著者
藤野 善久 堀江 正知 寶珠山 務 筒井 隆夫 田中 弥生
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.87-97, 2006 (Released:2006-08-15)
参考文献数
18
被引用文献数
23 34

労働時間と精神的負担との関連についての体系的文献レビュー:藤野善久ほか.産業医科大学公衆衛生学教室―労働環境をとりまく厳しい状況のなか,労働者のストレスやうつ・抑うつなどメンタルヘルス不全が増加していると指摘されている.これに伴い,精神障害等の労災補償に関する請求件数,認定件数ともに著しい増加傾向にある.労働時間,対人関係,職場における支援,報酬などは労働者のメンタルヘルスに影響を与える要因と考えられている.平成16年には厚生労働省が「過重労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会」報告書を発表し,長時間の時間外労働を行ったことを一つの基準として対象者を選定し,メンタルヘルス面でのチェックを行う仕組みをつくることを推奨した.しかしながら,上で示されたメンタルヘルス対策としての長時間労働の基準は,企業・産業保健現場での実践性を考慮したものであり,労働時間と精神的負担との関連についての科学的な確証は十分に得られていない.一方で,労働時間が様々な労働環境要因,職業ストレス要因と関連して労働者の精神的負担やメンタルヘルスに影響を与えることは,過去の研究からも合理的に解釈できる.そこで本調査では,労働時間とうつ・抑うつなどの精神的負担との関連を検討した文献の体系的レビューを行い,労働時間と精神的負担の関連についての疫学的エビデンスを整理することを目的とした.PubMedを用いて131編の論文について検討を実施した.労働時間と精神的負担に関して検討した原著論文が131編のうち17編確認された(縦断研究10編,断面研究7編).それらのレビューの結果,精神的負担の指標との関連を報告した文献が7編であった.また,労働時間の評価に様々な定義が用いられており,研究間の比較を困難にしていた.今回のレビューの結果,労働時間とうつ・抑うつなどの精神的負担との関連について,一致した結果は認められなかった. (産衛誌2006; 48: 87-97)
著者
田中 弥生
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.1143-1149, 2014 (Released:2014-10-20)
参考文献数
4

2025年開始を目指した地域包括ケアシステムは、地域住民のニーズに応じた住宅が提供されることを基本とし、「生活上の安全・安心・健康を確保するために医療や介護のみならず、福祉サービスも含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制」と定義されている。この定義の中には、「食生活及び栄養障害の改善、疾病の再発予防や疾病の予防ができ、地域住民が住み慣れたところでその人らしい生活を送ることができる」ということも含まれており、そのためには要介護高齢者は病院から施設、在宅に移り変わっても一連で適切な栄養管理が必要である。栄養ケアに関する情報の提供、ケアマネジャーを中心とした多職種の協力、地域社会に密接した全高齢者への主観的栄養アセスメントの徹底、地域家族も含めて多職種全てのスタッフが共通の概念をもつことが重要であり、科学的根拠に基づく栄養管理を地域包括ケアシステムで共有することが必務である。
著者
田中 弥生 武田 晴人 山内 直人 三好 皓一 高橋 淑郎 西出 優子
出版者
独立行政法人大学評価・学位授与機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

非営利組織には、営利組織の利潤に匹敵するような業績判断基準が不在であること、それゆえに非営利組織の経営が困難であることを最初に指摘したのはP.F.ドラッカーであった。たしかに、評価の不在が、非効率な行動を招き、成長の機会を逃している。そこで、ドラッカーの非営利組織論の原点に立ち返りながら「社会変革性」「市民性」「組織安定性」の3つの基本条件を軸に、非営利組織の評価基準を作成した。まず、NPOセクターの現状分析を行なうべく、定量・定性的な分析を行なった。財務データベースをつくり、財政的な持続性にかかる財源の種類など要因分析を行なった。その結果、非営利組織の場合には、収益事業収入に加え、寄付や会費などを組み合わせたほうが財務的な持続性が高いことがわかった。またアンケート調査を実施した。その結果、社会変革の担い手になりたいという願望を持ちながらも組織体制や技術面で不十分なこと、さらには、社会的な信頼性が低く、市民との関係性がより希薄になっていることがわかった。次に、研究者および実践者によるチームを編成し、先の現状分析結果を踏まえ、社会的なイノベーション力を備えた望ましい非営利組織像に到達するためには、どのような条件を満たすことが求められるのか議論した。そして、評価基準策定工程をデザインし、先の議論からエッセンスを抽出し、33の評価基準にまとめた。また、33基準を満たしていることを確認するための105の自己チェック項目もデザインした。これらの研究成果は、6本の研究論文、4冊の図書にまとめられ、5回の学会発表、8回の講演で発表された。なお、研究成果を非営利組織が活用できるよう、これらの基準とチェック項目を「エクセレントNPO基準」と名付け、2冊のブックレットにまとめた。さらに、フォーラム、講演などで説明を行ったが、5大紙、雑誌などで取り上げられた。また、2011年1月には本評価基準を普及すべく、推進母体として「エクセレントNPOをめざそう市民会議」を発足させた。
著者
前田 佳予子 手嶋 登志子 中村 育子 田中 弥生
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.648-656, 2010 (Released:2011-12-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

