著者
半沢 昌彦 斎藤 純 横山 幸男 土屋 正彦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.123-129, 1990-02-05
被引用文献数
1

液体イオン化(II)質量分析法による魚体試料中の2,2', 4'-トリメチル-4-メトキシジフェニルアミン(TMMD)の簡易定量法について検討した.魚体への添加濃度に応じ2種類の簡単な前処理法(1段抽出法, 2段抽出法)により調製した魚体試料をLI法で測定したところ分析成分のプロトン化分子(MH^+)及び魚体成分由来のピークが観測された.LI法では分析成分がプロトン化分子として検出されるので質量分析法の特長である質量分離が成分分離となり, 更に生成イオンの脱離温度の差による分離も利用できるので, 魚体成分をある程度含有したままでの分析が可能である.検討の結果, 従来法よりも簡便な前処理で魚体中濃度が0.3μg/g程度のTMMDが定量可能となり, 化学物質安全性試験のための定量法としてのLI法の有用性が示唆された.
著者
堀江 秀樹
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1063-1066, 2009 (Released:2010-01-25)
参考文献数
8
被引用文献数
6 4

Important taste compounds in vegetables are organic acids (sour taste), free sugars (sweetness) and some amino acids (umami-taste). The author tried to analyze these important taste compounds (oxalic acid, citric acid, malic acid, aspartic acid, glutamic acid, fructose, glucose, sucrose) in various vegetables simultaneously using capillary electrophoresis. The electrolyte used was 20 mM 2,6-pyridine dicarboxylic acid and 0.5 mM cetyltrimethylammonium bromide at pH 12.1. The capillary tube was rinsed between every analysis for 1.5 min with water, 3 min with methanol, 4 min with sodium hydroxide (1 M) and 5 min with a running electrolyte, respectively, for the purpose of improving the stability and peak shape of the pherogram. The signal was indirectly detected at 270 nm. The taste compounds of various vegetables purchased in Japanese market were successfully analyzed using this method. These comparative data, based on the same analytical methods are very rare in the literature, and our data clearly indicate the characteristics of each vegetable.
著者
郡 宗幸 井上 嘉則 井出 邦和 佐藤 幸一 大河内 春乃
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.933-938, 1994-11-05
被引用文献数
6 3

有機スズ化合物の固相抽出法について検討した.固相抽出剤としてスチレン誘導体-メタクリル酸エステル重合体を用い, AASで有機スズの回収率を求めた.分析操作は次のとおりである.海水試料のpHを硝酸で1〜0.5に調整し, 試料と等量のメタノールを加えて, pH0.5〜0.25に再調整する, 試料溶液を固相抽出カートリッジに流量4.5〜5ml/minで流す, 10%メタノール溶液15mlで洗浄し, 溶離液としてメタノール10mlを流して有機スズを溶出させる.人工海水100ml{トリフェニルスズ(TPT), トリブチルスズ(TBT);20mgl^<-1>}を用いて分析精度(n=5)を求めた.平均値は20.0mgl^<-1>(TPT)及び20.3mgl^<-1>(TBT), RSDは1.8%(TPT)及び1.7%(TBT)と良好な結果を得た.
著者
久野 祐輔 雛 哲郎 佐藤 宗一 秋山 孝夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.T31-T35, 1991-02-05
被引用文献数
1 3

使用済み核燃料再処理工場の効率的な運転には, 再処理プロセス中のウラン(U)及びプルトニウム(Pu)濃度のリアルタイムでの分析が不可欠である.そこで, 対象溶液の組成を変化させる必要がなく, 直接分析が可能な微分パルスボルタンメトリーに注目し, インライン分析法としての適用を試みた.電極の選択に当たっては, プロセスへ影響を及ぼさないこと, 保守が容易であることなどを考慮し, 貴金属のみを使用することにした.すなわち, 作用電極に金, 参照電極及び対極に白金を選び, これらを1本の樹脂に埋め込んで電極プローブとした.又高範囲の濃度測定のために, 作用電極には有効面積が0.008mm^2及び0.8mm^2の2種類を用いた.更に, 多くのプロセスでは対象溶液が流動しているため, 流動に影響されないプローブの形状を考案した.その結果, 硝酸濃度0.5〜5Mの範囲において1〜200gl^<-1>のU, 0.2〜5Mの範囲において0.5〜20gl^<-1>のPuを約5%の精度で定量できることが分かった.又, 使用済み燃料溶解液など高放射性のプロセス溶液に対しても適用できることを確認した.
著者
今坂 藤太郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.3-30, 2001-01-05
参考文献数
94
被引用文献数
2 4

