著者
原山 智
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.43, pp.87-97, 1994-04-28
被引用文献数
12 16

最も若い露出プルトンの冷却史解明のため, 滝谷花崗閃緑岩 (北アルプス) の熱年代学的な研究を行った。垂直方向に累帯する岩相から4試料について鉱物年代を測定した結果, 黒雲母・カリ長石の鉱物年代 (K-Ar法, Rb-Sr法) は岩相によらず1.2-1.1 Maに集中することが判明した。ホルンブレンドのK-Ar年代は1.93-1.20 Ma であり, 深部相ほど若い傾向がある。これは深部ほど固結開始時期が遅れたためであろう。測定鉱物の閉鎖温度から冷却曲線を求めた結果, 平均冷却率は岩体浅所で350℃/Ma, 深部では550℃/Ma以上を示した。三次元単純熱伝導モデル計算による冷却曲線は指数減衰を示し, 岩体浅所での直線状の熱年代学的冷却曲線と大きく異なるため, 冷却前半 (2.2-1.2 Ma) では深部からの熱流入が, 後半では隆起活動による急速冷却が推定された。深部ほど冷却率が大きいのは, 冷却開始が深部では遅いため熱流入の効果は短期間で弱く, 単純熱伝導冷却に近づいたためと解釈できる。
著者
木村 学 楠 香織
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.295-305, 1997-04-24
参考文献数
39
被引用文献数
7

北海道は千島弧と東北日本弧の会合部にあり, 白亜紀以降の日高造山運動によって形成されてきた。白亜紀はじめから始新世にかけてアジア人陸の北東縁に平行な古海溝に沿って, 沈み込みに伴う付加が起こった。オホーツクプレートの南縁に位置した古千島弧が暁新世にアジア人陸縁と衝突し, サハリンや北海道北部における沈み込みが終了した。その後, サハリンと北海道地域は右横ずれ断層帯(日高剪断帯)へと変化した。北海道の東半分はその右横ずれ断層帯に沿って南へ動き, 断層帯に沿っては中期中新世のプルアパートベーズンが形成された。その右ずれ断層は日本海盆と十島海盆の拡大と, そして日高変成帯の変成・火成作用と同時に起こった。これらの事件はお互い密接に関連していたようである。日本海盆と十島海盆におけるアセノスフェアの上昇は, 右ずれ収束している日高剪断帯の下におよび, それによって同時に火成・変成作用が右ずれ変形とともに起こった。こうした出来事を通して, 北海道では厚い大陸地殻が成長した。中新世後期から太平洋プレートが千島海溝に沿って斜めに沈み込み, 千島前弧スリバーを南西へ移動させた。北海道の島弧会合部で前弧スリバーが衝突し, その結果日高変成岩が上昇・露出したが, これは上述した造構過程を通して形成された下部地殻である。北海道におけるこの大陸形成過程が新しく定義される「日高造山運動」である。日本列島同様, 島弧会合部における衝突は環太平洋造山帯のほとんどの島弧会合部で進行しており, それは沈み込み帯において新しい大陸地殻を急速に造るための重要なプロセスである。
著者
小松 直幹
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.34, pp.149-154, 1990-03-30
被引用文献数
4

新潟油田における新第三系の褶曲は, (1)基盤までを含んだ褶曲と, (2)浅層(椎谷層以上の地層)が著しい褶曲を示すのに比べて, 七谷層以下が緩い構造を示すような褶曲とがある。新津・角田の背斜は, 西山期から基盤が東側に断層を伴いながら傾動する事によって作られた基盤を含む構造である。上昇地塊の下盤側に圧縮の応力場ができて, これによって椎谷層中のCompetent層が挫屈して桑山の背斜ができた。宮川〜東山の断面では, 七谷層はゆるい褶曲を示す. 椎谷層より上位の地層は寺泊層中の泥質岩を滑り面として激しい圧縮性の褶曲を示す。西山層の泥質岩の一部は流動によって背斜を形成している。
著者
岩崎 正夫
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.4, pp.41-50, 1969-01-31
被引用文献数
1

