著者
山本 篤 山口 和紀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.1756-1765, 2003-07-15
参考文献数
14

正規表現は,パターンマッチングを行うためのツールとして広く利用されている.しかし,さまざまな応用で拡張されてきたのにともない,次のような問題が出てきている.1)標準的に使われている正則集合による意味づけでは,後方参照がうまく定義できていない,2)オートマトンを用いたパターンマッチングの実装において,状態数やバックトラックの回数が爆発することがある,3)正規表現の積や差を直接的に利用できない.本研究では,このような問題を解決するために,正規表現関数と呼ぶ関数を導入する.正規表現関数は,記号列集合を入出力とする関数であり,マッチする記号列を消費して出力するものである.たとえば,正規表現 a* が a の繰返しにマッチすることは,その正規表現関数が,a*({ab aa b}) = {ab b aa a ε} という入出力関係を持つことで表される.これを拡張し,変数を扱えるようにすることで,後方参照も含めた正規表現を定義することができる.また,正規表現関数を用いたパターンマッチングの実装が可能であり,後方参照のない場合には計算量の爆発を避けることができ,比較実験でも優位なケースを確認した.さらに,正規表現の積と差を導入し,これらが正規表現関数によって簡単に実装できることを示す.最後に,正規表現の積や差を用いる応用例としてHTMLなどへのパターンマッチングをあげる.Regular expressions have been used widely for pattern matching.However the following problems are getting serious in some applications.1) The definition of regular expressions cannot be extended to back reference,which is a popular extension of regular expressions.2) The implementations of pattern matching in automata suffer from the explosion of time or space complexity for some regular expression patterns.3) In the conventional regular expressions,we cannot use intersection and difference operators, which are useful in some applications.In this paper, we introduce a ``regular expression function'' from a set of strings to a set of strings.This function eliminates matching prefixes with given regular expressions from the input strings and outputs the remaining postfixes.For example, a({ab,aa,b})={ab,b,aa,a,ε}.This function can be extended to give a semantics to regular expressions with back references.Then,we show that we can perform pattern matching by interpreting the regular expression function directly without the explosion of time and/or space complexity,which is confirmed by our preliminary implementation.We also introduce intersection and difference operators and show that the regular expression function can be extended to handle these operators easily.Finally, we briefly show some possible applications of the operators.
著者
吉田 年雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.2335-2342, 1995-10-15

正数xが大きい場合のクンマー関数ぴ(α b x)の能率的な数値計算法を提案している。本論文では、U(α b x)=x-af(1/x)で定義されるf(t)についての近似式を求めている(t=1/x).f(t)の満足する微分方程式t2f"(t)+{(2a-b+2)+1}f'(t)+a(a-b+1)f(t)=0に、γ法を適用し、適当な工夫をすることにより、f(t)に対して次の形の近似式 fm(t)=Σ m i=0 Giti /Σm i=0 Hiti を得ている。
著者
風間 信也 加藤 直樹 中川 正樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.1457-1468, 1994-07-15
被引用文献数
4

本論文は、新しい入カインタフェースであるペンと表示一体型タブレットを採用し、ユーザの発想支援を目標に、これまでの計算機を用いた作図手法とは異なり、従来の紙上での作図に近い直感的な作図操作を行える環境について、またその評価のための予備実験の結果について述べる。われわれは、ペン入力の良さは特に次の点にあると考える。(1)ペンの操作に意識を払う必要がない分、思考に集中できる。(2)図や文章を書くときにペンを持ち替えなくても済み、思考の継続を妨害しない。以上のことから、特別な訓練や意識を払う必要がなく、従来から人間が慣れ親しんだ紙上での作図を計算機支援する可能性を実験することにした。本システムでは次の作図環境を提供する。(1)下書き用の画面に対しフリーハンドで書きたいものを自由に書く。(2)下書き用の画面の上に清書用の画面を仮想的に重ね、整形したい対象に対して文房具メタファという仮想的な文房具を用いて整形を行う。これにより、手本の清書になりがちだった従来の計算織上での作図操作に比べ、本システムでは発想の段階からユーザを支援できる。この手書き作図システムをユーザに使用してもらい、その使い勝手について調査した。そして、その結果から、文房具メタファを用いた手書き作図システムの有効性と問題点を考察した。
著者
山根 信二 村山 優子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.1975-1982, 2001-08-15