介護保険における居宅療養患者の訪問栄養食事指導の実施率を上げるためには、管理栄養士の在宅に対しての意識向上および、利用者のケアプランを作成するケアマネジャーや主治医に、訪問栄養食事指導の重要性や役割を普及啓発することを目標とする必要がある。 今回、われわれは訪問栄養食事指導を導入することにより効果があると多職種に理解されてもなぜ、実施率が低いのか、その原因を明らかにするために調査研究を行った。 調査方法としては、無作為に抽出した700 人にインターネットによるリサーチを行い、回答期間を平成20 年4月24 日11 時から5 月8 日19 時までとし、623 人(89 . 0%)から有効回答を得た。 食事や栄養の課題がケアプランに挙がると答えたケアマネジャーは554 人で、ケアプランに挙がってくる課題は1)嚥下障害、2)治療食の調理が困難、3)食事摂取量の低下による褥瘡、低栄養、4)PEG 等の経管栄養管理であり、これらの課題は訪問栄養食事指導を導入することによる経済効果の見られる項目とほぼ同じであった。
著者
田中 弥 大沼 かおり 三瓶 真菜 佐々木 一謹 山本 博之
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第42回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.1P04, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
4

本プロジェクトでは、メタボローム解析においてしばしば問題となる未知化合物の構造推定に、2種の独立したアプローチで取り組んだ。一方は一般的に用いられるタンデム質量分析 (MS/MS) を用いた推定であり、もう一方は代謝に基づく発表者ら独自の推定である。これにより十種程度の未知化合物の同定に成功してきたが、それには一方の手法がより良い推定を示したものも、両方の手法にて有力候補となったものも含まれていた。置換基の位置のようにMS/MSでは得にくい情報も、前駆体探索により構造推定に取り組むことができた。一方で、前駆体探索が困難な構造の化合物では、MS/MS による推定がより有力であることが考えられる。独立した2手法を用いることでそれぞれが得意な推定対象を補完しあい、また両手法の結果の組み合わせからより精度の高い推定を導くことが可能となった。
著者
田中 弥生
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1_3-1_19, 2011 (Released:2014-05-21)
参考文献数
29

本論の目的は「エクセレントNPO」基準の設計の工程および体系の構造を説明し、あわせて課題解決策としての評価のあり方を論ずることである。本基準は日本のNPOセクターの現状について危機感を覚えた実践者と研究者が策定したものである。すなわち、現状をデータ等によって分析し、望ましい非営利組織像を定義した上で、現在のNPOセクターにおいて最も重要と判断した「市民性」「社会変革性」「組織安定性」の3つの課題を抽出し、これを基本条件とした。この基本条件に基づき、評価基準体系の構造と工程をデザインし、工程にしたがって議論を進め33の評価基準を導き出した。したがって、本基準はNPOセクターの課題に対する解決案としての意味を有する。しかし、課題解決策として評価が機能するためには、評価自体をひとつのプロジェクトとして捉え、基準の普及をしながら、継続的な現状分析と利用者からのフィードバックなど不断の見直しが必要になる。
著者
田中 弥生 馬場 英朗 渋井 進
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.111-121, 2010

NPO法人数の財政的な持続性などの経営課題が顕著になっている.しかし,NPOなどの民間非営利組織の財政面に関する分析や評価手法は,1990年代に入ってようやく米国を中心に開発された分野である.また,日本ではデータベースが不在であったために,定量的な分析はほとんどなされてこなかった.そこで本研究では,NPO法人のパネル・データベースを構築し,財務的な評価ツールを開発することによって分析を行ない,NPOの持続性にかかる実態と促進・疎外要因を明らかにしようとした.ここでは,主たる収入要素及び持続性指標間における順位相関を算出した上で,持続性確保に至る道筋を,共分散構造モデルを用いて構築した.その結果,事業収入は収入規模の拡大に寄与するが,財務的持続性の向上にはあまり貢献しないこと,その一方で,寄付や会費などの社会的支援収入は収入規模の拡大には寄与しないが,財務的持続性の向上に貢献することが明らかになった.<br>
著者
中村 育子 前田 佳予子 田中 弥生 本川 佳子 水島 美保 前田 玲
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.19-27, 2023 (Released:2023-08-29)
参考文献数
18

本研究は人生の最終段階において,管理栄養士が多職種と連携して食支援を行うことは,できるだけ自分の口から食事を摂取し,最期まで食べる喜びを感じることができる等,QOL 向上に対する管理栄養士の在宅訪問栄養食事指導の介入効果と,その中で,疾患の違いによる介入効果についても検討する. 在宅訪問栄養食事指導における食支援は,管理栄養士が介護者の困りごとの相談に応じて,介護者の調理技術の向上や簡単に食事を用意できることを可能にし,介護者の食事作りの負担を軽減させ,在宅療養者の最後に食べた物は好物であったことに貢献していた.
著者
田中 弥生
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.433-437, 2017-04-01 (Released:2017-05-17)
参考文献数
9

