著者
茅根 士郎 板垣 博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.665-670, 1977-12-25
被引用文献数
1
著者
Madewell B. Lund J. Munn R. Pino M.
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.1079-1084, 1988
被引用文献数
18

11才の雌ドーベルマンの喉頭に発生した腫瘍を摘出し, 検索した. 腫瘍は種々の大きさで多形の細胞のシート状配列で構成されていた. 腫瘍細胞はデスミン, ミオグロビン, アクチンに強陽性, ビメンチンに弱陽性, 高分子ならびに低分子のサイトケラチン, 上皮細胞膜抗原ならびにミオシンに陰性であった. 電顕的には, 一部の腫瘍細胞の細胞質に, クリステに富むミトコンドリが多数存在し, 不整形で電子密度が高くZ帯に類似した領域が認められた. 以上の所見から, 本腫瘍は横紋筋肉腫と診断された.
著者
二宮 博義 中村 経紀
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.1065-1073, 1988-10-15

SD系ラットにN-Methyl Nitrosoureaを投与して乳頭状腺腫を誘発させ, 線腫の血管系を立体的に観察した. 方法はアクリル系樹脂を左心室より注入して樹脂鋳型標本を作成し走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した. さらに別のラットには墨汁を注入し透明標本を作成しSEM所見と対照した. 組織学的には, 腫瘍は立方あるいは円柱形の上皮細胞群からなる胞巣と, その周囲の豊富な結合組織で構成されていた. 胞巣には腺管構造や小嚢胞腔の形成が認められ, 増殖の著しいものでは上皮細胞は乳頭状に増殖していた. 腫瘍に向かう血管は直線的で, 正常な血管に認められ血流調節機能を有するintra-arterial cushionは認められなかった. 腫瘍に進入した血管は分校を繰り返し胞巣の外周にカプセル状に密な血管網を形成していた. 胞巣内の毛細血管は太く多数のヘアピン状のループを形成していた. このループを形成する毛細血管には盲端に終っていたりコブ状に突出したものも観察された. こうした所見は腫瘍に特有な血管の新生像であると考えられた. また, 一部の血管には鋳型の表面が粗造で血管壁の脆弱性あるいは透過性の亢進を思わせる所見も観察された.
著者
大槻 公一 狩屋 英明 松尾 公平 杉山 貞雄 保科 和夫 吉兼 崇彦 松本 明久 坪倉 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.721-723, 1987-08-15
被引用文献数
4

1984年11月〜1985年3月の間に山陰地方4カ所および鹿児島県1カ所に飛来した数種の渡り鳥の新鮮な糞便からインフルエンザウイルスの分離を行った。コハクチョウでは377検体から2株 (亜型はH9N2とH3N6), ウミネコでは30検体から2株 (H13N6), オナガガモでは284検体から1株 (H11N3), 計5株のウイルスが分離された。鹿児島のナベヅル材料は, 陰性であった。
著者
播 英仁 輿水 馨 原澤 亮
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.203-205, 1987-02-15
被引用文献数
3

日本各地におけるニワトリ由来ウレアプラズマの分布を調べる目的で, 1都13県82鶏群の計456羽のニワトリの口腔を検査したところ, 1都8県, 31鶏群の110羽 (22.6%) がウレアプラズマ陽性であった。ウレアプラズマの分離率は農家, 個人宅, 幼稚園, 小学校で飼育されているニワトリの方が, 専業養鶏場のニワトリより高率であった。1都8県に散在している11鶏群から分離された11株は代謝阻止試験によりすべて血清学的に均一な性状を示し, ヒト由来Ureaplasma urealyticum T960株およびウシ由来U. diversum A417株とは区別された。
著者
大越 伸 北野 訓敏
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.11-PLATE II, 1966-02-25

