著者
立本 博文
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.62-77, 2022-03-20 (Released:2022-04-20)
参考文献数
17

本稿では,経営学研究にデータサイエンスを取り入れる観点から,経営学者に馴染み深い回帰分析を紹介する.まず,回帰分析の3つの目的を説明しつつ,回帰モデルで因果効果を特定する変数選択に有用なバックドア基準を説明した.さらに,効果が第3 変数や個人特性で変化するモデルとして,交互作用モデルやマルチレベルモデル/階層ベイズモデルを紹介した.最後に,最新の回帰モデルの手法として機械学習を応用した経営学研究や因果効果の推定について紹介を行った.
著者
御崎 加代子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.4-14, 2022-12-20 (Released:2023-03-01)
参考文献数
17

本論文の目的は,イノベーション論の元祖とされるシュンペーターの企業者概念の特徴と意義を,彼が最も影響を受けた経済学者ワルラス,さらにはその源流に位置するJ.B. セーやカンティロンなど,フランスにおける企業者概念の歴史から考察し,現代のアントレプレナーシップ論の歴史的・思想的背景を明らかにすることである.またシュンペーターとよく比較されるカーズナーの企業家論についても,ワルラス批判という観点から考察する.
著者
沼上 幹 軽部 大 田中 一弘 島本 実 加藤 俊彦 生稲 史彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.12-26, 2006-06-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
18

本論文は,データ・リッチな実証研究を行なうためのコンソーシアムを形成して行なわれている,組織の 重さ プロジェクトの主要な知見を紹介する.コンソーシアムに参加した企業のBUに関しては,内部調整に約4割の時間が割かれていること,また比較的容易に調整が達成できる組織は有機的組織の特徴と機械的組織の特徴を両方備えていることが明らかにされる.
著者
神戸 伸輔
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.14-23, 1999 (Released:2022-07-27)
被引用文献数
1

経済学では組織を契約の集まりとみなす.これは経済学が個人主義を方法論として取るからである.ここでの契約の概念は,インセンティブ契約やまた暗黙の契約を含んで考えられる.最近では,契約では細かく行動を定めるのではなく,誰が決めるかを決めたり(不完備契約),あるいは相互関係のルールを決める(ゲーム・プレイング・エージェント)ことも,契約の果たしている役割として注目されてきている.
著者
江夏 幾多郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.33-48, 2022-09-20 (Released:2022-12-02)
参考文献数
66

本稿で行った質問票調査によると,人事評価の公正性認知は,現在や将来に関する時間展望をより前向きなものにする.また,人事評価の手順や実務を入念なものにすることは,従業員の総合的公正判断を高めると同時に,時間展望に対して直接的で否定的な影響を部分的に与える.配置転換が多く行われがちな日本の人事慣行の下では,人事評価に関するそれまでの好ましい経験が将来も継続するとは限らないことを,従業員が予期している可能性がある.
著者
淺羽 茂
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.15-25, 2001-06-20 (Released:2022-07-30)
参考文献数
49

既存の競争研究は,競争を構造として捉える研究と,プロセスとして捉えるそれとに分類でき,さらにそれぞれの研究は,いくつかの分析レベルに分けられる.構造としての競争研究からは,競争は回避すべきものという含意が導出されるのに対し,プロセスとしての競争研究からは,競争は参加すべきものという含意が導かれる.今後は,競争をプロセスとして捉える立場に立った,産業もしくは行動-反応レベルの研究が期待される.
著者
飯塚 まり
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.36-51, 2016-09-20 (Released:2017-08-28)
参考文献数
81

マインドフルネスは,多様性とリーダーシップにどう貢献できるのか,Google社で開発された研修について,文脈を含め分析・考察した.マインドフルネスは,他者に対しての,自分の心の自動操縦モードに気づかせ,明晰な認知→自己認識→反応柔軟性→自己統制を可能とする.さらに,コンパッションは,自他の境界のない一元論的意識にいざない,多様性に究極的に応える.これらは,仏教や日本文化と深くかかわり,大きな可能性を持つ.
著者
一小路 武安
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.4-18, 2018-03-20 (Released:2018-06-18)
参考文献数
34

本研究では,危機状態と危機寸前状態の組織パフォーマンスへの影響要因の違いを分析するに,定量分析と定性分析を主とした事例分析という二段階手法を用いた.定量分析においては,リーダー変更・危機疲れが悪影響を与えるが,その度合いは状態に依存することを示した.事例分析においては,危機疲れがあるなかでのリーダー変更が好影響を与えるには,危機状態では新リーダーの特性が,危機寸前状態では迅速なリーダー変更が重要であることを示した.
著者
山川 義徳 金井 良太
出版者
The Academic Association for Organizational Science
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.6-15, 2014-06-20 (Released:2014-10-03)
参考文献数
33
被引用文献数
1

近年,脳科学を通じた人(の心)の理解には著しい発展が見られている.その中では,心の状態を数値化する脳計測技術とその状態を解釈するための脳解析技術,さらに意味づけし制御するための脳活用技術が存在している.そこで,本論文では,それぞれの技術についての解説及びそのマネジメントについての提言を行うとともに,ビジネスパーソンや経営者に対してこれらの技術をどのように適用できるかという点について論考する.
著者
宇田川 元一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.15-28, 2015-12-20 (Released:2016-06-29)
参考文献数
72
被引用文献数
1

