著者
蔵楽 正邦 大倉 与三郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.25, no.11, pp.790-794, 1976-11-10
被引用文献数
1

有機リン系農薬4成分(パラチオン,メチルパラチオン,EPN及びメチルジメトン)の同時抽出,クリンアップ及びガスクロマトグラフ定量法を確立した.すなわち,10%クロロホルム含有n-ヘキサンで抽出し,濃縮後ガスクロマトグラフ(FPD検出器)に注入し,上記4成分を同時定量する.本法によれば,水質試料200mlにつき,定量下限は0.001ppm,又はそれ以下である.又,底質,産業廃棄物,工場排水などの汚濁の激しい試料の場合には,上記の濃縮液を活性化フロリジルカラムに注入し,2%アセトン含有n-ヘキサン,次いでアセトンーn-ヘキサン混合溶媒(1:2)で順次展開することによりクリンアップし,脱水,濃縮してガスクロマトグラフに注入する.固体試料(10〜20)g,排水200mlについてクリンアップ操作を経た場合の回収率は,前三者で(85〜95)%,メチルジメトンで(55〜60)%であった.
著者
武者 宗一郎 越智 紘
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.202-207, 1965-03-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

滴下法によって展開溶媒を供給して展開を行なう円形薄層クロマトグラフィー用の展開装置を考案・試作し,その適用例としてアミノ酸類の分離および同定のための諸条件を検討した.吸着層には厚さ0.2mmのシリカゲルおよびアルミナの円形クロマトプレートを用い,展開溶媒は前者にはフェノール-水(75:25,w/w),後者にはn-ブタノール-氷酢酸-水(40:10:50,v/v)を使用した.試料溶液は円形クロマトプレートの中心かあるいは半径10mmの円周上の数点に点じ,その中心へ展開溶媒を供給して展開後ニンヒドリンで発色すれば,各アミノ酸は同心円状もしくは弧状の細い分別帯を与える.本手法を数種の天然物質中に含有されるアミノ酸類の定性分析に応用し,展開距離約90mmでほぼ満足に応用可能なことを知った.展開所要時間は約180分であった.
著者
斎藤 守正
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.598-602, 1986-07-05
被引用文献数
2

スパークイオン源質量分析法において,対極に金,白金,銀,タンタル,タングステン,アルミニウム細線を用いるプローブ法での相対感度係数(RSC)(Fe=1)について検討した.用いた試料は鉄鋼,銅,アルミニウム標準試料である.各プローブ法で得られたRSCの値を比較すると,プローブ間では大きな差がないこと,又プローブ法のRSCの値は通常の2本の電極でスパークさせる固体法で得られた値と良い一致を示すことが分かった.本法の精度は固体法の精度より5〜13%良くなったが,固休法同様マトリックスの影響があること,鉄鋼中のケイ素,チタンは偏析のため精度が悪くなることがあった.しかし本法は微小部の分析,精度向上に役立つことが示された.
著者
高橋 純一 山田 憲幸
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1257-1277, 2004 (Released:2005-03-28)
参考文献数
87
被引用文献数
9 17

誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)のバックグラウンドスペクトルには,試料やプラズマガスに起因する種々の多原子分子イオンが観測される.微量定量分析を妨害するこれらのイオンを除去する上で,質量分析計の手前にセルで囲ったイオンガイドを設け,気体分子とイオンとを衝突させる手法(collision/reaction cell)が非常に有効であることが示された.Collision/reactionガスの選択,セル内で副成するイオンの除去法,イオンの運動エネルギーの制御の仕方などにいろいろなバリエーションが見られ,少しずつ方式の異なる装置が市販されている.それらの原理,使用に際しての最適化,種々の試料への応用について概観する.試料への応用を通じて,期待される性能,あるいはその限界について紹介する.
著者
大熊 誠一
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.21, no.13, pp.188R-195R, 1972

