著者
渡辺 俊一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.673-678, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

本稿は、日本語「まちづくり」の定義の論理構造の解明にむけられています。まず予備作業として、用語の定義に関する論理的議論をおこないます。ついで、都市計画・建築系の4人のまちづくり論者の言説による「まちづくり定義」の論理分析をおこない。それらは、西山夘三、田村明、佐藤滋、澤村明の4氏(6例)です。その結果をうけて、これら多様な「まちづくり定義」を体系的に整理する方法として、定義語に「次元」と「広義・狭義」の概念を導入することによる仮説枠組を提起してむずびとします。
著者
今村 洋一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.277-282, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究の目的は、横須賀市を対象として、旧軍港市転換計画における旧軍用地の位置付けと1970年代半ばの転用実態を明らかにすることである。転換計画においては、3箇所の広大な工場用地、4箇所の広大な住宅用地、いくつかの公園用地及び学校への転用が計画されていた。1970年代半ばにおいては、追浜地区で旧軍用地が広大な工業地となっていた。多くの旧軍用地が小中学校として使われていた。市の北部と中部にある規模の大きな公園は、旧軍用地が転用されたものであった。
著者
吉城 秀治 辰巳 浩 堤 香代子 糸永 匠汰
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.672-679, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
22
被引用文献数
2

遊びは子どもの健全な育成に必要不可欠なものであることは言うまでもなく、海外では子どもの道遊びを行え得る性能を有した街路を創出するために、ボンエルフ等の交通静穏化策が広がりをみせている。ところが、我が国では子どもの道遊びが原因のトラブルも発生しており、現代においては地域社会に必ずしも受け入れられるものではない状況にある。そこで本研究では、地域において道遊びが容認され、または容認されない道路空間や状況の特徴を明らかにするために、地域住民の道遊びに対する意識について分析した。その結果、例えば道遊びを肯定的に考えている地域住民では時間帯によって容認意識が変化し、特に平日は小学生が下校するような時間帯から午後6時まで、休日は日中であれば容認されることなどを明らかにしている。
著者
澤田 挙志
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.343-348, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
21

1980年代以降、文化や芸術に注目し都市の活性化を図ろうという取り組みが増加している。その代表的なものとして、創造都市と呼ばれる取り組みがあり、現在、世界で120を超える都市が創造都市を標榜した取り組みを行っている状況にある。このような現象に関して、現状においては、文化や芸術、特に創造都市をめぐる議論では事例紹介が多くを占め、具体的な政策内容や政策導入に至った経緯、そしてその意義等を詳細に検討したものはほとんどない。そこで、本研究では、日本でいち早く創造都市政策を進めてきた金沢市に注目し、市が文化や芸術の中でも特に注力してきた「工芸」に焦点を当てて論じる。そして、金沢の創造都市政策に連なる「工芸」関連施策の特質の一端及び「工芸」が金沢においてどのような意味を持って来たのかを明らかにした上で、都市の近代化においていかなる役割を果たしたのかという論点に立ち、金沢の創造都市政策に検討を加えた。結果として、「工芸」のあゆみは金沢の都市のあゆみを象徴していること、金沢の創造都市政策は「工芸」に関する各種の振興策や従来から進めてきた文化都市政策の延長線上に位置づけられることが明らかになった。
著者
岩見 達也 室崎 益輝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.847-852, 1996-10-25 (Released:2018-06-20)

The purpose of this paper is to clarify the cause origin of the fire after HANSHIN-AWAJI earthquake. The hearing research to the residence around the fire was carried out to find out the mechanism of fire outbreak caused by earthquake-"origins of fire", "burned things", "process". Following things beome clear; (1) The fires related with electricity were concerned with the recover of the power failure, (2) The gas appliance and the oil heater were conspicuous as soon as the earthquake occurred, (3) In burned things, the one which was caught fire from gas is overwhelmingly. So We must think the planning and restorations of life line.
著者
志摩 憲寿 宮吉 悠太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.943-950, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
7

