著者
鳥海 不二夫 榊 剛史
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.1287-1299, 2017-06-15

近年,ソーシャルメディアにおいては,震災や選挙,炎上などの社会的イベントにより,特定の話題が大きく取り上げられるバースト現象が頻繁に発生している.そのような社会的イベントがどのように社会に受け止められているかを正確に理解するためには,バースト現象を分析し,どのような人々がどのような意見を表明しているかを明らかにするための技術が必要不可欠である.本研究ではバースト現象発生時に,(1)どのようなトピックが含まれるか,(2)各トピックがどのようなユーザによって拡散されているかを分析することで,バースト現象の詳細を明らかにする手法を提案した.まず,予備評価実験で,提案するトピック分類手法およびユーザ分類手法により適切な結果が得られることを示した.事例分析では提案手法を用いて炎上や自然災害など5つのバースト事例の分析を行い,それぞれの事例において,投稿数が多くかつ多様なユーザに語られていたトピック,投稿数が多いが一部のユーザのみに語られていたトピックを明らかにした.本提案手法は,必ずしも新しい手法ではなく,基本的には既存の手法の組合せによるものである.しかしながら,それによってバースト現象の詳細を分析することが可能であることを示した点が本論文における最も大きな貢献である.Recently, burst phenomena, which mean specific topics are referred widely, occur frequently on social media. Those are caused by some social events such as natural disasters, public election and flaming. To understand how such social events have been received by the society as a whole, we need a new method, which reveal who has what opinion by analyzing burst phenomenon. In this paper, we propose a method to reveal details of bust phenomenon by analyzing (1) what kinds of topics are included in a burst (2) who propagate each topics. In preliminary evaluation experiments, we show that it is possible to acquire appropriate results by the proposed method for topic clustering and use community detection. In detailed case analysis, we analyze 5 bust cases, including natural disasters and flaming, and uncover that some big topics are referred by various users and other big topics are referred by partial users in each cases. The proposed method basically consists of common techniques; those are not so new one technically. The contribution of this paper is to prove that it is possible to analyze burst phenomena in detail by the combination of existing simple methods.
著者
丸山 敦史 柴田 直樹 村田 佳洋 安本 慶一 伊藤 実
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.2678-2687, 2004-12-15
被引用文献数
17

本論文では,観光のためのパーソナルナビゲーションシステム"P-Tour" を提案する.P-Tour は,ユーザが出発地と出発時刻,帰着地と帰着時刻,複数の観光候補地と各地への立ち寄り希望度と時間制約(到着時間帯や滞在時間など)を設定すると,制限時間内で巡回可能かつ最も満足度が高くなるような巡回経路(いくつかの観光地を含む)と各観光地への到着・出発予定時刻を含むスケジュールを算出しユーザに提示する機能を提供する.P-Tour は決定したスケジュールに従い,GPS 機能を備えた携帯端末を介し,ユーザにナビゲーション機能を提供する.提案するナビゲーション機能では,現在地を中心とする地図と次の目的地への経路の表示などの空間的な誘導に加え,各目的地での,滞在可能時間の表示や出発時刻の通知などの,時間的な誘導機能を提供する.遺伝的アルゴリズムを用いて準最適なスケジュールを高速に算出するアルゴリズムを設計・開発し,Java サーブレットとして実装した.PC や携帯端末からウェブインタフェースを介してスケジュールの作成,ナビゲーション機能が利用できる.市販のカーナビゲーションシステム用のデジタル地図を用いた評価実験により,準最適なスケジュールを実用的時間で案内できることなどを確認した.In this paper, we propose a personal navigation system for tourism called P-Tour. In PTour, when a tourist specifies the starting location, the departure time, the returning location, the arrival time and the multiple candidate destinations with relative importance and time restrictions on their arrival and staying time, the nearly best schedule is automatically computed. P-Tour can efficiently navigate the tourist according to the decided schedule through a portable computing device with GPS. In addition to the standard navigation function to guide users to destinations by displaying a graphical map, P-Tour provides temporal guidance for the tourist to follow the schedule. We have developed a route search engine to obtain a semi-optimal solution quickly using techniques of genetic algorithms. The engine has been developed as a Java Servlet and can be used from PCs and portable devices via http protocol. Our experimental results show that our route search engine can compute the nearly best schedule in reasonable time.
著者
小島 啓史 竹内 亮太 石川 知一 三上 浩司 渡辺 大地 柿本 正憲 近藤 邦雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1886-1898, 2014-08-15

