著者
刑部 義美 高橋 愛樹 成原 健太郎 兼坂 茂 葛目 正央 佐々木 純 金子 有子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.642-648, 2000-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
17

二酸化窒素吸入による中毒は防火作業, 溶接業, メッキ業などに従事する人に発症しやすいが, 本邦では余り知られていない.今回, 我々はメッキ業を営む64歳の男で硝酸と硫酸の混合液にニッケルメッキを賦したアルミ棒を挿入し, メッキ抽出作業中に二酸化窒素を吸入し, その後, 激しい呼吸困難と胸部圧迫感が出現, 近医にて急性肺水腫と診断され集中治療目的で本院救命センターに搬送後, 二酸化窒素による急性呼吸窮迫症候群 (acute respiratory distress syndrome・ARDS) と診断した症例を経験した.治療は人工呼吸管理を中心に最高気道内圧 (peak inspiratory pressure・PIP) , 肺胞の虚脱や無気肺の改善を目的として人工肺サーフアクタント, 更に各種ケミカルメデイエーター遊出阻止の目的でメチルプレドニゾロンの使用にて, 14日目には一般病棟に転出できた.本疾患は治療に比し予防が重要で, 作業所の改善や防護体制の整備, 更に疾患の存在を一般に認識させることが大切であると思われた.
著者
諸星 利男
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.585-590, 1990-12-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
7
著者
赤松 直樹
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.576-579, 2011-12-28 (Released:2012-08-03)
参考文献数
4
著者
陳 虹 上野 幸三 養父 佐知子 高橋 円 坂本 泰寿 飯倉 洋治
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.645-650, 2001-12-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
11

近年食物アレルギーは世界中で大きな問題になってきている.人間の多くの器官が食物アレルギーによって障害を受けることはよく知られているが, その予防及び治療は, 今後の研究を待つところも多い.我々は補中益気湯を用いて, 食物アレルギーモデルマウスの肝臓障害に対する治療効果について検討を行った.まず, Hyper IgE血症を自然誘発するNc/Jic系マウスを卵白アルブミン (OVA) によって感作した.その後, それぞれに補中益気湯と生理食塩水を投与し, 肝臓における, 肝細胞の病理変化と細胞浸潤の有無について検討を行った.OVAを経口で負荷後, 血清のalanine aminotransferase (ALT) 値を酵素法 (POP) で測定した.サイトカインの検討は免疫染色 (streptavidin-biotin) 法で分析した.その結果, 補中益気湯内服マウスは, 生理食塩水投与の対照群と比べ, 血清ALT値が有意に減少していた.また, 補中益気湯内服マウスの肝臓におけるIL-4, IL-6, TNF-αの陽性細胞数は, 生理食塩水投与の対照群より有意に低かった.この結果から, 補中益気湯が肝臓のアレルギー反応を減少させ, 食物アレルギーによって起こされた, 肝臓障害を抑えることが示唆された.
著者
廣田 曄子 松田 鈴夫 方 泓 星山 佳治 三浦 宜彦 川口 毅
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.228-247, 1998-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
33