1990年代の暗号技術規制論は,キーエスクローシステムを中心とする枠組みで論じられた.だが当時の議論はもはや有効ではない.今後の暗号技術の進路策定について議論する際には,1990年代の議論とは異なる枠組みが必要である.現在,議論のための枠組みの形成が急がれている新たな暗号技術問題として,暗号解析をめぐる係争があげられる.暗号技術の開発評価において暗号解析は重要な役割を担ってきたが,暗号解析の公表やその再配布については議論が分かれている.日本では,1999年から著作権の「技術的保護手段」の回避を行うプログラムを公表しようとする者は処罰されることになった.本論文では,この法制による暗号解析への影響を,2000年にアメリカで起こったDVDプロテクト破り訴訟を参考にしながら検証する.コピープロテクトに対する暗号解析の公表を法的に規制することは,コンピュータ専門家がかかえる技術的および法的リスクを増大させる.また,その影響はコピープロテクト技術のみにとどまらず,暗号技術の開発評価全般に及ぶ可能性がある.このような問題に対処するためには,暗号解析を含む暗号技術開発の進路策定を決める枠組みを刷新することが必要である.最後に,今後の専門家に要求される新たな役割についても検討を行う.The regulation of cryptography in 1990s had been formed under the ``framework of key escrow system,''such as the limitation of thekey-length or the lawful access field.While the 1990s' framework is not effective anymore,a new framework of regulation is evolving worldwide.After 1999, the copyright act in Japan prohibits ``the circumvention of atechnological copyright protection measure.''This act can make some work including the reverse engineering and cryptoanalysis illegal.The same problem has examined in the U.S. on the DeCSS DVD decoder lawsuit in 2000. The outlawing of the circumvention of the copyright protectiontechnology is not limited only the cryptanalysis, and will effect to the further social problem. The new role of computer professionals arerequired to deal with this new kind of risks. Finally this paper examines the computer professional's activities for the comming alternative framework as well.
著者
土田 正明 デ・サーガステイン 鳥澤健太郎 村田 真樹 風間 淳一 黒田 航 大和田 勇人
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.1761-1776, 2011-04-15

情報爆発の時代に入り,大規模コーパスと計算機パワーの増大を背景に,構文的パターンに基づいて「因果関係」などの単語間の意味的関係の知識を獲得する研究が進められている.しかしながら,それらの研究は,文書中に直接的かつ明示的に書かれた知識を獲得するにとどまり,人間であれば解釈可能な間接的記述から獲得することや,文書に書かれていない知識を過去に蓄積された知識からの推論によって大規模に獲得することは行われていない.このような知識の獲得は,より大量の関係を獲得するためだけではなく,人類のイノベーションの加速にとっても重要である.本稿では,既存の構文的パターンに基づく方法で獲得された単語の意味的関係のデータベース,すなわち,特定の意味的関係を持つ単語対の集合を,類推によって大規模に拡張する方法を提案する.提案法は,入力された単語対の中の語を,ウェブから自動獲得した類似語に置換して大量の仮説を生成し,さらに単語間の類似度に基づいて仮説をランキングする.提案法は,従来法では困難な間接的記述からの意味的関係獲得を可能にして,さらには,そもそも文書に記述されている可能性が低い知識を獲得できる.約1億ページのウェブ文書を用いた実験によって,これらを検証するとともに,いくつかの意味的関係に関して,提案法で上位にランキングされた仮説では,最新の構文パターンに基づく獲得法とほぼ変わらない精度を達成できることを示す.
著者
西原 陽子 砂山 渡
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.1478-1486, 2010-08-15