昭和38年1月23日, 東京都下三鷹屠場において, ホルスタイン種, 3才牝牛の涙腺嚢から, T. rhodesi と異なる眼虫7隻を検出した. 可検虫体の各部計測値を測定した結果, 1928年ロシアの W. S. ERSCHOW によって報告された T. skrjabini の計測値とほぼ一致するのでこれを同種と同定した. わが国において牛の眼球から T. skrjabini が検出されたことは, まだ報告されていない. 次いで T. skrjabini の分布を知るため, 全国から牛が参集する芝浦屠場において, 17府県から集まった屠殺牛96頭の眼球を検査した結果, 2地区の牛(千葉県4頭, 茨城県1頭)から, 合計16隻の T. skrjabini を検出することができた. さらに昭和40年7月から10月にわたり, 東京都の八丈島と大島, 北海道の新冠種畜牧場, 茨城県の東京大学付属牧場における合計199頭の牛を, 生理食塩液加圧眼球洗浄によって検査した結果, 合計226隻の眼虫を得た. そのうち35隻(15.4%)が T. skrjabini であったので, 本虫はわが国においても広く分布していることが判明した.
著者
一条 茂
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.217-228,図4p, 1966-10

犬における腎,上皮小体および骨の病変の関連性(骨腎系症候群)を知るため,腎・上皮小体・骨検索例26例,腎・骨検索例4例,腎・上皮小体検索例8例および参考としての腎検索例375例を加えた合計413例について,病理組織学的研究を行ない,次の結果を得た.1.腎・上皮小体・骨検索例,腎・骨検索例および腎・上皮小体検索例の合計38例のうち,28例に骨腎症候群を肖定すべき所見が認められた.2.骨腎症候群の発現は,一般的には,腎病変に継発した上皮小体機能冗進および繊維性骨栄養障害症の組合わせによると解される.3.本症候群における骨病変は,従来,一義的に腎性上皮小体機能冗進の結果招来されるとされている。しかし著者は,上皮体の介在性変化を認め得ないで,むしろ腎および骨の両病変の直接的関連性を首肯される例にも遭遇したj4.以上の点から,骨腎症候群の病理発生については,今後さらに検討の必要がある所以を知り得た。5.犬の骨腎症候群における原発性腎病変としては,慢性間質性腎炎または慢性糸球体腎炎などの終末腎病変に限られるべきものではなく,亜急性間質性腎炎,さらにはネフローゼなどの早期病変の場合にまで,拡張されるべきものと解された.6.上皮小体変化として,主細胞の淡明化と肥大・増生およびwatcrcIearcc11の出現,ならびに腺胞構造の不規則化を示す実質細胞配列の異常などを含めた上皮小体機能冗進像が指摘された.7.骨病変は,発端病巣に始まって,管腔性ないし非管性の多中心性小孔形成におよぶOstcodystro一phiafibrosagcneraIisataの像を呈していた.8.石灰転移は,本症候群例較に比的頻発する所 見であって,28例中10例に腎を始めとして,胃粘?膜,肺胞壁,胸膜,牌柱,気管支軟骨,子宮粘膜,・骨格筋々間動脈壁,心内膜,大動脈壁などに,その.州現を認め得た.この変化は,腎障害に多くを帰丁べきものと思考される.9.非腎性の繊維性骨栄養障害症に,上皮小体の増生性変化を伴った4例を得た.犬におけるこの例′に類した報告は,従来皆無である。このような例の存在は,骨賢症候群の検索に当たり,批判的態度を保持する必要性を示唆するものと思われる.10.腎検索例375例のうち,病変が認められたものは175例の多数におよんだ.腎病変の主体をなすものは間質性腎炎で,101例の高頻度に達した.以上,著者は,犬における骨腎症候群の存在を病理組織学的に確認し,あわせて従来の報告にみられない本症候群に属する腎病変の種々相を系統的に解明し,進んで本症候群発病病理学説における一元的解釈に批判を加えた.また,腎病変とは無関係に,繊維性骨栄養障害症および上皮小体機能冗進像を呈する例を得て,犬の小皮十体機龍冗進像の発現の一元的でないことをも明らかにした.
著者
康 炳奎 輿水 馨 尾形 学
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.295-305, 1970-12-25

