著者
磯山 直彦 及川 真司 御園生 淳 中原 元和 中村 良一 鈴木 奈緒子 吉野 美紀 鈴木 千吉 佐藤 肇 原 猛也
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.763-769, 2008 (Released:2008-11-07)
参考文献数
13
被引用文献数
2 4

For the purpose of marine environmental radioactivity monitoring, stable Cs and 137Cs concentrations were obtained from 214 marbled flounder (Pleuronectes yokohamae) samples collected from off the coast of Ibaraki prefecture in Japan in 2005 and 2006. Prior to the investigation, an analytical method for the determination of Cs in muscle of marbled flounder samples by inductively coupled plasma mass spectrometry (ICP-MS) was seriously considered from the view point of sample preparation (wet way) to a Cs measurement. Since major problems in determining Cs by the ICP-MS is the interference of matrix materials and molecular ions on Cs peak area (m/z 133), a known amount of In (m/z 115) was added to the sample solutions as an internal standard. To check the accuracy of the determination, duplication analysis and standard reference materials were used. Analytical results of Cs in muscles samples by ICP-MS agreed well with duplicated samples, and standard reference materials. The standard length and body weight were obtained from a total of 214 flounder samples. The stable Cs, stable K and 137Cs concentrations in muscle were determined by ICP-MS, flame photometry and radiochemical analysis, respectively. The mean standard length correlates closely with the mean body weight. The stable Cs concentration was in proportion to the body weight, also, the 137Cs concentration correlated closely with the stable Cs concentration in muscle. On the other hand, a stable K concentration was found to be uniform, and unrelated with 137Cs and stable Cs concentrations. The specific activities, the ratio of 137Cs/stable Cs in muscle, was found to be 5.5∼6.7 with an average of 6.2±0.35 (SD) among five different size groups of the standard length of marbled flounder samples. From these results, ICP-MS provided useful tools for the determination of a trace amount of Cs in muscle samples, combined with wet way pretreatment techniques. In addition, marbled flounder proved to be a useful species for comparing the radioactivity of fishes in coastal seas around Japan with each other in the environmental radioactivity monitoring program.
著者
金 順玉 木下 幸 鈴木 美成 古田 直紀
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.617-622, 2009 (Released:2009-09-03)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

本研究では,大気粉塵(airborne particulate matter : APM)試料中の全硫黄(S)の定量法として,誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)を用い,水抽出されるSと残査を酸分解して得られるSの和を求める手法を開発した.開発した手法により,大気粉塵標準物質(NIST SRM-1648)中Sを精確に定量できた.本手法を実際のAPM試料で応用した結果,APM試料中Sは,粒径が小さくなるにつれ濃度は増加し,水溶性のSの割合も多くなった.イオンクロマトグラフィー(IC)による解析の結果,2 μm以下のAPM試料中のSは99% が水溶性で,その化学形態は硫酸アンモニウム (NH4)2SO4であることが明らかになった.
著者
小倉 悠紀 小山 純一 福原 忠雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.397-401, 2012-05-05 (Released:2012-06-07)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

肌状態と過酸化脂質との関連を調べるため,Diphenyl-1-pyrenylphosphine(DPPP)を蛍光試薬としフローインジェクション分析(FIA)システムを用いた高感度で迅速なヒト皮脂中の過酸化脂質分析法を開発した.リノール酸メチルにブラックライトを照射してリノール酸メチルヒドロペルオキシド(MLHP)を得て,固相抽出法を用いて精製した後,NMRを用いてMLHPの純度を確認し過酸化脂質標準品とした.FIA分析条件の最適化を行い,確立したシステムの検出限界は0.51 pmol,定量限界は1.1 pmolであり,分析時間は10分であった.さらに,確立した前処理法により作成したろ紙を用いてヒトの微小部分から皮脂を採取し,そのろ紙から皮脂中の過酸化脂質を抽出する方法を開発した.ろ紙を用いたときの定量限界は3.8 pmolであった.開発した方法を用いて24名のヒト皮膚上の皮脂中過酸化脂質を分析し,実際ヒトを用いた試験への適用が可能であることが確認され,個人間の差が大きいことが明らかとなった.
著者
河村 浩孝 佐藤 義雄 木野 健一郎 渡辺 義史 相澤 大和 松浦 正和 橋田 浩二 浜口 俊明 山口 健二郎 一丸 忠志 芥川 大祐 南部 透 梅原 隆司 水野 孝之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.57-63, 2010 (Released:2010-02-15)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