研究会や国際会議などの研究発表の場を通じて,研究者は聴講者をはじめとする多くの研究者と議論を交わす.発表の場においては数多くの研究発表があり,各聴講者はプログラムに書かれた多くの研究発表の中から,自分の専門分野を中心とした聴講の計画を立てる.しかし研究の発表者にとっては,自分の専門分野に限らないより多くの聴講者を集めることができれば,より多様な意見を得ることが期待できる.このことから,異なる専門分野の聴講者を引きつけられる研究発表のタイトルを作成することが望まれるが,そのような研究発表タイトルの特徴は明らかになっていない.そこで本稿では,専門分野の素人(専門分野が異なる人)に選択されやすい研究発表タイトルを推定する選好タイトル推定システムを提案する.本システムは,研究発表タイトルをその分かりやすさと面白さをもとに,素人による選択のされやすさを評価する.実験の結果,本システムは多くの人に選ばれやすいタイトル中のキーワードを重視する比較システムよりも,高い精度で素人に選ばれやすいタイトルを推定した.
著者
内元 清貴 関根 聡 井佐原 均
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.3397-3407, 1999-09-15
被引用文献数
21 22

本論文ではME(最大エントロピー法)に基づくモデルを利用した統計的日本語係り受け解析手法について述べる. 一文全体の係り受け確率は 一文中のそれぞれの係り受けの確率の積から求められると仮定し それぞれの係り受けの確率はMEによって学習した係り受け確率モデルから計算する. この確率モデルは 学習コーパスから得られる情報を基に 2つの文節が係り受け関係にあるか否かを予測するのに有効な素性を学習することによって得られる. 我々が素性として利用する情報は 2つの文節あるいはその文節間に観測される情報 たとえば 文節中の表層文字列 品詞 活用形 括弧や句読点の有無 文節間距離およびそれらの組合せなどである. 本論文では 我々が用いた素性のそれぞれを削除したときの実験結果を示し どの素性がどの程度係り受け解析の精度向上に貢献するかについて考察する. また 学習コーパスの量と解析精度の関係についても考察する. 我々の手法による係り受けの正解率は 一文全体や係り受けを文末から文頭へ向かって決定的に解析した場合 京大コーパスを使用した実験で87.1%と高い精度を示している.This paper describes an analysis of the dependency structure in Japanese based on the maximum entropy models. Japanese dependency structure is usually represented by the relationships between phrasal units called bunsetsu. We assume that the overall dependencies in a sentence can be determined based on the product of the probabilities of all dependencies in a sentence. The probabilities of dependencies between bunsetsus are estimated by a statistical dependency model learned within a maximum entropy framework. This model can be created by learning the features that are useful for predicting the dependency between bunsetsus from the training corpus. We are using information about a bunsetsu itself as features, such as character strings, parts of speech, and inflection types. We are also using information between two bunsetsus as features, such as the existence of brackets or punctuation and the distance between bunsetsus. We compare the performance of our method with and without each feature and discuss the contribution of each feature. And we discuss the effect of the size of the training corpus on the performance of our method. The accuracy of our method for obtaining the dependency of bunsetsus is 87.1% using the Kyoto University corpus when we parse a sentence deterministically from its end to the beginning.
著者
木綿麻実路 岩切 宗利
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.1258-1265, 2006-04-15

テキストベースの情報メディアの一種に,文字の形状や濃度を利用して絵や自然画像を表現するアスキーアートがある.一般的なアスキーアート作成手法では,作者や作成日時などの属性情報を別に記録する必要がある.しかし,流通の過程でそれらの属性情報は失われる可能性がある.そこで本研究では,1 対1 であった文字と輝度の交換テーブルを1 対多とすることにより,アスキーアートに情報を埋め込む手法を考案した.本論文ではその考えに基づき,埋め込み可能容量を増大しながら出力画質を向上させる手法について示す.また,階調数を高く設定したうえで入力画像の特性を考慮した文字数選定を行うことにより,出力画質と埋め込み情報量をともに向上させることができることを実験により示した.本研究の結果,出力データサイズに対して最大21%程度の情報埋め込みに成功した.
著者
中村 亮太 井上 亮文 市村 哲 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.172-180, 2006-01-15
参考文献数
24
被引用文献数
3

