著者
鈴木 勇一郎
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.137-149, 2010-03

現代の日本では、さまざまなところでおみやげが売られているのを目にすることができるが、世界的に見れば必ずしも一般的な光景とは言えない。とりわけその土地の名物とされる饅頭や団子などの食品類の種類の豊富さは他に類を見ない。本稿では、このような近代日本のおみやげを近世からの展開をふまえ、鉄道の発達との関係性から検討することを目的とする。近世日本では神社仏閣への参詣の際に、その証としてのおみやげが発達したが、その多くは、軽くて嵩張らない非食品であった。また神社仏閣の門前や街道筋などでは饅頭や団子などの名物がさかんに売られるようになっていたが、基本的にその場で食されるもので、おみやげとされるものではなかった。明治時代になり鉄道が開通し旅行時間が短縮されると、これら近世以来の名物は持ち帰りができるおみやげに転化していくようになった。その際には、駅構内での販売権の確保が知名度向上の大きな要素であったが、同時に保存性の向上や容器の改良など、おみやげとするのにふさわしい形へと変容していった。こうした創意工夫を奨励し、知名度の向上に大きな役割を果たしたのが、各地で開催された博覧会や共進会であった。このように、近代日本のおみやげは前近代からの系譜の上に成り立ちつつも鉄道や博覧会といった近代的な装置を媒介として独自の展開を遂げていったことが大きな特徴といえる。Study of Souvenirs in the Modern Period : Focusing on Tokaido
著者
鈴木 宜之 薄倉 淳子
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.884-887, 1999-11-05

少数多体系は粒子の種類, 相互作用によって個性豊かな性質を示す. ランダムに抽出されたサンプル(基底関数)の中から最適なものを選ぶ, 即ちくじ引で当たりくじを拾うstochasticな変分計算によって, 少数系の束縛解を高精度で得ることができる. この簡単な処方箋を紹介し, 回転運動を表すグローバルベクトルと組み合わせた相関ガウス基底を用いた応用例や, ポジトロニウム分子の励起状態に関する新たな結果について報告する.
著者
鈴木 陽彦 菅野 信之 赤澤 明彦 早川 陽子 手塚 あさみ 森 啓太 松浦 功泰 奥中 麗衣 白石 陽造
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.33-37, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
8

15歳3ヶ月齢の未去勢雄のミニチュア・ピンシャーが摂食困難を主訴に来院した。口腔内検査にて舌小体付着部正中にSCCを認め、腫瘍の完全切除を目的に舌全摘出術を実施した。術後は胃瘻チューブによる補助的な飲水管理を必要としたが自力採食は可能であり、術後18ヶ月生存した。悪性度が極めて高い舌SCCに対しても舌全摘出術を行うことで局所再発を防ぎ、飼主が満足できるQOLを維持することが可能であった。
著者
鈴木 俊介
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要
巻号頁・発行日
vol.49, no.1-2, pp.11-18, 2013-03-22

ゲノムインプリンティングは一部の遺伝子に親由来により異なるエピジェネティック修飾を与え,片親性発現を引き起こす。本来,雄由来と雌由来の染色体からなる二倍体の細胞をもつことは劣勢変異の表現型を抑える大きなメリットがあるが,片親性発現であるインプリント遺伝子は二倍体でありながらその機能が一倍体と同じ状態になっている。このユニークな遺伝子発現制御機構は,高等脊椎動物において哺乳類には広く保存されているが,鳥類以下では見つかっていない。ゲノムインプリンティングが哺乳類の進化上なぜ現れ,どのように進化して現在まで保存されてきたかは,非常に興味深い側面であるがまだ結論は出ていない。哺乳類には,卵生で胎盤をもたない単孔類,胎生だが真獣類と比べ非効率的な胎盤をもち早期に出産する有袋類,効率のよい胎盤をもち長期間胎内で子を育てる真獣類という,それぞれ異なった生殖様式をとる三つのサブグループが存在する。ゲノムインプリンティングの進化は,哺乳類の中でも胎生である真獣類と有袋類のみにみられること,インプリント遺伝子群に胎児の成長や母子間の栄養輸送,母性行動などに関わる遺伝子が複数含まれること,ほとんどのインプリント遺伝子が胎盤組織で高い発現レベルを示すことなどから,哺乳類の胎生の進化と関連があったと考えられている。したがって,生殖様式の異なる真獣類と有袋類においてインプリンティングを受ける遺伝子や領域,メカニズムを解析し比較することは,その起源や生物学的意義,進化を考察する上で必須である。本総説では,これまでのほとんどの研究が対象にしてきたマウスやヒトとは別のグループである有袋類や単孔類を含めた比較解析により見えてきたこれらの知見について議論する。
著者
鈴木 舞
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2015