オーロラのCGアニメーションのために,オーロラ特有の複雑な運動を擬似的に再現する手法を提案する.これまで,オーロラを対象にしたビジュアルシミュレーションの研究が多く行われてきた.しかしながら,実際のオーロラのように分断したり,接続して再統合したりするような複雑な様子を再現できる研究は行われていない.本研究では,分布特性を考慮してオーロラの擬似的な分布を無数の点群で近似する.水平方向に広がる2次元平面上に,ひとつながりになるように複数の点を配置する.この点列に対して,オーロラの分断と再統合の現象を考慮した接続関係の変更処理を行う.点列を切断し一部を分離する処理を行うことで,ひとつながりのオーロラが分断して複数のオーロラになるような様子を再現する.分離した複数の点列が再び接続する処理を行うことで,分断したオーロラのひだが再統合することでひとつながりのオーロラを形成する様子を再現する.また,電磁場計算と流体計算を用いた運動モデルを構築し,ひだの運動を表現する.オーロラの2次元分布を変化させることでオーロラ特有の複雑な運動を再現する.さらに,オーロラの2次元分布をもとに発光過程の計算を行いオーロラの3次元分布を計算する.1/fノイズを用いることで揺らぎのある自然な分布を再現した.この3次元分布をスクリーンに射影し描画することでオーロラのCGアニメーションを生成する.
著者
伊藤 毅志 松原 仁 ライエルグリンベルゲン
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.2998-3011, 2002-10-15
参考文献数
10
被引用文献数
14

人間の問題解決の認知過程については数多くの研究が行われてきた.ゲームおよびゲーム理論は昔から人間の問題解決行動の研究において重要な役割を演じてきた.認知研究の題材にゲームを用いることの利点は,ゲームが良定義問題で対戦による評価が容易なことである.チェスで最もよく知られた認知実験は局面の記憶に関するものでDe Grootによって行われた.この研究を継いだSimonとChaseはチャンクという概念を用いてエキスパートの認知能力を説明した.チャンクは一種の情報のかたまりで,チェスでいうとチェス盤上の典型的な駒の配置パターンのかたまりをチャンクと呼んでいる.彼らは強いプレイヤは弱いプレイヤよりも広い配置パターンをチャンクとして記憶していることを示した.将棋の認知研究の第1歩として,我々はまずチェスで行われた認知実験を追試してみることにした.チェスと将棋には認識の点からいくつかの違いがあるので,この追試実験を一度は実施することが必要だと考えた.本論文では将棋を対象とした時間無制限と時間制限の記憶実験を行った.強いプレイヤが弱いプレイヤより成績が良いこと,すなわち広い配置パターンをチャンクとして記憶しているというチェスとほぼ同様の結果が得られた.In the past, there have been numerous studies into the cognitive processes involved in human problem solving. From the start, games and game theory have played an important role in the study of human problem solving behavior. The advantage of using games for the study of cognitive behavior is that games provide a complex but well-defined problem in which evaluation of results is relatively easy. In chess, one of the most well-known cognitive experiments was the study by De Groot on memorizing positions. As a follow-up to De Groot's work, Chase and Simon introduced the theory of chunking to explain why expert game players perform so well on memory tasks. Chunking is the process of dividing a chess position into smaller parts that have meaning. Chase and Simon showed that stronger players have bigger chunks of chess knowledge than weaker players. As a first step in our cognitive study of Shogi, we repeated some experiments that were conducted in chess. We felt that repeating these experiments was necessary as there are some important differences between chess and Shogi from perceptual point of view (for example, shogi has a 9×9 board with all squares having the same color, shogi pieces are two-dimensional and in shogi captured pieces remain part of the game). Because of these differences, it could not be assumed that the results for chess would carry over to shogi. In this paper we give the experimental results of memory tasks in shogi, both with and without a time limit. Our results were similar to the ones obtained in chess. As in chess, there is a correlation between playing strength and the performance on the memory tasks. From this we can draw a similar conclusion for shogi as for chess: stronger players have bigger chunks of shogi knowledge than weaker players.
著者
佐々木 宣介 飯田 弘之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.2990-2997, 2002-10-15
被引用文献数
6

