著者
土肥 麻佐子 持丸 正明 河内 まき子
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.228-237, 2001-10-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
13
被引用文献数
3 6

高齢者への靴の適合性の向上には, 高齢者独自の足部形態特性を把握することが重要と考え, 形態特性と靴の履き心地との関連を検討した. 高齢者女子50名 (60~81歳) を対象にアンケート調査を実施し, 靴に対する意識および靴の不適合部位を調べた. 次に, 高齢者90名 (60~81歳) と若年者148名 (18~27歳) の足長・足囲分布の世代差を検討した. さらに, 高齢者50名 (60~81歳) と若年者166名 (18~27歳) の足長サイズ別形態特性の世代差について, 寸法・角度等20項目の計測値と2示数および3次元形態特徴の推定得点より検討した. この結果, 高齢者の足は同一足長の若年者より足囲が大きく (JIS足囲サイズのEEEを中心に分布), つま先形状が第1指がまっすぐ伸び第5指が内反した先広の傾向である. 足部前方は分厚く, 足首より後方が長いことがわかった. これらは, 第1指や外果下方に不適合が多いことと関連があり, 履き心地の不満を裏付けるものである. 靴設計に高齢者の形態特性を反映することで適合性の向上が期待できる.
著者
江間 徹郎 水倉 幸夫
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.207-213, 1998-08-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
13

パイロット誘導振動 (PIO: Pilot Induced Oscillation) は航空機のミッション遂行の操作中に突然誘導される. この原因は機体特性だけでなく人間の操作方法にもあり, 機体特性だけでは解決しない.本研究は人間の操作法とPIOとの関係およびその抑制法について実験的に検討した. そして, PIOは人間の操作法と機体の応答との干渉に起因していると考えられること, 人間を含めた閉ループ系のバンド幅 (位相が-90degにおける周波数) が1 (rad/s) 以下の特性を有する場合, これが顕著であることなどを示した. また, その抑制法としてパイロットゲインの低下, 位相進み操作が効果的であることなどを示唆した.
著者
梅沢 侑実 土井 幸輝 藤本 浩志
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.88-95, 2016
被引用文献数
1

本研究では,人差し指第3関節(中手指節間関節,以下MP関節)の屈曲錯覚を生起させる振動提示条件と,そのときの錯覚特性を明らかにした.実験要因は振動周波数とし,50,70,90,110,130,150,170,190 Hzの8条件とした.実験参加者には,錯覚が生起したか否かを二肢強制選択で回答させた.生起したと回答した場合,明瞭度を等間隔主観5段階評価で回答させた.また,錯覚特性としては,振動提示から錯覚生起までの反応時間と,人差し指MP関節が屈曲したと感じた角度を再現してもらい,その角度を錯覚角度として計測した.実験の結果,錯覚生起率・明瞭度が高い振動周波数は70,90,110,130 Hzであった.また,これらの条件において,反応時間は5秒であり,最大の錯覚角度はおよそ40度であった.本研究により得られた知見は,運動錯覚を用いた新たなインタフェース開発を行う上で,一助となることが期待できる.
著者
万井 正人
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.45-52_2, 1967
被引用文献数
2

A continuous recording technique of the systolic blood pressure during work has been developed. A blood flow detector by means of a CdS-cell applied of a finger or an ear-lobe was combined with an air compressor through an and-or-not circuit which worked to keep the air cuff pressure approximate to the systolic blood pressure. Ear-lobe application was preferred in case of motor-car drivers. A polygraphic recording during the motor-way driving revealed that the blood pressure increased by 35-40mmHg or even more at the maximum. Blood pressure level was not always parallel with heart rate variations. In critical cases of some drivers as in passing, a blood pressure level of more than 40-60mmHg higher than the resting level was observed. Personality of drivers seemed to have certain relations with blood pressure increase during driving.
著者
金谷 末子 宮前 あつ子
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.163-167, 1989-06-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
12
被引用文献数
2

1 0 0 0 OA 衣服と運動量

著者
笠井 美恵子
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.161-166, 1968-05-30 (Released:2010-03-11)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

衣服とは, 静姿の人体によく合っていて, しかも日常生活における運動機能を十分に果すことのできる立体的構造をもった着心地のよい“きるもの”をさす. 広くいって“肌着からドレスまで”ふくまれることになる.そういう衣服のために運動量 (ゆとり) を合理的にするため“上腕の動き”に例をとり, 胴の構造体を組立てた実験研究の報告である.(1) 上腕の動きを日常生活にしぼって, 斜前方向で, 高さが低位・水平位・高位の3種類とした.(2) 静姿の人体に直接, 水平・垂直の線を引き, 上腕の動きにともなっておこる人体表面 (皮膚面) の伸縮の変化を視覚的に捕えた.(3) 人体の線を紙に写しとったものを Shell (殻) という. 静姿・低位・水平位・高位の Shell をそれぞれ一平面上にひろげてみた.静姿の Shell は衣服の造型性を生み出し, 運動の Shell は運動量を算出するのに役立った.(4) 更に, 断面構造に焦点を当てて, 運動量 (%) を貯える位置を明確にした.(5) 運動量をふくめた, 衣服のための構造体 (胴) を(3)と(4)から造り上げた.この実験の結果, 胴の構造体の運動量は腕孔を中心として前後面の奥行にとり, 側面脇下には不必要なこと, 特に背巾の運動量は3動作のうち, 最も目立たない低位にその基準をおくべきことなど重要な結論を得た.
著者
高柳 泰世 宮尾 克 石原 伸哉
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Supplement, pp.296-297, 2005-06-11 (Released:2010-03-15)