我が国の小児科領域の疾病に対する治療の変遷を麻疹, 傷寒, 臍風ならびに驚の4疾患について, 中世 (西暦900年代) から近世 (西暦1800年代) にかけてその間に出版された医学書をもとに, 疾病の概念や治療の変遷について研究を行なった.その結果, これら4疾患についてはいずれもかなり古くから疾病の定義・概念が確立しており, 本研究を行なった約900年の間においてもそれぞれの概念に含まれる疾病の範囲はあまり大きな変化はみられなかった.我が国において最も古く900年代の治療方法を代表する「医心方」において, 傷寒や驚に用いられた構成生薬数は後の時代に比較して著しく少ないものとなっている.1300年代の代表的な医書である「万安方」について構成生薬数をみると, 麻疹, 傷寒, 驚のいずれも1処方当たり平均3ないし4種類の生薬が処方されている.これは中国との情報の交流が当時からすでに活発に行なわれ, 我が国の医療も急速に普及発達し, 治療に用いられる構成生薬数も次第に増加してきたものと考えられる.なお, 臍風については1種類しか処方されていないが, 当時においても臍破傷風は死病とされ, 患者に対する効果的な治療方法がなかったことから, 甘草を処方する程度で無理に多くの生薬を用いないという考え方によるものである.1500年代から1700年代にかけて特徴的なことは「小児諸病門」や「遐齢小児方」のような小児科専門の医書が著され, 当時の中国医学の影響を強く受けながらも, わが国独自の考え方での処方が上乗せされてきており, このことが構成生薬数の多い原因の一つと考えられる.1600年代の平均構成生薬数を見ると麻疹, 傷寒, 驚において平均8程度の生薬が処方されており, その処方された生薬の内容を見ると, 当該疾患に対して用いられているいろいろな処方から出来るだけ多く取入れている観がある.当時としては治療方法のない臍風 (臍破傷風) においてすらも平均3.9となって, 以前に比較して構成生薬数が増加している.1700年代にはいると, 我が国独自の風土や環境に適した医学をめざして吉益東洞は古典的な「傷寒論」を見直し, これに注釈をつけた新たな運用を提唱し, また安藤昌益のように「傷寒論」にとらわれず, まったく独自の処方を編み出す等多くの医学者が輩出した.両者とも我が国独自の処方の確立を目指しており, 処方は従来のものよりも簡潔なものが多い.この傾向は1800年代にも顕著で4疾患全てに共通して観察されたが, これは日本人の質素倹約を旨とする現実主義的性格が関与しているかもしれない.
著者
石川 清文
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.28, no.12, pp.737-742, 1968-12-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
36
著者
池田 駿
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.13-18, 1955-03-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
5

Up until to-day, it is generally believed that the metabolism of the corpulent person is essentially not different from that of the slender person. In order to elucidate as to whether a similar result is observed or not even when the variation in the metabolism due to the adaptation is taken into consideration, the author determined the gas metabolism and the various somatic functions at rest, and obtained the following results.(1) The basal metabolism and the metabolism at rest per body weight of the corpulent person demonstrated very much lower value compared with that of the slender person. However, no significant difference was noted in the value per body surface area.(2) Among the corpulent persons, especially those who recently became corpulent with relatively poor working ability, showed a low value, and those who recently became slender demonstrated a high value. Moreover, the values of the basal metabolism of the corpulent and slender persons who remained unchanged during these several years showed a reversed aspect in the difference compared with that stated in the above (1) . The high value in the metabolic rate demonstrated by the former is due to the higher cardiac function, espcially to the higher pulse pressure adapted to the prolonged continuous living conditions, and the lower value observed in the latter is considered to be due to the diminution of the cardiac function.(3) No qualitative differences were noted in the respiration quotient of the rest metabolism and its daily fluctuation between the groups of corpulent and slender persons examined.
著者
丸岡 悦子 諸星 利男 神田 実喜男
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.254-263, 1993-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

