著者
山本 喜三郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.268-275, 1976-08-01 (Released:2017-08-01)

We psychosomatists are sometimes confronted with extremly difficult cases that are often given up by the attending physicians because of the patients' pertinacious somatic complaints and their lack in co-operative attitude. In this paper the author reported on the treatment of two such patients, the result of which, contrary to the initial anticipation, turned to be very satisfactory. This treatment consisted of simultaneous psychotherapeutic approach to the doctor and the patient. Case 1. was a 46-year old single laboror. His complaints were palpitation and fatiguability. Case 2. a 34-year old male clerk. His complaints were diarrhea and fatiguability.Throughout consultation on the treatment of these cases, the author took sympathetic and supportive attitude toward the attending physicians in order to restor their subjectivity which was a vital necessity in a therapist. Only after this, some concrete advice on the treatment was presented to the physicians in concise and concrete terms. At the same time, the author promised the doctors to take over their cases in the out-patient clinic after their discharge.After the discussion, doctors fully encourged, went on to carry out the concrete treatment. Other staffs became spontaneously co-operative. After this, the confused therapeutic atmospher gradually disappeared and the patient's attitude as well as pertinacious complaints were slowly improved.In the author's opinion, consideration over the doctor-patient relationship is sometimes necessary in troublesome patients, and in fact, psychotherapeutic approaches to the attending psysician as well as to the patient were very effective.
著者
細谷 律子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.1221-1228, 2017 (Released:2017-12-01)
参考文献数
7

日頃筆者は, 森田療法を基軸に, リフレーミングなどさまざまな技法を組み合わせて心理面のケアを行っている. あるがままの生き方を目指した森田の理論は, 心理療法というより生き方の道しるべと理解しており, 不安や葛藤を抱え, 悩みながらもがんばっている患者に有用と考えている. 治療者の指導に真面目に取り組んでもらうためには, 患者の心情に十分寄り添う必要がある. 共感力, 反映, 肯定的側面に着目していくことなどが大切であり, また治療者自身もあるがままの生き方を目指す姿勢をもって治療を行っていくことが大事であると考えている.
著者
真船 浩介 廣 尚典 永田 頌史
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.643-649, 2010
参考文献数
20

職場のメンタルヘルス対策では,持続的な効果が期待できる組織的アプローチが求められつつある.職場環境改善は,労働者の心身の健康と生産性の保持増進を目的とした組織的アプローチである.持続的・実効的な職場環境改善を展開するには,労働者の主体的な参画が不可欠である.MIRRORやWINは,主体的な参画と建設的な検討を促すため,労働者のニーズに焦点をあてたポジティブな表現の項目から構成されるツールとして開発されている.これらのツールの特徴を生かした7つのステップに基づく職場風土の改善は,職業性ストレスの変化や精神健康度との関連から,労働者の心身の健康と生産性の保持増進に寄与することが示唆された.今後は,事後対応型のメンタルヘルス対策だけでなく,事前対応型の建設的なストレスマネジメントの科学的根拠に基づく展開と普及が望まれる.
著者
松平 浩 川口 美佳 村上 正人 福土 審 橋爪 誠 岡 敬之 Bernd Löwe
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.931-937, 2016

<p><b>目的</b> : Somatic Symptom Scale-8 (SSS-8) は, 身体症状による負担感を評価する自記式の質問票である. 今回, SSS-8をわが国へ導入するため, 原作の英語版を翻訳し, 言語的妥当性を担保した日本語版を作成した.  <b>方法</b> : 原作者から日本語版作成の許可を得た後, 言語的に妥当な翻訳版を作成する際に標準的に用いられる手順 (順翻訳→逆翻訳→患者調査) に従って日本語版を作成した.  <b>結果</b> : 日本語を母国語とする2名の翻訳者が, それぞれ日本語に翻訳し, 一つの翻訳案にまとめた [順翻訳] . 英語を母国語とする翻訳者が日本語案を英語に翻訳し直した [逆翻訳] . 次に, 原作者との協議を通じ, 原作版と日本語案の概念の整合性を確認し, 日本語暫定版を作成した. 筋骨格系疼痛および身体症状の経験を有す患者5名 (男性2名, 女性3名 ; 平均年齢54.4歳) に調査を行った結果, 全体として, 日本語暫定版の表現に問題はないと判断した.  <b>結論</b> : 一連の過程を経て, 言語的妥当性が担保された日本語版SSS-8を確定した.</p>
著者
森田 哲也
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.127-131, 2005-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
5

近年産業の現場でメンタルヘルスが重要視され, その専門家の関わりが望まれ, その結果, 心身医学関係者はより強く産業医学と関わりをもつであろう. 産業衛生の「作業関連疾患」という概念は, 作業が発症, 再発, 増悪因子になっている疾患で, 作業要因として心理社会的な要因が含まれ, 心身症と類似した概念である. 疾病予防や健康増進に重点を置き, 組織集団を対象としてきた産業医学に対し, 個人を対象としてきた心身医学の経験や治療技法などはメンタルヘルスケアだけでなく, 生活習慣病の予防や改善に役立てることができよう. また, 心療内科医が産業医として活動した場合, 労働者の仕事内容や職場環境を理解しやすく, より効果的な治療を行える可能性もあろう.
著者
廣瀬 俊司 吉川 悟
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.867-876, 2014-09-01 (Released:2017-08-01)