Boron isotope ratios were analyzed in seven domestic analytical labs for boric acid solutions with various compositions of boron isotope abundances, using an Inductively Coupled Plasma–Quadrupole Mass Spectrometer (ICP-QMS). Five sample solutions with different isotope abundances of 10B were prepared in the range of 10 to 20% by mixing two boric acid solutions containing natural B and enriched 11B, respectively. Then, the 10B isotope abundances of each sample were certified by analyzing with thermal ionization mass spectrometry (TI-MS) according to ASTM-C791-04. Results obtained from each lab have indicated good coincidences with TI-MS results. Also, the relative standard deviations of results with ICP-QMS of seven analytical labs were 0.11 to 0.81%. The measurement precision for ICP-QMS would be sufficient in terms of practical use, while taking into consideration a valid requirement required for verifying a depletion of the 10B isotope abundance in the PWR coolant, while this is greater than a nominal analytical error (relative value : 0.22%) for TI-MS shown in ASTM-C791-04.
著者
有山 薫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.205-220, 2014-03-05 (Released:2014-03-31)
参考文献数
32
被引用文献数
2 1

食品の産地表示は商品選択において最も基本的な情報であり,消費者の関心が高いことから,正しい表示がなされていることが食品の信頼性を保つ上で重要である.また,産地表示はブランド戦略にも利用されており,高い付加価値を持つ産地ブランドを維持するために表示の偽装は見逃すことができない.そこで,食品の産地を科学分析により判別する研究が偽装防止のために行われてきた.本稿では,食品の産地判別法として日本で最初に実用化された,誘導結合プラズマ質量分析法を用いた多元素の濃度組成による判別法がいかに開発されたかについて紹介する.別の判別指標として重元素同位体比は地質情報を中心とした生育地の情報がそのまま農産物等に移行するため,信頼性の高い産地判別を可能とする.この指標を用いた産地判別法の開発が待ち望まれていたが,重元素としてSrとPbの同位体比を用いた方法がようやく実用化に至ったことから,この判別法の最新の研究例を紹介する.

2 0 0 0 OA 火のニオイ

著者
能美 隆 前川 麻弥
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.285-296, 2013-04-05 (Released:2013-06-10)
参考文献数
30

人類は,水素を中心とした新しいエネルギー時代を迎えようとしている.言い換えると,古い火は新しい火に移行しようとしている.長い間火災を追ってきた者にとって,火災の前兆現象を分析し判断する尺度を変化させざるを得ない.火災検出で長年使用される煙センサーも火災性状の変化と共に使用できなくなる可能性がある.二酸化炭素センサーから水素センサーを使用する時代が到来するだろう.すなわち,煙の出る火から煙のでない火に,明るい色のある火から色の出ない火に,ニオイのある火から無臭の火に,二酸化炭素の出る火から出ない火に,火は時代と共にその姿を変えている.昔はゆっくりと燃え煙やニオイを出した火から,煙や色,ニオイの無い,瞬く間に燃える火,時として漏洩(えい)すると爆発的に燃焼する火に移行しようとしている.火災の前兆現象を的確に捕らえ判断する事がより難しい時代になって来たと言う事ができる.ここでは,火のニオイを取り上げ火とニオイの関係について,燃焼に際して生成する煤(すす)やニオイについて述べる.ニオイと言うと,香料や香水の良い香り,焼きたてパンの香ばしいニオイを連想する.芳香は人の能に心地よい刺激を与え活力を生み出し,芳ばしさは脳に働きかけて唾液を分泌させる.人は本来ニオイにとても敏感である.焦げ臭いニオイは本能的に生物に退避行動を誘起する.山火事や家屋の火災は危険であり咄嗟(とっさ)に逃げるのは生存の必須要件である.繰り返される大火や戦火に追われた経験のある我々は本能的に火のニオイに敏感であった.しかし,災害から少し経つと我々は火が怖い事を忘れてしまう.そこで,ニオイに本来敏感な生物を振り返ると共に,火災より生ずるニオイ,火災後に残るニオイや,最近のニオイ分析の進歩と応用について解説し,焦げ臭や煙のでない火災の前兆をどのように察知し退避するか考えてみたい.
著者
岩崎 雄介 奥村 真美 松本 仁見 安藤 千夏 亀井 淳三
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10.11, pp.573-581, 2021-10-05 (Released:2021-12-06)
参考文献数
38
被引用文献数
1

