著者
秋山 朝子 今井 かおり 石田 幸子 伊藤 健司 小林 正志 中村 秀男 野瀬 和利 津田 孝雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.787-792, 2006 (Released:2006-11-17)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

An analytical method for the determination of aromatic compounds exhalated from hand skin has been proposed. The sampling of exhalated aromatic compounds was performed as follows: after the intake of aromatic compounds included in chewing gum or a capsule, exhalated skin gas was collected from a hand. The hand was covered with a sampling bag of poly vinyl fluoride (PVF) for 30 min. Then, the inner space of the sampling bag was sprayed with a 25% of ethanol aqueous solution. After removing the hand from the bag, the trapped solution containing skin gas was collected. The aromatic compounds in the trapped solution were extracted to the solid phase as Twister® (stir bar coated with poly dimethyl siloxane, Gerstel). Extracts were determined by gas-chromatograph mass spectrometry using a thermo desorption system and a selective ion mode. Linalool, citronellol and geraniol, which are the main components of rose essential oil, were detected from the skin of a hand after an oral intake of rose oil. The exhalated absolute amount of linalool, citronellol and geraniol increased in 30 to 60 min, and then decreased after intake. The recoveries of linalool, citronellol and geraniol were 53.5%, 66.7% and 55.1%, respectively. The correlation coefficient of the standard curves for linalool, citronellol and geraniol were 0.9977, 0.9994 and 0.9987, respectively. Each compound exahalated from the skin of a human body during 6 hours after intake was estimated to be, according to the amount of intake, 0.39%, 0.09% and 0.25%, respectively, for one subject. The absolute amount of geraniol exhalated from a hand increased significantly after oral intake for 8 subjects (P<0.025). This is the first report to present hard proof that an aromatic compound was exhalated from human skin after its intake as food.
著者
赤坂 和昭 今泉 啓一郎 大類 洋
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1085-1094, 1999-12-05
被引用文献数
6 8

不斉を有するエタノールアミン骨格と2,3-アントラセンジカルボン酸無水物より, 非常に強い蛍光性を有する2,8-アントラセンジカルボキシイミド型の不斉誘導体化試薬を合成した. この試薬によりメチル基の分岐による不斉を有する分岐脂肪酸を誘導体に導いた後, -50℃〜室温で, ODSカラムを用いたHPLC分析に供したところ, 2〜12位の不斉を識別することができた. NMRやCDスペクトルの解析結果より, この試薬による脂肪酸誘導体は, 試薬のエタノールアミン部で, 試薬の立体化学に依存したゴーシュ/トランス配座を優位にとり不斉の折れ曲がり構造を形成するため, 脂肪酸のアルキル鎖が試薬のアントラセンイミド基の真上を規則的なジグザグ構造をとりながら覆いかぶさるような構造をとることにより, 遠隔位の不斉識別能が発現したものと考えられた. また, 本誘導体は蛍光検出によりfmol レベルの高感度検出が可能であった.
著者
斉藤 幹彦 堀口 大吉 喜納 兼勇
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.635-639, 1981-10-05
被引用文献数
7 20

プロパンスルトンなどによってN-スルホアルキル化して8種類の水溶性ニトロソフェノール誘導体を合成し,吸光光度分析試薬としての有用性を検討した.これらの試薬は酸性溶液で安定であり,弱酸性ないしアルカリ性で鉄(II)と反応して濃緑色の水溶性錯体を生成する.最も高感度な2-ニトロソ-5-(N-プロピルーIV-スルホプロピルアミノ)フェノールの鉄錯休は1:4(金属イオン:試薬)の錯体組成を示し,吸収極大波長756nmでのモル吸光係数は4.5×10^4 dm^3 mol^<-1>cm^<-1>である.鉄濃度2×10^<-7>Mから1×10^<-4>Mの範囲でベールの法則が成立し,鉄1×10^<-5>Mにおける変動係数(n=5)は1.2%である.等モル量の銅,コバルト,ニッケル,亜鉛,カドミウム,アルミニウム,カルシウムは妨害しない.
著者
野澤 慎太郎 笠間 裕貴 鈴木 忠直 安井 明美
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.179-183, 2007-03-05
被引用文献数
6

