著者
神谷 哲司
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.238-249, 2013 (Released:2015-09-21)
参考文献数
44
被引用文献数
4

本研究は育児期夫婦における家庭内の役割に着目し,その類型化を元に,家庭内役割観が相互に調整されていない(異なる)夫婦の関係性を明らかにすることを目的とした。具体的には,「相手にとっての自分の役割」と「自分にとっての相手の役割」という夫婦双方の家族成員としての役割観に基づき夫婦をペアとした家庭内役割観タイプを抽出し,夫婦関係満足度や情緒的なかかわりとの関連を検討した。質問紙による183組の夫婦のペアデータが分析された結果,家庭内役割観タイプとして,夫婦双方ともにすべての役割を重要であると認識する相互役割高群,反対に重要ではないとする相互役割低群と,役割観が異なるタイプとして,妻が夫を重要だと認識する一方で夫は自分もパートナーも重要でないと認識する視点格差群が抽出された。この視点格差群は相互役割高群と同様,妻の夫婦関係満足が高く,また情緒的なかかわりが夫婦ともに相互役割低群よりも高かった。これらの結果から,視点格差群について先行研究との関連で討議され,家庭内役割観のギャップを夫からの情緒的なかかわりによって補償している可能性が示唆された。
著者
中野 廣一 結城 真理子 久保 由紀子 亀谷 哲也 小豆島 正典 坂巻 公男
出版者
岩手医科大学歯学会
雑誌
岩手医科大学歯学雑誌 (ISSN:03851311)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.100-105, 1998-08-24 (Released:2017-06-05)
参考文献数
14

The upward curving of the inferior border of the mandible anterior to the mandibular angle is known as the antegonial notch. Previous studies suggest that antegonial notch development is dependent on the growth of the mandibular condyle and the mandibular ramus, and the mandibular angle’s attachment to the superficial layer of masseter muscle and medial pterygiod muscle.The functions of the muscle group of the upper hyoid bone for opening movement are known to influence maxillofacial growth which is also affected by the position of the hyoid bone group and the mandibular shape. We assume that antegonial notch variables relate to the variance in the position of the hyoid bone. The aim of this paper is to determine possible associations between the antegonial notch’s depth and maxillofacial morphology which includes the mandible and the position of the hyoid bone.This study was based on 31 adult female subjects with a mean age of 23 years and 5 months (S. D., 1 year,2 months). Lateral roentgenocephalograms were taken to study the depth of the antegonial notch, facial shape, and the position of the hyoid bone. Simple correlation analysis was used to assess the cephalometric variables.In subjects with a deep antegonial notch, point B was significantly positioned to the posterior position (p<0.05), the ramus height was shorter (p<0.05), the mandibular plane angle was larger (p<0.05), the lower facial height was longer (p<0.01), and the angle between the mandibular plane and the hyoid bone was larger (p<0.01).This suggests that the depth of the antegonial notch was affected not only by mandibular shape and size but also by the position of the hyoid bone.
著者
小林 輝雄 藤橋 芳弘 円谷 哲男 佐藤 純一 大浦 泰 藤井 保和
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.117, no.5, pp.609-615, 1997-04-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
15

In Japan speed tests in 300km/h region have been carried out since Oyama Test Line recorded a 319km/h run in 1979. Meanwhile TGV recorded a 515.3km/h run by an electric locomotive installed with a pantograph in 1990 and ICE did 406.9km/h using similar train in 1988. High speed current collection tests over 400km/h using electric railcars have been desired in Japan. Problems of high speed tests are: train speed approaching wave propagation velocity, multi-pantographs resonance, and too large uplift of contact wires caused by lift. It is necessary to keep wave propagation velocity of contact wire higher than train speed. CS contact wire and TA contact wire were compared in high speed tests because it was impossible to get a good current collecting performance by using hard-drawn copper contact wires. In December, 1993 using these contact wires we carried out high speed running tests of 400km/h region on Jyoetsu Shinkansen with the test train STAR 21 which JR EAST built for high speed tests. This paper gives the current collecting performance of these contact wires predicted by simulation and running tests at 425km/h.
著者
渋谷 哲也
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戦後ドイツ映画における移民表象の変遷を辿りながら、移民をめぐる社会状況の変化を考察した。とりわけ日本では無名ながらドイツでは高い評価を受けているトルコ系移民二世の映画作家トーマス・アルスランの作品を取り上げ、トルコや移民というテーマを扱う際にいかに紋切り型的表現から距離を取り、社会の多様性を浮き彫りにする手法を明らかにした。
著者
佐藤 光夫 長谷 哲成 湯川 博 田中 一大 川口 晃司 川井 久美 横井 香平
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