超音速分子ジェット分光法は, 試料分子を気体状態で絶対零度付近に冷却して測定する方法である。試料分子を冷却することにより, 鋭い構造の励起スペクトル, あるいは多光子イオン化スペクトルが得られる。更に, 蛍光スペクトルあるいは光イオン化質量スペクトルを測定して, 試料分子を同定することもできる。したがって, スペクトル選択性が極めて高い。必要な場合には, シンクロナススキャンルミネッセンス分光法や, クロマトグラフなどの分離手段と結合することにより, 更に選択性を向上させることも可能である。一方, この手法は原理的には単一分子を検出できる分析感度を有している。したがって, 本法は極限の選択性と感度を同時に持っている。最近, ダイオキシンを超微量分析するための手法が強く要望されているが, 超音速分子ジェット法は, そのための有力な分析法として注目されている. しかし, ダイオキシンは毒性の異なる多数の分子種の集まりであり, それらを区別して測定することが必要である. また, これらの化合物は極めて毒性が高く, 極微量分析も同時に要求される。現在, ダイオキシン分析に適用できる超音速分子ジェット分光法の技術開発が進められており, ここではその現状についても言及する。
著者
善木 道雄 伊藤 裕昭 姫野 新典 横山 崇
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.201-203, 2003 (Released:2003-08-04)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

A simple solid-phase colorimetry using polyurethane foam (PUF) for the determination of iron(II) has been proposed. The 1,10-phenanthroline (phen) method is selective and sensitive, and is widely used for the determination of Fe(II) in aqueous solution. It is worthwhile to develop this method, which is suitable for visual colorimetry. An iron(II)-phen complex and its ion-associates, such as Br−, SCN− and ClO4−, were not extracted onto PUF at all. In the presence of sodium dodecyl sulfate (SDS), we found iron(II)-phen complex was adsorbed onto PUF and the iron concentration was visually measured from the resulting color onto PUF. The recommended procedure is as follows. Five ml of a 1 M acetate buffer solution (pH 4.7), 1 ml of 10 w/v% ascorbic acid, 3 ml of 0.1 w/v% phen, and 4 ml of 5×10−3 M SDS were added to a 200 ml sample solution containing less than 200 ppb of Fe(II). A chip of PUF (2×2×2 cm) was put into the solution and stirred with a magnetic stirrer for 20 minutes. The chip taken up from the solution was rinsed with distilled water and squeezed to remove any water. The color intensity of the PUF was then visually compared by a standard series method.
著者
林 英男 田中 智一 平出 正孝
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.299-303, 2002-05-05
被引用文献数
7 9

減圧ヘリウムICP-MSは,アルゴンに起因したスペクトル干渉を除くことができる.しかし,m/z=79〜82に小さなバックグラウンドピークがなお存在し,微量な臭素及びセレンの定量を妨害した.本研究では,これらのピークがインターフェース部材質の銅に起因した分子イオンであることを突き止めた.これらのイオンを抑制するため,ニッケル及びアルミニウム製インターフェース部を試作した.その結果,ニッケル製では,広い質量範囲にわたりバックグラウンドピークが生じたが,アルミニウム製ではほとんど観測されなかった.そのため,減圧ヘリウムICP-MSのインターフェース部材質としてアルミニウムが最適であるとの結論を得た.電熱気化法により臭素及びセレンの溶液試料(10ng ml^-1,5μl)を導入して得られた相対標準偏差(n=10)は,いずれも約10%であった.また,臭素及びセレンの検出下限(3σ)はそれぞれ0.2及び0.09ng ml^-1であり,通常のICP-MS(Br 20 ng ml^-1, Se 0.25 ng ml^-1)に比べ高感度な定量が可能になった.
著者
佐藤 浩昭
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.219-220, 2001-03-05

