べて高い場合に減衰した。本研究はプローブ刺激に対して二次課題を行う手続きにおいて,体性感覚プローブ刺激と聴覚プローブ刺激に対するP300が主課題への注意配分量に対して同程度の感度を持つことを示す。
著者
高橋 哲也 片山 統裕 菊池 修 辛島 彰洋 中尾 光之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.370, pp.65-68, 2006-11-15
被引用文献数
5

神経回路を構成するニューロンの相互作用や協調的活動を調べることを目的として多重電極による多細胞記録法が用いられている.この手法では同時に記録された複数のニューロンの活動電位を波形情報を頼りに弁別する.複数のニューロンがほぼ同時に発火すると波形が重畳するため,従来のパターン認識の手法ではスパイクの弁別精度が低下するという問題があった.この問題を解決する手法として独立成分分析(ICA)を適用した手法が提案されてきた.しかし十分な分離結果が得られないことが多い.本研究では,連続ウェーヴレット変換と複素ICAを組み合わせた新しいスパイク弁別アルゴリズムを提案する.シミュレーションデータに本手法を適用することによって,従来のICA法より優れた性能を持つこと,及びそのメカニズムについて考察する.
著者
片山 智行
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.314-331, 1973
著者
野村 研一郎 片山 昭公 高原 幹 長門 利純 岸部 幹 片田 彰博 林 達哉 原渕 保明
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.58-63, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
6

Video-Assisted Neck Surgery(以下 VANS 法)は,前胸部外側に作成した皮膚切開部から皮弁を吊り上げることでワーキングスペースを作成し,内視鏡補助下で甲状腺切除を行う術式である。創部が衣服で隠れるため,若年女性にとって有益な術式であるが,特殊な手術器具を要するため,小児での報告は少ない。当科で2009年から VANS 法で手術を行った210例のうち15歳以下の小児 3 例を認めた。よって,これらの症例の治療経過と小児甲状腺結節に対する手術適応についての検討を行った。全例甲状腺に約 3 cm 大の充実性の結節性病変を認めており,全例合併症なく成人と同様に手術を行うことが可能であった。3 例とも摘出病理は良性の結果であったが,濾胞腺腫と思われた一例で,実際は濾胞癌であり,術後半年後にリンパ節転移を認めたため,手術を含めた追加治療が行われた。成人同様,3 cm を超えるような甲状腺結節の際には手術治療を念頭におく必要があると考えられ,VANS 法は小児にも適応可能であった。