本研究の目的は,1980年前後に登場した社会構成主義に基づく組織論研究が,初期の研究からどのように現代の研究へとつながっていったのかを明らかにすることにある.WeickとMorganの研究を初期の代表的な研究として,Batesonの理論からその意義を考察し,その課題点として流転・連鎖・媒介のパースペクティヴを示す.その上で,現代の研究を4つ取り上げ,それらにおいてこの3つのパースペクティヴが加わって展開されていることが明らかになった.
著者
伊丹 敬之
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.4-17, 2023-09-20 (Released:2023-09-30)
参考文献数
3

人的資本が注目されているが,その本当の理由は株主傾斜が上場企業で行き過ぎたことへの警戒感ではないか. 日本の大企業は,カネの結合体として株主への分配を増やすことに忙しく,ヒトの結合体の中核である従業員への分配を軽視している.その上,設備投資まで抑制している.それでは,日本企業に成長の未来図は描けないだろう. 企業はカネとヒトの二面性を本質的にもっていることを,もっと深く考えるべきである.
著者
藤本 隆宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.18-28, 2020-06-20 (Released:2020-08-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

日本の経営学者や経営学界は,米国発のグローバル経営学プラットフォームや論文点数主義にどう向き合うか.私見を述べる.⑴一経営学者の存在理由は「良いメッセージの発信」であり,海外ジャーナルからの発信はその重要な一部だがすべてではない.⑵日本の経営学界は,一方的なローカル路線でもグローバル標準化でもない,グローバル・ローカル混合式へ進み,その一部が有力ジャーナル経由のグローバル発信を目指せばよい.⑶有力ジャーナル挑戦はいわば高峰登頂なので,アタック隊・サポート隊・ベースキャンプなど学界も関与する組織的な仕掛けが必要.また言語の壁,方法論の壁,ローカルデータの壁などに対する周到な対策も大事である.
著者
坪山 雄樹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.19-32, 2021-06-20 (Released:2021-07-15)
参考文献数
53

『組織科学』におけるEisenhardt(1989a)の引用のされ方,具体的にはEisenhardt(1989a)の趣旨とは異なる方法をサポートするためにEisenhardt(1989a)が引用されている現状に鑑み,既に古典的定番となっているEisenhardtメソッドのコアとなる要素として,⑴RQの設定と,⑵理論的サンプリング,⑶トライアンギュレーション,⑷説明の構築,を詳細にレビューした.
著者
宮田 憲一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.27-38, 2022-06-20 (Released:2022-09-17)
参考文献数
60

企業ドメインに関する既存研究は,ドメインの階層性や時間的展開とその変化要因に焦点を当ててきたが,本稿では,過去の経営者から継承した企業ドメインの歴史的側面が現経営者のドメイン定義に経路依存的な影響を及ぼすことを指摘する.電機からメディアへと事業転換して消滅した米国企業のウェスチングハウス社を事例にして,113年にわたる超長期間の考察から,戦略構想プロセスにおける歴史的要因を分析する必要性が示される.
著者
佐々木 秀綱
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.36-48, 2020-03-20 (Released:2020-08-13)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本稿の目的は,権力を持った個人がいわゆる「身びいき」を行いやすくなるか検討することである.具体的には,内集団ひいきが社会的勢力感の上昇により促進されるという仮説を導出し,質問紙を用いた場面想定法実験によって検証を行った.MBA課程に在籍する大学院生を対象に実施した実験からは,日本語を母語とする男性の参加者においてのみ,上記の仮説を支持する結果が得られた.
著者
横田 一貴
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.79-89, 2023-03-20 (Released:2023-06-02)
参考文献数
22

本研究は,リバース・ナレッジ・フローという現象,すなわち転職によって成員を失うことを契機として元組織に知識が逆流する可能性について検討する.日本の半導体関連技術の発明者の転職データを分析した結果,流動性の高い米国で指摘されてきたリバース・ナレッジ・フロー現象は,流動性の低い日本 においても確認できた.ただし,複数人の転職者が存在する場合には,この知識移転効果が制限される可能性が示唆された.
著者
新田 隆司
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.57-70, 2022-12-20 (Released:2023-03-01)
参考文献数
38

本稿の目的は,離職者から以前の所属組織(移動元組織)にもたらされる知の「探索」の機会を通じて,移動元組織が新たな知識を社内に取りこみ商業化に結実させるオープン・イノベーションの実現過程を解明することである.燃料電池用の電解質膜の事例分析を通じて,研究者間の関係的社会関係資本を基に,移動元組織が離職者の移動先の組織と共同研究開発を実施し,組織間で知の「探索」と「活用」の両利きを実現する論理を示した.
著者
本山 康之
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.43-56, 2022-12-20 (Released:2023-03-01)
参考文献数
128

近年,起業を支援する地域システムが「起業エコシステム」という名目の下,相当数研究されてきている.これまでの経済地理学で研究されてきた集積論やクラスター論などの地域システム論との類似点や相違点はどこにあり,どのような関係性にあるのか.これまでの研究の限界を論じ,今後の展望を導き出すことを本稿の目的としたい.
著者
横山 恵子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.15-26, 2022-12-20 (Released:2023-03-01)
参考文献数
60

新種のアントレプレナーシップ現象として,ソーシャル・アントレプレナーシップ(SE)への注目が高まっているが,研究が発展する中で,さまざまな概念化の試みが乱立して全体像の把握が困難になってきている.そこで,本稿はSE研究の軌跡を辿ることで,これまでのSE概念化の整理を行う.その上で,SE概念の固有性に着目して,その社会性基準および資源動員に関する中核的な論点を提示する.