本研究では,ゲームのルール変遷の根底にあるゲームの性質の変化に着目し,将棋の歴史的変種を比較する.最初に,ゲームの性質に関する比較を行うための2つの指標を提案する.これらの指標はそれぞれ,ゲームの面白さとゲームの決定複雑性を表すもので,平均可能手数,平均終了手数に基づいて算出される.すでに廃れてしまった将棋種に関しては,コンピュータプレイヤを用意し,それらのデータを採取した.本研究で用いたコンピュータプログラムは駒価値をベースにした評価関数を持ち,先読み探索を行う.各将棋種に対して駒価値を自動学習するために,Temporal Difference学習法を適用した自動対戦の実験を行い,各将棋種に対するデータを採取し,比較を行った.重要な知見として,大駒付加よりも持ち駒使用ルールがルール変遷の過程でより大きなインパクトを与えていること,そして,あまり難しくなりすぎないようにルールが洗練されてきたことが分かった.This study explores how the evolutionary changes of the rules affect the characteristics of the games in the Shogi species from the viewpoint of evolutionary selection.For this purpose,we propose two measures based on the average number of possible moves and the average game length:(1) measure for entertainment, and (2) measure for decision complexity.For games where no grandmaster games are available, the statistics of specific features,such as the average number of possible moves and the average game length,are obtained by the method of self-play experiments.Then we made computer programs that performed lookahead search using an evaluation function based simply on piece-material balance.To obtain the appropriate piece values of Shogi variants,we apply Temporal Difference Learning method.Based on the data obtained by the above self-play experiments,Shogi variants including the modern Shogi and ancient Shogi variants are analyzed and compared.Through the analysis,we observed that the inclusion of the reuse rule was more important step than the inclusion of the major pieces in the course of evolutionary changes from Heian Shogi toward modern Shogi.We believe that the proposed measures are useful tools for building a genealogical tree of chess-like games.
著者
二村 良彦 川合 敏雄 堀越 彌 堤 正義
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.259-267, 1980-07-15

「コーディングは流れ図の作成から始まる(Coding begins with the drawing of the flow diagrams.)」と言ったのは 1940年代のGoldsteinとNeumannだった.それ以来今日まで プログラムを書く前に流れ図 すなわちフローチャートを書くことが 多くのプログラマの習慣になってきた.ところが 高級言語が発達したり 構造化プログラミング技法が普及するにつれ フローチャートの欠点が目立つようになった.フローチャートに構造化プログラミングやプログラムの段階的改良(Stepwise Renfinement)の考えを取入れた図式としてはNSチャートやFerstlチャート等が提案された.また フローチャートを使わずに 直接 PASCAL 等の構造化プログラム言語やPDL等のシュードコードでプログラムの論理を記述することも提案されている.しかし これ等はフローチャートほどには広く使われていない.われわれは PAD(Problem Analysis Diagram すなわち問題分析図)と呼ぶ2次元木構造をした図面によりプログラムの論理を記述する方法を提案してきた.そして 多くの機種(プログラマブル電卓から大型計算機まで)に対する各種(OS アプリケーション等)のプログラムの開発を使用してきた.PADは ワーニエ図の問題点を改良するために (1)制御構造を強化し (2)図式から直接コーディングできるようにし さらに (3)ハードウェアの図面のような体裁を持つように図式を改良したものである.結果的には PADは 構造化プログラムを2次元的に展開した図式になった.特にPADが標準的に備えている制御構造はPASCALに基づいて定めてあるので PADはPASCALプログラムを2次元的に展開したような図式であり PASCAL Diagzamと言うこともできる.
著者
田中 翼 古川 聖
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1308-1318, 2013-04-15

