著者
上林 里絵 池村 健治 若井 恵里 杉本 浩子 平井 利典 加藤 秀雄 向原 里佳 石倉 健 今井 寛 岩本 卓也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-9, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
20

集中治療室(intensive care unit,以下,ICU)入室患者の薬物治療は複雑であることが多く,処方の適正化には薬剤師の積極的な参画が求められる。三重大学医学部附属病院では,2019年2月よりICU専任薬剤師による翌日投与予定の注射処方発行前に処方鑑査を行う運用(注射処方発行前鑑査)を開始し,医師の指示や患者の病態に応じた薬物治療の適正化に介入してきた。本研究では,運用前後6カ月間における介入件数やその内容,注射薬の返品率に及ぼす注射処方発行前鑑査の影響について調査した。薬剤部にて注射薬の調剤・払い出しを行う薬剤師の全介入件数は,運用後に有意に減少し(p=0.030),ICU専任薬剤師の全介入件数は有意に増加した(p=0.002)。注射室と比較しICU専任薬剤師の注射オーダー反映率は運用後で有意に上昇し(p<0.001),未使用注射薬の返品率も有意に低下した(p<0.001)。以上より,ICU専任薬剤師による注射処方発行前鑑査の運用は,効率的な薬物治療の適正化に貢献したと考えられた。
著者
金澤 将史 竹本 正明 中野 貴明 若山 功 田井 誠悟 杉村 真美子 大野 孝則 朝比奈 謙吾 井上 幸久 伊藤 敏孝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.51-54, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
5

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波では,高齢者施設で多くのクラスターが発生した。高齢のCOVID-19患者に対してその使いやすさもあってモルヌピラビル(ラゲブリオ®)が投与された。今回われわれは,COVID-19罹患後にモルヌピラビルを投与され症状が改善して療養解除となった後に,呼吸困難を発症し入院した症例を2例経験した。同じ抗ウイルス薬に分類されるニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド®)使用例では,COVID-19から回復して2〜8日後の症状再燃または検査での陰転化後の再陽性で定義されるリバウンドの報告があり,モルヌピラビルでもリバウンドが認められた。リバウンドは療養解除後の時期に起こり得るが,その際の救急診療における感染対策や隔離解除などの対応に注意が必要である。今後の対応のため疫学調査ならびに病態解明の必要性が示唆された。
著者
江村 正
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.83-86, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
4

チーム医療の推進を目的として,「特定行為に係る看護師の研修制度」(以下,本制度)が2015(平成27)年10月1日に創設された。救急領域では,研修を修了した看護師が,手順書を用いて特定行為を行うのは,入院診療と外来診療で大きく異なる。入院診療では,呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連,循環動態に係る薬剤投与関連など手順書により,看護師はさまざまな診療の補助が可能である。一方,外来診療に関しては,まだ診断がついておらず,今後の病状変化が十分予測できないので,手順書ではなく,具体的指示により,診療の補助を迅速に,かつ的確に行っていくことが現実的と思われる。
著者
中尾 彰太 成田 麻衣子 比良 英司 勝原 和博 松岡 哲也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.521-527, 2015-06-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
7

大阪府泉州二次医療圏においては,改正消防法の施行に先立ち,平成21年4月より実施基準に準じた救急医療体制を構築し運用を開始したが,その後も搬送先選定困難例は増加した。この対応策として,地域メディカルコントロール協議会の検証会議において,搬送先選定困難例を個別検証し,問題点を分析した。その結果,救急医療体制自体の問題点に加え,消防の病院前活動や医療機関の受入れ対応に関する問題点が指摘され,その多くが実施基準の抵触に集約されることが明らかになった。問題点の内容は,救急医療体制の改善に資する情報として利用することを目的に,文書で関係機関に周知した。このような情報共有体制の整備により,当医療圏における搬送先選定困難例は,平成22年度の195例から,平成25年度には38例まで減少した。搬送先選定困難例の個別検証と情報共有は,問題点を明確にし,受入れ状況の改善を目指すうえで有用である。
著者
多田 祐介 小嶌 彩乃 高野 啓佑 淺井 英樹 川井 廉之 瓜園 泰之 福島 英賢
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.761-765, 2018-12-31 (Released:2018-12-31)
参考文献数
18