アルコール多飲は人体の諸臓器に様々な機能的, 形態的障害を引き起こすが, 口腔領域においても各唾液腺障害を合併することが知られている.特に耳下腺はしばしば腫脹するといわれており, その臨床的, 病理学的意義について興味が持たれている.今回は顎下腺を中心に, 大量飲酒者の唾液腺病変の実態を理解するとともに, その病理形態像や発症機序について検討することとした.当教室および関連施設における剖検例のうち日本酒換算一日3合以上, 10年以上のアルコール歴をもつ45症例, 対照として非アルコール多飲者25例の顎下腺・肝・膵について光顕的および組織計測学的に検索した.アルコール多飲者の顎下腺は対照群に比較し, 容積および重量 (ホルマリン固定後) ともおよそ30%増加しており, 耳下腺同様腫大化することが理解された.組織学的には腺房細胞は萎縮脱落し, 実質細胞は減少する傾向が認められ, 拡張した腺房腔や導管腔内のタンパク栓形成や石灰沈着が高頻度に認められた.またリンパ球浸潤を伴う導管炎および導管周囲炎もしばしば認められた.大量飲酒は, 唾液分泌亢進を引き起こすことが知られており, そのためタンパク栓が形成され, これを核として石灰沈着が起きることが想定された.これらは唾液の通過障害を引き起こし最終的に上皮の萎縮を来すと考えられた.線維化病変は主に小葉間 (導管周囲) に見られ, また小葉内にも認められた.前者は上述のごとく引き起こされた導管炎および導管周囲炎に続発すると想定された.後者のような小葉内細線維化は慢性アルコール性膵炎の組織像と類似しており, 実質細胞の脱落に続発しないいわゆる一次的線維化であることが示唆された.最終的に脂肪浸潤も顕著に認められ, 実質細胞の脱落を補填するように小葉内および小葉間に脂肪組織の増加が認められた.つまり顎下腺腫大化の原因は, 実質細胞の萎縮, 脱落に伴う絶対的・相対的な線維成分と脂肪組織の増加によるものと考えられた.なお検索症例中には, アルコール性障害の典型像ともいうべきアルコール性肝硬変, アルコール性肝炎, 脂肪肝, および慢性膵炎等が高頻度に認められた.しかし重篤な肝あるいは膵の病変に必ずしも高度の顎下腺病変がみられるとは限らず, これらの各臓器における病変は臓器相関により発症するのではなく, 大量飲酒によりアルコールが各臓器に対し直接的に作用した結果として発症した病変と考えられた.
著者
田口 和三 木村 聡
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.57-62, 2002-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
10

オボムコイドは分子量28, 000の卵白に含まれる耐熱性蛋白である.オボムコイド特異的IgEの抗体価測定は, 加熱鶏卵摂取の可否判定に有用とされるが, その陽性率に関する具体的な統計は少ない.そこで我々は検査室に集まる検体を用いて陽性率や関連抗原との相関について検討した.対象には食物アレルギーのアレルゲン検査として, 各診療科より2001年1月から10月に検査センターに検査依頼のあった1778例を用いた.オボムコイド特異的IgE抗体陽性例は724例 (40.7%) であった.年齢別変動では2歳で陽性率がもっとも高く (46.0%) , 以降加齢とともに低下した.また, 健常人50例では, クラス1の抗体価1例であったのみで, クラス2以上の陽性率は0%であった.他の食餌性アレルゲンとの関係では, 卵白で最も高い相関性が認められ (r=0.869) , 以下卵黄 (r=0.861) , ミルク (r=0.574) の順であり, 抗原性の近いアレルゲンで相関性が高かった.また, 卵白とオボムコイドを同時に測定した症例では, 卵白が陽性でオボムコイドが陰性の症例は899例中236例 (26.3%) に認められた.これに対し, オボムコイド陽性, 卵白陰性の検体は687例中24例 (3.5%) にすぎなかった.この結果より, 卵白アレルギーの患者の約4分の1で加熱鶏卵ならば摂取が可能であることが推定された.以上のことから, 卵白, オボムコイドの陽性率には差がみとめられ, アレルギー患者食事指導を行う上で特異的IgE抗体の測定は有効な一指標となり得る可能性が示唆された.
著者
長田 勘吉良
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.933-950, 1960-11-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20

On an assumption that the development of human gastric ulcer may have some relation to the distribution of gastric artery, a detailed investigation was made on the arterial distribution in the gastric walls. First of all, distribution of the subserous artery of the gastric wall was investigated employing dogs in order to know the difference in arterial distribution by the region of the gastric wall.Result of this investigation revealed that the arterial distribution was extremely thick in the region inside of the middle axial line and nearer to the lesser curvature. While, it formed the zona arterie perf orans around the middle axial line. In the region outside of the middle axial line, the distribution of small arteries formed arterial sparse network. In the region around the greater curvature, the dexter and sinister gastroepiploic arteries and the short gastric arteries formed the zona small arterie and, in its zona intermedius, they showed mutual anastomosis with the arterie recurrens.
著者
上田 拓文 門松 香一 森田 勝 本田 衣麗 保阪 善昭
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.194-199, 2006-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