A brief descriptions are given of the metamorphic rocks belonging to the "Mikabu Green Rocks" which are effusive-intrusive complex of ultrabasic and basic composition, and were recrystallized during the Sambagawa metamorphism. The Mikabu Green Rocks occur at the boundary between the Sambagawa Metamorphic Belt and the Chichibu Belt consisting of unmetamorphosed sediments. Most of the original rocks of the Mikabu Green Rocks are considered to be the materials which have been produced by the submarine volcanisms in geosyncline. The survived original structure and the relic minerals as well as textures were used to speculate on the iroriginal rocks. They are divided in to the effusives and intrusives, conveniently. The intrusive varieties are represented by metagabbros, diabases, ultra-basic and ultramafic rocks. The metagabbros are relatively coarse-grained and always contain pumpellyite, whereas diabases are usually considerably finer-grained rocks and always contain epidote. The effusives are represented by lavas and pyroclastics of basaltic composition. In the regions of Sanagochi and Osugi, metamorphosed pillow breccias which indicate the submarine lava eruptions, crop out over wide area in a eastwesterly trending block, overlain on the south by unmetamorphosed Paleozoic sediments of the Chichibu Series (Fig. 1). The following criteria assist recognition of the Mikabu Green Rocks. (1) They occur at the boundary between Sambagawa Metamorphic Belt and the unmetamorphosed Paleozoic Sediments. An anticlinal structure lies at this boundary and is thought to be a geanticline (oceanic ridge ?) in geosyncline belt, and the topography of the rises is thought to be of volcanic origin. (2) They were recrystallized weakly and have frequently distinct relic structure and relic minerals. (3) The rocks of basaltic composition are predominant. The composition of original rocks would have been characterized by a high MgO and FeO contents and a low K_2O content.
著者
前田 仁一郎 斎藤 清克
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.75-85, 1997-04-24
参考文献数
55
被引用文献数
4

日高火成活動帯では古第三紀の苦鉄質深成岩体が白亜紀後期から古第三紀初期の付加体の中に貫入している。日高山脈には苦鉄質深成岩類・高温型の変成岩類・アナテクサイトからなる日高火成活動帯の地殻断面が露出している。この地殻断面から2つの性質の異なったマントル由来未分化マグマ, Nタイプ中央海嶺玄武岩(N-MORB)質と高Mg安山岩(HMA)質, が見いだされた。N-MORBとHMAの組み合わせは海嶺と海溝の衝突モデルによって説明することができる。すなわちNMORBはクラー太平洋拡大軸にそって上昇するアセノスフェア(レルゾライト質, ε_<Sr>-27. 79, ε_<Nd>-+10. 71)に由来し, HMAは海嶺沈み込みによってもたらされた熱異常によって上盤プレートのくさび状マントル(ハルツバーガイト質, ε_<Sr>=+2.17, ε_<Nd>=+2.84)から発生した。マントル由来未分化マグマの付加体底部への透入によってグラニュライト相に達する高温型変成作用とアナテクシスが発生し, 珪長質の変成岩類とカルタアルカリ質のマグマが形成された。マントル由来未分化マグマの地殻内での分化作用は付加体構成物の同化作用を伴った。マントル由来マグマとアナテクシスによる地殻由来メルトとの混合もまたカルクアルカナ質の火成岩類をもたらした。すなわち, 以上のようなプロセスの複合によって未成熟大陸地殻が前弧域で形成される。付加体と衝突する海洋底拡大軸の火成作用と変成作用は, 玄武岩組成の海洋地殻が形成される通常の中央海嶺でのそれらとは著しく異なる。これら2つのセッティングの比較から, 大陸地殻の形成にとって厚い堆積岩類が本質的に重要な役割を果たしていることが示される。海嶺の沈み込みは始生代の大陸地殻の成長にとって重要な事件であったであろう。日高火成活動帯で観察されたマントル由来マグマの迸入によって誘発される地殻内マグマプロセスは火成弧深部のそれのアナログである。
著者
堀 利栄 藤木 徹 樋口 靖
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.43-59, 2000-01-21
参考文献数
74
被引用文献数
3