食品には,さまざまな機能性をもった化合物が多く含まれている.そのため,疾病の予防や症状の緩和に寄与する目的として,機能性を付与した食品が多く開発されている.化学物質や食品成分は,無毒性量(NOAEL)や許容一日摂取量(ADI)が設定され,さらに,医薬品は,開発段階において他の物質との相互作用についても詳しく調査されている.しかし,食品成分については,さまざまな成分が含まれているため,単体の安全性は確保されていても,相互作用については,すべてを検証し評価することは困難なものとなっている.そこで本稿では,食品に含まれる抗酸化物質に注目し,相互作用によって生じる活性酸素種及び活性窒素種について紹介する.
著者
河相 優子 白井 亮洋 角田 正也 井手上 公太郎 末吉 健志 遠藤 達郎 久本 秀明
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.125-131, 2021-03-05 (Released:2021-04-19)
参考文献数
41
被引用文献数
1

本研究では,インクジェットプリンティングを用いて一つのポリジメチルシロキサン(Poly(dimethylsiloxane), PDMS)製マイクロ流路内に2種類の反応試薬を固定化した1ステップ均一系競合型バイオアッセイマイクロデバイスを開発した.インクジェットプリンターは試薬をナノリットルサイズの液滴として正確な量を位置選択的に吐出するため,互いに反応する2種類の試薬を混ざることなく微少空間内に独立して固定化できる.そのため,先行研究でデバイスを作製する際に課題となった,相互に反応する試薬を固定化した二つのマイクロ流路を精密に組み合わせる操作が不要となる.本研究ではその一例として,ビオチン固定化酸化グラフェン(BG)と蛍光標識ストレプトアビジン(F-SA)を1本のマイクロ流路内に固定してビオチンアッセイマイクロデバイスを試作し,基礎検討として試薬の固定化位置や試薬及び添加剤種の評価を行った.その結果,液滴を流路壁面寄りに吐出すると再現性よく流路底面の両サイドに試薬固定できること,添加剤としてトレハロースが適すること及び,試料導入操作のみでの1ステップ検出で,検出下限は0.68 ng mL−1となり,先行研究と比較して約1/600倍改善することを明らかにした.
著者
小山 宗孝
出版者
日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.707-713, 2014

金ナノ粒子を導電体基板表面に修飾すると,通常,導電体基板単独の場合とは異なる電気化学特性が発現する.特に,金をナノ化することで発現するバルクとは異なる電気化学特性や触媒特性を有効に利用すると,新しいタイプの修飾電極の構築が可能になり,電気化学分析の進展にも寄与できる.著者らのグループでは,2001年頃から,金ナノ粒子を修飾した酸化インジウムスズ電極の構築と応用を中心に,これまで検討を進めてきた.本総合論文では,著者らの2010年以降の金ナノ粒子修飾電極に関する研究の展開について,電気化学以外の共同研究成果や白金ナノ粒子に関する検討結果なども含めて概要をまとめる.特に,新たな研究の展開としては,金ナノ粒子とパラジウム基板電極の複合化や,キムワイプ片などの非導電性保持材料を用いた金ナノ粒子または白金ナノ粒子の電極界面の三次元的修飾などについて述べる.
著者
岩田 祐子 桑山 健次 辻川 健治 金森 達之 井上 博之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.221-231, 2014
被引用文献数
3

我が国で最も乱用されているmethamphetamineの塩酸塩について,押収されるまでの薬物の起源と履歴(原料,合成ルート,製造方法等)が反映されている薬物プロファイルを明らかにする薬物プロファイリングのこれまでの研究成果を報告する.アルカリ性下で有機溶媒を用いて微量成分を抽出しガスクロマトグラフィーを行う微量成分分析では,微量成分をよく検出・分離する条件を決定し,複数の内部標準物質を添加することにより,保持時間の補正精度を高めた.また,キャピラリー電気泳動法によるキラル分析では,覚醒剤や覚醒剤原料等のアンフェタミン型興奮剤9種を良好に分析する方法を確立し,methamphetamineに微量に含まれる原料ephedrine等もキラル分離して検出することが可能となった.さらに,methamphetamineの安定同位体比質量分析において,資料の関連性の評価基準を設定し,結晶ごとの測定の有効性を示した.各分析により,より詳細なプロファイルが得られ,異同識別や起源と履歴の推定に,より多くの情報が得られるようになっている.
著者
池端 浩紀 平山 直紀 井村 久則
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.65-70, 2016

