著者
石川 信一 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.45-57, 2005-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、Children's Self-Statement Scale(CSSS)を作成し、その信頼性と妥当性を検討するとともに、児童における自己陳述と不安症状との関連を検討することであった。研究1では、小学生217名を対象に予備調査を行い、項目を抽出した。そして、小学生693名を対象とした因子分析の結果、CSSSは「ポジティブ自己陳述」「ネガティブ自己陳述」という2つの因子があることが示され、信頼性と妥当性が確認された。研究IIでは、小学生546名を対象に、 CSSSとスペンス児童用不安尺度(SCAS)による調査を実施した。その結果、SCASのすべての下位尺度において、「ネガティブ自己陳述」が強く影響していることがわかった。また、SOM得点によりポジティブに偏った認知の群は、 SCASの得点が低いことが示された。
著者
宮田 八十八 石川 信一 佐藤 寛 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-14, 2010-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、Children'sSocialProblem-SolvingScale(C-SPSS)を開発し、学級単位で実施する社会的問題解決訓練の効果を検討することであった。研究1では、92名の児童を対象に自由記述による質問調査を行い、対人的トラブル場面を収集した。次に、小学生365名を対象とした本調査を実施した。その結果、C-SPSSは再検査法により十分な信頼性があることが示され、内容的妥当性と構成概念妥当性も確認された。研究IIでは、43名の児童が社会的問題解決訓練群に、45名の児童がウェイティングリスト統制群に設定された。訓練実施後、統制群には変化がみられなかったのに対して、訓練群では問題解決スキルが有意に上昇していた。これらの結果から、C-SPSSの実用的可能性、および社会的問題解決訓練の効果および課題が検討された。
著者
荒井 穂菜美 青木 俊太郎 石川 信一 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.127-135, 2017-05-31 (Released:2017-10-30)
参考文献数
27

不安のコントロール感は不安症共通の心理学的脆弱要因である。そして、不安のコントロール感は安全確保行動を介し、社交不安に影響をおよぼすことが示唆されている。しかし、これまでの研究において過活動、制限行動、身体症状を隠す行動という三つのタイプの安全確保行動の媒介効果について実証的に検討を行った研究は存在しない。そこで本研究では、不安のコントロール感から社交不安への影響に対する過活動、制限行動および身体症状を隠す行動の媒介効果について検討を行った。対象者は、174名の大学生であった。媒介分析の結果、三つのタイプの安全確保行動の媒介効果および間接効果が有意であった。本研究の結果から、不安のコントロール感の低さから安全確保行動が生起し、結果として社交不安が維持されるという経路が確認された。本研究の結果から、今後社交不安の軽減を目的とするうえで、不安のコントロール感と安全確保行動の存在の重要性が示された。
著者
中西 陽 石川 信一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.11-21, 2021-01-31 (Released:2021-05-18)
参考文献数
33