付加体中に頻繁に含有される層状チャートの化学組成や同位体比は, チャートが堆積した場の環境や続成過程, また過去の大陸表面の化学組成や付加後のテクトニックなイベントを反映している.本論では層状チャートの化学組成や同位体比の解析例を示し, その問題点や将来性について議論した.REEやいくつかの主成分元素組成は, 層状チャートの珪質部と泥質部が濃度の差こそあれ同起源物質を含有していることを示しており, 珪質部は泥質部がSiO_2で希釈された部分とみなされる.さらに珪質部は, Sr同位体比による解析の結果, より初生的な情報を保持し易いことが示唆された.特に堆積場の酸化・還元状態は, 珪質部における一部の元素組成やS同位体比を用いることで解析可能であり, その一例としてFe^<2+>, Fe^<3+>の量比, AlやTi濃度で規格したMn, U, V比やS含有量をあげた.このような付加体堆積岩の環境解析において欠けてならない点は, 地球科学的な制約条件との整合性であり, 地球化学だけでなく他分野との総合的な議論が必要である.
著者
堀川 晴央
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.9-19, 1999-03-24
参考文献数
32
被引用文献数
1

地震学的に見た兵庫県南部地震の本震, および, 前震や余震の特徴を概観した。本震は東西方向に圧縮軸を持ち, これは西南日本内帯で発生する内陸型地震の典型である。起震断層は神戸側と淡路島側との2つに大きく分けられると考えられている。そして, 神戸側の断層は, 更に2つの部分に分かれる。淡路島側の断層では浅部ですべりが大きいのに対し, 神戸側の断層では深部で大きく, また, すべりの大きな部分は2箇所ある。破壊はまず神戸側の断層で始まり, 約3秒後に淡路島側の断層へ伝播した。また, その際に多量の高周波が発生した。本震の破壊完了までに要した時間は約12秒と推測されている。前震は本震の破壊開始点近く, 断層の幾何が複雑なところで発生している。余震の発震機構から推定された応力テンソルは本震の断層面に対して高角で最大主圧縮応力を持つと推測される。このような応力状態は, 余震活動の特徴である余震の発震機構がばらつくことを説明できる。
著者
公文 富士夫 紙谷 敏夫 須藤 浩一 井内 美郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.39, pp.p53-60, 1993-03
被引用文献数
4

2km間隔の164地点で採取した5~10cmの深さおよび10~15cmの深さの堆積物について改良した比重計法で粒度分析をおこなった。琵琶湖全域にわたる系統的な粒度分析はこれが最初である。中央粒径値をもとにした粒径分布図には, 内側ほど細粒になり, 最中心部で少し粗粒になるという特異な環状の粒径分布が安曇川河口の沖合いに認められた。その位置は最近実測された第1環流の位置に対応しており, その粒径分布は, 垂直循環を伴なった収束する環流による運搬と選別の作用として説明ができる。北湖の沿岸域では, 水深10m前後まで砂質堆積物が分布している, 姉川河口域の沖合いでは, 北西と南東に伸びた砂質泥の分布が認められ, 温度成層期と非成層期の河川流入水の流れに対応したものと考えられる。堆積物の粒径分布は湖水の平均的な運動を反映したものと考えられる。
著者
堤 浩之 岡田 篤正 中田 高 安藤 雅孝
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.p113-127, 1992-12
被引用文献数
1

四国中央部における中央構造線の活動的なセグメントのひとつ岡村断層のトレンチ発掘調査を1988年3月愛媛県西条市で行なった。断層と地層の変形構造を水平方向に明らかにすることにより断層運動に伴う水平変位量の解明を試みた。壁面で観察される断層の構造は横ずれ断層に共通する特徴を備えている。断層を挟んでの地層の食い違いは右ずれを示し, 断層変位地形から推定される岡村断層の変位のセンスと一致する。地層の変形と^<14>C年代測定結果に基づいて最近2回のイベントを解読した。最新イベントは断層がすべての自然堆積の地層を切断するためその時期を確定することはできないが, それに伴う変位量が右ずれ約5.7 mと求められる。それより1回前のイベントはB.C. 1405~925年にあったと推定される。特定の谷がら供給される地層の年代と供給源との位置関係から過去1万数千年の岡村断層の右ずれ変位速度が6.8 mm/yr以下と推定される。
著者
井内 美郎 衣笠 善博 公文 富士夫 安松 貞夫 中野 聰志 志木 常正
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.61-70, 1993-03