改良デュマ法によるしょうゆの全窒素分定量法を検討した.11種類のしょうゆを試料として,その0.5gを石英ボートに量り取り,高純度酸素を助燃ガスとして870℃で燃焼して生成したNO_xの酸素を銅還元管で除去し,熱伝導度検出器で検出してそのピーク面積を求めた.まず,全窒素分を2.000%に調製したリジン水溶液を分析した結果,2.002%であり,理論値とほぼ一致した値が得られた.また,改良デュマ法と酸分解条件を最適化したケルダール法との室内再現性を一元配置分散分析で検証した結果,各法で1試料に有意差が認められたが,これらの日間及び日内変動はHorwitz式から求めた併行相対標準偏差より低く,実質的な日間差はないと判断した.更に,Welchのt検定により両法の測定結果の差の有意差を確認した結果,11試料中6試料について有意差が認められたが,それらの平均値の差がHorwitz式から求めたケルダール法での併行許容差内であり,実質的な有意差はないと判断した.改良デュマ法はケルダール法より併行精度が高く,両分析法の相関性もR^2=0.9999であった.以上の結果から,改良デュマ法はしょうゆの全窒素測定に適用可能であることを確認した.
著者
古崎 睦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.829-834, 1999-09-05
被引用文献数
5 3

ホタテ貝の中腸せん(腺)(ウロ)を焼却処理すると, 含有重金属の中で比較的低沸点のカドミウムは一部気化すると考えられる. そこで, ウロを焼却したときの(1)焼却残留物, (2)焼却管壁析出物, (3)焼却飛灰, 及び(4)排ガス吸収液中の鉄, 銅, 亜鉛, カドミウムの量を調べ, 焼却過程におけるこれらの物質収支を検討した. 湿ウロは1kg当たり平均約20mgのカドミウムを含んでいるが, これを空気中900℃ で加熱するとその約57%が気化した. 気化したカドミウムの多くは焼却管壁に析出するが, 飛灰からも16%程度回収された. 一方, 窒素中で加熱した場合の残存率は10%程度で, 管壁から約88%, 飛灰から6.0%, 吸収液から1.8%のカドミウムが検出された. カドミウム金属を同条件で加熱した場合には, 空気中では酸化のみが進行し, 窒素中ではほぼ100%が気化した. また, 焼却残留物質量/ウロ質量で表される灰化率が大きいほど, すなわち焼却の進行が不十分であるほどカドミウム気化率が大きくなる傾向が認められた. これらの結果より, ウロを焼却した際のカドミウムの気化は, 有機成分の燃焼時に局所的な酸素不足雰囲気が形成されることによって進行すると考えられる.
著者
神田 武利
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.175-192, 2010 (Released:2010-04-29)
参考文献数
35

シリカをシリコーンポリマーでコーティングした後,二重結合を有する各種化合物を白金触媒下で反応させることにより,ポリマーコート型カラム充填剤を合成した.ポリマーコーティングは,シリカの細孔をつぶすことなく,約7 Åの薄膜で行われていた.本充填剤は,シリカ系カラム充填剤の特長である分離性能をもつと同時にアルカリ性条件下でも使用可能であり,シリカ系とポリマー系充填剤の両方の利点を有していた.またポリマーコーティングは,残存シラノール基の影響を最小限に抑制し,ポリマーコーティング量とC18導入量を最適化したポリマーコート型C18充填剤は,メタノール及びアセトニトリル系の中性移動相下においても,強塩基性化合物であるアミトリプチリンのピーク形状は良好であった.ポリマーコート型カラム充填剤はシリカ基材の表面の活性をコーティングによって不活性化しているため,一般的な化学結合型カラム充填剤と比較して,ロット再現性も良好であった.
著者
板橋 豊 河野 真子 青山 倫也 中島 寿昭
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.375-380, 2000-06-05
被引用文献数
3 2