本研究の目的は、小中学生の自閉症的特性と抑うつ症状の関連およびその媒介要因としてソーシャルスキルと友人との関係性を仮定したモデルを検証することであった。対象者は、小学4年生から中学3年生までの子ども(392名)とその母親であった。自閉症的特性とソーシャルスキルは母親の評定、友人との関係性と抑うつ症状は対象児の自己評定により測定した。構造方程式モデリングによる多母集団同時分析の結果、小学生男子、中学生男子、中学生女子においては、自閉症的特性のうち社会性の問題が、ソーシャルスキル、友人との関係性を媒介して抑うつ症状と関連することが示された。小学生女子においては、ソーシャルスキルと友人との関係性に関連が見られなかった。本研究は、自閉症的特性のうち社会性の問題が強い子どもの抑うつの予防において、ソーシャルスキル介入が重要であることを示唆した。
著者
石川 信一 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.145-157, 2003-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究の目的は、認知の誤りと不安の関連を検討することであった。本研究では、児童の認知の誤りを測定するChildren's Cognitive Error Scale(CCES)を作成し、 CCESと特性不安との関連を検討した。まず、217名の児童を対象に、自由記述にて児童が不安や心配を感じる不安場面を収集した。その結果、12の不安場面が抽出された。次いで、5人の臨床心理学を専攻する大学院生が不安場面における認知の誤りの項目について検討を行った。その結果、認知の誤りの項目として23項目が抽出された。さらに、それらの項目について、819名(男子408名、女子411名)を対象にした主成分分析の結果、20項目が抽出された。CCESは再テスト法と、Cronbachのα係数によって、十分な信頼性があることが示された。CCESの妥当性については、小学校教諭2名を対象としたインタビューを用いた内容的妥当性の観点から確認された。また、CCESの合計点について性差、学年差について検討するために2要因の分散分析を行ったところ、女子のほうが男子よりも認知の誤り得点が高いことが示され、学年差はないことが示された。最後に、認知の誤りと特性不安の関連を検討するため、CCESの合計点を高群、中群、低群の3群に分類した。群を要因とした分散分析の結果、認知の誤り得点高群は、中群、低群より特性不安が高いことが明らかになった。以上のことから、認知の誤りを示す児童は不安が高いことが明らかになり、本研究の結果から、児童の不安障害に対して適切な治療をするためには、認知の誤りに対する介入の必要性が示唆された。
著者
石川 信一 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.159-176, 2005-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、児童期不安症状の認知行動モデルを構築することであった。研究1の対象者は小学生546名であった。偏相関分析の結果、ストレッサーを統制した場合、認知変数は不安症状と関連がみられたのに対して、認知変数を統制した場合、ストレッサーと不安症状には関連がみられなかった。研究IIでは小学生550名であった。共分散構造分析の結果、「友だちとの関係」「学業」→「認知の誤り」→「ネガティブ自己陳述」→「不安障害傾向」→「分離不安」「パニック傾向」「心配」「特定の恐怖」「強迫傾向」というモデルの妥当性が確認された。本研究の結果、認知変数が不安症状に影響を与えることが示唆された。本研究の結果から、児童の認知の誤りやネガティブ自己陳述に働きかけることが、不安症状の改善をもたらすことが示唆された。
著者
国里 愛彦 高垣 耕企 岡島 義 中島 俊 石川 信一 金井 嘉宏 岡本 泰昌 坂野 雄二 山脇 成人
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-31, 2011

本研究は、環境中の報酬知覚について測定する自己記入式尺度の EnvironmentalReward Observation Scale (EROS) 日本語版を作成し、信頼性と妥当性の検討を行うことを目的とした。大学生と専門 学校生を対象に調査を行い、414名(男性269名、女性145名;平均年齢18.89±0.93歳)を解析対象 とした。探索的・確認的因子分析の結果、日本語版EROSは1因子構造を示した。信頼性において、 日本語版EROSは十分な内的整合性と再検査信頼性を示した。項目反応理論による検討を行った結果、 広範囲な特性値において測定精度の高いことが示された。日本語版EROSは、抑うつ・不安症状や行 動抑制傾向との負の相関、行動賦活傾向と正の相関を示した。不安症状を統制した場合、日本語版 EROSはアンヘドニア症状との相関が最も強い値を示した。以上より、日本版EROSの構成概念妥当 性が確認された。
著者
石川 信一 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.71-84, 2005-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、不安症状を示す児童に対する認知行動療法(CBT)プログラムの開発と、不安症状を示す児童への介入報告である。CBTプログラムは全8セッションで、(1)心理的問題の教育、(2)感情の整理、(3)認知の導入、(4)(5)認知的再体制化、(6)不安階層表の作成、(7)(8)エクスポージャー、からなる。CBTプログラムの特徴として、認知の誤りを測定、改善するといった点において、アセスメントと介入方法が連動していることが挙げられる。対象者は、14歳の不安症状を抱える男児であった。CBTプログラム適応の結果、介入終結時だけでなく、1か月後、2か月後フォローアップ時においても不安症状、認知の誤りの改善がみられた。注目すべき点として、認知の誤りの改善が不安症状の改善に先行したことが挙げられる。つまり、本研究の結果から、不安症状には不安を示す児童の認知が影響していること、不安症状の改善には認知の変容が必要不可欠であることが示唆された。
著者
石井 僚 村山 航 福住 紀明 石川 信一 大谷 和大 榊 美知子 鈴木 高志 田中 あゆみ
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.493-502, 2019
被引用文献数
2