2020年の東京オリンピックが近づく中で、政府による「日本再興戦略2016」や「未来投資戦略2017」等において地域活性化の拠点としてスタジアムに期待が寄せられており、スタジアムと周辺地域の一体的な開発の重要性が指摘されているが、「後発型プロスポーツ」であるJリーグのホームスタジアムは、例えば、市街化調整区域内にスタジアムが立地する等、開発を慎重に進めざる得ない場面もみられよう。本研究は、地域密着型スタジアムの具体像を描く上での基礎的調査の報告であり、2017年にJリーグ全チームのホームスタジアムの施設特性と立地特性と俯瞰的に明らかにすることを目的とするものである。本研究を通じて、これらのスタジアムを「市街地型スタジアム」「郊外型スタジアム」「フリンジ型スタジアム」と分類し、それぞれについて開発の可能性を議論した。
著者
鈴木 春菜 榊原 弘之
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.53-58, 2014

本研究では、自動車を保有しないと不便であると考えられる地方都市における、移動格差がもたらす心理的諸影響について分析を行った。自動車を利用できる環境にあるが敢えて利用しない積極的自動車非利用者と、自動車を利用したいが利用できない状況にある消極的自動車非利用者がいると想定し、消極的な自動車非利用者は自動車利用者と比較して地域愛着・主観的幸福感・地域の地理認知の水準がいずれも低いという仮説を措定した。山口県宇部市において転入者と学生に対するアンケート調査を行い、仮説の検証を行った。その結果、地域愛着・主観的幸福感・地理認知のそれぞれについて仮説を支持する結果が得られた。また、地域愛着については一般居住者については自動車利用傾向が高いほど地域愛着が低下するという結果が得られ、自動車利用の積極性による影響の差異が示された。
著者
松村 茂久 澤木 昌典 柴田 裕
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.541-546, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

2009年ベトナムではじめてとなる都市計画法が公布され、新たに「ゾーニング計画」及び「建築管理ガイドライン制度」が導入された。これらの制度は、経済体制の移行期にあるベトナムの都市における都市開発を適切にコントロール手段として活用されることが期待されている。本稿は、ベトナムではじめてこれら2つの制度を同時に適用した計画を策定したホーチミン市における適用状況を分析するものである。ホーチミン市では、これらの制度を適用した計画を策定するに当たり、制度の不備を補うためのいくつかの特例的な対応を行っている。これらの対応は今後のベトナムにおける都市計画制度の改善の方向性を示唆しているものと考えられる。
著者
望月 明彦 中川 大 笠原 勤
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.805-810, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
11

地方都市におけるコンパクトな市街地形成を実現する方策として、公共交通のサービス水準を向上し、併せて交通結節点周辺への各種機能立地を誘導することにより、公共交通を軸にコンパクトに機能を集積した市街地を形成させる取り組みが注目されている。本研究では、富山ライトレールプロジェクトにおけるサービス水準向上の有効性を、2時点の実証データを基に明らかにした。また、これまで十分な知見がない自動車からの転換や新たな移動を発生させ得る公共交通のサービス水準について、富山市が実施した公共交通に関する市民意識調査結果を基に運行指標ごとに利用者の評価を分析した。
著者
今村 洋一
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.41-46, 2014

本研究では、終戦直後の旧軍施設に対する全国の学校の使用希望状況から当時のニーズを整理した上で、名古屋を対象に、旧軍用地の学校への転用パターンについて具体的に明らかにするとともに、陸軍師団司令部の置かれた地方13都市での考察から、旧軍用地転用による文教市街地の形成について、全国的な実態を明らかにした。終戦直後は罹災学校の代替施設としての応急的な建物需要、1950年代以降は生徒増を受けた学校の新設・拡張のための土地需要が、転用背景にあったことが指摘できる。前者は一時使用のはずであったが、建て替えを経て継続使用となった事例がみられた。7都市で旧軍用地に形成された文教市街地が確認でき、城郭部での大規模大学キャンパス化(仙台、金沢)と市街地縁辺部での小中高大の集積の2タイプが見られた(名古屋、広島、熊本、弘前、京都)。
著者
若佐 栞 西川 亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.788-795, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
25

