著者
川本 哲也 小塩 真司 阿部 晋吾 坪田 祐基 平島 太郎 伊藤 大幸 谷 伊織
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.107-122, 2015 (Released:2017-06-20)
参考文献数
73
被引用文献数
19

本研究の目的は,大規模社会調査のデータを横断的研究の観点から二次分析することによって,ビッグ・ファイブ・パーソナリティ特性に及ぼす年齢と性別の影響を検討することであった。分析対象者は4,588名(男性2,112名,女性2,476名)であり,平均年齢は53.5歳(SD=12.9,23–79歳)であった。分析の対象とされた尺度は,日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J;小塩・阿部・カトローニ,2012)であった。年齢と性別,それらの交互作用項を独立変数,ビッグ・ファイブの5つの側面を従属変数とした重回帰分析を行ったところ,次のような結果が得られた。協調性と勤勉性については年齢の線形的な効果が有意であり,年齢に伴って上昇する傾向が見られた。外向性と開放性については性別の効果のみ有意であり,男性よりも女性の外向性が高く,開放性は低かった。神経症傾向については年齢の線形的効果と性別との交互作用が有意であり,若い年齢では男性よりも女性の方が高い得点を示した。
著者
小塩 真司 阿部 晋吾 Pino Cutrone
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.40-52, 2012-07-31 (Released:2012-09-07)
参考文献数
35
被引用文献数
115 201

本研究の目的は日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)を作成し,信頼性と妥当性を検討することであった。TIPI-Jは10項目で構成され,Big Fiveの5つの因子を各2項目で測定する尺度である。TIPI-Jの信頼性と妥当性を検討するために,計902名(男性376名,女性526名)を対象とした複数の調査が行われた。各下位尺度を構成する2項目間には有意な相関が見られ,再検査信頼性も十分な値を示した。併存的妥当性と弁別的妥当性の検討のために,FFPQ-50(藤島他,2005),BFS(和田,1996),BFS-S(内田,2002),主要5因子性格検査(村上・村上,1999),NEO-FFI日本語版(下仲他,1999)との関連が検討された。自己評定と友人評定との関連を検討したところ,外向性と勤勉性については中程度の相関がみられた。これらの結果から,TIPI-Jの可能性が論じられた。
著者
袋本 久美子 阿部 晋吾
出版者
『宗教/スピリチュアリティ心理学研究』編集委員会
雑誌
宗教/スピリチュアリティ心理学研究 (ISSN:27581004)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.41-52, 2023 (Released:2023-08-30)

本研究は,個人の祈りの言葉の構造を明らかにし,祈りの言葉の違いが精神的健康にどのような影響を及ぼすか検討するために一連の研究の手始めとして行われた。調査は208名(男性112人,女性94人,無回答2人,平均年齢37.05歳,標準偏差15.12) を対象にweb上で実施された。祈りの言葉をクラスタ分析した結果,合計6つの祈りのタイプ(誓願,請願,取引,感謝、「誓願・感謝」、非該当)に分類された。また,祈りの頻度,祈りのタイプとLOCの相関分析を行ったところ,LOCの内的統制が高いほど祈る頻度も高くなり、誓願の祈りをすることが明らかとなった。祈りのタイプと祈る場面,各場面での具体的な言葉の対応分析を行ったところ,異なる祈りのタイプは場面や祈りで使用される言葉にも異なる傾向が見られることが確認された。
著者
阿部 晋吾 高木 修
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.12-20, 2005

In this study, we asked participants (229 students, 87 male and 142 female) to describe experiences both in which they expressed anger to someone and in which someone expressed anger to them, and examined whether there were differences between expressing and expressed positions in the determinants of the interpersonal effects of anger expression. The results showed that, while the justice evaluation of anger expression by persons who expressed anger did not exert any influence on interpersonal effects, the justice evaluation of those who were expressed anger to had statistically significant influences on interpersonal effects. We suggested from this that the more justified the anger-expressed person evaluates the anger expression as, the more positive the interpersonal effects tend to become. It was also found that the strength and direction of the influences of expressing anger on interpersonal effects differed between anger-expressing and anger-expressed positions.
著者
阿部 晋吾 太田 仁
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.294-304, 2014-12-30 (Released:2015-03-30)
参考文献数
51
被引用文献数
4 1

本研究では中学生を対象に, 自己愛傾向の程度によって, 教師からの叱りの動機推測が援助要請態度に及ぼす影響に差異がみられるかどうかを検討する質問紙調査を行った。その結果, 教師からの叱りに対して向社会的動機を推測するほど, 援助適合性認知は高くなる一方, 自己中心的動機を推測するほど, 援助適合性認知は低くなることが示された。自己中心的動機の推測はスティグマ認知にも影響を及ぼしていた。また, 自己愛傾向の高い生徒は, 向社会的動機の推測の影響が弱く, 自己中心的動機の推測の影響が強いことも明らかとなった。
著者
阿部 晋吾 高木 修
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯心研 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.35-42, 2018-08-07