琵琶湖の西岸付近の湖底堆積物には肉眼で確認される砂層以外にもシルトを主とする細粒の粒子からなる湖底地滑りを起源とする堆積物が多くはさまれている。これらのタービダイトの堆積年代を重量堆積速度を基に推定した結果, 歴史地震と対応する事が明らかになった。湖底地滑りを起こした地震の震度の下限値は, 琵琶湖においては気象庁震度階のIVとVのそれぞれの下限値の中間である。この震度を加速度表示した場合, 約44galに相当する。これはMM震度階のVIとVIIの境界の加速度に相当する。
著者
村田 明広
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.147-158, 1998-07-31
参考文献数
64
被引用文献数
5

九州の四万十帯には, 多くの低角な衝上断層が存在し, それらはデュープレックスや, 赤・緑色珪質泥岩の衝上シートを伴うことがある。九州の四万十帯では, 砂岩優勢の白亜系諸塚層群が, 塚原衝上断層によって, 千枚岩優勢の槙峰層群の上に衝上している。また, 槙峰層群と古第三系北川層群は, 延岡衝上断層によって, 古第三系日向層群の上に衝上している。延岡衝上断層及び塚原衝上断層は, 離れた位置にクリッペが存在することから, 全体としてほぼ水平で, 変位量はそれぞれ60 km, 30 kmに達する。四国では高角な安芸構造線, 中筋構造線が白亜系と古第三系を境しているが, 安芸構造線はもともと低角であり, 中筋構造線付近には低角な衝上断層が存在する可能性がある。九州で確認された低角なナップ構造は四国へも追跡され, 西南日本の四万十帯の基本構造である可能性がある。
著者
佃 栄吉
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.p235-250, 1992-12
被引用文献数
5

西南日本弧を大地形および要素的活構造の特徴をもとに, 南より 1) 陸側海溝斜面帯, 2) 前弧海盆帯, 3) 四国帯(前弧隆起帯), 4) 瀬戸内(剪断)帯, 5) 中国帯, 6) 山陰帯, の島弧にほぼ平行に配列する6つの構造帯に分割した。四国帯には剣山背斜, 紀伊向斜など, 帯に平行な方向の圧縮の結果と考えられる南北軸の構造が卓越する。MTLの北側の幅80~100 kmの瀬戸内帯は顕著な右ずれ剪断運動を示す構造が発達し, 中部九州の雁行地溝群分布域まで連続する。西南日本弧の活構造を形成する基本的メカニズムは, フィリピン海プレートの斜め沈み込みを原因とする前弧海盆帯および四国帯からなる前弧スリバーの西進運動である。前弧と背弧の境界であるMTLの右ずれ運動および瀬戸内帯の右ずれ剪断運動もそれで説明できる。南九州南方ではトラフ軸・島弧の屈曲にともない, プレート間収束方向がプレート境界に対してほぼ直交するために, 前弧スリバーを西進させる力がなくなる。その結果, 前弧の"追突現象"が起き, 四国帯の南北軸の圧縮構造が形成されたと考えられる。
著者
徳田 御稔
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.3, pp.5-14, 1968-12-28

The theory of organic evolution has been kept under the strong influence of paleontological findings during the late nineteen and early twenty centuries. In regard to the progressive evolution of species, the Lamarckian theory of evolution should be considered in the light of modern biology, as it cannot be replaced merely by the selection-theory of Darwin, for the latter is only applicable for an explanation of the mechanism of specific divergences. Advancement of organic structures is not a matter of that intimately associated with divergences: it belongs to the phenomenon of "aromorphosis" of A. N. SEVERTSOV, resulted through the process of adaptation as a whole inconnection with the historical change of the inorganic and organic environments. In the upper half of Table 1 the findings of neontological and paleontological facts are arranged to show their correspondences. The contributions of ecological studies after Darwin, however, were not necessarily concomitant with the evolutionary theories. As shown in the lower half of the Table, the analysis of community that have been carried out after Darwin paid little attention to the problem of species. The present study refers frequently to Orlov (1962, "Fundamentals of Paleontology″) which gives adequate accounts on the history of the development of paleontology in association with the theory of evolution.
著者
橋本 学
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.51, pp.37-50, 1998-03-24
被引用文献数
1