1933年に公布の船舶職員法では小型船舶操縦士の弁色力は安易に先天色覚異常の検査によって評価された。しかし先進諸外国ではこの様な規制はないことおよび、先天色覚異常者であっても小型船舶操縦に必要な色識別が可能なものがいると考えられるため、現場に必要な色識別テストを考案した結果、眼科的検査は止め、夜間灯色識別テスト器により判定され、眼科的検査により不可とされた人たちの人権が守られる時代に入った。
著者
夏野 豊樹 平柳 要
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 = The Japanese journal of ergonomics (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.236-241, 2009-08-15
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

生姜抽出物の経口摂取による人でのエネルギー消費等を,冷え性気味の健常若年女性19人を対象としたランダム化交差比較試験により検討した.被験者は室温23~24℃,湿度30~40%の環境下において,(1)プラシーボ(澱粉),(2)生の生姜10 g相当,(3)生の生姜20 g相当をそれぞれ別の日にカプセルで摂取した.サンドイッチと適量の水をとった後,カプセルを飲み,1時間,2時間,3時間経過時に,エネルギー消費量,手と足の指先の体表温,脈拍数および収縮期・拡張期血圧の測定を行った.その結果,食事による影響を取り除いた生の生姜10 g相当摂取時は安静時に対する増加率で,1時間後7.4%,2時間後8.2%,3時間後6.6%で,1時間後を除いて有意な増加であった.また,生の生姜20 g相当摂取時のエネルギー消費量は1時間後10.5%,2時間後11.6%,3時間後8.6%と有意に増加した.結論として,人での研究において,生姜非摂取時に比べ,生姜摂取によってエネルギー消費量が有意に高まることが初めて明らかになった.
著者
中村 孝文 黒岡 紀哉 田内 雅規
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.43-53, 2013

目的:車いすのティッピングレバー(TPL)は前輪の上げ下げに用いられるが,現状のTPLは形や位置の面から前輪上げ下げ操作がしやすいとはいえない.そこで本研究では,前輪上げ下げ時のTPL位置と操作時に感じられる身体的負担の関係を調べ,負担を軽減できる最適なレバー位置について検討した.<br>方法:被験者は介助操作に慣れた健常成人12名とした.介護用車いすの左右のTPL先端部にアダプターを取り付けてその間に棒(バー)を渡し,床からの高さを75~175 mm,後輪軸からの水平距離を110~230 mmの範囲でその位置を調整出来るようにした.車いすには被験者が前輪上げが可能と感じる質量の70%の重りをシート上に乗せた.被験者はバーを踏んで前輪上げ下げ動作を行い,その際の腕,脚,腰の負担を記録した.<br>結果:前輪上げ動作では,バーの後輪軸からの水平距離の増加に伴い腕,脚,腰の負担はどれもほぼ直線的に減少した.バーの高さの変化に対しても腕,脚,腰の負担特性は類似していた.3部位の負担はバーの高さが低い場合は減少するが,その関係は線形ではなく,後輪軸からの距離に依存して変化した.前輪下げ時の特性は上げ時と類似していた.車いす後部空間における前輪上げ下げ時の負担の結果から最も効果的なTPL位置は水平距離225 mm,高さ125 mmであった.<br>結論:TPLを置くべき位置は腕,脚,腰の負担及び走行時の妨げの少なさの観点から,後輪軸から水平距離225 mm,床からの高さ125 mmが適当と考えられた.
著者
仲村 彰
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 = The Japanese journal of ergonomics (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.189-195, 2009-06-15

これまでの射出脱出に関する研究の多くは,射出時の受傷部位やその程度に関する研究が多いことから,2名搭乗している航空機においてもそれぞれ搭乗者を個別に扱っており,2名の搭乗者をグループとして扱った研究はほとんどない.そこで,本研究は2名の操縦者をグループとして扱い,射出脱出時の行動の特徴を認識するために行われた.その方法として,2名操縦者が搭乗した射出脱出事例から操縦者それぞれの射出脱出タイミング,射出脱出シークエンス,射出脱出に関するコミュニケーションを抽出し,分析を行った.その結果,先に副操縦士が脱出する場合,その脱出判断は機長の指示に依存していることの他,機長が後に脱出する理由として,回復操作等の物理的被害回避だけでなくもう1名の操縦士の脱出確認といった責任者的行動が見られたこと,デュアル・イジェクションにおけるコミュニケーションの問題等2名搭乗した場合特有の現象も確認された.