本研究は、1994年の経済政策によって規制が緩和され、増加したビール・発泡酒のマイクロブルワリー(以下、MB)に着目し、MBが地域とどのように、どのような繫がりを構築しているかについて明らかにすることを目的とする。アンケート調査より、マイクロブルワリーは製造工程、提供工程、さらには提供空間で多様な地域との繫がりを構築していることが明らかになった。さらにヒアリング調査より、MBと地域の繋がりはMBが自ら繋がりを構築するものと、地域内の主体からの依頼によって構築されるものがあり、地域産品の活用や観光客誘致、住民のコミュニティ創出など多様な役割を果たす可能性を有していることが示唆された。
著者
川井 千敬 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.241-249, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
21

本稿では旅館業法に基づく簡易宿所を対象に、その政策的対応及び位置付けの変化をたどりながら、1)立地傾向と、2)地価との関係性についての検討からオーバーツーリズム期の影響を考察することを目的とする。調査結果から、1)簡易宿所は2016年以降、商業機能や観光機能が集積するエリアではなく、住宅用途の優勢なエリアに立地するようになってきたこと、2)旅館・ホテルに比べ地価の低いエリアに立地すること、またそれは簡易宿所の集積する中心市街地においても同様であること、3)1)、2)を踏まえて、近年立地特性が変容した簡易宿所と地価形成の関係を分析すると、特に2017年、2018年の簡易宿所が急増しつづけた時期は簡易宿所による地価上昇の影響が大きいことが明らかになった。
著者
田端 祥太 新井 崇俊 本間 健太郎 今井 公太郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1562-1569, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,Desire pathの発生モデルを構築し,歩行環境が歩行軌跡に与える影響を解明することである。Desire pathは草地や土の地面において,人が繰り返し歩行することによって発生するが,美観や衛生の観点から,管理運営上Desire pathを発生させない計画が望まれる.そこで本研究は,地面の仕上げに応じた移動抵抗を加味したランダムドロネー網上での最短路上にDesire pathを再現することで,草や土の領域の移動抵抗を推定し,歩行環境が歩行軌跡に与える影響を解明した.分析より,草の移動抵抗はフォーマルな空間やパブリックな空間ほど大きく,インフォーマルな空間やプライベートな空間ほど小さいこと,土の移動抵抗は舗装路の移動抵抗とほぼ同一であることが明らかになった.
著者
青木 信夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.439-444, 1998-10-25 (Released:2018-04-01)
参考文献数
3

It is well known that the population in the suburban area around the city of Tokyo grew rapidly between the 1900s and the 1930s, especially right after the Kanto Earthquake in 1923 and that many new residential districts were developed then. The aim of this paper is to show not a few people moved to suburban areas at that time by checking the addresses, the title of the people (the Imperial Family and the Nobility) who listed on a who's who called "Kazoku-Meikan". The results were as follows; 1) It can be cleare that there was a tendency that the people emigrated from the city of Tokyo to its suburban area. 2) there is an intimate relationship between it's tendency and their changes of the economical bases.
著者
川崎 秀一 大村 謙二郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.379-384, 2000-10-25 (Released:2018-02-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

The purpose of this study is to find the problems caused by the United States military base in Okinawa pref. focusing Allotted Land Law (Wari-ate-tochi Law). This law was enacted in 1951 by the U. S sovereighty. We firstly review the historical process of Allotted Land Law. Secondly investigate the actual conditions in two districts, in Urasoe City. We find that the land-owners have complain on the Allotted land and disagree with lease holders about the use of their lands. As that result, many old houses remain still in the Allotted Land area. We conclude that local and central governments should have responsibility to solve special structural problems caused by the U. S military base. For conversion plan of military bases, the participation and consensus formation of relevant people is essential.
著者
清山 陽平 神吉 紀世子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.142-151, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
33