鑑識化学分析は司法裁判に関係ある事件の解決に応用される分析化学であるため,裁判化学ともいわれている.したがって,分析の対象となる物質(物体)は,きわめて広範囲となるため,その分析内容は薬品分析,農薬分析,生化学分析,各種機器分析などに関係してくることが多いので,用に臨んで,それらの文献を参照し応用することが必要である.今回は1968年までの文献を収載した前回の総説に続いて1969年から1971年の間に発表された鑑識化学分析関係の文献を集録整理した.<SUP>1)</SUP>裁判化学の教科書が新しく出版<SUP>2)3)</SUP>されたが,機器分析法,薬毒物の生体内代謝,生体試料からの薬毒物の分離法などが可能なかぎり取り入れてあるので実務者,研究者にとっても有用である.裁判化学,毒物学に関係ある薬物の単離確認法<SUP>4)</SUP>,薬物の微量結晶検査法<SUP>5)</SUP>,人体臓器中の毒物検出法<SUP>6)</SUP>,揮発性毒物の系統的分析法<SUP>7)</SUP>などの単行本が発刊され,また,毒物の分析化学便覧<SUP>8)</SUP>が出版された.裁判毒物学におけるガスクロマトグラフィー(GC)のシンポジウム議事録が単行本<SUP>9)</SUP>として出版され,毒物学におけるクロマトグラフィーの総説<SUP>10)</SUP>が発表されている.原子吸光分析の基礎とそれの生物試料などへの応用を述べた単行本<SUP>11)</SUP>も出版された.質量スペクトル分析法(MS)の裁判化学への利用を記載したシンポジウム記事<SUP>12)</SUP>があり,また,各種分析機器<SUP>13)</SUP>,各種分光作学的方法<SUP>14)15)</SUP>の鑑識化学分析への応用を記述した総説,解説もある.臨床化学に関係のある薬毒物分析の総説<SUP>16)</SUP>も参考になるものと思われる。各種薬毒物の毒物学的研究の交献集<SUP>17)</SUP>,毒物学の単行本<SUP>18)</SUP>,便覧<SUP>19)</SUP>,雑誌<SUP>20)</SUP>なども出版されている.
著者
中村 靖 小林 義男
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.224-227, 1989-05-05
被引用文献数
2 3

ケイ素を過剰のモリブデン酸塩と反応させ、モリブドケイ酸を生成し、この錯体中のモリブデンを誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS法)で測定して間接的にケイ素を定量する方法を検討した。モリブデン酸とモリブドケイ酸との分離は、ScphadexG25(デキストランをエピクロロヒドリンで三次元的に架橋したゲル)を用いた。このゲルは、モリブドケイ酸をよく吸着するが、モリブデン酸は全く吸着しない。ゲルに吸着したモリブドケイ酸は、アンモニア水で溶離してICP-MS法で測定する。ヘテロポリ酸を生成する元素のうち、ヒ素はゲルクロマトグラフィーで分離除去され、リンはシュウ酸を添加古ることによって影響を避けることができるが、ゲルマニウムはあらかじめ分離しておく必要がある。本法を用いて高純度銅中のケイ素を定量したが、定量下限は20ppbであった。
著者
奥野 雅雄 中川 宏 宗吉 史昭 小硲 真智子 小篠 薫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.531-536, 1977-08-05
被引用文献数
1

汚でい中の6価クロム{クロム(VI)}は,鉱酸などを用いることなくEDTAを用いてクロム酸塩を溶出し,直ちにジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(DDTC)と錯体を形成させメチルイソブチルケトン(MIBK)に抽出することができる.汚でい中に含まれる難溶性クロム酸塩をアンモニアアルカリ性溶液中においてEDTAで溶解し,結合金属イオンを錯化溶出してクロム(VI)を水溶化する.これをpH5付近でDDTCなどの還元剤で発生機状態のクロム(III)にした後,過剰のDDTCと錯体を形成させ,これをMIBKに抽出する.MIBK相を揮散させた後硝酸で分解して原子吸光分析(少燃料フレーム)することにより,共存物の影響をほとんど受けずに定量を可能にした.なお,本法は(10〜5)%の変動係数で汚でい中のクロム(VI)を迅速かつ簡便に定量できる.
著者
大黒 鉱
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.361-365, 1975-06-10
被引用文献数
1