<p>The study described here developed a short surrogate index for the children's socioeconomic status (SES) using house possessions and investigated its validity. In Study 1, 192 pairs of parents and their middle school-aged children participated in a questionnaire survey. Based on the results, three items regarding possessions at home were selected for the short surrogate index out of the 17 items used in the Programme for International Student Assessment. Furthermore, the short surrogate index for the children's SES was related to family income, parents' academic background, and hierarchy consciousness. In addition, it was found to have good test-retest reliability, thereby demonstrating its validity. To confirm that the item selection and validity in Study 1 did not involve sampling error, Study 2 investigated the reproducibility of validity with a different sample. One hundred ninetyfive pairs of parents and their middle school-based children responded to the questionnaire, and the results redemonstrated the index's validity. Studies in different disciplines using the short surrogate index can be conducted because SES can be both the main and confounding variable.</p>
著者
阿部 望 岸田 広平 石川 信一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.64-78, 2021-03-30 (Released:2021-05-01)
参考文献数
39
被引用文献数
4

本研究では,学校の実情に合わせた2つの強み介入を実施し,強み介入が中学生の精神的健康(生活満足度・抑うつ症状)に及ぼす効果について検討することを目的とした。研究1の強み認識・注目介入(自己や他者の強みを認識・注目させる介入)では中学3年生128名が対象であり,研究2の強み認識・注目・活用介入(自己や他者の強みを認識・注目させ,自己の強みを活用させる介入)では中学3年生87名が対象であった。分析の結果,研究1で実施した強み認識・注目介入は,生活満足度の向上に対してのみ効果があることが示唆された。一方,研究2で実施した強み認識・注目・活用介入は,生活満足度の向上と抑うつ症状の低減の両方に対して有効であることが示唆された。次に,効果的な強み介入の構成要素を探るために,介入の構成要素と対応する既存の強み変数の変化と精神的健康の変化の関連について探索的に検討した。その結果,強みの認識と他者の強みへの注目の変化が生活満足度の変化と正の関連を示し,強みの活用感の変化が抑うつ症状の変化と負の関連を示した。これらの結果から,生活満足度を向上させるためには強みの認識と他者の強みへの注目が重要であり,抑うつ症状を低減させるためには強みの活用が重要である可能性が示された。最後に本研究の課題と今後の展望について議論された。
著者
石川 信一 菊田 和代 三田村 仰 酒井 美枝 大屋 藍子
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は,児童青年の不安とうつに対する認知行動療法(CBT)の有効性をランダム化割付比較試験において検討することであった。電話による簡易スクリーニングと,事前査定の結果,包含基準に合致し,かつ参加に同意した51名を対象とした。対象者はランダムに先に介入を実施するCBT群と,後から実施するWLC群とに割り付けられた後,8回の介入を受けた。事前,事後,3ヶ月,6ヶ月にアセスメントを行った。分析の結果,主診断から外れる割合と重篤度について,事後においてはCBT群の方がWLC群よりも改善していることが示された。以上のことから,CBTによって児童青年の不安とうつの問題が改善することが示された。
著者
佐藤 寛 下津 咲絵 石川 信一
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.439-448, 2008-05-15

抄録 本研究では,わが国の一般中学生におけるうつ病の有病率について検討を行った。中学1~2年生328名(平均年齢13.3±0.6歳)を対象に,大うつ病,気分変調症,および小うつ病に関する半構造化面接を実施した。その結果,うつ病の時点有病率は4.9%(男子2.2%,女子8.0%),生涯有病率は8.8%(男子6.2%,女子12.0%)であり,約20人に1人が面接の時点でうつ病の診断基準に該当し,約11人に1人がこれまでにうつ病に罹患した経験があることが示された。自殺念慮はうつ病群の31.3%,非うつ病群の2.6%でみられ,自殺企図の既往歴はうつ病群の18.8%,非うつ病群の1.9%において認められた。
著者
石井 僚 村山 航 福住 紀明 石川 信一 大谷 和大 榊 美知子 鈴木 高志 田中 あゆみ
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.18233, (Released:2019-11-15)
参考文献数
66
被引用文献数
2

The study described here developed a short surrogate index for the children’s socioeconomic status (SES) using house possessions and investigated its validity. In Study 1, 192 pairs of parents and their middle school-aged children participated in a questionnaire survey. Based on the results, three items regarding possessions at home were selected for the short surrogate index out of the 17 items used in the Programme for International Student Assessment. Furthermore, the short surrogate index for the children’s SES was related to family income, parents’ academic background, and hierarchy consciousness. In addition, it was found to have good test-retest reliability, thereby demonstrating its validity. To confirm that the item selection and validity in Study 1 did not involve sampling error, Study 2 investigated the reproducibility of validity with a different sample. One hundred ninetyfive pairs of parents and their middle school-based children responded to the questionnaire, and the results redemonstrated the index’s validity. Studies in different disciplines using the short surrogate index can be conducted because SES can be both the main and confounding variable.
著者
岸田 広平 武部 匡也 石川 信一 キシダ コウヘイ タケベ マサヤ イシカワ シンイチ Kishida Kohei Takebe Masaya Ishikawa Shin-ichi
出版者
心理臨床科学編集委員会
雑誌
心理臨床科学 = Doshisha Clinical Psychology : therapy and research (ISSN:21864934)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.3-16, 2016-12-15