兵庫県南部地震前後の測地データを解析し, 地殻変動を明らかにした。広域の変動としては, 震源の東西のGPS連続観測局が震源方向に, 南北のGPS観測局が震源と反対方向に移動したことが特徴的である。しかし, 震源域周辺のより稠密な測量の結果, 野島断層近傍の三角点の約1m南西への移動, 神戸側の各三角点の六甲断層系を境にした右横ずれ変位, 神戸市垂水区で須磨断層を境に西側に約19cmの隆起と東側に約7cmの沈降, 淡路島東岸で約20cmの隆起等が明らかになり, 複雑な断層運動が示唆される。これらの結果に基づき断層モデルを推定した結果, 野島断層, 明石海峡付近及び六甲山直下に1〜2.5mの右横ずれが卓越したすべりが推定された。"震災の帯"直下に断層を仮定したモデルは測地データを満足に説明できず, 測地データは"震災の帯"直下の断層運動を支持しない。
著者
酒井 哲弥 斎藤 文紀 増田 富士雄
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.1-14, 1995-08-10
参考文献数
23
被引用文献数
5

1980年代後半にエクソングループの手によってシーケンス層序学が確立された。ここではその概念について説明する。その中でも特に, シーケンス層序学で最も基本となるユニットであるシーケンスとそれを構成するユニットの特徴を説明し, ユースタシーが地層形成にどう影響するかについて議論する。
著者
吉田 武義 村田 守 山路 敦
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.42, pp.297-349, 1993-04-30
被引用文献数
13

The Tertiary Ishizuchi Cauldron, in the Setouchi volcanic belt of middle Miocene age in northwestern Shikoku, is 7-8 km in diameter and includes outer and inner ring fractures, inward dipping andesitic to dacitic welded tuffs, granodioritic to adamellitic central plutons, and andesitic to rhyolitic ring fault complexes (Yoshida, 1984). Major element chemistry suggests that the granodiorite and adamellite, as well as the volcanic rocks composing welded tuffs and ring dykes, form a comagmatic series. These volcanic and plutonic rocks, however, show two contrastive trends in some trace elements causing zircon and alkali feldspar bearing fractionation at lower temperature for plutonic rocks. The compositional zoning from porphyritic intermediate composition rocks to aphyric silicic rocks with similar assemblage and relative proportion of phenocrystic minerals suggests the importance of fluid separation from porphyritic magma during intrusion, along with possible phenocryst settling in the reservoir. Mineral assemblage and major geochemical criteria show that the intermediate composition rocks and silicic aphyric rocks belong to I-type and W-type (Murata & Yoshida, 1985a) granites, respectively. The MORB normalized patterns of those rocks including high-magnesian andesites from the Setouchi volcanic belt indicate that those magmas are derived from subduction zone with a contribution of incompatible element-enriched upper mantle, that is, from sub-continental upper mantle source at active continental margin. The Ishizuchi Cauldron formed by the eruption of voluminous pyroclastic flows, accompanied by caldera collapse along ring fractures and by intrusion of the same magma along the underground cauldron fractures that formed in the subsiding block. The change in fracture pattern from upward opening cone to concave-upward subsidence faults implies the rotation of the maximum stress axis from vertical to horizontal, owing to eruption of magma from the magma chamber and caldera collapse into the upward opening cone. Intrusion of silicic magma into concave-upward sheets from ring dikes produced resurgent doming of the upper part of the subsided block. In middle Miocene of the Southwest Japan, just after the end of the opening of Japan Sea, the direction of the maximum horizontal compressional stress changed from EW-trend to NS-trend. At the same time, Southwest Japan uplifted being compressed normal to the arc, and volcanic field rapidly extended to the south beyond the Median Tectonic Line. The Ishizuchi I-type and W-type granitic rocks at the northern end of the Outer Zone of Southwest Japan might be derived by orthopyroxene and plagioclase fractionation from mantle-derived K-rich high Mg andesitic magma. On the contrary, the I-type granitic rocks from the northern side of the Butsuzo Tectonic Line (BTL) and the S-type granitic rocks from the southern side of BTL are considered to be produced by partial melting of lower crust at a depth of about 20 km (Murata, 1984). The I-type granites were probably generated by partial melting of Ca-amphibole and plagioclase bearing intermediate igneous and/or metaigneous rocks, and the S-type granites formed biotite and orthoclase bearing rocks (Murata & Yoshida, 1985a). And, the A-type granitic rocks which derived from deep source occurat the southern end of the Outer Zone (Murakami et al., 1989). The distribution of those granitic rocks mainly controlled by the heterogeneity of source materials with different isotopic compositions at the lower crust to upper mantle and their thermal structure. The estimated regional heterogeneity of the source region of the magmas is compatible with the present seismic wave velocity structure in the Outer Zone of Southwest Japan. The middle Miocene igneous activities at the Setouchi and the Outer Zone of Southwest Japan might be triggered by the subduction of hot mantle region. Plate reconstruction at the middle Miocene of the Southwest Japan has done.
著者
岩井 四郎 木下 房男 木内 一巳 小松 ★ 仁科 良夫 大木 正夫 島田 安太郎 千村 重平 梅村 弘 阿高 康行 遠藤 輝 藤田 敬 郷原 保真 石橋 俊明 石田 聖 小坂 共栄 熊井 久雄 三上 進 三谷 豊 水野 学 岡部 孝次 酒井 潤一 沢村 寛 下野 正博 新海 正博 杉山 茂 田辺 芳宏 田中 俊広 渡辺 晃二 山下 昇 矢野 孝雄 吉野 博厚
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.7, pp.297-304, 1972-12-25
被引用文献数
8

