- 著者
-
立石 隆
- 出版者
- 日本哺乳類学会
- 雑誌
- 哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.1, pp.47-57, 2004 (Released:2008-04-09)
- 参考文献数
- 37
- 被引用文献数
-
3
新潟県,福島県および群馬県が境を接する尾瀬地域において,14の調査区を選定し小哺乳類相を調べた.調査は1985年8月から1999年7月まで,調査した各年とも7月上旬から8月上旬に行い,標高約 1,000m の山地帯落葉広葉樹林から標高約 1,900m の亜高山帯針葉樹林にかけて,小型ハジキワナ(パンチュウ PMP型)により小哺乳類を捕獲した.延べ 16,800個のワナを用い食虫目1種(ヒミズ22頭),および齧歯目5種(ヤチネズミ7頭,スミスネズミ92頭,ハタネズミ17頭,ヒメネズミ564頭およびアカネズミ669頭)が捕獲された.したがって合計1,371頭が得られ、その捕獲率は8.2%であった.ヒミズは全例が標高 1,600m 以下の地域で捕獲され,捕獲率は著しく低かった.ヤチネズミは標高約 1,500m 以上の,尾瀬ヶ原~尾瀬沼以北の地域において7頭中6頭が捕獲された.スミスネズミは全例が標高約 1,600m 以下の地域で捕獲され,尾瀬ヶ原~尾瀬沼の南北両側で捕獲数はほぼ同じであった(北側50頭,南側42頭).ヒメネズミおよびアカネズミは大部分の調査区において最も優勢であった.ヒメネズミの捕獲率はブナ帯下部(標高1,000~1,300m)の方がブナ帯上部(標高1,300~1,600m)より低く,アカネズミでは下部と上部の間で捕獲率に差がなかった.捕獲率の年次変動はヒメネズミで比較的小さくアカネズミで大きかった. 1985年と1994年のアカネズミの捕獲率は調査地域すべてにおいて著しく高かった.その原因は前年のブナの堅果の豊作であろう.