【本課題の目的】肺癌のドライバー癌遺伝子の一つ変異KRASは腺癌の20%程度に認められるが、その標的治療の開発は未成功である。これは変異KRASの癌化シグナルの薬物的な遮断が困難なためである。応募者は正常気管支モデルであるHBEC実験系を確立し(Sato, Cancer Res 2006)、さらに、変異KRASをHBECに導入すると悪性度の増強にもかかわらず細胞分裂を停止する現象を発見した(Sato, Mol Cancer Res 2013)。これは正常細胞が癌化を防御する機構の一つ癌遺伝子誘導細胞老化(oncogene-induced senescence; OIS)である。以上より、応募者は変異KRAS肺癌の新たな治療として変異KRASシグナルの遮断ではなく、OISを活用する治療を着想した。その実現のために、まず、HBECを用いて、OIS抑制作用を表現型とする機能的なプールshRNAスクリーニングを実施し、複数の標的候補を特定した。特に、肺癌細胞株が高発現する遺伝子Xは小分子化合物による治療標的となる可能性があるため、学内創薬産学協同研究センター(ラクオリア創薬株式会社)化合物スクリーニングを予定した(機密保持契約締結済み)。本研究はこれらの研究を発展させ、変異KRASならびに変異EGFRやALK遺伝子によるOIS誘導治療の開発を目的とする。【2018年度の成果】遺伝子Xのターゲットバリデーションを完了した。5万化合物のハイスループットスクリーニング(HTS)を実施しヒット化合物の再現性や化学構造に基づき、2018年12月までに候補化合物を10個まで絞り込んだ。また、遺伝子X阻害による増殖抑制のメカニズム解明のための実験を実施した。
著者
髙橋 雅之 表 和徳 相川 忠夫 浅川 響子 檀浦 裕 小松 義和 相馬 孝光 岩切 直樹 牧野 隆雄 甲谷 哲郎 加藤 法喜
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.723-729, 2014 (Released:2015-07-12)
参考文献数
13

症例は65歳男性. 2012年8月, 意識消失し自宅階段から転落, 家族により救急要請. 救急車内で無脈性心室頻拍 (ventricular tachycardia ; VT) および心室細動を認め, 不整脈原性の意識消失が疑われ当院搬入となった. 搬入時, モニター心電図はwide QRSとnarrow QRSが入り乱れた異常波形を示していた. 12誘導心電図で下壁誘導のST上昇, 心臓超音波検査所見で壁運動低下を下壁に認めたため急性冠症候群を疑い, 冠動脈造影を施行したところ, 右冠動脈#2 : 100%の所見にて引き続き経皮的冠動脈インターベンション施行し血行再建に成功した. しかし冠疾患集中治療室入床後に血圧低下を伴うサインカーブ様の非持続性VTが散見され, まもなく無脈性VTとなり, 電気的除細動にて自己心拍再開を得た. アミオダロン持続静注を開始したが, 最終的に無脈性VTが頻発し電気的除細動による停止効果も得られなくなり, 循環動態の破綻をきたしたため, 経皮的心肺補助装置を留置した. その後, 透析患者にもかかわらず塩酸ピルシカイニド75mg/日の服用が判明し, 血中濃度高値が予想されたため, 持続的血液濾過透析も開始した. 翌日には洞調律となり循環動態も安定した. VT stormをきたした塩酸ピルシカイニド中毒について, 文献的考察を含めて報告する.
著者
堀井 俊洋 藤谷 哲 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.79-87, 1999-09-20
被引用文献数
2

