著者
片野 修 青沼 佳方
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.866-873, 2001-09-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
36
被引用文献数
5 7

コクチバスに捕食されるウグイの最大体長を, 水槽実験によって調べた。コクチバスはウグイの群れに突進することもあれば, 単独のウグイを襲うこともあった。捕食実験の結果から, コクチバスによって食べられるウグイの最大体長は, バスの体長の47-66%であると推定された。コクチバスの口径とウグイの体高, 体幅を計測した結果, 実際に捕食されるウグイの最大体長は, コクチバスの口径から推定される限界サイズに比べて小さいことが明らかになった。コクチバスはしばしば一度くわえた大型のウグイを, 逃がしたり吐き出したりした。コクチバスの口径は, ウグイのような細長い体型をもつ魚を食べる場合には, 制限要因にはならないと考えられる。
著者
藤岡 康弘
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.253-260, 1987 (Released:2008-02-29)
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

Parr-smolt transformation, growth rate, maturity and appearance or disappearance of red spots on the body were observed in juvenile biwa salmon Oncorhynchus rhodurus indigenous to Lake Biwa, reared in pond for eighteen months, and compared with those of amago salmon reared under the same conditions. Biwa salmon transformed from juvenile parr to silvery smolt in underyearling June to July (standard length 7.5-8.0cm), and 60-80% remained as smolt till yearling autumn, Smolts of amago salmon appeared mainly in underyearling September to yearling March, and all of them transformed back to parr or silvery parr by yearling May. Most of the smolt of biwa salmon, unlike those of amago and masu salmon, did not show complete silvering of body color or intense blackening at outer extremities of dosal fin. Growth after smolt transformation in biwa salmon was slower than that of amago salmon, though there was no significant difference between the juveniles of biwa and amago salmon in underyearling April to May. Almost all of the amago salmon matured in yearling autumn, wherease only a part of the biwa salmon males matured at the same time. Red spots appeared on body of almost all of the amago salmon, and the number and density increased with growth. On the contrary, those of biwa salmon decreased during smolt transformation, though a few red spots existed at parr stage. Thus biwa salmon differed from amago salmon in several characteristics during smoltification.
著者
菅原 和宏 井出 充彦 酒井 明久 鈴木 隆夫 久米 宏人 亀甲 武志 西森 克浩 関 慎介
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.45-52, 2014 (Released:2014-01-29)
参考文献数
19
被引用文献数
1 4

琵琶湖でのビワマス引縄釣遊漁の現状を把握するために,2008 年 12 月から遊漁者に対して琵琶湖海区漁業調整委員会指示により届出と採捕報告書の提出を義務付けた。2011 年 9 月までの結果を集計したところ,届出者数は年々増加していた。採捕報告書の提出率は約 90% であった。釣行日数と総採捕尾数は冬期に少なく,夏期に多い傾向を示した。毎年約 1 万尾が採捕され,そのうち 41.4~67.3% は再放流されていた。遊漁者による採捕量は 6.6~8.6 t と推定され,漁業者による漁獲量は 23.2~45.8 t であった。
著者
西田 睦
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.1269-1274, 1985-08-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
23
被引用文献数
21 47

Genetic differentiation in a sample of Ayu (Plecoglossus altivelis) from the Ryukyu Islands and in two samples, an amphidromous population of Kyushu and a landlocked population of Lake Biwa, from the Japan Islands was studied by examining the variation in 28 genetic loci by starch gel electrophoresis. Allele substitutions were observed at virtually 4 loci in the populations of the Japan and Ryukyu Islands. The mean genetic distance between the populations of these two regions was 0.19, which far exceeds the range of distance commonly observed between conspecific populations. Within the Japan Islands, the genetic distance between the amphidromous population of Kyushu and landlocked population of Lake Biwa was much smaller, being 0.02, even though considerable differences in allele frequencies were observed at two loci. These results, along with geological evidence, indicate that Ayu in the Ryukyu Islands has existed as a genetically unique stock isolated from that of the Japan Islands since the middle Pleistocene.
著者
大塚 攻 仲達 宣人 田中 克 上田 拓史
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.693-702, 2007 (Released:2007-08-08)
参考文献数
37
被引用文献数
1 2

2000 年 6 月~2001 年 3 月の間に採集された有明海産スズキの鼻腔,口腔,鰓腔および鰓から 6 種の寄生性カイアシ類が発見され,Caligus tanago, Naricolax atypicus, Nothobomolochus lateolabracis の 3 種が優占した。大陸遺存種と考えられるものは出現しなかった。これらの寄生率,寄生数は宿主の繁殖期である 1~3 月に高くなる傾向があった。N. atypicus は鼻腔に寄生し,寄生率は夏季にも高く,宿主サイズと正の相関を示し た。
著者
笠根 岳 岡田 美緒 遠藤 英明 任 恵峰
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.826-835, 2015 (Released:2015-10-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