本稿では,多声音楽の自動作曲において新しい旋律スタイルを自動生成する手法を提案する.本手法において旋律スタイルは,書き換え規則の集合からなる文法として表され,その文法規則は遺伝的機械学習システムであるクラシファイアシステムを用いて生成される.これまでの文法的なアプローチの自動作曲研究においては,多声音楽をいかに文法的に扱うかという問題や,オリジナルな旋律スタイル自体を自動生成する問題はあまり重点的に研究されてこなかった.そこで本稿では,多声音楽の生成過程を,各旋律が互いに参照し合いながら,声部間での書き換え規則の非同期的な適用によって成長していくプロセスとしてモデル化を行う.そしてモデルの要素としての文法規則をクラシファイアシステムを用いて自動生成することで,新しい旋律スタイルを創発させる手法を提案する.生成楽曲の評価実験の結果,文法ルール数を小さく設定することが複数の観点からの高評価につながることや,各声部が別々のルールに基づく「複数スタイル」の楽曲が「旋律の動きの豊かさ」において高評価を得ることが明らかになった.
著者
浜田 穂積
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.521-526, 1981-11-15

2進法を基礎とする計算機そのほかのデータ処理装置のための実数値表現方式を提案する.形式はデータの長さに依存せず 精度変換操作が単純で オーバフロー アンダフローが発生しない 十分大きい数も小さい数も表現できる方式であるこれらの条件を満たす一般的な表現法と その中で最も単純な規則を持つ形式とを示し 後者を標準案として推奨する.後者によると ±1の近くでの分解能が低下しないように極力努めたので 同じピット数で表現する固定小数点表現と比べ 1ビット分の分解能の悪化に止まり かつ浮動小数点表現の持つ 小さい数も 大きい数も表現できるという長所も併せ持っている.実数値表現法として前記の目的を達するため 内部表現のビット列に次の3つの性質を持たせる.(i)すべてのビット列が実数に対応する.(ii)あるビット列の右に1ビット連結する時 元のビット列に対応する区間が2分され 左の区間はピット0 右の区間はビット1を連結したものに対応する.(iii)正数の場合 1から無限大あるいは0に向かって 区間の両端の値の比が 二重指数的に増加する値となるよう分割されている.これによって実現される表現法を用いると 短いデータでもそれなりにバランスよく実数値を表現できる.また長いデータをう処理系と容易に結合できるため ミニコンピュータ マイクロコンピュータのための実数値表現法としても適している.
著者
齋藤 彩音 河合 航 杉浦 裕太
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.638-643, 2020-03-15

実世界センサでの計測と機械学習を組み合わせることでジェスチャ識別を行う研究は数多く存在する.実世界センサは配置や個数,計測したい動作によって測定結果が変化することからセンサ配置を検討することが重要である.しかし,識別率の良いセンサ配置を検討することや実世界での学習データの蓄積には手間がかかる.本研究では,実世界センサの配置をデザインできるソフトウェアを開発した.ソフトウェアでは,Kinectを用いて記録した実世界の変形と自由に配置されたセンサとの距離を計測しジェスチャ識別器を生成する.また,ソフトウェア上のデータで生成された識別器を用いて実世界に配置したセンサでのジェスチャ識別を行った.
著者
細田 真道 坂本 寛 村上 友規 花籠 靖 梅内 誠 毛利 忠 塩原 寿子 小川 智明 宮本 勝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.3-15, 2020-01-15