豚の伝染性萎縮性鼻炎(AR)の主体をなすと考えられるBordetellabronchisePtica感染豚の血清学的診断として,凝集反応が応用されうる可能性について,基礎的な検討を行なった.まず,AR由来および実験動物由来のB.bronchisePtica20株につき,抗原用菌株の選択と本菌の相変異の関連性をみるため,血液寒天上の集落形態と生物学的諸性状につき検討した.ついで本菌の家兎免疫血清,AR自然感染豚血清およびspr豚血清を用い,反応用抗原作成培地の種類,抗原の処理法,反応感作温度の影響,反応の特異性につき検討した.さらに,隔離飼育した自然感染豚を対象に,抗体価の推移と菌の分離状況を追究した.得られた成績を要約すると,次のとおりである.1. B.bronchisePtica菌株の相変異と生物学的諸性状の関連性は,血液寒天上の集落形態および溶血性と,従来本菌属の相変異判定の指標とされている酸凝集性,あるいは血球凝集性などについて,菌株間の相互関係に必ずしも一定した関係が認められず,また初代分離株からも明らかにIII相菌と判定された菌株が検出されたことから,凝集反応における抗原用菌株の選択には,慎重な検討が必要であることが明らかにされた.2. B.bronchisePticaI相菌のトリプトソイブイヨン24時間培養生菌液を用い,直接,可検血清を希釈し,56°02時間感作,4°C24時間後に判定する゛′Boui110n法"が,反応の特異性および鋭敏度において,比較的すぐれた結果を示した.さらに自然感染豚血清とB.bronchisePticaを用いての吸収試験の結果,本反応の特異性が確認された.3・ 隔離飼育されたAR自然感染豚2群19頭の豚につき,凝集抗体価の経時的推移と菌分離の関係を,約3カ月にわたって追究した.本反応による凝集抗体(1:10以上)は,生後約20週(約4カ月)ごろより検出される傾向があり,と殺時に病変(甲介萎縮)および凝集価(40~10240倍)が認められたが,実験期間中B.bronchisePticaが検出されなかった2頭の豚では,凝集抗体価の上昇は全く認められず,また病変も陰性であった.このことから,野外例におけるB.baonchisePtica感染保菌豚の摘発に,本反応が応用されうる可能性が示唆された.
著者
安川 正敏 長野 慶一郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.135-PLATE II, 1960-04-25

白レグの成鶏(♂)に, Ta^<182>の0.05〜1.5μc/g を皮下注射し, 血漿蛋白分屑に及ぼす影響を中心に追求し, つぎの結果をえた. 1. Albuminが減少した. 投与量の多い,1.5μc/gおよび0.5μc/gにおける減少は特に顕著で, Albumin peakがφ位成分あるいはγ Globulinのそれよりも低いPatternを示した. 2. Albumin減少に対し, 相対的に増加する分屑は一定してない. 3. 血球像の変動としては, 赤血球および白血球(特にHeterophylic L.)の増加が所見された. 4. Ta^<182>は肝, 肺に最も多く蓄積し, 脾, 腎がこれにつぐ.
著者
浅利 将男 和久井 信 深谷 幸作 鹿野 胖
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.803-806, 1985-10-15

牛の結腸ら^^.せ^^.ん^^.わ^^.な^^.の形成について, 頭尾長2.1〜25cmの胎仔を用いて観察した. 大腸では小腸に遅れ, 頭尾長3.5cm胎仔において近位結腸部に最初の折れ曲がりが観察された. その後, 頭尾長6.5cmに至るまでに, 近位結腸部は巻き込みはじめ, これらの巻き込みは頭尾長9.3cmに至るまでに円錐状にまとまりはじめた. これらの近位結腸の円錐状の巻き込みは, およそ頭尾長13〜23cmの間に, 成牛型の円盤状の結腸として完成した.
著者
筒井 敏彦 天野 正 清水 敏光 村尾 育子 Stabenfeldt George H.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.613-617, 1989-06-15
被引用文献数
3