かつお節加工残滓を安全かつ有効に利用する研究の一環として,まず加工残滓の熱水抽出液に PAHs を合計 3217 μg/L 添加したモデル試料の活性炭による PAHs 最適除去条件を有用成分への影響も考慮しつつ検討した。その結果,PAHs 除去率は最大 99.6% であったが,活性炭の種類による影響が大きかった。続いて,市販品の黒粉 2 種を熱水,エタノール,酢酸エチルで抽出し,PAHs 浸出量を分析した。エタノール抽出で PAHs が最大 12823 μg/L 浸出し,市販品にも高濃度の PAHs が含まれていることが分かった。
著者
下田 和孝
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.754-757, 2012 (Released:2012-09-08)
参考文献数
36
被引用文献数
5 9 2
著者
大石 圭一 岡 重美
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.976-980, 1971-10-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Kombu, a palatable seaweed belonging to Laminariaceae, has often been used as a seasoning material for soups or vegetables in authentic Japanese cookery. The soup is especially rich in nutrients for bacterial growth. Therefore studies on the food hygiene of kombu extract were undertaken. The growth of bacteria adhering to the surface of kombu was observed in an extract of the plant. The following food poisoning bacteria, Salmonella enteritidis, Staphylococcus aureus, Vibrio parahaemolyticus, Clostridium perfringens and Cl. botulinum, were inoculated in kombu extract or artificial kombu medium. When the bacterial counts of cultures in natural kombu medium were compared with those in artificial medium, no remarkable differences in growth were observed in any of the bacterial species used. Judging from the experimental results, attention should be paid to contamination with S. enteritidis and St. aureus. With respect to the other three food poisoning bacterial species, the extract was considered to be relatively safe in food hygiene under the experimental conditions.
著者
藤枝 繁
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.23-30, 2011-01 (Released:2012-12-06)

瀬戸内海で大量に使用されているカキ養殖用プラスチック製パイプ類の漂流漂着実態を明らかにすることを目的に,瀬戸内海全域を対象に海岸での回収調査および海面での目視調査を実施した。海岸における平均漂着密度は,採苗連に使用されるまめ管が最も高く7.5個/m2,続いて広島県の垂下連で収穫時に発生する損傷パイプ4.5個/m2,同垂下連で使用されるパイプ2.9個/m2であった。まめ管,パイプおよび損傷パイプの発見率(漂着密度0.1個/m2以上の調査海岸数の割合)は,広島県から西方の海域で高かったが,まめ管は東部海域にも広く漂着していた。
著者
永沢 亨
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.915-918, 2011 (Released:2011-10-11)
参考文献数
8
被引用文献数
1 3
著者
吉岡 立人 荻野目 望 内田 直行
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.68-73, 2005-01-15
被引用文献数
3 2

一本釣カツオおよびまき網カツオを原料魚として製造したかつお節の品質を,製造中の粉末の発生量,製品の嵩,腰の強さ,およびイノシン酸音量を指標として比較した。また,筋組織を組織化学的に分析した。その結果,一本釣カツオを原料魚とした節は,いずれの品質指標においても有意に優れており,エオシン陽性成分の筋細胞内残留率が有意に高かった。この細胞内残留率と品質指標との間に関連性が認められ,かつお節製品組織の筋細胞内に残留するエオシン陽性成分の存在状態は,かつお節の品質を決定する大きな因子であることが示唆された。
著者
佐藤 良三 鈴木 伸洋 柴田 玲奈 山本 正直
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.689-694, 1999-07-15
被引用文献数
6 10

瀬戸内海・布刈瀬戸の産卵場周辺の三原市幸崎沖で, ディスク標識を装着した197尾のトラフグ親魚を1994年と1995年の5月中旬に放流した。瀬戸内海では放流後6カ月以内に計14尾が再捕されたが, 多くは放流直後に周辺海域で再捕され, 以後西方の海域へ移動した。外海域では放流1∿22カ月後に11尾が玄界灘∿黄海, 志布志湾などで再捕された。翌年の産卵期に布刈瀬戸の産卵場周辺海域で計10尾が再捕され, 走島沖の2尾を除き, 他の産卵場と関係した再捕報告はなかった。この2尾が備讃瀬戸へ回遊した可能性はあるが, 布刈瀬戸への回帰性も否定できない。以上の結果から, トラフグは産卵場への回帰性を有すると判断された。
著者
山本 光夫 加藤 孝義 多部田 茂 北澤 大輔 藤野 正俊 小豆川 勝見 松尾 基之 田中 潔 道田 豊
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.243-255, 2015 (Released:2015-03-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 5