近年,大学などの教育機関では,学習用コンテンツとして講師映像と講義資料を組み合わせたものが制作されているが,単調な表示方法であるため学習者を飽きさせてしまうという問題がある.そこで本稿では,学習者にとって飽きにくい講義コンテンツを自動的に作成することができるシステム「MINO: Multimedia system an Instructor needs Not Operate」を提案する.著者らは映像の単調さを改善するために,誘目性(目が惹き付けられる)に着目し,画面に並列表示された講師映像と講義資料の表示サイズを交互に拡大縮小することで提示映像のスイッチングを行い,講義資料中の重要語句(講師の発話と一致した語句)を誘目性の高い表示へ変換することが自動的にできるシステムの開発を行った.MINO では,音声認識によりテキスト化した講師の発話情報と講義資料内の文字列とをマッチングさせることで重要語句の特定とともに,映像の切替えタイミングとフォントの変換タイミングを自動的に決定することができる.評価実験の結果,本提案手法は従来の提示方法に比べ,学習者を飽きさせないという評価を得ることができた.本稿では従来の提示方法について分析した結果を示し,開発したシステムの設計,実装,評価について述べる.Recently, e-learning contents that combine the speaker video with supporting materials are produced in educational institutions such as universities. However, there is a problem that those systems make learners become tired because produced contents are monotonous. In this paper, we propose the system "MINO: Multimedia system an Instructor needs Not Operate" that can automatically edit the recorded speaker video and supporting materials. MINO allows users to automatically convert words in the supporting materials into conspicuous ones according to the utterance of the speaker. We used speech recognition to convert voice of lecturer into character string. Their data are matched up words into the supporting materials so that speaker video is synchronized with supporting materials. Through evaluations of the system, we verified the effectiveness of our system.
著者
一森 哲男
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.3127-3135, 2009-12-15

人口に比例して議員定数を配分することは一見簡単な問題と思えるが,実は意外と難しい.この問題はアメリカ合衆国憲法に記載されているが,200年以上にわたり議論が続いており,解くことのできない問題ともいわれている.しかしながら,現時点では,この問題はヒル方式かウェブスター方式で解かれると考えられている.両方式間の最大の争点は,大州と小州間の配分議席数による偏りである.どちらの配分方式がより小さな偏りを与えるのか.本論文では,従来の考え方の矛盾点を明らかにし,新しい考え方により,ヒル方式だけでなくウェブスター方式も絶対的に小州に有利なこと,さらに,従来の定説どおり,ヒル方式がウェブスター方式より相対的に小州に有利なことを示し,ウェブスター方式の優位性を与えた.The problem of assigning seats in the U.S. House of Representatives based proportionally on the population of states is seemingly simple but to solve it is not. The U.S. Constitution poses this apportionment problem and the issues of which is the best method have been debated for more than 200 years. In fact, it might be considered to be unsolvable. However, at least at this moment, only one of Hill's and Webster's methods is believed to solve the apportionment problem. First it is shown that both methods favor the small states in our model, which appears to disagree with an established opinion. Since Hill's method favors the small states more than Webster's also in our model, the author's conclusion is that Webster's method is the best, which is outwardly the same as Balinski and Young's assertion.
著者
永江 尚義 有澤 博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.436-443, 1994-03-15
参考文献数
9
被引用文献数
2

本稿では関数型データモデルに対する新しい検索手法を提案する。関数型データモデルでは、現実世界のデータの意昧を完全かつ特定の物理構造に制約されない平坦な形式でデータベースヘ蓄積するために、単純なデータの二項関係だけを用いて情報をモデリングする。しかし、このような関数型データベースでは膨大なデータが複雑に絡み合うような構造によって表現されるデータ(例えば、文書や図形なぎの階層構造を持つデータ)をそのままの形でユーザに対して提供することはできない。なぜなら、構造を持ったデータもデータベースヘ蓄積する際に単純な二項関係に細かく分解されるため、もともとのデータが持っていた階層なぎの構造情報がデータベース中ではさまざまな二項関係の中に埋没され、明確に区別されなくなってしまうからである、本稿ではデータベース中の二項関係のデータの集合から複合オブジェクトを生成するための構造化オペレータを定義する。このオペレータを用いることにより、データベース中の二項関係には本質的な上下関係がないために、1つのデータベースから容易にさまざまな階層構造を持つ複合オブジェクトを生成することができる。
著者
伊波 靖 高良 富夫
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.2173-2181, 2009-09-15
被引用文献数
1