ARDS (acute respiratory distress syndrome)で代表される急性呼吸不全や慢性呼吸不全増悪患者に対する管理において,栄養管理は重要な治療と認知されている.侵襲度の高い重症患者で,人工呼吸で換気とガス交換を維持し,疾患に対する根本的な治療を行い,患者が回復するまでの間,適切な栄養管理を施行することが重要である.組織の修復,免疫能力の安定,ガス交換の改善,炎症の軽減,感染自己防御などの維持・賦活も期待されている.回復に至るまでの間,栄養状態を安定させることが生死を左右させるといっても過言ではない.また,人工呼吸管理チームは医師,看護師,管理栄養士,薬剤師,臨床工学技士,理学療法士,など多職種により構成されることが望ましい.
著者
田中 弥生
出版者
講談社
雑誌
群像
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.150-167, 2006-06
著者
寶珠山 務 堀江 正知 筒井 隆夫 藤野 善久 田中 弥生 永野 千景 高橋 謙
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.367-376, 2005-12-01
被引用文献数
1

2002年にわが国で過重労働による健康障害防止対策の行政指針が示されてから3年が経過し, その成果が期待されている.本研究では, 長時間労働と心血管系疾患との関連について体系的文献レビューを実施し, 過重労働による健康障害の科学的根拠の最新の知見をまとめた.医学文献情報データベースPub Medを用いて, 関連キーワードによる検索および所定の条件による文献の取捨選択を行い, 原著論文12編を採択した.今回の結果から長時間労働と心血管系疾患の関連を強く支持する新たな科学的根拠は得られなかったが, 活力疲弊(Vital exhaustion)など心理社会的要因を扱ったものや交互作用項などを含む統計解析モデルを用いたものが認められ, これらの手法はわが国における今後の研究に応用できる可能性が考えられた.
著者
矢橋 晨吾 雨宮 悠 高 錫九 高橋 悟 田中 弥寿男
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.129-134, 1992-03-25
被引用文献数
1

以上の結果を総合的にまとめると以下のとおりになる.保水性及び通気性が良好であることは植物の生育にとって重要な条件であり,鹿沼土がこれらの条件を満たすのは,大粒径ほど多量に微細間隙を持ち保水性を高める一方,鹿沼土粒子が形成する粒間大間隙が通気性に大きく寄与していることが保水特性ならびに通気性の測定より明らかになった.さらに,単一混合する場合もなるべく粒径の大きいものを用いるのが良いことも明らかになった.今日,採取したものを風乾させ袋詰めにされ,園芸店において市販されているが,以上のことを考慮にいれ,今後鹿沼土を合理的に利用するには,袋詰めにする前において粒径及び間隙により分類し,植物により使い分ければ一層の効果が得られるものと考える.
著者
藤野 善久 堀江 正知 寶珠山 務 筒井 隆夫 田中 弥生
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.87-97, 2006-07-20
被引用文献数
8 34 19

労働環境をとりまく厳しい状況のなか,労働者のストレスやうつ・抑うつなどメンタルヘルス不全が増加していると指摘されている.これに伴い,精神障害等の労災補償に関する請求件数,認定件数ともに著しい増加傾向にある.労働時間,対人関係,職場における支援,報酬などは労働者のメンタルヘルスに影響を与える要因と考えられている.平成16年には厚生労働省が「過重労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会」報告書を発表し,長時間の時間外労働を行ったことを一つの基準として対象者を選定し,メンタルヘルス面でのチェックを行う仕組みをつくることを推奨した.しかしながら,上で示されたメンタルヘルス対策としての長時間労働の基準は,企業・産業保健現場での実践性を考慮したものであり,労働時間と精神的負担との関連についての科学的な確証は十分に得られていない.一方で,労働時間が様々な労働環境要因,職業ストレス要因と関連して労働者の精神的負担やメンタルヘルスに影響を与えることは,過去の研究からも合理的に解釈できる.そこで本調査では,労働時間とうつ・抑うつなどの精神的負担との関連を検討した文献の体系的レビューを行い,労働時間と精神的負担の関連についての疫学的エビデンスを整理することを目的とした.PubMedを用いて131編の論文について検討を実施した.労働時間と精神的負担に関して検討した原著論文が131編のうち17編確認された(縦断研究10編,断面研究7編).それらのレビューの結果,精神的負担の指標との関連を報告した文献が7編であった.また,労働時間の評価に様々な定義が用いられており,研究間の比較を困難にしていた.今回のレビューの結果,労働時間とうつ・抑うつなどの精神的負担との関連について,一致した結果は認められなかった.