活き活きとしたスマートシティを実現するためには,MaaS,イベント,施設などの運営者が多数の人の流れ(以下,人流)を把握することで,より最適な移動手段選択,混雑緩和,事故防止につなげることが重要である.本論文はこうした運営者が人流を把握することを目的とし利用者などの端末を測位する方法を提案,評価し有効性を示す.まず,従来測位方式および技術的課題を述べる.広く普及している人工衛星による測位方式は屋内測位が困難である.また,屋内測位できる方式であっても,端末が自身の測位をして結果をサーバなどに通知する必要があり,アプリケーションのインストールを要する.そこで,これらの課題を解決する新方式を提案する.提案方式は,通常の無線LAN端末が対象,端末にアプリケーション不要,端末が分散アンテナを用いたアクセスポイントに帰属するとアクセスポイントが端末を測位可能,歩行者動線取得可能という特徴を持つ.提案方式の1次元測位実験の結果,通常の無線LAN端末で,アプリケーション不要,歩行者動線取得,高精度測位(精度1m~5m)を実現した.最後に,フィールド実証としてこの提案システムを来場者が多数集まる展示会で動作させ,実フィールドでの有効性を明らかにした.展示会では来場者で混雑しても,提案方式のうちRTT(Round Trip Time)測位には大きな影響がなく,来場者から高い評価を得た.
著者
稲葉 通将 大畠 菜央実 高橋 健一 鳥海 不二夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.2392-2402, 2016-11-15

本研究では,人狼ゲームにおけるプレイヤの発話内容を表現するタグを設計し,それらのタグを人狼BBSにおけるプレイヤの発話に付与し分析を行った.分析では,襲撃対象,および処刑対象の決定にプレイヤごとの発話の傾向がどのように影響するのか,また,ゲーム全体のコミュニケーションの傾向とゲームの勝敗の関係について調査した.分析の結果,人間側,人狼側の各プレイヤが自陣営の勝利のために効果的なコミュニケーション戦略,および特定のコミュニケーションとプレイヤの行動の関係が明らかとなった.We focus on a communication game "Werewolf". Our final objective is making a werewolf player agent. In this paper, as a first step, we analyze this game using players' utterances. We define a tag set that describes player's dialogue act and annotate utterances in the Werewolf BBS with these tags. By using these annotated utterances, we analyze the relationships between the trend of the types of the utterances and decision-making and victory or defeat. The results of the analysis clarify effective actions in werewolf in order to win.
著者
皆川 太志 野嶋 琢也
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.2030-2042, 2018-11-15

応援とはスポーツ競技を観戦する際の,観戦の楽しみを構成する要素の1つである.応援における声援やブーイングは,感情表現の一種であり,競技中のプレイヤにその思いを伝えようとする行為となる.そして勝利を願う声援,良いプレイをしたときの喝采,悪いプレイをしたときのブーイング,これらすべてはプレイに対する評価でもあり,プレイヤのモチベーション刺激につながると考えられる.ただ周囲の大多数があるプレイヤを応援するようなとき,主に声が届かないといった物理的問題から,少数が周囲と異なる対象を応援することは難しい.しかし応援は自由であるべきであり,いつでも自身の好きな対象を応援できる自由があることが望ましい.同時に,そのような応援が自己満足で終わらないために,応援されていることをそれぞれのプレイヤが認知できることが重要と考えられる.またプレイヤが,送られた応援に対して手を振るなどの何らかのフィードバックを返すことは,応援する側にとって,観戦や応援のモチベーション向上に寄与すると期待される.しかしながら通常,プレイ中に応援を認知し,応援に応えることはきわめて難しい.そこでこの問題に対して我々は,「Cheer Across」という応援拡張システムを開発した.Cheer Acrossは観客が応援をプレイヤに伝え,プレイヤからのフィードバックを得るためのAcross Penlightと,プレイヤが観客からの応援を認知しフィードバックを送るためのAcross Gearにより構成されている.本論文では,Cheer Acrossシステムの詳細な構成について述べる.そしてCheer Acrossをプレイヤと観客それぞれに使用してもらい,評価実験を行ったのでその結果について述べる.実験の結果,Cheer Acrossを利用することで,プレイヤは観客の応援に気づきやすくなり,プレイへのモチベーションが刺激されるという結果が示唆された.また観客は競技の臨場感や興奮度が向上し,応援行動をより好ましいと感じるようになるという結果が示唆された.In sports, players are being cheered by spectators. Cheering is one of the important aspect to attract people to watch sports competitions. Unfortunately, players need to concentrate on their own play. Thus, there is no time to check and make some reaction to cheering action from spectators, which are considered to be important rewards to motivate people to become spectators and keep cheering. To comply with this issue, we developed an augmented cheering system named "Cheer Across". That is a technology for a certain categories of spectator sports to enables spectators to send cheering message to players. At the same time, the technology enables players to react to the cheering message. Spectators could also feel the reaction through the proposed system. In this paper, the detail configuration of the Cheer Across system is described. Furthermore, experiments and their results are also described to show the effect of using Cheer Across to both players and spectators.
著者
松井 正一 伊理 正夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.306-313, 1980-07-15
被引用文献数
9