必須脂肪酸の一つであるγ-リノレン酸のトリアシルグリセロール(TG)分子中での結合位置を決定する簡便な方法を検討した。糸状菌Mucor circinelloides及びその変異株の脂質からγ-リノレン酸高含有TGを分離し,これをグリニャール分解してsn-1,2-及びsn-2,3-ジアシルグリセロール(DG)のエナンチオマー混合物を得た。この混合物を3,5-ジニトロフェニルウレタン誘導体に変換した後,(R)-1-(1-ナフチル)エチルアミンを不斉部位とするキラル固定相を装備したHPLCを用いて光学分割し,純粋なsn-1,2-DG(I)及びsn-2,3-DG(II)画分を得た。IとII及びTGの脂肪酸組成からTG分子中のsn-1,sn-2及びsn-3位におけるγ-リノレン酸の分布を算出した。また,IとIIを逆相HPLCで分析して,それぞれの分子種組成を明らかにした。得られた結果から計算により求めたTGの脂肪酸組成はオリジナルTGのそれと近似したことから,本法の正確さを良好であると判断された。Mucor circinelloidesの産生するγ-リノレン酸はTG分子中のsn-3位に最も多く存在し,次いでsn-1位,そしてsn-2位であり,大きく偏って存在することが明らかとなった。
著者
宮内 俊幸 黒木 和志 石川 徳久 高橋 誠 盛 秀彦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.9-15, 2007-01-05
被引用文献数
4

ブナおが屑(くず)をホスホン酸ジフェニルーホルムアルデヒド樹脂で化学修飾して発煙硫酸処理に耐えられる木質バイオマスー合成高分子複合体を合成して,これを基体とするスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂を得た.ブナおが屑を強化するのに必要なホスホン酸ジフェニル樹脂は原料の仕込み濃度で約14wt%以上あれば十分であり,原料仕込み濃度で約75wt%ブナおが屑を基体とするスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂を得ることができた.交換容量は2.4meqg^<-1>-R(乾燥樹脂)と良好な値であり,交換速度も速く約5分以内で平衡に達し,そのため高速でのイオン交換が可能であった.密度は1.18g mL^<-1>であり,水溶液中で浮くという欠点もなくカラム操作に十分に対応できるイオン交換樹脂であった.本交換樹脂は塩酸溶液あるいはメタノールー塩酸混合溶液を用いると,Li^+-K^+, Mg^<2+>-Ca^<2+>-Sr^<2+>-Ba^<2+>の相互分離,更にはCd^<2+>-Zn^<2+>, Cd^<2+>-Co^<2+>あるいはCd^<2+>-Ni^<2+>などの相互分離に利用できた.
著者
三井 利幸
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.811-817, 2008 (Released:2008-11-17)
参考文献数
6
被引用文献数
1

主成分分析法による混合物の非分離定量法は,既に主成分回帰分析(PCR)に応用されているが,PCRでは3種類以上の化合物が混合している場合には,混合比の明らかな多数の既知試料で検量線を作成しても精度の良い定量結果を得ることは困難である.それに対し,混合している可能性のある各化合物の純品と未知試料で主成分分析を行い,得られた最終主成分の既知試料の主成分得点を用いて定量する本方法は,複数の化合物が混合している未知試料中の各化合物の混合比を精度良く定量できる方法である.本方法を質量分析の測定値に応用したところ,有機溶媒中の各化合物の混合比を極めて精度良く定量できることが明らかとなった.更に,本方法を回収された有機溶媒の産業廃棄物に応用したところ,迅速に精度良く定量できた.
著者
長谷川 章^[○!R] 山中 実
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.657-662, 1984-12-05
被引用文献数
3

既報において,従来,分析機器への適用が困難であった分相滴定を,はっ水性の多孔質テフロソ分離脱を用いた連続抽出を利用することで,光度滴定への適用を可能にした.既に,陰イオソ界面活性剤の中でアルキルスルホン酸塩及びアルキル硫酸塩の定量について報告したが,本報では,更にせっけんヘの適用を検討した.試料(せっけん)に一定過剰量の陽イオン界面活性剤(ハイアミン)を加え,生成するイオン対は激しく振り混ぜることでクロロホルムに抽出する.その後,陰イオン界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を標準溶液とし,残存するハイアミンを滴定することで,せっけんを定量する.いわゆる逆滴定法である,終点の検出には,分相指示薬を使用才るが,柿々検討した結果,陰イオン性色素であるジクロロフルオレセイソ(DCF)が優れていた. UCFは,滴定前にハイアミンの一部とイオン対を生成し,クロロホルムに抽出されているが,このイオン対は終点近傍においてSDSによる滴定とともに十分な振り混ぜを繰り返すことで,DCFは水相に遊離する.すなわち,クロロホルム中のDCFを比色することで滴定の終点を検出することができる.本法によれば,炭素鋼長C12以上の脂肪酸から成るせっけんであれば,ほぼ100%の定量結果を得ることができるが5 Cfi,Cg及びCloの比較的鋼長の短いせっけんでは,それぞれ0%, 26.3%,85.4%と定量性は悪くなっている.しかし,これらの低核酸を含むせっけんについても,それぞれの定量結果を考慮した補正平均分子量を使用することで,いずれも正確な定量が可能であることを確認した.又,滴定精度帖約1.5mMせっけん溶液で相対標準偏差0.34%と良好であった.なお,本滴定装置による所要時間は,試料1件につき15〜20分であり,連続自動分析も可能である.
著者
室住 正世 中村 精次 横山 裕之 茶木 一寿 津谷 直樹 福田 薫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.759-765, 1986-08-05
被引用文献数
1