口唇・口蓋裂は先天性外表疾患として比較的頻度の高い疾患である.本研究は平成17年11月から過去約13年間に, 昭和大学付属病院形成外科を未治療で訪れた1323例を対象に, 裂型・被裂側・被裂程度の分布および性別の関連について調査検討を行った.分類方法は裂型を口唇裂, 口唇口蓋裂, 口蓋裂に, さらに口唇裂および口唇口蓋裂は右側, 左側, 両側に分け, 口蓋裂は軟口蓋裂硬軟口蓋裂, 粘膜下口蓋裂に分けた.なお解析方法としてはクロス表の検定にはx2検定を用いた.その結果は以下のとおりである.1.口唇裂451例, 口唇口蓋裂450例, 口蓋裂単独422例であり裂型は一様に分布していた.2.口唇裂男性253例, 女性198例, 口唇口蓋裂男性285例, 女性165例, 口蓋裂単独男性163例, 女性259例であり口唇裂, 口唇口蓋裂は男性に多く口蓋裂は女性に多かった.3.口唇裂は左側: 右側: 両側≒6: 3: 1であった.4.口唇口蓋裂は左側: 右側: 両側≒5: 2: 3であった.5.口唇裂の被裂程度は完全: 不全 (痕跡を含む) ≒1: 3であった.6.口唇口蓋裂の被裂程度は完全: 不全 (痕跡を含む) ≒3: 1であった.
著者
野口 岩男 森 有永 清水 弘一 松永 昂
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.25, no.8, pp.326-330, 1965-11-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
9

1.膜電位を細胞内電極を用いて測つた正常Krebs液での平均値は-55mVで-65~-45mVの拡りを示した.2.KCI濃度の変化に伴い高濃度域ではNernstの理論式にしたがいKCI濃度の対数と膜電位との間には直接関係が成立し直線部分では濃度が10倍となると膜電位は32mVだけ低下した.3.Krebs液中のNaClを等張sucrose, cholineなどで置換すると膜電位は前者ではあまり変化せず, 後者では過分極が起こつた.4.NaClをsucrose置換したKrebs液内でCaC12増加は多少の過分極がみられた.5.CaCl2減少では膜電位は1/7倍ではあまり変化がなかつたがCaCl2を全く除くと多少過分極を示した.この場合1/7倍CaCl2環境では40mVの自発性の活動電位を発生し, 無CaCl2環境では10mVの自発性の活動電位を発生した.6.Achによつて著しい脱分極をみた.稿を終るに臨み, 御懇篤なる御指導を賜つた井上清恒教授に深く感謝の意を表します.

1 0 0 0 OA ICG副作用の3例

著者
河内 正男 杉本 裕之 富江 鋭毅 安斉 勝行 花田 英輔 斉藤 達也 小笠原 寛 栗原 稔 矢嶋 輝久 竹内 治男 八田 善夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.437-441, 1987-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
10
被引用文献数
3

ICGは安全性が高く, おもに肝機能検査として臨床に汎用されている.しかし副作用は皆無ではなく, 強いショック例や死亡例も存在する.今回我々は当科および関連施設において過去8年間に経験したICG副作用例を検索した.ICG検査施行2, 753例中, 死亡例は認められなかったが, 明らかにICGと関連した副作用症例が3例 (0.11%) 存在した.第1例は43歳男性, ヨード過敏症不明.ICG静注後1分30秒でショック症状出現, 心停止, 呼吸停止したが, 蘇生術で救命し得た.第2例は55歳女性, 診断は慢性肝炎, ICG静注後1分で血圧低下, 悪心, 嘔吐出現し, 抗ショック療法で改善した.本例はヨード過敏症を有していた.第3例は59歳女性, 診断は肝硬変症で, ヨード過敏症は認めない.ICG静注後より悪心, 悪寒を訴えたが, 安静のみで消失した.ICGの副作用は軽症例を含めると全国で100例以上の報告を数えるが, このうちショック症状を呈したものは20例以下で, 死亡例は5例である.副作用発現頻度は施設によりばらつきがあるが, 0.05~0.3%である.ICGには微量ながらヨードが含まれており, ヨード過敏反応による場合も多いとされているが, ヨードテスト陰性例においても, また, 薬剤その他のアレルギーの既往の無い例も数多く報告されている.ICGによる副作用は稀ではあるが, 死亡例も存在することから, 術前, 術中の細心の注意が必要であることを再認識する意味で, 若干の考察を加え報告した.
著者
渡辺 一彦 飯倉 洋治 田中 和子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.368-376, 2001-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20