近年,不正なプログラムの感染および拡大方法の多様化と伝搬速度の高速化により,シグネチャによる不正プログラム対策ソフトウェアの限界が議論され,プログラムの振舞いに基づくビヘイビア型異常検知システムがさかんに研究されている.しかし,ビヘイビア型異常検知システムでは,高い検知率を得ることにともなうFalse Positiveの割合を減少させることが課題となっている.本論文では,Windowsにおいてシステムの資源に影響を与える危険なシステムコールに着目した異常検知手法を提案する.提案方式は,まず,OSが管理する重要な資源に影響を与えるクリティカルなシステムコールを,不正なプログラムの振舞いから定義したシステムコールと引数によるルールを用いて検知する.次に,それ以前に発行されたシステムコールの履歴からSupport Vector Machine(SVM)を用いて,検知したクリティカルなシステムコールが不正なプログラムによって発行された危険なシステムコールかどうかを識別することで異常を検知する.我々は,提案方式に基づくプロトタイプシステムを開発し,現実的な不正なプログラムおよび通常のプログラムを用いて実験を行った.実験では,提案方式の検知能力とFalse Positiveの割合について評価を行った.In recent years, infection and expansion method of malicious program are diversified, and the propagation speed has been rapid. The limit of the detection of security systems by signature has been indicated. Therefore, the behavior type anomaly detection system based on the behavior of the program has been actively researched. However, decreasing the ratio of false positive according to obtaining a high detection rate becomes a problem in the behavior type anomaly detection system. In this paper, we propose the anomaly detection method of combining behavior of program and detection rule to detect a dangerous system call that affects important resource of Windows system. The proposed method first detects a doubtful system call by the detection rule using system call and argument. Then, a dangerous system call is identified by using Support Vector Machine (SVM) from the history of the system call, and execution is intercepted. We performed an experiment by developing the prototype system based on the proposed method, and using realistic malicious program and usual program. Through the experiments, we have evaluated the detection rate of the proposed technique and the ratio of false positive.
著者
松本 直人
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1021-1027, 2013-03-15

災害時において情報システム障害の社会にあたえる影響は,年々増大している.本稿では,東日本大震災における情報発信の事例を分析し,システム障害の影響を最小限に保つ手法について提言する.
著者
酒向慎司 宮島千代美;徳田恵一 北村正 北村 正
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.719-727, 2004-03-15
参考文献数
16
被引用文献数
19

隠れマルコフモデルに基づく音声合成方式を歌声合成に拡張することにより構築した歌声合成システムについて述べる.本システムでは,歌い手の声の質と基本周波数パターンに関する特徴をモデル化するため,スペクトルと基本周波数パターンをHMMにより同時にモデル化している.特に,自然な歌声を合成するうえで重要な要素となる音符の音階や音長の基本周波数パターンへの影響を精度良くモデル化するため,楽譜から得られる音階と音長を考慮したコンテキスト依存モデルを構築している.これらのモデルに対して決定木によるコンテキストクラスタリングを行うことで,未知の楽曲からの歌声合成が可能となっている.実験から,歌い手の特徴を再現し歌声の合成が可能であることを示す.We describe a singing voice synthesis system by applying HMM-basedspeech synthesis technique.In this system, a sequence of spectrum and F0 are modeledsimultaneously in a unified framework of HMM, and context dependentHMMs are constructed by taking account of contextual factors thataffects singing voice.In addition, the distributions for spectral and F0 parameter areclustered independently by using a decision-tree based contextclustering technique.Synthetic singing voice is generated from HMMs themselves by usingparameter generation algorithm. In the experiments, we confirmed that smooth and natural-soundingsinging voice is synthesised. It is also maintains the characteristicsand personality of the donor of the singing voice data for HMMtraining.
著者
佐々木 裕 磯崎 秀樹 鈴木 潤 国領 弘治 平尾 努 賀沢 秀人 前田 英作
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.635-646, 2004-02-15
被引用文献数
12