従来の浮動小数点表現方式で問題となっていた指数部あふれを解決する新しい表現方式の提案を行う.新表現方式は 指数部と仮数部との境界を動的に変化させることにより 指数部あふれを防ぐとともに 普通の大きさの数に対してはより高い精度を確保することができる.また普通の数ではない数をいくつか考えることにより "数の体系"を閉じたものとする.新しい表現方式が効果を発揮するような計算例も示す.
著者
馬場 哲晃 牛尼剛聡 富松 潔
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.2978-2988, 2009-12-15
被引用文献数
1

本論文では身体接触行動をゲームインタフェースに利用したビデオゲームシステムの実装を行い,2年間にわたる展示活動によるユーザ意見と観察結果を報告する.本研究はこれまで身体接触を電子楽器インタフェースに利用した事例を扱ってきた.その過程で開発したセンシングモジュールを本論文ではビデオゲームコントローラデバイスに実装した.シューティングゲーム,リズムアクションゲーム,対戦格闘ゲーム,アクションアドベンチャゲームの計4種類のゲームソフトウェアを制作し,展示活動から各ゲームシステムごとに得られた意見・観察結果をまとめる.展示活動結果から次回プロトタイプを制作するうえで多くの知見を得ることができ,身体接触行動独特の親密感をゲームを通して楽しむための基本的な仕組みを提案できた.In this paper, we describe implementation of a game interface and system that enables users to use touching as an interface, then report the result of user observation for two years exhibition activities. We developed sensing modules and applications for musical instrument that uses touching as an interface. We implemented its sensing module to video game controller device, and developed 4 types of video game software: shootin'em up, rhythm action, battle and action adventure. Through exhibition activities, we collect the result of user observations and advices from users. In order to make next prototype system, we could get much knowledge about touch behavior interface. As a result, we could propose the basic structure of a game system that users can feel intimate through video games.
著者
新美 真 伊藤 孝行
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1959-1967, 2015-10-15

本研究では,多腕バンディット問題を拡張した予算制限多腕バンディット問題を取り扱う.多腕バンディット問題とは,複数台あるスロットマシンをプレイするギャンブラを模した問題である.予算制限多腕バンディット問題は多腕バンディット問題の拡張の1つで,コストと予算による制約が存在する.既存の予算制限多腕バンディット問題では静的な報酬確率分布のみを仮定しており,動的な報酬確率分布については想定していない.本研究では予算制限多腕バンディット問題および予算制限バンディットアルゴリズムを拡張し,動的な報酬確率分布を想定する.予算制限多腕バンディット問題の拡張にともない,既存の予算制限バンディットアルゴリズムを拡張したD-KUBEおよびSW-KUBEを提案する.動的な報酬確率分布による問題空間を設定し,既存手法であるKUBEと提案手法であるD-KUBEおよびSW-KUBEとの比較実験を行う.実験結果から動的な報酬確率分布において,提案手法であるD-KUBEおよびSW-KUBEは既存手法であるKUBEと比較して改善されることを確認する.
著者
村瀬 芳生 松原 仁 平賀 譲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.567-574, 1998-03-15
被引用文献数
2