空気-アセチレン及び空気-水素フレ-ムを用いるクロムの原子吸光分析において、数種類のクロム化合物より調製した標準溶液が、同じクロム濃度にもかかわらず異なった感度を示した。各クロム化合物の水溶液での感度の大きさは次のとおりであった。空気-アセチレンフレーム:クロム酸アンモニウム>重クロム酸カリウム>塩化クロム>クロム酸カリウム。 空気-水素フレーム:重クロム酸カリウム>クロム酸アンモニウム>クロム酸カリウム>塩化クロム。 このような感度差は、クロムに対して大きな増感干渉を示す塩化アンモニウムの添加によって補正することができた。その結果、検量線作成用の標準溶液と試料溶液にそれぞれ塩化アンモニウムを添加することにより、いずれのクロム化合物も標準として用いることが可能となり、また数種類の異なったクロム化合物が共存する試料中の全クロムの正確な分析も容易にできるようになった。
著者
高田 芳矩 伊藤 正人 伊藤 三男 岩渕 等
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.435-441, 1994-06-05
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

試料溶液を連続的にカラムに導入し, 純粋な溶離液をパルス状に注入して行われるクロマトグラフィー(ベイカントクロマトグラフィーと呼ぶ)の適用を検討した.装置は通常のノンサプレッサー型のイオンクロマトグラフを使用した.試料はあらかじめ溶離液と混合し, これを連続的にカラムに流しておき, ここにインジェクションバルブから試料成分を含まない溶離液をパルス状に注入した.先端分析, 後端分析及びベイカントイオンクロマトグラフィーにおける目的イオンの保持容量は目的イオン及びマトリックス濃度に影響され変動した.ベイカントビークの面積は目的イオンの濃度及びパルス注入する溶液の濃度に比例した.この手法は試薬などに含まれる微量不純物分析に適すると考えられた.
著者
黒田 正範 工藤 清勝
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.174-178, 1981-03-05
被引用文献数
2

薄層クロマトグラフィー(TLG)によるビスフェノールA系エポキシ樹脂の分離分析に及ぼす溶媒の極性と担体の粒度の影響を検討した.TLGで分離した各成分の基本構造式のnはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定し,それぞれn=0からn = 7に対応することを確かめた.TLGの分離条件をグラジェント法による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に適用し,紫外部に吸収のないテトラヒドロフラン(THF)-クロロホルム系の吸着モードHPLCによりパターン分析ができることが分かった.
著者
芳川 満輝 内田 亮 黒木 巽 三熊 敏靖 蛭田 勇樹 永田 佳子 金澤 秀子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.173-179, 2016-04-05 (Released:2016-05-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Recently, the need for the analysis of psychotropic drugs has increased. With the revision of the medical treatment fees in FY2014, facilities that can be calculated in those case that could identify the drugs responsible for acute drug poisoning of a patient by instrumental analysis, including HPLC analysis, were expanded from only advanced emergency medical care centers (30 facilities nationwide) to emergency medical care centers (263 facilities nationwide). Since the responsible drugs can include barbiturate drugs used as antiepileptics and tricyclic drugs used as antidepressants, methods to analyze psychotropic drugs are needed. Moreover, in emergency medicine, it is necessary to quickly identify the cause of acute drug poisoning. Ultra-high-speed HPLC has become increasingly popular in analytical research fields. In this study, we investigated the analysis of psychotropic drugs using an ultra-high-speed HPLC system. The HPLC utilized in this study was a ChromasterUltra Rs system (Hitachi, Tokyo, Japan) equipped with a photodiode array detector. Using a LaChrom Ultra C18 column (particle size; 1.9 μm) as the analytical column, rapid and simultaneous analysis of 14 psychotropic drugs (five barbiturates, three benzodiazepines, five tri- and tetracyclic antidepressants, and trazodone) was achieved within 5 min.
著者
藤原 鎮男 荒田 洋治 渡部 徳子 石塚 英弘 磯谷 順一 古田 直紀 山崎 昶
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.23, no.13, pp.88R-111R, 1974