症例は57歳,男性。陰茎に金属リングを装着し,抜けなくなったが放置していた。Day 10に陰茎痛が増悪したため,近医受診し,同院での対応が困難なため奈良県立医科大学附属病院高度救命救急センターに紹介となった。陰茎根部にステンレス製の幅15mm,厚さ7mmの金属リングが装着されていた。リング周囲の皮膚は潰瘍形成し,陰茎・陰囊はうっ血様で,両鼠径部に疼痛・熱感を伴う発赤を認めた。通常の工具やリングカッターでは切断不可能であったため,院内駐留型救急隊(ワークステーション)経由で救助隊を要請した。装備の空気鋸で絞扼物を切断し,所要時間8分で絞扼を解除できた。創治癒および鼠径部の蜂窩織炎の加療目的に入院し,Day 43に勃起障害・排尿障害を残すことなく自宅退院となった。硬性陰茎絞扼症に対しては救助隊との連携により迅速に切断が可能であると考えられる。
著者
桑原 達朗 今中 翔一 河村 剛至 渡部 多真紀 黒木 裕治 河野 将行 長尾 剛至 三宅 康史 坂本 哲也 安野 伸浩
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.876-880, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
6

エチレングリコール(ethylene glycol,以下EGと略す)中毒は,有毒代謝物による代謝性アシドーシスなどにより死に至ることがあり,迅速な代謝阻害薬ホメピゾールの投与や血液透析が有効である。患者は自殺目的に大量のEG を服用し,救急要請となった。推定内服時間から搬送まで約7時間,来院時の血液検査で代謝性アシドーシス(pH 7.262),アニオンギャップ上昇(24.1mEq/L)を認めた。救急隊の情報で,搬送前に薬剤師がホメピゾールを加温融解し,来院39分後にホメピゾール投与,114分後に血液透析を開始した。その結果,重度のアシドーシスの進行や乏尿を認めることなく,入院10日目に退院となった。今回の症例では,救急隊の初動から薬剤師の介入により早期ホメピゾール投与による代謝物生成抑制,CEによる透析管理,医師による病態の評価と治療方針決定など,多職種連携による迅速な治療介入が,中毒治療に奏功したことを示す。
著者
福岡 範恭 山田 広行 安心院 康彦 池田 尚人 尾方 純一 杉田 学 髙松 純平 中村 光伸 溝端 康光
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.580-586, 2019-08-31 (Released:2019-08-31)
参考文献数
5

救急隊員による病院前救護における疾病の観察・処置の標準化として『PEMECガイドブック2017』が出版されて以降,PEMECコースが開催されている。本稿ではコース概要と開催状況,参加者より得た意識調査結果から今後の課題について考察し報告する。2018年10月までに行われたコース受講者196名に意識調査を実施した結果,184名から有効な回答が得られた。全体的な評価で「よい」と回答した75名(40.7%)を高評価群,「まあよい」「普通」「あまりよくない」と回答した109名(59.2%)を低評価群に分類し,全体の評価に強く影響を与えたコースプログラムの各項目をロジスティック解析により分類した。その結果「アルゴリズムの理解」「インストラクターの知識」「インストラクターの解説」が評価に関連する主要な因子として明らかになった(p<0.05)。コース内容は,概ねよい支持を得ているが,インストラクターの教育技能を向上させること,アルゴリズムの理解を深める指導の必要性が示された。
著者
菊川 忠臣 小関 一英 大松 健太郎 小林 國男
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-9, 2017-02-28 (Released:2017-02-28)
参考文献数
21

JRC蘇生ガイドライン2010に準拠した10分間のCPRを圧迫単独法で行う場合と,標準法で行う場合でのCPRの質の違いについて,CPR習熟者群(救急隊員)と非習熟者群(一般大学生)間で比較検討した。圧迫単独法は手技が容易であるが,経時的な圧迫深度の低下が標準法に比べて大きかった。標準法では非習熟者群が行う人工呼吸は習熟者群と比べて過剰換気になりやすく(p<0.01),圧迫中断時間が習熟者群に比べて長かった(p<0.01)。圧迫単独法は標準法と比べて疲労度が高い手法であった(p<0.01)。救助者が一人で長時間のCPRを行わざるを得ない場合は,圧迫深度の維持が期待できる標準法が適しているが,人工呼吸に伴う胸骨圧迫の中断時間を最小限にとどめる必要がある。
著者
石元 優々 高見 正成 平 一裕 中田 朋紀 山田 宏 上田 健太郎 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.751-755, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
10