<p>In this study, participants (623 students) were examined using two scenarios whether justifiability evaluation of anger expression would be affected by the differences in victim's position or perpetrator's position, the magnitude of damage, and perpetrator's responsibility. As a result, against the prediction, perpetrators tended to evaluate victim's anger expression as being more justifiable than victims. However, since the magnitude of damage and responsibility had significant influences on justifiability evaluation, and these influences were stronger in perpetrators than in victims, the other hypotheses were supported. Moreover, in the specific situation, it was suggested that expressing anger was evaluated as being more justifiable than suppressing anger.</p>
著者
突沖 満則 松三 昌樹 水川 俊一 阿部 晋也 板野 義太郎 小坂 二度見
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.263-269, 1984-07-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
27

血清亜鉛は, 熱傷, 心筋梗塞, 手術侵襲および急性感染症などにより減少することが報告されている. 今回われわれは, 吸入麻酔下に予定手術を行なった24例について, 術後7日目までの血清亜鉛を測定したので報告する.大手術群16例の平均血清亜鉛は, 術前101±15.5μg/100mlであったものが, 術後2時間で57±10.6μg/100mlと最低となり, その後漸増し, 術後3日目には94±24.6μg/100mlと術前のレベルに回復した.一方, 小手術群8例の平均血清亜鉛は, 術前104±22.8μg/100mlから, 術後1日目に78±18.0μg/100mlと最低となり, 以後漸増し, 術後3日目には84±16.7μg/100mlと術前のレベルに回復した.術後1時間および2時間の血清亜鉛を大手術群と小手術群で比較すると、大手術群で有意に低値を示した.このように, 血清亜鉛減少の開始時期と程度は手術侵襲の大きさに相関していると考えられるが, 血清亜鉛が術前のレベルに回復するまでの期間は, 大手術群と小手術群で有意差はなかった.
著者
阿部 晋吾 高木 修
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.65-73, 2011-02

In this study, we examined the relationship between the level of narcissism and helping behavior. Participants, 108 students, were asked to rate the Narcissistic Personality Inventory-Short Version (NPI-S), the normative attitude toward helping, helping ability, and daily helping behaviors. Results indicated that the higher the sense of superiority and competence, which was an aspect of the narcissistic personality, the higher they rated their helping ability. On the other hand, the higher the need for attention and praise, another aspect of the narcissistic personality, the more they rated positively on their normative attitude. Moreover, helping ability and the normative attitude were positively related to the daily helping behaviors. These results suggested that there would be two processes in the influences of narcissism on helping behavior.本研究では、対象者(108名の学生)に自己愛人格目録短縮版(NPI-S)と、援助規範意識、援助能力評価、援助行動について回答してもらい、自己愛傾向の程度によって援助行動に差異が見られるかどうかを検討した。その結果,自己愛傾向のうち、優越感・有能感が高いほど、援助能力評価が高いことが明らかとなった。また、注目・賞賛欲求が高いほど、肯定的な援助規範意識を持ちやすいことも明らかとなった。さらに、援助規範意識、援助能力評価は、援助行動に対して正の影響を及ぼしていた。これらの結果は、自己愛傾向は2つのプロセスを通じて援助行動に影響を及ぼしていることを示唆している。
著者
阿部 晋吾 高木 修
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.258-266, 2007

This study used two scenarios to examine how a perpetrator's degree of responsibility and the magnitude of damage caused influence their cognitive and behavioral responses to an expression of anger by their victim. The results show that when the magnitude of damage and perpetrator's degree of responsibility were low, the expression of anger was viewed as being less justifiable, motivated by self interest rather than social concern, and socially inappropriate. It is suggested that these influences can lead to a perpetrator becoming more defiant and less willing to accept responsibility for his/her actions.
著者
阿部 晋吾 高木 修
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-8, 2006 (Released:2018-06-29)
参考文献数
8

In this study, participants (229 students) responded to a questionnaire on how they express and are expressed anger. Results indicated that the anger expression caused by “broken promise and betrayal” occurred more often in the intimate relationship than in the estranged relationship. It was also suggested that the anger expression caused by “broken promise and betrayal” tended to be evaluated more justifiable, and had more positive interpersonal effects. Therefore, it could be said that the prior promise has important implication for the social function of anger expression.
著者
小塩 真司 阿部 晋吾 カトローニ ピノ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.40-52, 2012
被引用文献数
201

本研究の目的は日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)を作成し,信頼性と妥当性を検討することであった。TIPI-Jは10項目で構成され,Big Fiveの5つの因子を各2項目で測定する尺度である。TIPI-Jの信頼性と妥当性を検討するために,計902名(男性376名,女性526名)を対象とした複数の調査が行われた。各下位尺度を構成する2項目間には有意な相関が見られ,再検査信頼性も十分な値を示した。併存的妥当性と弁別的妥当性の検討のために,FFPQ-50(藤島他,2005),BFS(和田,1996),BFS-S(内田,2002),主要5因子性格検査(村上・村上,1999),NEO-FFI日本語版(下仲他,1999)との関連が検討された。自己評定と友人評定との関連を検討したところ,外向性と勤勉性については中程度の相関がみられた。これらの結果から,TIPI-Jの可能性が論じられた。
著者
高木 修 阿部 晋吾
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.71-86, 2006-03-25