1982年から97年の間に魚アレルギーを70例経験した.魚アレルギーは近年増加しているが, その内訳は非即時型アレルギーの増加であった.魚アレルギーの患児には広範な食物ないし吸入抗原のアレルギーが合併していた.発症の好発時期は生後半年から1歳台である.起因魚種は4種類以内が多いが, 非即時型の例には殆どの魚に反応すると考えられる症例もあった.起因主要魚種は即時型, 非即時型でもタラ, サケ, ホッケ, サンマ, カレイ, イワシだった.誘発症状は即時型ではじんましんや口腔アレルギーが主であるが, 一部に喉頭浮腫, 喘鳴を呈する例もあった.非即時型の誘発症状は紅斑や丘疹の出現であり, その症状はアトピー性皮膚炎の患児に出現し, その中には母乳を介した例もあった.そこで魚アレルギーはアトピー性皮膚炎の病因にもつながると推察された.
著者
小堀 正雄 高橋 厳太郎 岡本 健一郎 増田 豊 細山田 明義
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.563-567, 1987-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
6

濃厚赤血球液を使用する場合, 稀釈する溶液として一般に生理食塩水が用いられる.しかし, 大量輸血の場合には稀釈液による電解質の負荷が増す.そのため, 稀釈液に電解質を含まない糖質を使用した場合の赤血球の溶血度および溶液中のカリウム値の変化を測定した.20歳代男性からCPD液用採血バックに採血し, 採血当日血, 保存1週間目, 3週間目の3群に分けた.実験に先立ち, 血漿成分の影響をとり除き, 赤血球の抵抗性を調べるため洗浄赤血球液を作成した.添加する溶液は生理食塩水をコントロールとし, 10%マルトース液, 5%キシリトール液, 5%, 10%グルコース液とした.10%グルコース液以外は血液との浸透圧比は1である.これらの溶液を洗浄赤血球液と同量加え, 室温で2, 6, 24時間放置し, 各溶液の遊離ヘモグロビン値, カリウム値を測定した.その結果, 10%マルトース液, 5%キシリトール液は保存期間, 放置時間をとわず, 遊離ヘモグロビン値, カリウム値は生理食塩水とほぼ同様の傾向を示した.しかし, 5%グルコース液では, 血液の保存期間をとわず, 2時間後にはすでに高度な溶血を示した.一方, 10%グルコース液は比較的溶血が少なく, 溶質の赤血球内への流入により添加溶液の低張化がある程度抑えられたことが示唆された.また, キシリトール液, グルコース液でpHの異った溶液を作成し, 遊離ヘモグロビン値の差を測定した.その結果, 溶液中のpH5~9の範囲内では, 血液の溶血度には何ら影響がないことが示唆された.
著者
九島 巳樹
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.133-137, 1999-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
16

In histopathologic diagnosis of the endometrium, it is very very difficult to distinguish atypical endometrial hyperplasia from well differentiated endometrioid adenocarcinoma. Some points of histopathologic diagnosis of the endometrium in HE stain and immunohistochemical staining are discussed. Marked proliferation of atypical epithelial cells, such as papillary, confluent or cribriform growth and desmoplasia of stroma are suggested presence of stromal invasion in HE stain. Immunohistochemical stain of p53, CD44 and cyclin A are negative for all reported cases of atypical hyperplasia and positive for some cases of endometrioid carcinoma, but, not all cases of endometrioid carcinoma are positive, so these immunohistochemical stains are not enough for diagnosis of endometrioid adenocarcinoma.In conclusion, stromal invasion in the HE stain is a most important point to diagnose endometrioid adenocarcinoma.
著者
小林 玲音
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.56-63, 2011-02-28 (Released:2011-09-01)
参考文献数
20