^<107>Ag,^<116>Cd,^<65>Cu,^<61>Ni,^<296>Pb,^<203>Tl,^<68>Znの7安定同位体をスパイク(標準添加法で使用するトレーサー)として用いる水中の銀,カドミウム,銅,ニッケル,鉛,タリウム,亜鉛の同位体希釈表面電離質量分析法による同時定量法について報告する.水とは水道水,蒸留水,サブボイリング蒸留法によって得た純水で,各成分の濃度は10^<-6>g kg^<-1>ないし10^<-11>g kg^<-1>である.検出限界は成分によって相違があるが,10^<-12>gないし10^<-15>gであり,^<109>Ag/^<197>Ag,^<114>Cd/^<116>Cd,^<63>Cu/^<65>Cu,^<58>Ni/^<61>Ni,^<208>Pb/^<296>Pb,^<295>Tl/^<203>Tl,^<66>Zn/^<68>Znの測定精度は9回以上の繰り返し測定値の相対標準偏差としてスパイクで0.5%,水試料では1%であった.この方法は単に水試料に限らず無機材料一般に応用できるが,ここでは超微量分析の見地から述べる.
著者
田村 善蔵 森岡 朋子 前田 昌子 辻 章夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.339-346, 1994-04-05
被引用文献数
5 24

フルオレセイン(F)とスルホンフルオレセイン(SF)のpH0からpH10までの5×10^<-6>M水溶液の吸収スペクトルを解析した.SFはH_2SF, HSF^-及びSF^<2->からなり, 酸HAの解離定数をK_a=α_<H+>[A^-]/[HA]とするとき等吸収点の波長における吸光度からpK_<a1>=3.10,pK_<a2>=6.25であることが分かり, さらにHSF^-のスペクトルが求められ, 三つの分子種がすべてキノノイド構造をもつと推定された.FはH_3F^+, H_2F, HF^-及びF^<2->からなり, 二つの等吸収点に共通な波長における吸光度からpK_<a2>=4.20であることがわかり, さらに試行錯誤によってHF^-とH_2FのスペクトルならびにpK_<a3>=6.39とpK_<a1>=2.24が求められた.またH_2Fが一つのラクトノイド分子種と二つのキノノイド分子種の10 : 3 : 2の混合物であると推定された.
著者
本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.147-170, 1989-04-05
被引用文献数
29 33

イオン会合を利用する新しい分離法と分析法の開発に関する研究を行った。イオン会合の概念をより明確にするための基礎検討を行い、イオン会合のしやすさ,抽出のされやすさについて考察した。イオン会合の様式を静電引力型と疎水構造型に分け、それぞれ静電引力型イオン会合性試薬と疎水構造型イオン会合性試薬を対応させた。疎水構造型イオン会合性試薬を用いる抽出分離法において、イオン会合体の抽出性に及ぼす抽出溶媒の影響、イオン会合性試薬の影響について検討し、それらを基に抽出定数 (log K_<ex>)の推算法について考察した。四塩化炭素を基準にした場合の溶媒の抽出能(イオン会合体の抽出のしやすさ)は万丁値と良好な直線関係を示す。抽出定数はlog K_<ex>=C+A(C:対陽イオンの抽出性の尺度、A:対陰イオンの抽出性の尺度)で表されるものとし、各種陽、陰イオンのC値、A値を決定した。又イオン骨格と置換基の寄与(π値)を用いるC値、A値の概算法も示した。log K_<eX>を推算し、あるいは実測値を用いて、新しい抽出分離法と吸光光度法を設計し、実際にも有用な方法多数を'開発した。溶媒抽出を用いない方法についても検討した。水溶液での疎水構造型イオン会合体生成に基づく新規定量法として、酸一塩基反応を伴う吸光光度法2方法を検討した。一つはイオン会合体の可溶化現象を用いるもので、リン、ケイ素の定量例が示された。もう一つはイオン会合体のミセル抽出現象を用いるもので、アルキルアミン、第四級アンモニウムイオンについての検討例を示した。更に、イオン会合の概念が適用できる例として、逆相分配クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーによる疎水構造型イオンの分離定量例も示した。
著者
河本 美津子 荒川 秀俊 前田 昌子 辻 章夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.537-542, 1991-10-05
被引用文献数
3 1