本論文では、怒りとその表出に関わるこれまでの先行研究を、(1)進化、(2)生理、(3)動因-行動、(4)認知、(5)社会構成の5つのアプローチに分けて紹介する。その上で、各アプローチが怒りをどのように定義しているかを検討し、その相違点や関連性を示した上で、今後の研究の方向性について議論する。
著者
小塩 真司 阿部 晋吾 カトローニ ピノ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.40-52, 2012-07

本研究の目的は日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)を作成し,信頼性と妥当性を検討することであった。TIPI-J は10 項目で構成され,Big Five の5 つの因子を各2 項目で測定する尺度である。TIPI-J の信頼性と妥当性を検討するために,計902名(男性376名,女性526名)を対象とした複数の調査が行われた。各下位尺度を構成する2項目間には有意な相関が見られ,再検査信頼性も十分な値を示した。併存的妥当性と弁別的妥当性の検討のために,FFPQ-50(藤島他,2005),BFS(和田,1996),BFS-S(内田,2002),主要5 因子性格検査(村上・村上,1999),NEO-FFI日本語版(下仲他,1999)との関連が検討された。自己評定と友人評定との関連を検討したところ,外向性と勤勉性については中程度の相関がみられた。これらの結果から,TIPI-Jの可能性が論じられた。This study developed a Japanese version of the Ten-Item Personality Inventory (TIPI-J) and examined its reliability and validity. Th e participants were 902 Japanese undergraduates (376 males, 526 females). They completed the TIPI-J and one of the other Big-Five scales: Big Five Scale (BFS; Wada, 1996); Five Factor Personality Questionnaire (FFPQ-50; Fujishima et al., 2005); BFS short version (Uchida, 2002); Big Five (Murakami & Murakami, 1999); or the NEO-FFI (Shimonaka et al., 1999). e TIPI-J was administered again two weeks later to 149 participants to determine test-retest reliability. Also, 31 pairs of participants rated their self-image and the other-image using the TIPI-J to explore the relationship between self-rated and friend-rated TIPI-J scores. Th e results generally supported the reliability and validity of the TIPI-J.
著者
本多 亮也 阿部 晋士 大平 孝
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.1, pp.20-29, 2023-01-01

入力電力が異なる二つの高周波整流回路の合成動作において片方の高周波整流回路が動作しなくなるカットオフ現象について定量的に考察する.合成動作を解析する準備として,単体動作において高周波整流回路がカットオフする条件を導出する.カットオフ条件となる特定の出力電圧と流通角の値を導出する.この二つの特定の値を用いて,合成動作におけるカットオフ現象の理論解析を行う.結果,入力電力が小さい方の高周波整流回路がカットオフする入力電力比を発見し,定式化した.カットオフが起きる入力電力比は,入力電力が小さい方の高周波整流回路に関係なく,入力電力が大きい方の流通角のみで決まることを発見した.導出した理論を数値解析(ハーモニックバランスシミュレーション)と実機実験(6.78 MHz, 100 W)の両方で検証し,理論とよく一致していることを示した.
著者
阿部 晋吾 高木 修
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.35-42, 2004 (Released:2018-08-07)
参考文献数
16

In this study, participants (623 students) were examined using two scenarios whether justifiability evaluation of anger expression would be affected by the differences in victim's position or perpetrator's position, the magnitude of damage, and perpetrator's responsibility. As a result, against the prediction, perpetrators tended to evaluate victim's anger expression as being more justifiable than victims. However, since the magnitude of damage and responsibility had significant influences on justifiability evaluation, and these influences were stronger in perpetrators than in victims, the other hypotheses were supported. Moreover, in the specific situation, it was suggested that expressing anger was evaluated as being more justifiable than suppressing anger.
著者
阿部 晋吾 太田 仁 福井 斉
出版者
関西大学大学院心理学研究科
雑誌
関西大学心理学研究 (ISSN:21850070)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-9, 2020-03

Dark Triadとは,マキャベリアニズム,サイコパシー,自己愛傾向の3つの総称である。これまでのDark Triadに関する研究は,大学生以上を対象とした研究が主流である。本研究では,799名の高校生を対象に調査を実施し,Dark Triadの因子構造を確認するとともに,性別,学年,進路による差についても検討し,大学生以上を対象に行われた従来の研究の知見との比較を行うことを目的とした。また,合わせて援助要請との関連についても検討した。その結果,Dark Triadにおいては階層的な因子構造が高校生サンプルにおいても確認された。また,マキャベリアニズム,サイコパシーは援助要請に対してネガティブな関連がみられるのに対して,ナルシシズムはポジティブな関連がみられた。