著者
杉山 智風 髙田 久美子 伊藤 大輔 大谷 哲弘 高橋 史 石川 利江 小関 俊祐
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-047, (Released:2022-09-06)
参考文献数
22

本研究の目的は、高校生を対象に問題解決訓練を実施し、抑うつ、活性化、回避に及ぼす介入効果を明らかにすることであった。あわせて、問題解決訓練の実施前後にかけての活性化/回避の変化によって、抑うつに対する介入効果に差異がみられるか、検討を行った。本研究では、高校生1年生253名を対象として、1回50分の問題解決訓練を実施した。その結果、対象者全体において抑うつ得点、活性化得点、回避得点の有意な変化は示されなかったが、活性化/回避の機能的変容が生じた可能性のある群において、抑うつ得点の有意な低下が示された。このことから、抑うつ低減において、問題解決訓練による問題解決スキルの習得だけではなく、対処行動の促進と強化子の随伴の重要性が示唆された。
著者
畔柳 三省 熊谷 哲雄 松尾 義裕 長井 敏明 黒須 明 早乙女 敦子 徳留 省悟
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.20-29, 2001
被引用文献数
2

1976年から1995年までの20年間の東京都23区内の学生・生徒の急死例の疫学調査を実施した。総数は255件であり,年別,月別,発生時状況,学生・生徒別,性別,健康状態,死因,治療状況,受診状況について検討し次の結果を得た。学生・生徒の急死は年平均12.8件発生し経年変化はほぼ一定であり,8月に多い。学校管理下での発生は約3割であり,そのうちスポーツ中は約6割である。男女比はどの学生も2:1であり,どの学生の健康状態でも健康群(自分が健康であると確信しているもの)と疾患群(直接死因となりうる既往症を指摘されているもの)の比率は約1:1である。死因は急性心機能不全63件,気管支喘息34件,心筋炎22件の順に多い。健康群の比率が高い死因は,急性心機能不全,心筋炎,脳内出血,クモ膜下出血,消化管疾患である。心筋炎,消化管疾患,気管支喘息で療養中の比率が高く,虚血性心疾患でスポーツ中,肥大型心筋症で歩行中の比率が高い。来院時心肺停止が約6割,病院外死亡および救急入院・受診中死亡は各2割である。突然発症した例は117件(45.9%)であり,症状があったが容体急変まで医療機関にかからなかった例は60件(23.5%)である。症状があり医療機関を受診したが自宅で容体急変した例は37件(14.5%)であり,消化管疾患の60%および心筋炎の45.5%がこの経過である。学生・生徒の突然死を予防するうえで,最多を占める原因不明の急性心機能不全の突然死機序の解明が待たれ,心筋炎のように発症からある程度の経過があるものについては早期診断・適切な経過観察の方法の確立が求められる。
著者
虎谷 哲夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.130, no.11, pp.1453-1462, 2010-11-01 (Released:2010-11-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

Vitamin B12 is produced only by prokaryotes and utilized by animals as an essential micronutrient. Genetic complementation analysis of cell lines from patients indicated that at least eight gene products are involved in intracellular B12 metabolism and utilization. We have investigated bacterial adenosylcobalamin-dependent enzymes and elucidated their structure-based fine mechanisms. They tend to undergo mechanism-based inactivation during catalysis, because they use highly reactive radicals for catalyzing chemically difficult reactions. We have discovered molecular chaperone-like reactivating factors for these enzymes that release a damaged cofactor forming apoenzyme. Methylcobalamin-dependent methionine synthase also undergoes inactivation, because it utilizes cob(I)alamin, a super nucleophile, for catalysis. Methionine synthase reductase is a reactivating partner for this enzyme. Recent studies suggested that activity-maintaining systems for B12 enzymes are present in animal cells as well, and thus hints for designing therapeutic agents for B12-related metabolic disorders might be obtained from the investigations of microbial B12 metabolism.
著者
高谷 哲夫 安心院 純子 長谷川 純 山崎 一
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.516-518, 2003-10-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
11

星状神経節ブロック (SGB) は網膜の血流を増やし, 視神経炎の治療に有効とされている. SGBで, 視神経炎後の視覚障害が著明に改善した症例を経験した. 症例は60歳の女性で, 左眼の視力低下と両眼の乳頭浮腫, および右眼のマリオット盲点の拡大, 左眼の中心暗点とマリオット盲点の拡大を認め, 両眼の視神経炎と診断された. ステロイド治療によって視力はかなり改善したが, 左眼の色覚異常や変視症などの視覚異常が残った. 視神経炎罹患1年6カ月後, 両手のレイノー現象のために当科外来で左SGBを開始した. 7回目のSGBを行った頃より左眼の変視症と色覚異常の改善を徐々に自覚するようになった. 約半年間の計23回のブロック後には, 色覚異常と変視症は著明に改善し, 視力もさらに改善して軽度の小視症を残すのみとなった. 陳旧性の視神経炎でも積極的にSGBを試みる価値があると考える.
著者
山原 条二 木谷 哲也 小林 弘美 河原 有三
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
薬学雑誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.110, no.12, pp.p932-935, 1990-12
被引用文献数
6

During screening for the development of drugs from natural products, methanolic extract of tuber of Stachys sieboldii MIQ. (Labiatae) significantly inhibited the lethal induced by KCN in mice. The methanolic extract was fractionated by column chromatography to identify the active constituents. Acteoside and stachysoside C, phenylethanoid glycoside, have a significant effect on the KCN-induced anoxia model.
著者
坂口 一彦 立岩 誠 水谷 哲郎 宮武 博明
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.724-728, 1992

再膨張性肺水腫は, 気胸や胸水にて虚脱した肺を, 治療により再膨張させた後に生じる肺水腫であり, その発生は比較的まれとされてきた. しかし近年, 自然気胸の増加に伴い, 胸腔ドレナージを施行する際に, 医原性合併症としての本症の発生に注意を払う必要がある. 諸家の報告と, 自験例での特徴をまとめると, (1) 長期間の肺虚脱(3日以上)の症例に発生する. (2) 急激な肺の再膨張のあと数時間以内に発生するものが多いが, 部分的な再膨張過程においても出現をみるものがあった. (3) 従来は持続的陰圧吸引後に多いとされてきたが, 近年用いられるようになったフラッターバルブによる平圧脱気に際しても出現する可能性が高い. (4) 死亡例から, ほとんど自覚症状をしめさぬ軽症例もあり, 注意深い経過観察により, 本症の発生頻度は, 従来の報告以上に高い可能性をもつものと思われる.