本進歩総説は前回に続き, 1972年初めから1973年末 (一部1974年のものも含む) までの文献を採用した.磁気共鳴に関する論文は近年その数を著しく増し (1973年にはNMR約8000件, ESR約4000件), しかもきわめて広い範囲にわたっている.したがってこれらの文献を漏れなく集録することはもはや不可能であり, また単に測定法のごく一部として磁気共鳴を利用したものまで含めて網らすることは意義があるとは考えられない.この点を考慮し, 本総説では重要と考えられる項目にっいて重点的に文献を集録する.なお, 合成高分子については別に項目があるのでここでは省略する.
著者
鈴木 将司 宮内 俊幸 水野 佑哉 石川 徳久
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.33-38, 2016-01-05 (Released:2016-02-06)
参考文献数
21

ケナフ中のセルロースを濃塩酸で加水分解し,生成した還元性末端基(アルデヒド基)を過マンガン酸カリウムで酸化することによってカルボキシル基を有する弱酸性型陽イオン交換体を得た.このイオン交換体の交換容量は2.80 Cu(II) meq g-1– Rと高く,吸着速度も速く30分以内で吸着平衡に達した.また,金属イオンの吸着はpH=2.5以上から始まり,従来のカルボキシル基型イオン交換体と比較し低pH領域からの吸着が認められた.カラム法を用いて本交換体に対する銅イオン及び白金族金属イオンの吸着挙動を調べたところ,銅(II),ルテニウム(III),ロジウム(III)及びパラジウム(II)は吸着するが,他の白金族金属イオン,すなわちイリジウム(III),オスニウム(IV)及び白金(IV)は吸着しない.また,カラム内に保持された白金族金属イオンは塩酸溶離液でCu(II) – Pd(II) – Ru(III)及びCu(II) – Rh(III) – Ru(III)の三元分離ができた.さらにノートパソコン基板を王水処理し,その中に存在する銅(II)及び白金族金属イオンの回収について検討した.
著者
佐藤 朋覚 熊谷 昌則 天野 敏男 小川 信明
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.653-660, 2003 (Released:2004-01-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1 6 2

携帯可搬型の近赤外分光分析装置を用いて,清酒(日本酒)のスペクトルを測定し,ケモメトリックスを用いて判別分析を行い,その分類に対して化学的な解釈を加えた.近赤外スペクトルでの主成分分析で得られた波長寄与率スペクトルから,第1主成分(PC1)はアルコールの -CH3,-CH2-,R-OHの寄与が高く,第2主成分(PC2)はタンパク質の -NH2,-CONH2,-CONH-,-CH3,-CH2- の寄与が高く,第3主成分(PC3)はデンプンの -CH3,-CH2-,-OHの寄与が高いことが推定できた.近赤外スペクトルでの違いが,PC1では純米酒とそれ以外に,PC2では大吟醸酒とそれ以外に,PC3では純米大吟醸酒・本醸造酒,普通酒・大吟醸酒,純米酒にそれぞれ分類できることが分かった.携帯可搬で現場測定が可能なPlaScan-SHは清酒の判別に有用である.
著者
西浜 章平 吉塚 和治 SCAMPAVIA Louis RUZICKA Jaromir
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, 2006

掲載論文の取り消しについて<br> <br> 取消論文: 西浜章平,吉塚和治, Louis Scampavia and Jaromir Ruzicka: 分析化学(<i>Bunseki Kagaku</i>), <b>52</b>(12), 1187-1192 (2003). "マイクロシーケンシャルインジェクション分析法の最適化" (Received 16 July 2003, Accepted 10 September 2003)<br><br>「分析化学」編集委員会及び著者は、上記論文が先に投稿された下記の論文と重複していることから取り消すことに決定致しました。したがって、上記論文を今後引用することのないようにご注意ください。 <br><br> 先行論文: Syouhei Nishihama, Louis Scampavia and Jaromir Ruzicka: J. Flow Injection Analysis, <b>19</b>(1), 19-23 (2002). "μSI: Optimization of reagent based chemicals chloride in Lab-on-Valve system." (Received 9 January, 2002, accepted 28 February, 2002)
著者
中町 鴻 廣瀬 正明 木川田 喜一 廣瀬 勝己 岡田 往子 鈴木 章悟 本多 照幸
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.589-594, 2015-08-05 (Released:2015-09-03)
参考文献数
12
被引用文献数
4