猫胚の子宮内移送の発現状況を明らかにするため,妊娠子宮169個の黄体数,胎子数を観察し,次の結果を得た.1頭あたりの黄体数は2-11個,平均5.6±1.9(SD)個で,左右卵巣の黄体数の間には負の相関関係が認められた(P<0.05).また胎子数は1-8頭,平均4.5±1.4頭で,左右子宮角内の胎子数の間には相関関係は認められなかった.着床率は25-100%で平均83.9±19.5%であった.胚の子宮内移送は69頭(40.8%)に認められ,1頭あたり移送胚は1-3個であった.黄体数の多い側の子宮角から少ない側への移送が66頭(95.7%),少ない側から多い側への移送が1頭(1.4%),左右黄体数の等しい例での移送は2頭(2.9%)であった.移送の結果,左右黄体数の差よりも左右子宮角内の胎子数の差が小さくなったものが54頭(78.3%),変らなかったものが8頭(11.6%),逆に多くなったものが7頭(10.1%)であった.このことから猫においても胚の子宮内移送によって,左右子宮角内の胎子数が均等化することが認められた.
著者
奈良 間功 永谷 真理子 土谷 稔 稲垣 晴久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.549-555, 1985-08-15
被引用文献数
1

日本モンキーセンターにおいて飼育・維持されているゲルジーモンキー(アマゾン流域森林に棲息する希少な小型猿)の小コロニー由来成熟動物4例の肝臓にミエロリポーマが認められ, 病理組織学的には正常な骨髄組織から構成され異型性を伴わなかった. 同種猿の新生仔および胎仔諸臓器を検索して正常な髄外造血巣との形態学的比較を試みたところ, ミエロリポーマの組織像は胎仔あるいは新生仔の肝臓における髄外造血巣とは明らかに異なり, 本腫瘍を持つ成熟動物には慢性貧血の証拠は得られなかった. この腫瘍が比較的多発した原因として, 動物の遺伝的背景の近似性, 飼料・飼育環境等の環境因子の同一性が考えられた.
著者
平賀 武夫 阿部 光雄
出版者
Japanese Society of Veterinary Science
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.p1199-1206, 1986-12
被引用文献数
4

ホルスタイン種子ウシ, 雌雄各4例の頚部心臓逸所症例を剖検し, 胸骨を軟X線学的に観察した。異常子ウシの生存期間は出生後3分から312日であった。心臓は頚部腹側で筋肉と皮膚に被われ, 心膜腔内に位置し, その二重心尖は前背方を, 心底は後腹方を向いていた。全例で, 大動脈弓からの主要動脈の分岐はイヌ型を示し, 多くの例で重複前大静脈と重複奇静脈も認められた。胸骨柄の幅は極めて広く, 胸郭前口も広かった。胸骨は前後に短く, 幅は広く, 13〜26個の胸骨片で構成され, 胸骨柄と胸骨体の骨片は対の様相を呈していた。胸腺の胸部は欠如し, 頚部は心臓の前背方に集合していた。線維性心膜から伸びる靭帯が, 前方では下顎骨と耳下腺筋膜に, 側方では頚筋膜に, また後方では第一肋骨あるいは胸骨柄に付着し, 心臓を保定していた。
著者
福井 博泰 新庄 エルサ-マルガリータ 梁川 良
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.177-186, 1980-04-25