近年,大量の文書を用いて自然文によるユーザからの質問に答える質問応答(QA: Question Answering)システムに関する研究が注目を集めている.これまでいくつかのQAシステムが開発されてきたが,それらの多くは人手で作成されたルールや評価関数を用いて,質問の答えを大量の文書から抽出するアプローチをとっていた.これに対し,本論文では,機械学習技術を用いて,日本語QAシステムの主要なコンポーネントをそれぞれ学習データから構築することにより,QAシステム全体を構築する方法について述べる.具体的には,質問タイプや答えの判定を2クラス分類問題としてとらえ,質問文やその正解例から学習された分類器により,これらの機能を実現する.本アプローチのフィージビリティの確認のため,機械学習手法Support Vector Machine(SVM)を用いて学習型QAシステムSAIQA-IIを実装し,2 000問の質問・正解データによるシステム全体の5分割交差検定を行った.その結果,システムの性能として,MRR値で約0.4,5位以内正解率で約55%の正解率が得られることが明らかになった.This paper describes a Japanese Question-Answering(QA) System, SAIQA-II.These years, researchers have been attracted to the study of developingOpen-Domain QA systems that find answers to a natural language question given by a user.Most of conventional QA systems take an approach to manually constructing rules and evaluation functions to find answers to a question.This paper regards the specifications of main components of a QA system,question analysis and answer extraction, as 2-class classification problems.The question analysis determines the question type of a given question andthe answer extraction selects answer candidates thatmatch the question types. To confirm the feasibility of our approach,SAIQA-II was implemented using Support Vector Machines (SVMs).We conducted experiments on a QA test collection with 2,000 question-answer pairs based on 5-fold cross validation.Experimental results showed that the trained system achieved about 0.4 in MRR andabout 55% in TOP5 accuracy.
著者
美崎 薫 河野恭之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.1637-1645, 2005-07-15
被引用文献数
6

本研究では,個人体験をディジタル化し,記憶想起活動を支援する場として住宅を記憶媒体とする実験を行った.住宅内部に大量のストレージを内蔵し,個人の「見たもの」「書いたもの」をスチル画像化して蓄積,それを整理しブラウジングする環境を構築した.この76万枚に及ぶ膨大なスチル画像を多数のディスプレイ上に並列にスライドショウ表示し,ユーザが住宅内で常時それらの画像を受動的に閲覧することにより記憶想起活動が活性化することを確認した.This paper proposes the "Remembrance Home" for supporting a person's remembrance throughout his/her life that employs his/her house as media for memorizing, organizing and remembering his/her everyday activity. The Remembrance Home stores his/her everyday memories which consist of digital data of both what he/she has seen and what he/she has generated. He/she can augment his/her memory by viewing slideshown images played in ubiquitously arranged displays in the house. The experiments have shown that the prototype system that contains over 760,000 images augments his/her remembering activity.
著者
荒川 豊 田頭 茂明 福田 晃
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.2268-2276, 2011-07-15

本研究の目的は,我々がこれまでに提案しているコンテキストアウェア日本語入力システムの実現に向けて,ユーザの位置と実際に入力された文字列との相関関係を明らかにすることである.本論文では,位置情報付き日本語データの中から,位置依存性の高いキーワードを抽出する手法を2つ提案する.データとしては,2009年12月から収集しているTwitter上のツイート約50万件を用いる.提案手法1では,あるキーワードを含むツイート群に対して,緯度と経度の標準偏差を求め,ツイート群のばらつきの度合いから,そのキーワードの位置依存性を測る.提案手法2では,複数の位置に依存しているキーワード(たとえば,チェーン展開している店舗名など)を高速に抽出するための手法として,探索を3階層(100kmの正方エリア,10kmの正方エリア,1kmの正方エリア)に分けて行うことにより,提案手法1では検出できない,全国に分散したキーワードがある確率以上で出現する1km正方エリアの高速な抽出を実現している.The objective of this study is to specify the relationship between user's context and really-used words for realizing the context-aware Japanese text input method editor. We propose two analytical methods for finding location-dependent words from a half million tweets including Japanese and geographical location, which have been collected since Dec. 2009. First method is to analyze the standard deviation of both latitude and longitude of all the tweets including a certain word. It is very simple way, but it cannot find out the keywords that depend on multiple locations. For example, tweets including famous department store's name has a large standard deviation, but they may depend on each location. Therefore, we propose three-tier breadth first search, where the searching area is divided into some square mesh, and we extract the area which includes tweets more than average of upper area. In addition, we re-divide the extracted areas into smaller areas. Our method can extract some locations for one keyword.
著者
小池 恵介 太田 淳 大島浩太 藤波 香織 郡 信幸 竹本 正志 中條拓伯
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2740-2751, 2012-12-15