非イオン界面活性剤としてTriton<sup>&reg;</sup>X-100,抽出剤としてピロガロール(H<sub>3</sub>PG)を用い,硫酸溶液中からのアンチモン(V)の曇り点抽出(CPE)について研究した.まず,Triton X-100水溶液の曇り点及び相分離後の界面活性剤リッチ相の体積に対する硫酸濃度,H3PG濃度,加温温度・時間の影響を詳細に調べた.曇り点は硫酸濃度の増加とともに上昇したが,H3PGを共存させると著しく低下することを見いだした.0.20 mol L<sup>-1</sup> H<sub>3</sub>PG共存下で曇り点は38℃ も低下し,相分離後の界面活性剤リッチ相が安定化することが分かった.また,曇り点が低いほど,相分離後の界面活性剤リッチ相の体積が小さくなり,より効果的にミセルの凝集と脱水和が進むものと考えられる.これらの相分離現象に基づき,アンチモン(V)のCPEを検討した結果,0.15 mol L<sup>-1</sup>のH<sub>3</sub>PGと0.9 mol L<sup>-1</sup>の硫酸を含む2%(v/v)Triton X-100水溶液を,70℃ で60 min加温することにより,アンチモン(V)を界面活性剤リッチ相中に92% 以上抽出でき,20倍濃縮を達成した.また,このときのアンチモン(V)の抽出種を,エレクトロスプレーイオン化質量分析法により分析し,イオン会合錯体(H<sub>3</sub>O・<i><sub>n</sub></i>Triton X-100)・Sb(HPG)<sub>3</sub>として抽出されることを明らかにした.

2 0 0 0 OA 乾燥剤

著者
平野 四藏
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.95-100, 1952-08-15 (Released:2009-03-16)
参考文献数
30
著者
北條 正司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.715-726, 2014-09-05 (Released:2014-10-05)
参考文献数
55

塩を混合することにより,濃硝酸ばかりか希硝酸にも酸化力が発現することを確認する目的で,アルカリ金属,アルカリ土類金属及びアルミニウム塩化物塩を含有する0.1~2 mol dm-3硝酸中に貴金属類,特に,金を溶解することを試みた.2.0 mol dm-3 HNO3にAlCl3を1.0 mol dm-3混合した20 mL溶液中(15~80℃)に,純金板(20 ± 2 mg,厚さ0.1 mm)は完全溶解するが,温度の上昇に伴い,完全溶解に要する時間は著しく短縮した.40及び60℃ において,塩化物塩を混合した2.0 mol dm-3 HNO3溶液中での金線(19.7 ± 0.5 mg,直径0.25 mm)の溶解速度定数[log (k/s-1)]は,一般的に塩濃度の増大と共に上昇した.例えば,60℃ において2.0 mol dm-3 HNO3溶液中にLiClを1.0,2.0,3.0及び4.0 mol dm-3混合すると,log (k/s-1)値はそれぞれ-4.15,-3.77,-3.45及び-3.14へと上昇した.ずっと濃度の低い硝酸(0.1~1.0 mol dm-3)を用いると金線の全溶解時間は著しく長くなった.純金の溶解は,硝酸及び塩酸濃度の低い「希王水」,例えば,1.0 mol dm-3 HNO3と1.0 mol dm-3 HClの溶液中でも起こる.50 mL海水と2.0 mol dm-3 HNO3の1 : 1混合液中に,金線5本(0.10 mg)を100℃ において約17時間で完全溶解させることに成功した[log (k/s-1)=-4.52].塩酸濃度の増加に伴うラマンスペクトル変化に基づき,バルク水構造の破壊及び水の特性の変化を議論した.
著者
長沢 佳熊 樫田 義彦 城戸 靖雅
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.310-316, 1960