還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を高感度に測定することを目的として酵素サイクリング法によりNADHを増幅させ, 化学発光法で測定する方法を検討した.酵素サイクリングに用いた酵素反応系はリンゴ酸デヒドロゲナーゼ/アルコールデヒドロゲナーゼ系で, 生成したリンゴ酸を過剰量のNADP^+とMalic enzymeによりNADPHとし, 既報の方法に従ってイソルミノール/ミクロペルオキシダーゼによる化学発光法で測定した.最適条件下でのNADHの検量域は0.01〜5pmol/assayで, 酵素サイクリングを用いない既報と比較して約1000倍感度が向上した.本法をアルカリホスファターゼの酵素活性測定に適用したところ0.036〜18amol/assayの検量域で既報と比較して約50倍感度が向上し, その精度は3.9〜6.3%(相対標準偏差)であった.更に本法を17α-ヒドロキシプロゲステロン(競合法)及びヒトじゅう毛性ゴナドトロピン(サンドイッチ法)酵素免疫測定法に応用した.
著者
吉村 忠与志
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.37, no.11, pp.612-618, 1988-11-05
被引用文献数
7 2

複数種の半導体ガスセンサーを集合させたシステムを作り,そのセンサー応答を計測し,それらのデータをパターン認識法を用いて解析することにより,化学物質のにおい識別を試みる研究を進めていく中で,計測データの精度管理は重要な研究ポイントである.本報告において,化学物質のガスに対して多少なりとも選択性を有している市販の半導体ガスセンサーを8種類複合させて用いた場合の同時計測データの精度管理とセンサーの対ガス選択性の向上についてその成果を報告する.センサーシステムの雰囲気条件の設定が重要である.個々の設定条件の中で,化学物質のガスを注入した後(サンプリングごとに)に行うセンサーの洗浄には,エアブラシ法を開発し実用化した.この方法により,ガスセンサーのエアレベル(センシング・ベース)を一定に確保することが可能になり,個々の異種センサーを一定の条件下で同時計測に用いるうえで,有効な再現性を実現することができた.その結果,客観視のむずかしいにおいの識別のために有効なパターンベクトルを得ることができるようになった.
著者
長島 潜 折田 昭三 窪山 和男
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.378-382, 1989-08-05
被引用文献数
8 3

サプレッサー型のイオンクロマトグラフ(IC)に親水性ポリメタクリレート系カラムを用い,加温条件下での溶出挙動を検討したところ,ヨウ化物を含むハロゲン化物及び硫酸イオンを良好に分離することができた.この方法と酸素フラスコ燃焼法とを組み合わせるか,あるいは試料溶液をそのまま導入して解離型のみ測定する方法により,有機化合物中の4種のハロゲン及び硫黄の一斉分析法を確立した.燃焼の際の吸収液には希アルカり溶液を用い,4種のハロゲン分析では少量の抱水ヒドラジンを,ヨウ素を除くハロゲン及び硫黄の分析には過酸化水素をそれぞれ添加した.本法の分析結果は許容誤差 (±0.3%)以内であり,有機元素分析法として十分満足できるものであった。
著者
五十嵐 淑郎 荒井 貴史 川上 貴教
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.1183-1188, 1994-12-05
参考文献数
11
被引用文献数
7 13