本研究では,文章作成過程における文章産出を促すことを目的とした文章作成支援ツールCard Processorの開発と評価を行った.本ツールCard Processorでは,文章の構造を視覚的に配置しながら文章作成をおこなうことが可能であるユーザインタフェースを実装した.Card Processorとワードプロセッサ(Microsoft Word 97)で作文をする評価実験では, Card Processorで作成した文章は,テーマに関するトピック数を多く含むという傾向がみられた.また,入力作業と推敲作業に費やす時間において,両者に特徴的な違いがみられた.それらの結果から,Card Processorは,「草案の生成,草案の組織化,目標の組織化」といった文章作成作業を支援しており,ワープロは,「読み返し,修正する」といった文章作成作業を支援していることを明らかにした.
著者
望月 俊男 藤谷 哲 一色 裕里 中原 淳 山内 祐平 久松 慎一 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.15-27, 2004
被引用文献数
12

本研究では,CSCLにおける協調学習に参加している学習者の発言データをもとに,学習者自身や教師がその学習コミュニティのコミュニケーション活動を評価するための方法を提案した.その方法とは,電子掲示板の議論内容と個々の学習者との関係を,コレスポンデンス分析を用いて可視化することである.この方法を用いて,実際に異文化間CSCL実践の一部のデータを分析し,可視化した議論データについて,日本人学習者・外国人学習者の約半数,および日本人教師1名にインタビューを行い,評価情報としての妥当性と適用可能性を検討した.その結果,可視化されたマップによって,コミュニティの話題の分担や,学習者一人一人の知識共同体への関わりの状態が示され,自分や他者の興味関心に対する内省や気づきを促進し,学習者間の議論を活性化する可能性が示された.また,教師にとっては教育プログラム期間中の討論の評価やモデレーションに有効である可能性が示された.
著者
三尾 稔 杉本 良男 高田 峰夫 八木 祐子 外川 昌彦 森本 泉 小牧 幸代 押川 文子 高田 峰夫 八木 祐子 井坂 理穂 太田 信宏 外川 昌彦 森本 泉 小牧 幸代 中島 岳志 中谷 哲弥 池亀 彩 小磯 千尋 金谷 美和 中谷 純江 松尾 瑞穂
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

文化人類学とその関連分野の研究者が、南アジアのさまざまな規模の20都市でのべ50回以上のフィールド調査を実施し、91本の論文や27回の学会発表などでその結果を発表した。これまで不足していた南アジアの都市の民族誌の積み重ねは、将来の研究の推進の基礎となる。また、(1)南アジアの伝統的都市の形成には聖性やそれと密接に関係する王権が非常に重要な機能を果たしてきたこと、(2)伝統的な都市の性格が消費社会化のなかで消滅し、都市社会の伝統的な社会関係が変質していること、(3)これに対処するネイバーフッドの再構築のなかで再び宗教が大きな役割を果たしていること、などが明らかとなった。
著者
木村 建貴 香西 直文 坂本 文徳 福谷 哲 池上 麻衣子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.III_375-III_382, 2020 (Released:2021-03-17)
参考文献数
20

粘土鉱物に吸着したセシウムの一部が微生物の作用により溶出することが明らかになってきている.一般的に植物は微生物と共生関係を築くが,粘土鉱物からのセシウム溶出に係る植物と微生物間における相乗効果は報告されていない.本研究では,植物由来の有機酸に着目し,まず植物(シロツメクサ)が生産する有機酸分析を行った.次に,シロツメクサ由来として同定された乳酸を用いて,微生物の培養実験を黒雲母存在下で行った.その結果,増殖の誘導期において黒雲母から溶出した鉄等の量が乳酸の添加により増大した.また,セシウムを吸着させた黒雲母からセシウムが溶出した.これは黒雲母が部分的に溶解したことに伴い吸着していたセシウムが溶出したと考えられる.また,溶出したセシウムは,増殖した微生物に吸収されたことが示唆される.
著者
水谷 哲也 大場 真己 本道 栄一
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