Android端末におけるJava実行の高速化とともに,さまざまなネットワークプロトコルへの対応や,種々のセンサへの柔軟な接続が求められている.そのために,FPGAを活用したReconfigurable Androidを提案し,その有効性,可能性を検証することを目指す.本稿では,Reconfigurable Androidの概念について述べ,FPGAボードにプロセッサカードを搭載したシステムにAndroidを移植し,FPGAによるアクセラレータを実装し,ハードウェア実行可能なJavaのソース部分をFPGA上で実行することにより全体の性能向上を実現する.Dalvik VMが稼働するIntel AtomプロセッサとFPGAとの間において,PCI Expressインタフェースの実装を完了し,DMA転送により150 MByte/secの通信性能を確認した.さらに,FPGAアクセラレータによるAndroidの高速化手法について述べ,実験環境および,プロセッサとFPGA間の通信性能について報告し,アクセラレーションによる性能評価を示す.
著者
武吉 朋也 帆足 啓一郎 松本 一則 小野 智弘
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2841-2853, 2012-12-15

インターネットの普及により,一般ユーザでもオンラインでのディスカッションを容易に行えるようになった.このような状況下では,多数存在するディスカッションのそれぞれについて,どの程度円滑に進行しているのか数値化することがユーザ,およびディスカッションサイトの管理者双方にとって必要である.そこで本稿では,ディスカッションの円滑な進行に寄与すると人間が感じる発言のディスカッション全体に占める割合を健全度と定義し,ディスカッションのデータから単純集計により取得可能な参加人数や発言間の時間間隔等の表層的特徴量と,ディスカッションの内容を表す単語の重要度からなるテキスト特徴に基づいて,ディスカッションの健全度を定量化する手法を提案する.人手で付与した健全度に応じてディスカッションに健全,半分程度が荒れ,荒れの3つのラベルを設定し,提案手法によるラベル予測の精度を評価した結果,テキスト特徴のみに基づく分類手法よりもF値が上回ることを確認した.これにより,本稿で述べる提案手法は健全度が高いディスカッションをユーザに提示し,参加を促すといった利用シーンへの適用が期待できる.The spread of online community sites such as social networking services has made it possible for common users to conduct discussions online. The rapid increase of such online discussions has aroused the demand of technologies to automatically present lively and exciting online discussions to the user, and also to detect "flamed" discussions to the service providers to prevent unnecessary collisions between users. This research proposes a novel method to quantify the soundness of online discussion based on simple surface and textual features extracted from online discussions. The features used by the proposed method needs neither a large-scale dictionary nor advanced text analysis. In addition, the features are generic, thus extractable from any type of online discussion. Our proposed method achieved higher F-measure for the classification of "sound" and "flamed" online discussions than typical text classification methods using term features, proving the effectiveness to select such discussions to system users.
著者
中里 純二 藤本 賢司 菊池 浩明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.2068-2077, 2005-08-15
被引用文献数
3

本論文では,ロバスト性を保証して回答者のプライバシを守る,ウェブでのアンケートを行うセキュアプロトコルを提案する.提案プロトコルは,Cramerらによって提案された効率の良い秘匿性を満たしたセキュア電子投票プロトコルに基づいている.秘匿性と効率性は,選挙とアンケートの両方に共通する要求条件である.しかし,特にアンケートにおいては複数の選択肢を同時に選択することが許されていることがあり,選択肢数nに対して,通信量が指数関数的に増加するという課題が生じることを本論文で指摘する.この課題を解決するために,正当性の証明コストをΘ(2n) からΘ(n)に削減するプロトコルの提案を行う.また,試験実装に基づいたパフォーマンス評価を与える.This paper proposes a secure protocol for web-based questionnaire that preserves the privacy of responders and ensures the robustness. The proposed protocol is based on secure electronic voting protocol proposed by Cramer et al. with confidentiality and efficiency, which are common requirements for both applications. This paper points out an issue particular in the secure questionnaire, that is, a requirement to deal with a multiple-choice question, and shows that the communication overhead grows exponentially with the number of choices n. To address the issue, the proposed protocol reduces the cost from Θ(2n) to Θ(n). The performance based on the experimental implementation is also shown.