東日本大震災後の沿岸環境変化の評価を目的とし,岩手県釜石湾において,海水中の栄養塩と重金属濃度,底質の放射性物質含有量に着目した海域環境調査を行った。栄養塩は冬期に高く夏期に低い傾向がみられ,震災前と必ずしも一致しなかった。これは湾口防波堤破壊による湾内環境変化の影響と考えられる。一方で重金属は津波の影響と予想される濃度変化はみられなかった。放射性物質も最大で 60 Bq/kg 以下と他の海域に比べ特に高い値ではない上に現在は減少傾向にあり,安全性の面で海域環境は震災前に戻りつつあることが示唆された。
著者
中神 正康 高津 哲也 松田 泰平 高橋 豊美
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.818-824, 2000-09-15
被引用文献数
10 8

マコガレイ稚魚の主要餌生物の変化とハルパクチクス目の雄成体に偏った捕食を検討した。1996年5-7月, 1997年5月の岩部漁港ではハルパクチクス目のHarpacticus sp.が多く捕食されていた, 1997年5月の七重浜沖ではHalectinosoma sp.が主に捕食されていた。1996年8月以降体長30mmを超えると主要餌生物は, 小型底生甲殻類や多毛類に変化した。ハルパクチクス目の雄成体に偏った捕食は, サイズ選択ではなく繁殖期に雄の行動が活発化し, 捕食され易くなった結果と考えられた。
著者
藤田 薫 松下 吉樹 本多 直人 山崎 慎太郎 小林 正三
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.495-504, 2007-05-15
被引用文献数
1

現用の小型底びき網のグランドロープをコントロールとして,直径が約2倍のグランドロープを持つ小型底びき網のサイズ選択性を,拡張したSELECTモデルにより評価した。ガンゾウビラメとマトウダイは小型個体ほど,アカシクビラメとクロウシノシタは大型個体ほど選択率が低くなった。ホウボウは全長と選択率の関係に明確な傾向は見られず,漁獲個体数も変わらなかった。種やサイズによって選択性に相違があったことから,グランドロープの太さを選択漁獲に利用できる可能性がある。
著者
籔 熈 石井 清彦
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.505-507, 1982

The gonads of the Pacific pomfret pomfret <i>Brama japonica</i> HILGENDOLF collected from the area near the Emperor's Sea Mounts in the North Pacific were used for cytological observations. Mitotic nuclear divisions in spermatogonia showed to have chromosomes of 2n=54. One or two long rod-shaped multivalents frequently appeared at metaphase of meiosis I in spermatocytes.
著者
岸野 底 四宮 明彦
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.624-631, 2003-07-15
被引用文献数
5 14

絶滅が危惧されるリュウキュウアユの遡上期の生態を明らかにするため,1994年と1996年に鹿児島県大島郡住用村の役勝川で,遡上個体の出現期間,体長,日齢および発育段階を調査した。遡上期間は1月下旬から5月下旬までの4ヶ月間であった。平均体長(±標準偏差)は35.2±3.36mm,平均日齢は83.7±15.4日であった。外部形態は,黒色粗胞の少ないシラス型後期仔魚から,櫛状歯が出現し始めた稚魚まで多様な発育段階を示した。この結果はアユと比較して,より小型,若齢,早い発育段階を示しており,これらの特徴は遡上前の海域生活期間の短さに関連していると考えられた。
著者
手島 新一 金沢 昭夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.1129-1135, 1976-10-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
37
被引用文献数
9 11

This study deals with the variations in the content and fatty acid composition of lipid classes during the molting cycle of a fresh-water shrimp, Palaemon paucidens. The lipid content increased at mid premolt (stage D2) and then decreased at late premolt (stage D3-4). The accumulation of lipids during the early premolt period seemed to be attributed mainly to that of polar lipids. Throughout the molting cycle, the shrimp con-tained more polar than neutral lipids, the latter consisting mainly of triglycerides, free sterols, and free fatty acids. In the case of the polar lipids, the percentage composition of saturated acids such as 16:0 and 18:0 increased at stage D2. In contrast to the polar lipids, the tri-glycerides showed no marked variation in the fatty acid composition during the molting cycle. The free fatty acids showed an increase in saturated acids such as 16:0 and monoenoic acids such as 16:1 and 18:1 at intermolt (stage C).