昭和33年10月,太平洋海域で漁獲した汚染度のいちじるしいマグロ類肝臓を入手したので,これらのうちの4検体についてTomskinsのイオン交換樹脂法および沈殿法によつて放射性核種を分離し,半減期,吸収およびエネルギーの測定によって<SUP>59</SUP>Fe,<SUP>65</SUP>Zn,<SUP>115m</SUP>Cdおよび<SUP>90</SUP>Sr+<SUP>90</SUP>Yを確認し,さらにそれぞれを定量した.<BR><SUP>65</SUP>Znならびに<SUP>59</SUP>Feは,<SUP>55</SUP>Feとともにビキニ海域で漁獲された魚類からすでに検出されている.また<SUP>113</SUP>Cd,<SUP>113m</SUP>Cdおよび<SUP>115m</SUP>Cd<SUP>9</SUP>がマグロ類から定性的に検出されているが,今回は<SUP>115m</SUP>Cdのみを確認し,定量をおこなった.<BR><SUP>65</SUP>Znおよび<SUP>59</SUP>Feは明らかに誘導放射性核種であり,また<SUP>115m</SUP>Cdはfission product中の生成率はきわめて少ないと考えられるにもかかわらず,これらが汚染の主要原因となっていることは興味深い.<BR>今回分析に供した以外の生肝臓数検体についてγ線スペクトルを測定した結果,<SUP>65</SUP>Znおよび<SUP>59</SUP>Feはいずれの検体についても共通に認められたが,さらに未確認ではあるが<SUP>54</SUP>Mnと思われるピークを認めた.
著者
古崎 睦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.829-834, 1999-09-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
5
被引用文献数
3 3

ホタテ貝の中腸せん(腺)(ウロ)を焼却処理すると,含有重金属の中で比較的低沸点のカドミウムは一部気化すると考えられる.そこで,ウロを焼却したときの(1)焼却残留物,(2)焼却管壁析出物,(3)焼却飛灰,及び(4)排ガス吸収液中の鉄,銅,亜鉛,カドミウムの量を調べ,焼却過程におけるこれらの物質収支を検討した.湿ウロは1kg当たり平均約20mgのカドミウムを含んでいるが,これを空気中900℃で加熱するとその約57%が気化した.気化したカドミウムの多くは焼却管壁に析出するが,飛灰からも16%程度回収された.一方,窒素中で加熱した場合の残存率は10%程度で,管壁から約83%,飛灰から6.0%,吸収液から1.8%のカドミウムが検出された.カドミウム金属を同条件で加熱した場合には,空気中では酸化のみが進行し,窒素中ではほぼ100%が気化した.また,焼却残留物質量/ウロ質量で表される灰化率が大きいほど,すなわち焼却の進行が不十分であるほどカドミウム気化率が大きくなる傾向が認められた.これらの結果より,ウロを焼却した際のカドミウムの気化は,有機成分の燃焼時に局所的な酸素不足雰囲気が形成されることによって進行すると考えられる.
著者
猿橋 勝子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.12, no.10, pp.1001, 1963 (Released:2009-06-30)
被引用文献数
1 2

アメリカの化学実験室で,ごく普通に用いられていて,しかも,わたしたちの研究室にあったら便利だと思うようなものを少し紹介したい.
著者
菅瀬 貞治 津田 孝雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.429-435, 2002-06-05 (Released:2009-03-13)
参考文献数
27
被引用文献数
9 10

採取したヒト汗中に存在する乳酸, 尿酸, キサンチン, チロシンをHPLCで測定する方法を確立した. これらの化学物質は臨床的に有用なマーカーでもある. 汗の採取はバイアルを用いて指先から行い, 短時間に簡便に採集できた. すなわち1%アルコール水溶液40μlを0.6mlのバイアルに入れた後, 指にコンタクトさせて5分間汗を採集した. 同時に発汗量を反対の手の同じ位置で測定した. 8人の若い被験者の汗中の乳酸, 尿酸, キサンチン, チロシンの各濃度はそれぞれ154mM, 150μM, 225μM, 2.25mMであった. ワインの経口摂取による汗成分の経時変化を調べた. 汗の発汗量はワインの摂取前後でほぼ変化なかったが, ワイン成分中に含まれる乳酸は25~45分後最大値を示した. 汗中の乳酸は末梢血管からきていると推測される.

2 0 0 0 OA 16 裁判化学

著者
星野 乙松 石倉 俊治
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.11, no.13, pp.136R-142R, 1962-12-05 (Released:2010-05-25)
参考文献数
263

裁判化学は司法裁判に関係ある事件の解決に応用される分析化学の一分野であって,鑑識化学ともいわれ,分析の対象,目的はきわめて多岐にわたっているが,その中で最も重要でしばしば扱うのは,生体試料中の薬毒物の分析である.今回は1957年までを記載した前回の総説に引き続き,1958~61年の間に発表された裁判化学関係の文献のうちから薬毒物の分析法に重点をおいて最近の進歩をふりかえってみることにする.なお,薬品分析,農薬分析,機器分析などの関連項目と重複する報告は特に重要と思われるもの以外は集録しなかったので,それらの項目も参照されたい.