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及び,それにより発生した津波によって東京電力福島第一原子力発電所(以下,福島原発)は大きな被害を受け,環境中に多量の放射性核種を放出した.その影響で関東地方においても高濃度の放射性セシウム(134Cs,137Cs)が大気中でも検出された.本研究では大気粒子状物質(APM)に着目し,神奈川県における福島原発事故由来の放射性セシウムを長期的に観測することで,APM中の放射性セシウム濃度の経時変化並びに,大気環境中における放射性セシウムの存在形態について検討した.その結果,大気中の放射性セシウムの放射能濃度は2011年3月から2011年9月にかけて105分の1にまで減少したものの,その後は緩やかな減少にとどまり,2014年3月時点でも1.0 × 10-5 Bq m-3の放射能が検出されていることが明らかとなった.大気環境中における放射性セシウムの存在形態については,粘土鉱物中に強く固定されてしまう土壌中の放射性セシウムとは異なり,水溶性成分のものが50% 以上の割合を占め,土壌等のほかの環境中の放射性セシウムに比べ移動能が高いことが分かった.
著者
海老原 寛 吉原 賢二
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.48-53, 1961-01-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1

8-hydroxyquinoline (以下オキシンと略す)のモリブデン,インジウムおよびタングステン塩のSzilard-Chalmers効果について調べた.無水のオキシン塩をJRR-1(中性子束密度~1011n/cm2・sec)中で中性子で照射をし,これをクロロホルムに溶解してから種々のpHの緩衝溶液とふりまぜ,Szilard-Chalmers効果によって錯塩の結合からはずれた金属イオンを水層中に抽出した.放射能の測定によって水層への抽出率を定め,水層中のその金属イオンの総量を定量して濃縮係数を出した.99Mo についてはpH2.0~5.6 の間で抽出率は0.5~2%,濃縮係数は10~130程度であった.116mIn では 1N 水酸化ナトリウムでほとんど 100% 抽出され,濃縮係数は約 106 であった.185Wの場合は抽出率34%(pH 7),濃縮係数430を得た.なお99Moのβ崩壊によって生成する99mTcを分離する方法についても述べてある.
著者
藤田 雅俊 大河内 博 緒方 裕子 名古屋 俊士 皆巳 幸也
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1111-1116, 2013-12-05 (Released:2013-12-28)
参考文献数
26
被引用文献数
1

Rapid and sample preparation using stir bar sorptive extraction (SBSE), followed by high-performance liquid chromatography with fluorescence detection to determine polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in atmospheric water was studied. Applying the SBSE method to authentic atmospheric water samples revealed that rainwater in Shinjuku contained a 226 pM concentration of total PAHs, which was 10-times as much as that at Mt. Fuji, especially in a higher concentration of soluble PAHs. There was no seasonal variation of the concentration and composition of PAHs in rainwater at Shinjuku. Comparing the concentration of PAHs in rain, cloud, and dew water collected at the foot of Mt. Fuji, 5- and 6-rings PAHs were enriched in cloud water. This result suggests that cloud droplets could condense PAHs, especially high molecular weight PAHs.
著者
林 勝義 丹羽 修
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-12, 2002-01-05
参考文献数
61
被引用文献数
5

脳内,神経細胞計測用の電気化学センサーシステムについて概説した.リアルタイムモニタリングを目的とした微小電極型,オンライン型,そして,チップ上に検出器や電気泳動を集積したマイクロ化学分析システム(μ-TAS)について,生体・細胞測定に適用されたデバイスを中心に,電気化学検出器と組み合わされた電気泳動チップの現在の動向についても紹介した.微小電極型センサーでは,電極材料や測定手法の開発により,オンライン型センサーでは,酵素カラムや電気化学反応器と検出器との組み合わせにより,高感度,高選択測定が実現されている.μ-TASでは,センサーシステムの微小化によってよりリアルタイムな生体・細胞測定実現の可能性が示された.シナプスレベルようなの速い応答を高い位置分解能での測定が可能なセンサーが必要とされており,今後その実現が期待される.