「植物ウイルスはヒトを含む動物には感染しない」これは常識と考えても良かった。しかし、少しずつではあるがヒトや動物において増殖している可能性を示唆するデータが出てきている。このことから、生野菜を食べて植物ウイルスが大量に体内に取り込まれた場合にはある種の病気を起こすのではないか、という発想も成り立つ。これまでは常識にとらわれて、植物ウイルスとヒトや動物との関係が真剣に研究されてこなかった。それゆえ、本研究において植物ウイルスがヒトや動物に感染する可能性を科学的に検証する。
著者
網干 光雄 大浦 泰 小林 輝雄 円谷 哲男 上野 勝禧 金子 誠
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.116, no.4, pp.490-496, 1996-03-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

For Projected Shinkansen, it is necessary to develop an economical overhead catenary system allowing stable train operation at high-speed and meeting the transport demands. In order to develop a new overhead catenary system for this purpose, we designed a high tension simple catenary system with CS contact wire (Copper contact wire with Steel-core), and constructed this system on Tohoku Shinkansen line for operation test. During 4 years, we measured contact loss of pantograph, uplift and stress of contact wire, its maintainability including the wear of contact wire, and others. The test results so far obtained prove that its performance is as high as that of high-tension heavy compound catenary system.
著者
福丸 大智 赤松 良久 新谷 哲也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.22-00234, 2023 (Released:2023-08-20)
参考文献数
19

本研究では,中小河川における流域一貫の即時的かつ高精度な河川水位予測実現に向けて,深層学習を用いた河川水位予測モデルを構築し,入出力層に用いるデータの種類および入出力層の構造が異なる複数の計算条件で比較することによって,モデルの高度化について検討した.その結果,集水域内全地点の雨量および水位変化を入力層に用いて集水域内全地点の水位を同時予測するモデルにおいて,ハイドログラフの時系列全体の再現性を表すNash係数がほとんどの水位観測所で0.9以上,ピーク水位の誤差率は10%以下を示し,ピーク水位発生時刻の遅れも他の条件に比べて軽減した.したがって,このモデルを用いることにより,3時間先の流域全体の河川水位をより高精度に予測可能であることが示された.
著者
濵砂 良一 川井 修一 安藤 由起子 伊東 健治 倉島 雅子 西村 敬史 山口 隆正 吉村 誠 小林 とも子 村谷 哲郎 松本 哲朗
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.1-7, 2011-01-20 (Released:2015-04-06)
参考文献数
14
被引用文献数
3 1

Real-time PCR 法を用いてChlamydia trachomatis(クラミジア)およびNeisseria gonorrhoeae(淋菌)を検出するAbbott RealTime CT/NG assay(realtime 法:アボットジャパン)の有用性を,女性子宮頸管スワブ検体,女性初尿検体,男性初尿検体を用いて検討した.対象は北九州市内の産科・婦人科施設,泌尿器科施設,皮膚泌尿器科施設を受診し,子宮頸管炎または尿道炎が疑われた患者,女性88 名,男性100 名である.これらの検体をBD プローブテックET CT/GC(プローブテック:日本べクトン・ディッキンソン)と比較した.クラミジアに対する全検体の陽性一致率は97.1%(66/68),陰性一致率は99.0%(206/208),淋菌に対する全検体の陽性一致率は100%(33/33),陰性一致率は100%(243/243)であった.女性の子宮頸管スワブでは3 検体の不一致例が,男性初尿では1 検体の不一致例があった.女性初尿においては2 検査間の不一致例はなかったが,子宮頸管スワブと初尿との間にrealtime 法で3 症例,プローブテックで4 症例の不一致があった.realtime 法とプローブテックの不一致例のうち3 検体でアプティマCombo 2 クラミジア/ゴノレア(富士レビオ)による再検査を行い,すべて陽性であった.女性では子宮頸管スワブ,初尿のいずれかのうち2 つ以上の検査で陽性の場合,男性では初尿で2 つ以上の検査で陽性の場合,「真のクラミジア陽性」症例と仮定すると,realtime 法における子宮頸管スワブ,女性初尿,男性初尿の感度はそれぞれ94.4%,77.8%,97.4%であった.これに対しプローブテックではそれぞれ88.8%,77.8%,100%であった.淋菌に対する感度はいずれの検査でも100%であり,realtime 法は女性の子宮頸管スワブ,男性の初尿を用いると,淋菌,クラミジアに対してプローブテックと同等かそれ以上の有用性を示した.