研究動向本論文の目的は,児童青年期の怒りに対する認知行動療法に関する展望を行うことであった。まず,児童青年期の怒りに関連する代表的な診断基準として,秩序破壊的・衝動制御・素行症群や抑うつ障害群について概観したうえで,怒りに関連した診断基準に最も近いものとして,重篤気分調節症が紹介された。次に,怒りに関連する代表的な理論として,学習理論,社会的情報処理モデル,ストレス相互作用説,認知モデルに関する説明を行った。さらに,それらの理論に基づく介入技法として,社会的スキル訓練,問題解決スキル訓練,自己教示訓練,リラクセーション,認知再構成法が紹介された。続いて,児童青年期の怒りに対するメタ分析の結果と代表的な治療プロトコルの概要が紹介された。その後,児童青年期の怒りに関する自己記入式のアセスメントの展望が行われた。最後に,児童青年期の怒りの問題点として,診断基準の洗練化,アセスメントにおける構成概念の混同,怒りに関連する認知的側面に関する基礎研究とそれに基づく介入の必要性が議論された。
著者
石川 信一 岩永 三智子 山下 文大 佐藤 寛 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.372-384, 2010-09-30 (Released:2012-03-07)
参考文献数
34
被引用文献数
3 8

本研究の目的は, 小学校3年生を対象とした集団社会的スキル訓練(集団SST)の実施による進級後の抑うつ症状への効果を検討することであった。本研究では, ウェイティングリストコントロールデザインが採用された。対象児童は, 先に集団SSTを実施する群(SST群114名)と, SST群の介入終了後, 同一の介入がなされるウェイティングリスト群(WL群75名)に割り付けられた。集団SSTは, 学級単位で実施され, 上手な聞き方, あたたかい言葉かけ, 上手な頼み方, 上手な断り方, 教師に対するスキルの全5回(1回45分)から構成された。加えて, 獲得された社会的スキルの維持促進の手続きとして, 終了後に集団SSTのポイントが記述された下敷きを配布し, 進級後には教室内でのポイントの掲示, ワンポイントセッション, ブースターセッションといった手続きが採用された。その結果, SST群とWL群において, 訓練直後に社会的スキルの上昇がみられ, 進級後もその効果が維持されていることが示された。さらに, 訓練群とWL群は, 1年後の抑うつ症状が有意に低減していることが示された。以上の結果を踏まえ, 早期の抑うつ予防における集団SSTの有効性と有用性に加え, 今後の課題について議論がなされた。
著者
石川 信一 岩永 三智子 山下 文大 佐藤 寛 佐藤 正二
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.372-384, 2010-09-30
被引用文献数
8

本研究の目的は,小学校3年生を対象とした集団社会的スキル訓練(集団SST)の実施による進級後の抑うつ症状への効果を検討することであった。本研究では,ウェイティングリストコントロールデザインが採用された。対象児童は,先に集団SSTを実施する群(SST群114名)と,SST群の介入終了後,同一の介入がなされるウェイティングリスト群(WL群75名)に割り付けられた。集団SSTは,学級単位で実施され,上手な聞き方,あたたかい言葉かけ,上手な頼み方,上手な断り方,教師に対するスキルの全5回(1回45分)から構成された。加えて,獲得された社会的スキルの維持促進の手続きとして,終了後に集団SSTのポイントが記述された下敷きを配布し,進級後には教室内でのポイントの掲示,ワンポイントセッション,ブースターセッションといった手続きが採用された。その結果,SST群とWL群において,訓練直後に社会的スキルの上昇がみられ,進級後もその効果が維持されていることが示された。さらに,訓練群とWL群は,1年後の抑うつ症状が有意に低減していることが示された。以上の結果を踏まえ,早期の抑うつ予防における集団SSTの有効性と有用性に加え,今後の課題について議論がなされた。