Temperature-programmed analytical pyrolysis (TPPy) techniques were developed for the characterization of various functional polymers. In the first study, the TPPy techniques were applied to investigate the thermal-degradation process of a flame-retarded poly (buthylene terephthalate) (FR-PBT) with a synergistic flame-retardant system based on a bromine-containing polycarbonate (Br-PC) and Sb_2O_3. It was clarified that during the degradation of FR-PBT the evolution of various bromine-containing products, including flame-poisoning SbBr_3 formed through the reaction between Br-PC and Sb_2O_3, were closely related to synergistic flame-retarding mechanisms. In a second study, a natural polysaccharide chitin/chitosan and chitin-based polymer hybrids were characterized by means of analytical pyrolysis techniques. Firstly, in order to determine the composition of N-acetyl-D-glucosamine units (i.e. the degree of acetylation) of chitin/chitosan, a new reactive pyrolysis-gas chromatography in the presence of an oxalic acid aqueous solution was developed. The proposed technique was applicable to any kind of chitin/chitosan sample over the whole range of acetylation to which the other individual methods were inapplicable. Secondly, novel chitin-based polymer blends with a chitin derivative and poly (vinyl chloride) were characterized by the TPPy techniques. The evolution peak-top temperatures and the amounts of the characteristic degradation products were correlated to the miscibility of the blends. In addition, the mechanisms for the intermolecular interaction of the blends were also characterized.
著者
岡田 哲男 原田 誠
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.27-41, 2005 (Released:2005-04-08)
参考文献数
42
被引用文献数
5 6

イオンの分離において重要な役割を果たす静電効果と溶媒の関与について著者らの研究を中心に述べた.イオン交換系及び両性イオン性の系について,クロマトグラフィー,電気泳動による結果を静電理論によるモデル計算に基づいて解析し,分離が起きる界面での様々な現象の理解を可能にした.しかし,溶媒の関与を含めた構造的側面については直接的な検討が必要であると考え,X線吸収微細構造(XAFS)を用いて,イオン交換樹脂や気液界面での単分子膜を用いたイオンの局所構造解析を行った.例えば,水中のイオン交換では,対イオンが部分的にイオン交換基から解離しているが,全体の60~70% 程度は直接イオン交換基に結合し,3分子程度の水によって水和されていることなどが分かった.また,水溶液表面での全反射XAFSを用いることにより,単分子膜でのイオン交換の評価が可能になり,膜の圧縮によるイオン交換選択性の変化が観察された.Br-は,クロマトグラフィーや電気泳動で両性イオン性分子と会合していないと考えられたが,表面XAFSでは部分的に会合していることが示唆された.
著者
並木 美智子 広川 吉之助
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.213-217, 1979-04-05
被引用文献数
1 4

金属銅の定量は試料を窒素気流中又はアルゴン気流中硫酸セリウム(IV)溶液で処理して酸化銅のみを分解分離した後,金属銅を窒素又はアルゴン気流中塩化鉄(III)溶液に溶解し,還元により生じたFe^<2+>を硫酸セリウム(IV)-硫酸鉄(II)滴定法によって定量した.酸化銅(I)の定量は試料を窒素気流中で塩化鉄(III)に溶解し,同じく還元により生じた鉄(II)を硫酸セリウム(IV)-硫酸鉄(II)法で滴定し,酸化銅(I)と金属銅の合量を定量した後先に定量した金属銅量を差し引く.全銅の定量は試料を硝酸に溶解した後銅アコ錯イオンとして光度定量した.酸化銅(II)は全銅から金属銅と酸化銅(I)の合量を差し引いて算出した.以上の方法を混合試料及び実際試料に応用してほぼ満足できる結果を得た.
著者
林 謙次郎 佐々木 義明 田頭 昭二 伊藤 和晴
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.T61-T64, 1981-06-05
被引用文献数
3

アルミニウム-アルミノンレーキの呈色は保護コロイドとしての分散剤の種類や濃度の影響を受ける.しかし,トリトンX-100のような非イオン性界面活性剤を分散剤として用いると安定な呈色が得られ,アルミニウムの弧光光度定量における従来法に比べ感度や精度の向上及び定量範囲の拡大をはかることができる.アルミニウムの定量について検討したところ,最大吸収波長537 nmにおけるモル吸光係数は2.2×10^4,感度は0.0012であり,(6.5×10^<-7>〜5.0×10^<-5>)mol dm^<-3> のアルミニウムの濃度範囲でベール則に従った.レーキ及びアルミノン中のフェニル基やカルボキシル基がトリトンX-100のポリエーテル部と水素結合してミセルの親水部分に吸着されて安定化され,その結果,スペクトルが変化し吸光度が増加すると考えられる.
著者
氏平 祐輔 大藪 又茂 村上 徹朗 堀江 強
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.10, pp.631-636, 1978-10-05
被引用文献数
6