コロナ時代を迎え初めての夏に,飲酒後河川に飛び込み頸髄損傷を発症した2症例を経験した。近年プールには監視員がおり,飛び込みも禁止されているためプールでの飛び込み損傷は減少していると思われるが,海や河川ではその限りではない。コロナ禍で人々の行動に変化がもたらされ,外傷について発生率やまたその原因に変化が起きている。河川への飛び込み損傷は頸髄損傷の原因としてまれであり,その疫学的実態を知ることは困難である。河川への飛び込みによる頸髄損傷の手術は,当科では過去10年間行っていなかったものの,2020年夏季に続けて2例経験した。頸髄損傷は回復が困難であり一生不自由を強いる不幸な外傷であるが,飛び込みによる頸髄損傷の危険性について周知されているとはいい難い。人々の行動が変容した本時代に改めて本事故について啓発が必要であると考える。
著者
麻喜 幹博 山森 温 内田 香名 竹内 誠人 加納 誠也 増田 崇光 三木 靖雄
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.717-721, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
9

初期波形VT・VFの心停止における体外循環式心肺蘇生(ECPR)は一定の効果が報告され,近年多くの施設で導入されつつある。初期波形PEAは原疾患が多岐にわたるためECPRの有効性は未確立であるが,肺血栓塞栓症に限れば予後良好である報告が散見される。 当院で救命に至った2例の肺血栓塞栓症ECPR症例は,呼吸困難の先行と肺雑音がないことを救急隊が認識できており,初期波形PEAで二次救命処置により自己心拍再開と心停止を繰り返す状態にあった。両症例とも救急隊からの第一報を的確に得ることで,病着前からECPRを準備し,病着後,心臓超音波検査で心タンポナーデを否定したうえで肺血栓塞栓症を念頭に置いてECPRを実施できたことで社会復帰に至った。目撃やbystander CPRがある心停止のうち,呼吸困難先行と肺雑音なしを確認した初期波形PEA症例はECPRを実施できる施設への搬送を考慮し,超音波検査で心タンポナーデが否定された場合は積極的にECPRを検討することが重要である。
著者
山本 弘二 安田 康晴 友安 陽子 坂口 英児 宮崎 龍二
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.751-758, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
13

背景:救急車の出動件数は年々増加しているが,交通事故の形態や防止策については検討されていない。目的:救急車が緊急走行中に発生した交通事故形態を分析し,事故防止策を検討する。対象と方法:平成25年からの5年間に全国で発生した救急車の緊急走行中の事故について,交通事故総合分析センターのデータベースを用いて,一般車両による事故形態と統計学的に比較した。結果:救急車事故および一般車事故ともに「車両相互」による事故がもっとも多く,一般車事故では「追突その他」が多い。救急車事故では「交差点内」の「出会い頭」よる事故がもっとも多く発生していた。結論:救急車の緊急走行中における交通事故形態と一般車による交通事故形態が異なっていた。救急車の緊急走行中における「交差点内」および「出会い頭」の事故防止策として,一般車両に救急車の接近,とくに交差点内で早期認識効果につながる救急車の改良が必要と考える。
著者
木村 義成 山本 啓雅 林田 純人 溝端 康光
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.530-538, 2020-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
11

目的:不搬送事案が他の重症・中等症事案の救急活動に与える影響を現場到着時間の遅延から推定することである。方法:平成24年に大阪市内で発生した全救急事案を対象とした。不搬送事案の対応時間帯に遠方の救急隊から出動した重症・中等症事案を抽出した。また,地理的加重回帰分析(GWR)により不搬送事案が重症・中等症事案に与える影響の地域差を求めた。結果:大阪市内では1年間の救急事案の0.51%(1,090件/215,815件),つまり救急事案の約200件に1件は,不搬送事案によって重症・中等症事案の現着遅延が生じている可能性が示された。また,GWRによる分析により不搬送事案が重症・中等症事案の現着遅延に与える影響は市内で地域差があることが示された。考察:不搬送事案をはじめとする救急事案には地域差がある可能性があり,本研究のような地理的な分析が今後の救急医療計画の基礎的な資料となり得る。
著者
中村 秀明 阪本 奈美子 染谷 康子 矢島 務 刈間 理介 鈴木 宏昌
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.505-512, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
11