雑然と映ることの多い近代スプロール市街地における歴史や特色をいかに捉えることができるか。本研究では京都・伏見旧城下町周縁部に位置する中書島南新地を対象に、文献や地図、空中写真、旧土地台帳を資料に用い、その異なるスケールにおける複数の成立経過を細やかに明らかにした。その上で、実際の雑然とした市街地空間をつくる不揃いな道に着目し、それぞれの差異が異なる成立経過に因るものとして説明できた。さらにそうした複雑な成立経過の重層は、歴史的市街地周縁部に位置する近代スプロール市街地である南新地ならではの特色として判断できた。これによって一見雑然と映る現在の市街地空間を、南新地ならではの特色が現れた状態と評価できることが明らかとなった。
著者
浦田 愛永 後藤 春彦 山村 崇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.423-430, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究では東京都心部に位置する園庭をもたない保育施設を対象に、保育者の語りを収集することで園外活動のねらいを把握した。また、地域資源の活用状況と散歩コースの分析により、園外活動の空間的な広がりを示し、ねらいとの相関を確認した。その結果、園外活動の機会が多い保育施設は、保育者が献身的に公園に限らない多様な地域資源へと足を運んでいることが明らかになった。また、保育者は安全性と児童の発達状況に合わせた学びの充実を担保するように園外活動の経路をデザインしている。今後、周辺地域が保育者の意向を理解し園外活動空間となる地域資源を積極的に提供していくこと、地域資源の保育の場としての利用方法を伝えていくことが、育児の場としての都市の価値を高めるであろう。
著者
山崎 美樹 伊藤 裕久
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.267-273, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
8
被引用文献数
2

現在のJR吉祥寺駅周辺市街地(東京都武蔵野市)は、近世に成立した新田集落のもつ短冊形地割が街区・街路形態に継承されており、近代以降の市街化過程の基盤となった。本稿では近世における短冊形地割の成立過程と、近世から近代へと引き継がれた短冊形地割の空間的特徴を具体的に明らかにすることを目的とする。そこで同時期に開発された旧吉祥寺村・西窪村・下連雀村を対象とする。寛文期の開発された三村は1657年に起きた明暦の大火後の住民移転による新田開発という歴史的経緯から、間口20間×奥行8間の奥行の浅い屋敷設定など、他の武蔵野の新田集落とは異なる共通性が見られる一方で、吉祥寺村では本宿(集落)と野田(耕地)と呼ばれる二種類の短冊形地割など、地域的な特徴があることが、寛文期の地割の復原的考察から明らかになった。また西窪村・下連雀村では、近世の間に人口増加へ対応するために、短冊形地割の間口が二分割され、宅地へと変換されていった。
著者
乾 康代 中田 潤
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1446-1451, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
4

ルブミンは,工場団地の成功と顕著な税収増で,地域再生を果たした。この成功でもたらされた成果は,ルブミンが人々に選択される居住地,人々が訪れる観光地になったことである。ここから引き出せる教訓は,原発立地地域の地域再生策は,廃炉事業に依存せず,地域資源や立地を生かした産業の育成と,人々を惹きつける居住地づくりにおくことにある。
著者
穴井 宏和 柴崎 亮介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.228-239, 2022-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
22

本研究の目的は,起業家の出身大学・出身企業とスタートアップの地理的近接性が成長に影響することを明らかにすることである.起業家の出身大学・出身企業は,外部リソースを調達するためのソーシャルキャピタルである.スタートアップのミッションは,社会課題を解決してイノベーションを引き起こすことと短期間で高成長を実現することとである.一方で,創業初期のスタートアップには,成長のためのリソースが不足している.起業家は,社会的なつながりであるソーシャルキャピタルを通してリソースを動員する必要がある.本稿では,スタートアップが成長するためには,単にスタートアップ集積地に立地することでは効果がなく,リソースとの近接性が成長要因であることを主張する.