本研究の目的は,歯科診療室でブラキシズム患者のストレス状態を客観的指標で表す質問紙の作成を試みることと,医療面接と質問紙法の結果からブラキシズムとストレスの関係を明らかにすることで,ブラキシズムの新しい治療法を考案することである.ブラキシズムは,顎口腔系に破壊的に作用して,補綴処置やインプラント治療で多くの問題を起こす原因になっている.ブラキシズムにはいくつかの関連因子の報告があり,多因子説が主流である.しかしながら,原因は解明されていない点が存在しており,その関連因子の中のストレスに注目した.ストレスはきわめて多義的で,多変量であり,ストレス状態を正しく測定することは難しい.そこで,患者の抱えるストレスの把握には,医療面接に加えて心理テスト(特に質問紙)が有用であると考えた.本研究では,当院受診患者で同意の得られた358名に医療面接および口腔内診査にて,ブラキシズムの診断と質問紙法によるストレス・チェック(Stress Self Evaluation Check List)を行った.ストレス・チェックの質問項目は13問をもとにして,ストレスの構成概念として「心身の疲労」,「怒りの気分」,「抑うつの気分」,という3つの構成概念を検討した後,ストレスと構成概念との関係を明らかにして,ブラキシズムの有無によりストレス度に有意な差が確認できるか検証すると同時に,今後のブラキシズム治療の可能性について述べる.
著者
渡辺 徹也 戸田 常紀 梶 龍児 木村 淳
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.611-616, 1996-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20

今回我々は, 阪神大震災被災による心的外傷から, 重度の脱水, 高Na血症を来したPTSDの1例を経験した。本例はclomipramine hydrochlorideの点滴静注とbromazepam投与を行ったところ著しい改善を認めたので, 若干の考察を加えて報告する。
著者
武井 美智子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.911-918, 2004
参考文献数
24
被引用文献数
1

摂食障害(ED)の遷延化要因として, 以下の2点について検討した. (1)Egna Minnenav Barndoms Uoofostran(EMBU)を用いて, 摂食障害患者群(67例)と対照群(82例)に, 15歳時を回顧して養育体験を調査し, 比較検討した. ED群で両親とも, 「拒絶」は有意に高く, 「情緒的温かみ」は有意に低かった. また父親は「過保護」が「成績重視」, 「過干渉」ともに有意に低く, 母親は「ひいき」が有意に高かった. このことは, 親子間の情緒交流が不適切になり, 子どもが情緒抑圧的となって, 発病後の心理, 行動, 社会的発達が阻害され, 遷延化する可能性を示唆していた. (2)当科を受診した131例中, 病歴10年以上の遷延例は31例であった. 31例のサブタイプ別のBMI平均値はAN-R12.7, AN-BP13.4と低く, この2群では持続的に, またBN-P群では嘔吐などにより間歓的に, 半飢餓状態が惹起されていると考えられた. これら3群が遷延例の80%以上を占めており, これは, 半飢餓状態が神経内分泌との交互作用を介して, 遷延化因子の1つであることを示唆している.

1 0 0 0 OA 慢性骨盤痛

著者
森村 美奈 野口 愛
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.856-861, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9
著者
澤原 光彦 村上 伸治 青木 省三
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.51-58, 2017

<p>本稿では, 成人の心身症を含む精神医学的諸問題とその背景にある発達障害的特性について, いくつかの代表的な症状を呈した症例の素描を提示し, 筆者の見解を述べた. 発達障害を背景に生じうる状態像として, ①統合失調症類似の状態, ②うつ病・抑うつ状態, ③双極性障害・双極Ⅱ型障害, ④心身症, ⑤心気症的こだわり, ⑥強迫性障害, ⑦摂食障害, ⑧境界性パーソナリティ障害, を挙げた. これら精神医学的な各症状においては, 症状の表層にのみ関心を奪われ, 背景の発達障害的問題に配慮した支援を行わなければ, 難治化・遷延化の危険がある. 診断においては, 常に成育史に関心を払い, 患者の症状がその疾患の典型病像とどのように異なっているかを細心の注意をもって吟味する必要がある.</p>
著者
福田 真也
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.199-205, 2000-03-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9

大学生の"引きこもり"について, 大学の保健管理センターで関わった12例をもとに報告した.1)性別では男性に圧倒的に多い.2)引きこもり先は自宅の自室とアパートなどに独居している者が同数.3)大学入学以前に不登校の既往のある者よりもない者の方が多い.4)程度では軽度と思われるアパシーや, まったく社会とコミュニケーションの取れない重い症例もいたが, 中間の症例が最も多い.5)アトピー性皮膚炎や気管支喘息などの心身症を合併する症例が多い.6)その後2/3の者は退学した.彼らは精神分裂病による自閉や躁うつ病のうつ病相で"引きこもり"になったわけではないが, なんらかの神経症的症状, 強迫的傾向や対人恐怖症状をもち, 高い自尊心と低い自己評価の間の葛藤に悩むことが多かった.対応・治療では一部の症例は行動や身体面からのアプローチが有効であったが, 多くの症例ではその対人関係上の問題から良好な治療者・患者関係が築けず対応が困難であった.相談件数も増加しており, 大学生のみならず青年期のメンタルヘルス上重大で, 心身医学からのアプローチも今後重要と思われる.