目的:静脈路確保成否因子に沿った講習会の教育効果を明らかにすること。方法:BANDOメディカルコントロール協議会において,2018年8月1日〜2019年10月31日までの15カ月間のうち静脈路確保が実施された688症例を本研究の対象とした。講習会では,成否因子に基づき血管透過モデルを自作し,静脈の走行をイメージさせる教育を行った。その後,講習会前後に分類し静脈路確保成功率と所要時間を比較検討した。結果:講習会後,静脈路確保の成功率は53.8%(205/381)から62.9%(193/307)に有意に上昇した(p<0.01)。そのなかでもショック症例は51.0%(53/104)から75.6%(68/90)に有意に向上した(p<0.01)。講習会後のPIVC 所要時間は,2分58秒から2分22秒に有意に短縮し(p<0.05),低血糖症例の所要時間は3分から2分24秒に有意に短くなった(p<0.05)。結語:成否因子に沿った静脈路確保講習会は成功率と所要時間を改善する。
著者
武藤 憲哉 菅谷 一樹 全田 吏栄 三澤 友誉 矢野 徹宏 鈴木 剛 小野寺 誠 伊関 憲
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.607-610, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
10

心室細動の原因が薬剤性の低カリウム血症と考えられた症例を経験した。症例は70歳,女性。就寝中に唸り声を上げていたところを娘に発見され,胸骨圧迫された。救急隊が心室細動に対して3回の電気ショックを施行し,自己心拍再開した。検査所見からは虚血を示唆する所見は乏しく,血清カリウム2.7mEq/L と低値を認めていた。芍薬甘草湯およびイトラコナゾールが処方されていたことから,薬剤性低カリウム血症により心室細動をきたしたと判断した。緊急カテーテル検査は施行せず,電解質補正,目標体温管理療法を行った。不整脈の出現はなく経過し,神経学的予後も良好で第28病日に近医へ転院した。芍薬甘草湯は甘草を含有しており,低カリウム血症となる。イトラコナゾールにも低カリウム血症の副作用があり,今回どちらが被疑薬かは不明であるが,薬剤性の低カリウム血症が原因で心室細動をきたしたと考えられた。高齢者では処方理由が不明であっても,副作用に電解質異常がある薬物を内服している可能性があり,低カリウム血症を認めた場合には,薬剤性の可能性についても注意を払う必要がある。
著者
川口 なぎさ 笠原 聡子 江原 一雅
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.496-504, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
12

目的:院内迅速対応システム(rapid response system;RRS)導入後の内容拡充と,看護師の行動との関連を明らかにする。方法:2013〜2018年にA病院の一般病棟に入院した成人患者のうち,専門チームが初回対応した863件を対象とした。システム拡充(ラウンド経験病棟数,研修受講者数)と看護師の行動(コール要請割合など)6項目を設定した。システム拡充の年次変化を認めたため暦年を代替指標とし,看護師の行動との関連を多重ロジスティック回帰分析と重回帰分析にて検討した。結果:看護師の行動のうち「コール要請割合」と「呼吸数測定割合」が増加し,「気づきからチーム要請までの時間」と「起動基準該当からチーム要請までの時間」が減少する年次効果がみられた。結論:RRS導入後のシステム拡充に伴い看護師の行動が変化し,RRSの迅速な起動の促進が認められた。
著者
川井 洋輔 小川 理 廣瀬 保夫
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.739-742, 2021-10-31 (Released:2021-10-31)
参考文献数
10

電撃傷によって生じる心室細動は感電現場での死亡につながる。とくにわが国の労働災害における感電死者数は依然として多く,さらなる安全対策が望まれる。今回われわれは,電気工事中に6万ボルトの電撃傷で心肺停止となったが,救命の連鎖により良好な経過をたどった症例を経験した。受傷現場での早期除細動が良好な転帰に寄与したが,現場にはAEDがなく不良な転帰となった可能性がある。電気工事現場におけるAED設置や事業所での一次救命処置講習を普及していく必要がある。
著者
城川 雅光 笠井 あすか
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.461-467, 2014

2004年度から2012年度の小笠原諸島の急患搬送記録を調査し,現状と課題を検討した。搬送例は合計266例であった。搬送患者の特徴は,外傷,脳血管障害,虫垂炎など手術やICU管理を要する症例が多かった。搬送時間は,全島平均で9時間34分と長時間を要する。一方,空港のある硫黄島からの患者搬送は,地理的に遠いにも関わらず,父島と母島の平均搬送時間と比較して45分程度短い。また搬送要請の過程で,結核患者の搬送が問題となっていた。空港建設が進まない現状で搬送時間短縮に有効な手段の一つとして,航続距離,巡航速度,着陸場所の条件を満たすティルトローター機の就航が考えられる。感染症患者搬送については,病原体や利用する航空機を問わず安全性を確保する上で,簡易アイソレーターの搭載が有効であろうと考える。しかし航空機搭載基準を満たしている製品は,国内で取扱い中止となっており,既存の製品で運用試験を行うことが課題である。
著者
竹井 豊 長谷川 恵 安達 哲浩
出版者
Japanese Society for Emergency Medicine
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.569-577, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
20