尿素の分解を利用した均質沈殿法によって鉄化合物を生成し,その化学状態をpH変化の追跡,メスバウアースペクトル及びX線回折パターンの解析から分析した.均質沈殿を行っている溶液のpH変化の様子,あるいは沈殿した鉄(III)化合物がpH 1.7〜1.8の鉄(III)塩溶液を加熱し,鉄(III)イオンを加水分解したときに生成する化合物と酷似していたことから,均質沈殿の過程は水酸化物イオンの均質的な供給下における鉄(III)イオンの加水分解の過程と同じであることが分かった.0.1M硝酸鉄(III)溶液からの均質沈殿ではゲータイト(α-FeOOH)及びヘマタイト(α-Fe_O_3)が生成し,0.1M塩化鉄(III)溶液からの均質沈殿ではアカガネイト(β-FeOOH)が生成し,0.1M硫酸鉄溶液の均質沈殿からは塩基性硫酸鉄〔NH_4Fe_3(OH)_6(SO_4)_2〕及びゲータイト(α-FeOOH)が生成した.沈殿時に共存する陰イオンの種類及び尿素の分解速度によって異なった化学状態の鉄(III)化合物が沈殿することも分かった.
著者
坪井 知則 平野 義男 木下 一次 大島 光子 本水 昌二
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.309-314, 2004 (Released:2004-09-13)
参考文献数
14
被引用文献数
7 9

化学的酸素要求量(COD)の迅速定量についてフローインジェクション/吸光光度定量の検討を行った.過マンガン酸カリウムを酸化剤として用い,この酸化反応の反応時間を促進させ,短縮するため触媒を用いる方法について検討した.その結果,白金チューブを反応コイルとして用いることにより,酸化反応が促進され測定時間を大幅に短縮できることが分かった.白金チューブ反応コイルのフローインジェクション分析(FIA)法への適用について詳細な検討を行った結果,D-グルコースを標準物質としたとき,検量線は0~100 ppmの範囲で良好な直線性を示した.S/N=3に相当する検出限界は0.01 ppmであり,5,10,20,50,100 ppmのD-グルコースに対する相対標準偏差は,それぞれ0.9,0.8,0.8,0.5,1.4% であった.本FIA法は,排水のCOD迅速定量に適用可能であり,またCODモニターとして利用できる.
著者
光田 圭佑 久保 拓也
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.357-361, 2023-09-05 (Released:2023-11-23)
参考文献数
12

抗体を標的部位の認識・輸送手段として利用し,特定の低分子薬物を担持する抗体薬物複合体(ADC)が注目を集めている.ADCは,免疫グロブリンG(IgG)の四つのジスルフィド結合を切断し,リンカーを介して薬剤を結合するため,結合する薬剤の数や分布が異なり,その薬効も異なる.そのため,薬効の高いものだけを分離回収するためには,ADCの精密な分離技術が求められる.本研究では,ADC分析用の新規分離媒体開発のために,アミノ基修飾シリカゲル粒子に対して,スペーサーとしてポリエチレングリコール(PEG),リガンドとして芳香族化合物を修飾した.作製した分離剤を液体クロマトグラフィー(LC)用カラムに充填し,IgGが溶出する条件を評価した結果,移動相に2-プロパノールを添加する酸性条件下において完全溶出を確認した.さらに,芳香族で修飾されたIgGのLC分析では,未修飾のIgGと比較して保持力の増加が示され,ADCの選択的分離の可能性が示唆された.
著者
有馬 彰秀
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7.8, pp.257-263, 2023-07-05 (Released:2023-08-25)
参考文献数
44

ナノ・マイクロスケールの細孔(ポア)を用いた粒子検出技術は,単一粒子レベルの感度を持ち,物理性状に基づく非修飾・非破壊の評価が可能であることから,幅広い微粒子の分析に利用されている.本稿では,まず著者らによる低アスペクト比ナノポアを用いた1粒子検出・捕捉技術について概説する.続いて,人工知能を利用したウイルス種識別について紹介する.この研究では,機械学習を利用することでイオン電流シグナルの形状特徴量を包括的に活用し,高精度識別を可能にした.また,検体認識分子を修飾した機能性ナノポアを開発し,検体のポア通過時の挙動を選択的に変化させることで識別精度向上を達成したため,併せて紹介する.
著者
杉山 雅人
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.667-675, 1996-07-05 (Released:2009-05-29)
参考文献数
27
被引用文献数
14 14