水-酢酸-クロロホルム三成分系において, pH依存相分離現象を利用した新しい均一液-液抽出法を開発した.まず, 三成分溶媒系の相分離における最適操作条件を決定した{クロロホルム230μl(0.66vol%)と酢酸2cm^3(5.71vol%)を含む均一水溶液に水酸化ナトリウム水溶液([NaOH]_T=1.03mol dm^<-3>)を添加し相分離を行う.最終体積 : 35cm^3}.又, あらかじめ添加するクロロホルムの量を調節することにより, 水相(V_w=35cm^3)と析出相(V_o=3.5μl)との体積比を一万倍とすることができた.モデル溶質としてα, β, γ, δ-テトラキス(4-ピリジル)ポルフィンを選定し, 本法を適用した結果, V_w/V_oが700のとき, 分配比(D)は5600及び抽出率(E)は88.9%であった.更に, 本法と8-キノリノール比色法を組み合わせた均一液-液抽出法では, 飲料水中の鉄の定量に対し, 良好な結果が得られた{鉄(III)-8-キノリノール錯体 : V_w/V_o=700のとき, D=1230及びE=63.7%}.
著者
橋本 哲夫 本間 悟 兼田 朋廣
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.147-154, 2002-03-05 (Released:2009-03-13)
参考文献数
15

爆心地からほぼ500m地点で採取した長崎被爆瓦の溶融表面に白雲母を検出材として固定し, 原子炉中性子照射に基づくフィショントラック (FT) を観測した. その結果, 残留核分裂核種を含む微粒子 (残存ホットパーティクル, HP) に由来する典型的な星状FTを裏面に比較して数十倍の高密度で観察できた. 20個の星状FT解析から0.72~5.7×107Pu原子がHP中に残存していると見積もれた. 更に, FT長が短いことを基に, HPが瓦表面から少々深い箇所に存在していることを確認した. 一方, 爆心から700mに位置する広島城被爆瓦からは, 石英粒子を抽出し, 再現法を用い青色熱ルミネセンス (BTL) 測定により, 13.0Gyの被曝線量を評価できた. 次いで, 長崎被爆瓦表面のルミネセンスの熱処理特性変化から, 約0.5mmの溶融被膜を除去した部位でも, 1100℃以上の被熱を受けていることを明らかにした. したがって, 残存HPはこの被熱温度をはるかに超えた融点の物質から成っていると判断した.
著者
及川 真司 Song Sung-Jun 前山 健司 岸本 武士 戸村 健児 樋口 英雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.551-557, 2003-08-05
参考文献数
10
被引用文献数
4 8

海洋環境における放射能モニタリングに海産生物試料を応用することを視野に入れ,日本近海で採取したスルメイカ中に含まれる13元素(V, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Ag, Cd, Cs, Ba, Pb)を,前処理後,誘導結合プラズマ質量分析法によって定量する方法を検討した.このうち,放射能モニタリングを行う上で特に重要であると考えられる9元素(V, Mn, Fe, Co, Cu, Zn, Rb, Ag, Cd)については,中性子放射化分析法によって分析値を比較した.その結果,両者は誤差の範囲内で一致し,誘導結合プラズマに特有な分子イオン形成やマトリックス効果等の影響は見られず,誘導結合プラズマ質量分析法による定量値の妥当性を確認した.この方法で1996年に千葉・銚子沖で採取したスルメイカの可食部,骨部,胃,肝臓及びその他の部位に含まれる上記13元素を定量し,海水に含まれる標準的な濃度と比較することによって濃縮係数を算出した.定量した重金属元素のうち,Mn, Fe, Co, Cu, Ag, Cd及びPb等の肝臓への濃縮が顕著であることが分かった.また,同じ部位であってもZn, Rb及びCsは濃縮係数に差がほとんど見られなかった。一方,その他の元素は同じ部位であっても濃縮係数に差が見られた.本研究で得られた結果から,回遊性のスルメイカが海洋環境の重金属や放射能汚染のための環境影響評価に利用できる天然の指標生物になると考えている.
著者
保田 健二 田口 正 田村 正平 戸田 昭三
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.442-445, 1977-07-05
被引用文献数
2

テフロン・ポーラス・フィルムを用いた小型の抽出装置を考案し,生体試料中のセレンをDDTCで四塩化炭素又はシクロヘキサン中に抽出して,炭素炉原子吸光法で定量した.生体試料の湿式灰化には硝酸と過酸化水素水を使用し,セレン(VI)の還元には濃塩酸を用いた.本法の検量線は0〜40ng/mlで良好な直線性を示し,1%吸光感度は,.0.9ng/ml,検出限界は4.0ng/ml,抽出操作を含めた測定の変動係数は約9%であった.本法をNBSの標準試料とIAEAモナコ海洋研究所より研究室間分析のために供試されたカキの粉末に適用し,それぞれ良好な結果が得られたので,フトツノザメの筋肉中のセレンを定量してみたところ,0.28μg/g(湿重量当たり)という値が得られた.