目的:救急隊員の職業上の危険性を明らかにすること。方法:総務省消防庁のヒヤリハットデータベースから抽出したアクシデント事例とインシデント事例を分析した。結果:腰痛の原因は,患者の搬送(運ぶ,上げる,下げる)によるものであり,経験不足はインシデント事例に比べてアクシデント事例の危険性が高いことを示していた。インシデントは,ストレッチャー操作による転倒が多かった。転倒は,現場での患者の移送や,病院到着後の救急車からのストレッチャーの積み下ろしの際によく発生した。多変量解析では,救急車からストレッチャーを積み下ろしする際の作業に対する安全確認の不足が転倒に関連していることが明らかになった。結論:救急隊員の身体的負荷を軽減し,救急医療サービスにおける有害事象のリスクを低減するためには,作業手順を見直し,人間工学に基づいて設計された機器を使用する必要がある。
著者
山田 浩二郎 増本 幸志 天野 尽 杉本 一郎 杉木 大輔 松島 久雄
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.738-747, 2017

<p><b>背景と目的</b>:埼玉県東部地域では2008年より救急搬送された重症・リスク受傷機転例はメディカルコントロール(以下,MC)担当医が地域で独自に作成した外傷活動記録票(以下,外傷検証票)を用い面談式および書面式事後検証を行うと計画としたが,面談式検証のみ実施されていた。そこで2014年4月より書面式該当例は消防組織内で一次検証し,医師および救急救命士により構成されるワーキンググループ(以下,WG)で二次検証する方式へと変更した。今回制度変更による書面式検証の実施率,検証結果の共有および検証の妥当性などについて検討したので報告する。<b>対象と方法</b>:調査対象;本MC 協議会管内における制度変更前2012 年1 月より1 年間(12消防組織)および変更後2014年4月より1年間(統合された8消防組織)とした。調査項目;1.外傷症例の一次検証(面談式・書面式)実施の有無。2.重症以上の外傷症例数及び一次検証数。3.事後検証結果の消防組織内における共有の有無。4.制度変更後における一次検証と二次検証の結果を比較し妥当性を評価した。<b>結果と考案</b>:1.一次検証は変更前,半分の6消防組織で実施され,その方法は面談式0,書面式6であった。変更後は全8消防組織,その方法は面談式2,書面式7(重複あり)であった。2.重症以上の外傷症例数及び一次検証数はそれぞれ変更前908件,207件(23%),変更後は945件,468件(50%)であった。3.変更前検証結果共有は6消防本部であったが,変更後全消防本部で閲覧可能としていた。4.回収した一次検証書類中約10%にWGによる検証評価の修正が必要であり,各消防組織を通じフィードバックを行った。外傷症例の書面式事後検証に外傷検証票を用いた一次検証を導入しその質を二次検証で確認するMC担当医の負担を著しく増大させない制度変更は,検証の質を維持しつつ検証実施対象事例を増加させ得る一方策である。</p>
著者
藤田 基 古賀 靖卓 中原 貴志 戸谷 昌樹 宮内 崇 金子 唯 金田 浩太郎 河村 宜克 小田 泰崇 鶴田 良介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.663-669, 2014-10-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
24

過去10年間に当院で初期治療を行った急性一酸化炭素(以下CO)中毒患者69例を24時間以内に行った治療で気管挿管群(9例),酸素マスク群(20例),HBO群(40例)に分け,高気圧酸素(以下HBO)治療が間歇型の発症予防及び間歇型・遷延型の症状改善に有用かを後方視的に検討した。間歇型を気管挿管群1例,酸素マスク群1例,HBO群2例に,遷延型を気管挿管群2例,酸素マスク群1例,HBO群1例に認めたが,どちらも各群間で症例数に有意差は認めなかった。間歇型症例は全例発症後に複数回HBO治療が施行され,酸素マスク群の1例を除く3例で症状は改善した。遷延型症例はHBO群の1例のみ慢性期に繰り返しHBO治療が施行され,症状改善を認めた。当院のプロトコールによるHBO治療では間歇型の発症予防効果は明らかでなかった。発症した間歇型・遷延型の治療としてのHBO治療は有用である可能性が示唆された。