自然水中の懸濁物質に含まれる主要から微量に至るまでの各種元素の同時分析法を検討した.懸濁物質を捕集したニュクリポアーフィルターをねじふた付きのテフロン瓶に入れ,濃アンモニア水を加え一定時間放置後,加熱して乾固した.残留物に過塩素酸・硝酸・フッ化水素酸の混合物を加えて加熱分解した.分解物を蒸発乾固した後,過塩素酸及び硝酸を加え再び乾固した.残留物を硝酸溶液に溶解し,ICP-AESに供試した.本法によって4種類の標準物質を分析し,AI,Ba,Ca,Cr,Cu,Fe,Mg,Mn,Ni,P,Sr,Ti,V,Znの14元素について,良好な結果を得た.原子吸光法を用いると,同一の試料でKとNaが定量できた.本法は水中懸濁物質に限らず,たい積物,岩石,生物試料,エアロゾルの分析にも広く有用である.
著者
中村 拓己 浅田 絵美 永田 佳子 金澤 秀子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.769-773, 2003 (Released:2004-01-30)
参考文献数
12
被引用文献数
6 5

市販品の緑茶中の主要成分であるカテキン類は,その製茶工程あるいは殺菌工程で熱異性化が起こることが知られており,緑茶カテキン類のうち含有量の最も多いとされているエピガロカテキンガレート(EGCG)は,ペットボトル飲料においては,その熱異性化体であるガロカテキンガレート(GCG)とほぼ1 : 1の割合で存在していた.また,抽出温度を変化させた実験から,緑茶はおよそ80℃ 付近から,熱異性化が起こり,抽出温度が98℃ となるとEGCGの熱異性化は更に進むことが確認された.更に,これらカテキン類のシトクロームP450(CYP)3A4代謝系に対する活性について検討した結果,構造中にガレートを有するカテキン類であるEGCG,GCG,エピカテキンガレート(ECG)のほうがガレート構造を持たないカテキン類と比較して阻害効果が大きいことが明らかとなった.したがって,CYP3A4代謝系に対するカテキン類の阻害効果は,ガレート構造の有無により大きく影響されることが示唆された.
著者
河野 洋一 藤田 和弘
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.331-334, 2016-06-05 (Released:2016-07-07)
参考文献数
19
被引用文献数
5 5

The behavior of the chlorogenic acids (CGAs) and total polyphenols by the difference in roast degree of coffee beans was investigated. As samples, Coffea robusta and Coffea arabica from Brazil, six kinds of different roast degree beans and green beans, were used. HPLC/UV was used for the measurement of CGAs. LC separation was performed on a C18 column with a mixture of water–acetonitrile–acetic acid (1000:50:3) including 30 mg L−1 1-hydroxyethane-1,1-diphosphonic acid (HEDP), acetonitrile and methanol as the mobile phase, and calculated as 5-caffeoyl quinic acid (5-CQA). The Folin-Ciocalteu method was used for the measurement of total polyphenols, and calculated as 5-CQA. As the roasting increased, with both varieties, CGAs decreased, although most of the total polyphenols did not change. Therefore, a difference in roasting causes a change concerning the chemical structure of CGAs. However, the change substances had a hydroxyl group, which came from the structure of CGAs, and the possibility that had antioxidant ability was suggested.
著者
飯盛 啓生 磯部 敏幸
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.999-1002, 2006 (Released:2006-12-26)
参考文献数
12
被引用文献数
3 3

A fading phenomenon of laver arose in the Ariake Sea, Japan from the end of 2000 to the beginning of 2001. It was said that consumption of the major nutrient (N, P. etc.) of sea water by the large phytoplankton caused this phenomenon. In the present study, the relationship between the fading phenomenon of laver and metal elements in sea water was examined. It was found that the amount of essential trace metal elements (especially Fe, Mn and Zn) of the faded laver was less than those of normal laver. In addition, the concentration of these metals in sea water collected near the area around the color-faded laver decreased extremely compared with previous data. From these results, it was deduced that not only the major elements (N and P), but also trace essential elements (Fe, Mn and Zn), could be consumed by phytoplankton. Therefore, the deficiency of these elements could be the major reasons for the fading phenomenon of laver in the Ariake Sea.