本研究ではパズル「倉庫番」の問題を自動作成するプログラムを作成した.プログラムは,問題の作成,解答,評価の3つのルーチンからなる.作成ルーチンは乱数を使ってできるだけ効率良く問題を作成し,解答ルーチンは作成されたものを幅優先探索によって解く.評価ルーチンでは,ここまでに得られたデータをもとに問題のおもしろさを評価する.この3つのフェーズを繰り返し,評価の低いものを捨て,おもしろい問題を残すことを試みた.その結果,残った中にはつまらない問題も含まれてはいるものの,難解なものを含めパズルとして成り立つ問題を創作することができた.人工知能において,コンピュータによる作品の自動作成は興味深い研究テーマである.本研究はその試みの1つとして位置付けられる.This paper describes a program that generates Sokoban problems automatically.Sokoban is a one-player puzzle invented in Japan.The rule is simple,but advanced problems are difficult to solve and very interesting for players.The program consists of three stages:generation,solving,and evaluation.The candidates for problems are generated randomly from a prototype and three templates.Unsolvable candidates are removed by the Sokoban solver.Finally trivial or uninteresting candidates are removed by the evaluator.Some problems that the program generated are judged good by human experts.Our work can be characterized as an attempt to pursue creative tasks on computers,which is increasingly becoming an important target in AI.
著者
渡辺 理 光岡 円 角田 潤 大野敬史 奥山 敏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.142-154, 2004-01-15
被引用文献数
3

携帯電話(iモード)上での文字プレゼンス情報の交換によるパーソナルネットワーク支援の可能性を探るため,携帯電話の上でインスタントメッセージのように動作するプロトタイプサービスを実装し,短期のユーザ試行評価実験を行った.このサービスは,ユーザが共通のチャネルに参加するのではなく,任意の友人と個別にお互いの情報を見せ合う関係を結んで仲間リスト(バディリスト)に登録し,そこを基点に状態情報(プレゼンス情報)を交換することを特徴としている.ある女子大学の学生の仲良しグループを主な被験者とし,発見的な使い方を観察するために自由に使わせた.グループチャットやメーリングリストなどの強い対話機能を持たないことを懸念していたが,実際には,被験者は楽しみながら積極的に使ってくれた.友人同士でバディリストに一言メモを書いて見せ合うことは,メールやチャットでメッセージを送るよりも情報発信の敷居が低く,見られることを意識した日記を綴る感覚を楽しめる.そして,独り言メモから対話的なメモに移行したり,パーソナルな対話や仲間以外の人への情報発信をしたりする際の起点としても機能していた.このように多義的な用途に使われた特性をまとめ,パーソナルネットワークを支援する携帯文字プレゼンス交換システムの望ましい条件と課題について考察した.We discuss findings from an empirical and ethnographic study of a kind of instant messaging (IM) service on mobile phones. To estimate the possibility of presence interaction service for mobile phone, we developed a prototype system, which provides users for writing text memos and showing them on their friends' ''buddy list''. We call these ''presence memos''. Using this prototype, we conducted a field trial with two groups of young Japanese female university students. They enjoyed habitually using the services and gave us invaluable feedback. Based on the results of this experiment, we describe and discuss some features and possibilities of the mobile text-based presence interaction service for personal network assistance.
著者
高橋 柊 菊地 悠 落合 桂一 深澤 佑介
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.1376-1386, 2017-08-15