The Matsumoto Basin Research Group was organized in March, 1971, to clarify the geological history of the Matsumoto Basin. The results of studies obtained during the last year are as follows. 1) A geological map on the Quaternary of the Matsumoto Basin was constructed for the first time. 2) The crystal ash beds in the Nashinoki Loam Formation are correlated to the so-called biotite pumice beds (B_1, B_2, B_3) around Yatsugatake Volcano, while the crystal ash may had been erupted from the volcano around Kumonotaira to the north of Mt. Mitsumatarenge in the midst of the granitic rock area of the Japanese Northern Alps. 5) The Nashinoki Gravel Formation is the products of the first, large scale deposits filling up of the Basin with gravel. It shows that the formation of the Basin set out first in that age. 4) Simultaneously with the accumulation of the Nashinoki Gravel (or the subsidence of the Basin), the Northern Alps began to rise and the peculiar volcano (with the crystal ash) started its activity.
著者
高橋 奈津子 Natsuko Takahashi 千葉大学理学部地球科学教室 Department of Earth Sciemees Faculty of Sciemee Chiba University
雑誌
地質学論集 = The memoirs of the Geological Society of Japan (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.87-105, 1997-04-24

北海道, 日高帯の幌満かんらん岩体は, かつてのマントルダイアピルの断片であり, その物理条件の違いから, 様々な段階でのマグマ分離現象が凍結されている。高温部では上昇の最終課程まで部分溶融していたため形成されたメルトとそのメルトが小規模クラックに分離して形成された斜長石に富む脈が見られ, 大規模なメルト分離現象は現在SDWで占められているかつてのmelt conduit周辺部に凍結されている。規模の違いこそあれ, 両者の基本的なマグマ分離メカニズムは, 溶融メルトのクラックへの吸い込みであった。
著者
脇田 浩二 宮崎 一博 ソパヘルワカン J. ズルカルナイン I. パーキンソン C.D. ムナスリ Koji Wakita Kazuhiro Miyazaki Jan Sopaheluwakan Iskandar Zulkarnain Christopher D. Parkinson Munasri Geological Survey of Japan Geological Survey of Japan Research and Development Centre for Geotechnology Research and Development Centre for Geotechnology Tokyo Institute of Technology Tsukuba University
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 = The memoirs of the Geological Society of Japan (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.152-162, 1997-06-30
参考文献数
14