審査委員会委員 : (主査)東京大学教授 福島 真人, 東京大学教授 橋本 敦彦, 東京大学教授 木村 忠正, 東京大学準教授 津田 浩司, 国際基督教大学上級準教授 山口 富子
著者
鈴木 隆夫 荒堀 忠久
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1036, pp.637-642, 1981-12-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 4

ケイ石耐火物の主成分であるシリカの安定相は, 867℃以下で石英, 867°-1470℃でトリジマイト, 1470℃以上でクリストバライトである. しかし, 高炉熱風炉や他の炉でも, ケイ石耐火物を1470℃以下のトリジマイト安定温度域で使用した場合でも, しばしばクリストバライトの生成が認められる. そこで, この原因及び転移機構について検討した.本研究で使用したケイ石耐火物も, トリジマイト-クリストバライトの転移温度は1470℃である. しかし, この試料に熱風炉のダスト (Fe2O3 41.9wt%, Al2O3 34.0%, SiO2 20.4%) を添加してトリジマイト安定温度域で熱処理したところ, クリストバライトに転移した. これは, ダスト中のAl2O3成分の影響によるものであり, Al2O3によるシリカの転移への影響を定量的に検討した結果, Al2O3の添加量増大とともに1470℃の転移温度が低下し, 1470℃以下でもクリストバライトの生成温度域が存在することが明らかになった. この領域は, ケイ石耐火物中のCaOの添加量によっても変化する.
著者
鈴木 功眞
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.85-72, 2004-04-01

『倭玉篇』諸本の中で現存最古の『延徳本』(延徳三年<一四九一>写)に就いては、既に部首排列が『大広益会玉篇』と、注のうち万葉仮名のものは『世尊寺本字鏡』・『音訓篇立』との関連性が有り、かつ、巻末に増補されている「倭玉」とする独自の九部首は、『音訓篇立』・『第四類本』との関連性が認められる八部首と、典拠不明の「曽」部から成るとされている。この先行研究に対し、本稿では、『延徳本』の部首排列が『会玉篇』と対応する部分の掲出字排列は『会玉篇』諸本の中でも内閣文庫蔵十二行本の元版による事、注は殆どが、『音訓篇立』・『第四類本』に典拠を有する事、かつ、典拠不明とされた巻末「曽」部も、掲出字排列と注の点で『第四類本』の「弟」部と関連性が認められる事を論証する。そして、『会玉篇』・『音訓篇立』・『第四類本』の部首排列・掲出字排列の体系に基準を置くと、『延徳本』はそれらの一部しか採録しない不完全な字書である事を述べる。
著者
鈴木 基子
出版者
日本中国語学会
雑誌
中国語学 (ISSN:05780969)
巻号頁・発行日
no.239, pp.p134-143, 1992-11
著者
鈴木 和子
出版者
駒澤大学
雑誌
論集 (ISSN:03899837)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.121-135, 1988-03
著者
鈴木 俊哉
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2012-DD-86, no.3, pp.1-10, 2012-07-12

広く使われる漢字の分類方式として部首・画数分類方式がある。現在普及している部首体系は康煕字典の部首分類、および、康煕字典部首を常用漢字字体に基いて縮約したものである。しかし、康煕字典以前の字書の部首分類は必ずしも康煕字典の体系と一致しておらず、また、特定の部首体系が支配的だったわけでもない。そのため、ある漢字がどの部首に配置されるかは必ずしも一定しておらず、しかも配置された部首の字形が似せられてしまうため、字書ごとに字形が異なるという状況があった。近年、漢字字典の収録字数を増やすために、それらの古字書から漢字を採集したため、実際には使い分けが不能であるにも関わらず、字書ごとに異なる部首に配置され、あたかも別字のように考えられて国際標準符号にとりいれられる問題が発生している。本稿では説文解字に存在したが、その後消滅した部首について、そこに含まれていた漢字がどのように分散し、漢字分類方式によって字形がどのように変化したかの調査結果を報告する。あわせて、国際標準における漢字統合規則の改訂の必要性について考察する。