全身麻酔中の体温の低下により出血量増加,術後感染,周術期心筋梗塞など多くの合併症が発症する.従って,温風吹送式加温器や特殊な被覆類を用いて対処しているが,使用台数が制限され,操作が煩雑であるため常時施行するのは難しい.一方,術中に投与するだけで術中の体温の低下が軽減すると報告されているアミノ酸製剤の輸液は安価で,特殊な操作も一切不要なため簡便である.しかし,その投与によって血清インスリン値が上昇し,低血糖が発症する可能性が示唆されている.そこで,全身麻酔下に股関節手術が予定された39症例において,アミノ酸製剤を麻酔導入前1時間に輸液し,術中の低体温予防効果と血糖値の推移を検討した.対象は人工股関節置換術および回転骨切り術を予定された39名でアミノ酸製剤を5ml・kg-1・h-1で輸液した群(A群)と2.5ml・kg-1・h-1で輸液した群(B群)およびアミノ酸製剤非投与群(C群)の3群に対象患者を無作為に分けた.全群において麻酔導入前1時間に輸液を行ったが,A群は混合アミノ酸製剤(アミパレン®)を5ml・kg-1・h-1,一方,B群は混合アミノ酸製剤(アミパレン®)と酢酸リンゲル液(ヴィーンF®)を同時に2.5ml・kg-1・h-1ずつ投与した.C群は酢酸リンゲル液(ヴィーンF®)5ml・kg-1・h-1だけを投与した.食道温を麻酔導入直後から麻酔導入後120分まで測定し,血糖値,血清インスリン値,血清アドレナリン値,血清ノルアドレナリン値などはアミノ酸製剤投与前,麻酔導入直後,麻酔導入後15分,30分,60分,90分,120分に測定した.体温は3群において麻酔導入後より経時的に低下したが,低下度はA群で最も小さく(p<0.05),A群とC群との間には麻酔導入後15分から120分まで有意差を認めた.血清インスリン値は麻酔導入直後にA群とB群では著しく上昇した.その程度はA群では投与前値の15倍,B群では投与前値の5倍であった.3群における血糖値の推移は近似し,各測定時期の平均値は80-100mg・d-1であった.血清インスリンの増加にもかかわらず,全群において低血糖は見られなかった.血清アドレナリン値,血清ノルアドレナリン値には全測定期間中において3群に有意な差は認められなかった.股関節手術において,麻酔導入前1時間にアミノ酸製剤の輸液投与により,術中の体温低下を軽減でき,また,危惧された低血糖も起こさなかった.術中の低体温予防として,麻酔導入前のアミノ酸投与は有用と思われた.
著者
高橋 敬蔵 関 正純 小崎 俊男 鏡 勲 脇元 敦彦 宮崎 雄一郎 千坂 正毅 坂本 勇人 渡久山 博美 奥富 信博 宮上 順志 瀬尾 文洋
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.307-314, 1976

A series of 250 cases undergoing Cesarean section under spinal anesthesia were presented and analyzed from the clinical points of view.<BR>Hypotension down to 80 mmHg or less occured in 43.6% of all cases following spinal anesthesia, and the incidence of hypotension was closely related to the level of sensory analgesia (initial level) .<BR>Hypotension could be mostly restored by changing the position from supine to lateral, but the effects of vasopressor was not uniform.<BR>It was seen that the amount of rapid intravenous infusion was influenced by the duration and degree of hypotension.<BR>Associated with anesthesia, Apgar' Score was indicateed 7 to 10 points in 96% of all cases.<BR>Administration of Droperidol, Diazepam and Pentazocine were effectively choiced for any visceral pain after birth and any emesis.