レプトスピラの抗原変異株を家畜から分離しようとして, Leptospira interrogans血清型canicolaを子犬に, pomonaをSPF豚に接種し, 血液および腎臓をhomologousな免疫血清を加えた寒天平板に培養した. 2〜4週後に寒天上に発育したコロニーを, 大, 中および小型コロニーに区分し, それぞれいくつかずつを無作為に単離し, 沈降素吸収試験によるスクリーニングでその抗原性を親株と比較した. Canicolaの抗原変異株は感染犬10頭中7頭の血液および7頭中3頭の腎臓から得られた. 変異株は血液および腎臓由来の大型コロニーに多数, また血液由来の中および小型コロニーに少数認められた. 変異株は接種菌液からも分離されたが, 感染犬血液からはそれよりも有意に高い割合で分離された。他方pomonaの抗原変異株は感染豚5頭中2頭の血液のみにおいて小型コロニーに認められた. 大型コロニーは豚からは出現しなかった. 変異株は接種菌液からも分離されたが感染豚血液からはそれより有意に高い割合で分離された. 変異株の抗原性は交差凝集素吸収試験などによっても親株とは明らかに異なり, 同じ株由来の変異株はその抗原性が互いに類似した. 以上の結果は, 用いられた株には少数の抗原変異株が含まれており, その割合は実験感染後3〜7日目の犬や豚の血液において有意に上昇したことを示している.
著者
塩田 俊朗 西田 司一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.251-257_4, 1966-10-25

補乳類精巣内の神経分布,特にその終末については,人において,いくつかのやや詳細な研究があるほか,その記載ははなはだ少ない.とくに反趨動物においては,その研究は全く見られない.本研究では,精巣縦隔の形態,血管膜に特色のある牛の精巣内での神経分布,およびその終末をBicIschowsky鍍銀法の変法を用いて検索し,次の結果を得た.1)白膜には,精巣動脈神経叢に由来する有髄および無髄線維からなる神経束が走る.これから有髄線維の小神経束が分岐し,白膜表層において知覚神経終末を形成する.一方,血管膜へは,上記の神経束から,有髄および無髄線維を含む枝が分かれて,主として血管にともなう神経束となり,一部は,さらに結合組織中に分布する.血管膜結合組織中には,知覚神経線維および知覚神経終末小体が見られた2)精巣縦隔には,白膜と同様,精巣動脈神経叢-由来の神経束が,動脈周辺の結合組織中に見られた.その分枝は,血管の周囲で神経叢を作る.この神経線維が血管に分布する.またこの神経叢からは,有髄および無髄線維からなる小神経束が分かれて,知覚神経終末,および自律神経終末となって結合組織?中におわる.精巣縦隔中を走る神経束のなかに,微.細な神経線維にかこまれた間細胞群が見られた.3)精巣中隔の結合組織中に,知覚神経終末が見られた.4)神経線維は,血管にともなって,血管膜,あ.るいは精巣縦隔,次いで精巣中隔をへて,精巣実質に分布丁る.微細な自律神経終末線維が,精細管基底膜にそって走るのが見られたが,精細管中にはいらないように思われた.また,間細胞群に対する自律神経終末線維の分布も確認された.
著者
御領 政信 柴田 良久 諏訪 隆彦 梅村 孝司 板倉 智敏
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.867-873, 1987-10-15
被引用文献数
3

外国より導入された種鶏からふ化した幼雛において, 鶏貧血因子に起因した貧血症が認められ, 12日から25日齢までの死亡率は, 雌で約2.4%, 雄で20.9%であった。肉眼的には, 骨髄の黄色化, 胸腺及びファブリキウス嚢の萎縮, 肝臓の退色・腫大及び肺の硬化が認められた。組織学的には, 骨髄低形成及びリンパ性器官におけるリンパ球の消失がかなりの発症雛で見られた。17日齢の発症雛の肝臓から, MDCC-MSB1細胞により, chicken anemia agent (CAA) が分離され, 自然感染例と同一の種鶏群由来の1日齢雛は, CAAに対し低感受性であった。肺アスペルギルス症及び細菌感染症が多くの例に合併しており, これらも死因として重要と考えられた。
著者
櫻井 信雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.1, no.6, pp.633-642, 1939-12-25