東南アジアの古大陸スンダランドの周りには, 様々な年代の付加体やゴンドワナ大陸起源の微小大陸片が集まってきて, 中生代・新生代を通じて次第に大陸成長を続けてきた。インドネシアの中部ジャワ, 南スラウェシ及び南カリマンタン地域において付加体の詳細な調査研究の結果, 白亜紀における海洋プレートの沈み込み, 深海堆積物の付加, 微小大陸片の衝突などが次第に明らかになってきた。これらの三池域の地質は, 構成岩相や地質時代などがお互いに良く類似している。しかし, それぞれの地域が受けた構造運動の違いが, 構成岩石の性質に微妙な違いを与えている。中部ジャワのルクロコンプレックスは, 典型的な付加体で, 白亜紀全体を通じて定常的な海洋プレートの沈み込みと海洋堆積物の付加で特徴づけられている。南カリマンタンのメラトスコンプレックスは, その被覆層とともに収束境界に沿った島弧で形成されたと推定される。一方, 南スラウェシのバンティマラコンプレックスは, 海洋プレートの沈み込みに引き続いて起こった微小大陸片の衝突の歴史を記録している。The Sundaland craton in Southeast Asia is surrounded by a number of accretionary complexes of various ages, and accreted microcontinents which were originally rifted from the Gondwanaland. Continental growth along the southern and eastern margins of the Sundaland resulted from accretion of sediments and collision of continental fragments throughout Mesozoic and Cenozoic times. Cretaceous tectonic processes in the Indonesian region such as subduction, accretion and collision have been revealed by detailed geologic investigation of accretionary complexes in Central Java, South Sulawesi and South Kalimantan. The components of these complexes are similar to each other, but the precise nature of the components differs somewhat. Differences of structure and lithology suggest differing tectonic histories. The Luk-Ulo Complex of Central Java is a typical subduction complex generated by continuous subduction of oceanic plate through out Cretaceous time. The Meratus Complex and its overlying formations in South Kalimantan are also products of oceanic plate subduction in an island arc setting. On the other hand, the Bantimala Complex of South Sulawesi records the effects of oceanic plate subduction followed by collision of a continental fragment.
著者
鳥海 光弘 榎並 正樹 平島 崇男 渡辺 暉夫 Wallis Simon 高須 晃 西山 忠男
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.49, pp.71-88, 1998-03-27

この多人数の著者による論文は, 将来の進歩に向けての展望と戦略に重点を置いて, 岩石学の展開を議論する。鳥海は来るべき21世紀に向けての岩石学の使命とそれを達成するための戦略についての個人的見解を述べる。榎並と平島は高圧・超高圧変成作用の現代的視点を議論する。彼らは, 岩石学の古典的な手法が, 熱モデル・テクトニックモデルと結合された場合には, その温度・圧力履歴を解明するのに大変有用であることを示す。"テクトニクス"の定義の議論から始めて, ウォリスはテクトニクスにおけるこれまでの解釈についていくつかの重要な疑義を呈している。造山帯において単純剪断よりは伸長テクトニクスの証拠が増加していることはその一例である。大陸地殻のテクトニクスは地球科学において現在でもなお盛んな研究領域である。彼は大陸地殻の変形についてのプレートテクトニクスを越える最近のアイデア, 例えば大陸リソスフェアを堅いプレートではなく粘性流体とみなす考えなど, を議論している。渡辺は過去の超大陸, ロディニア, の再構成に関する最近の進歩をレビューし, テクトニックプロセスの解釈における inverse modelingとforward modelingの重要性を議論する。高須は年代測定法の岩石学への応用の最近の進歩, 特にSHRIMPやCHIMEなどの微小領域年代測定法を議論している。彼は間違っているかも知れない年代測定のデータに信を置きすぎる人たちによるその応用の危険な側面を強調している。