近年,Twitterなどのマイクロブログに代表されるSNSサービスのユーザ数増加により,実世界における情報がリアルタイムにweb上にアップロードされるようになった.そのため,マイクロブログ上の情報をセンシングすることで,実世界における事象を検知する研究が活発となっている.本研究では,マイクロブログ上に投稿される犯罪関連投稿に着目する.マイクロブログより,リアルタイムな犯罪関連投稿を抽出することができれば,犯罪事象に対し短時間で適切な防犯対策が可能となる.また,警察官によるパトロールなど既存のセンシング手法では抽出困難であった犯罪事象がマイクロブログ固有の情報より抽出可能となる.マイクロブログにおける投稿抽出には投稿テキスト情報を利用する手法があるが,犯罪という希少な事象を投稿テキスト情報から抽出するのは困難である.提案手法ではユーザの投稿内容,投稿関連位置情報および関連ステータス情報を用いることで,投稿内容の希少性および影響力について特徴量を生成し,投稿者が経験あるいは目撃した犯罪関連投稿を抽出する.Twitterの日本語投稿データに対し提案手法を適用したところ,投稿テキスト情報のみを利用した既存手法(AUC=0.6146)に対し,提案手法(AUC=0.7183)ではより高精度な犯罪関連情報の抽出が可能となった.
著者
塩見 彰睦 喜多 辰臣 河合 和久 大岩 元
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.920-928, 1992-07-15

日本語2ストローク入力との併用に適した仮名漢字変換方式として 漢字混じり仮名漢字変換を提案し その実現について述べる日本語2ストローク入力と従来の仮名漢字変換入力を併用した場合 入力したい熟語を構成する漢字のうち 一つでもその漢字の2ストロークコードを入力できないときには すべての漢字をその読みで入力し 変換しなければならなかったこの欠点を解決するのが 漢字と読みが混じった文字列を熟語に変換する漢字混じり仮名漢字変換である本論文では 漢字混じり仮名漢字変換を行うための方式として 変換用辞谷の見出し語を漢字混じり語に拡張するものと 入力文字列に含まれる漢字をキーに辞書引きを行う漢和辞書を用いるものとを提案するさらに この二つの方式でパーソナル・コンピュータ上に漢字混じり仮名漢字変換システムを実現し その比較を行ったその結果 変換速度ならびにパーソナル・コンピュータ環境での実現性の点で 漢和辞書を用いる方式が優れていることが明らかになったまた 同方式はMSーDOS上のデバイス・ドライバとして実現され いくつかのエディタやデータベース 日本語ワープロなどの市販ソフトウェアに試用され 実用に供しうる日本語入力システムであることが確認された
著者
重村 哲至 古川 達也 相知政司 林 敏浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.3318-3327, 2007-09-15
参考文献数
14
被引用文献数
1

電気・電子・情報系の学生にノイマン型コンピュータの動作原理を教えるために,実機を用いた機械語教育を行うことが提唱されてきた.しかし,現在のコンピュータ・システムは教育用には高度で複雑すぎる.そこで,筆者らは,高専や大学において,機械語教育に使用する演習用のマイコンを設計・開発した.開発したマイコンが備える,内部を2 進数で観察できるコンソールパネル,命令セットアーキテクチャ,入出力装置,クロス開発環境は,どれも教育用に配慮がされたものである.また,学生が個人で所有できるように小型・安価に実装した.実際に徳山工業高等専門学校の授業で4 年間使用し,教育効果があることが判明した.To teach students the principle of the von Neumann窶鍍ype computer, the machine language education with a real computer has been advocated conventionally. However, present computer systems are too advanced and complex to educate them. According to the demand for the higher education, the authors have designed and implemented an educational microcomputer system to satisfy the demand. The implemented computer has a console panel, that can be used to observe the inside, a set of instructions, I/O devices and cross development environments that are appropriate for education. Moreover, it has been implemented small size and at a low price so that the student might own it individually. It has been found out that there is a feasible education effect because of the practical usage in some classes for four years at Tokuyama College of Technology.