著者
野上 玲子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.82_1-82_1, 2016

<p> オリンピックはこれまで、パリ大会(1900年)での「宗教」論争によるアメリカ選手団の分裂や、セントルイス大会(1904年)での人種差別による「民族競技」の開催など、「人間の尊厳」を脅かす問題が幾度となく生起してきた。1935年のクーベルタンのラジオ演説においても、精神や肉体の創造は、「人間の尊厳」を損なう出来事の下ではあり得ないと述べている。このような歴史的教訓から、IOCによって2015年に採択されたオリンピズムの目的は、「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会を奨励すること」とし、今日でも人間性の尊重が強調されている。しかし、依然として、オリンピズムの特徴や理念について、十分に解明されているとは言い難く、オリンピズムの価値それ自体が批判的に考察されることも少なくない。未だ、民族紛争やメダル争いが激化するオリンピックの世界で、「人間の尊厳」という理念は何を意味し、どのような内在的価値を持つのだろうか。本研究では、オリンピズムにおける「オリンピック」と「人間」との関わりを通じた道徳的な価値を再評価しつつ、オリンピックで発揮される「人間の尊厳」の根源的な意味を解明することを目的とする。</p>
著者
山口 理恵子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.47_2-47_2, 2016

<p> 近代家族に代表される性役割分業および異性愛中心主義など、既存の枠組みに潜む権力構造を明らかにし、特に女性の不在や劣位に対して異議申し立てを行ってきた女性学・ジェンダー研究の視座が、スポーツ領域の分析にも援用されるようになって久しい。このスポーツ・ジェンダー研究は、女性スポーツおよび女性アスリートの飛躍とともに醸成を続け、メディアや教育におけるジェンダーバイアス、リーダー的地位における女性の不在、男性性の恣意性などを明らかにしてきた。現在、国家レベルの疑惑にまで発展しているドーピング問題や、刻々と変わる「性別」に関わるIOCの規定、さらには東京五輪招致をめぐる収賄疑惑など、オリンピックの開催意義が改めて問い直されている。このような状況の中、果たしてスポーツ・ジェンダー研究はどのような貢献をしうるのか。発表では、1975年の創刊から40年以上経つ研究誌、Sex Rolesの女性スポーツ特集(2016年74巻)を参考にしつつ、これまでのスポーツ・ジェンダー研究を振り返りながら、そこに残されている課題とともに今後のスポーツの可能性についても探ってみたい。</p>
著者
海老名 真有美
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.253_1-253_1, 2016

<p> バスケットボールは、選手のポジションによってその果たすべき役割が異なっている。それに伴いポジションごとに求められる運動強度に応じて体力要素も異なることが明らかにされている。一方、スキルに関するポジション別の研究も行われてきているが、それはゲーム分析という観点からのものであり、チームとして達成すべき指標を明らかにしているものが殆どである。そこで本研究では、日本の大学女子選手を対象に、試合で勝利をあげるために到達すべきポジションごとの定量的な指標を明らかにすることを目的とした。2015年関東大学女子バスケットボール1部リーグの全42試合の公式スタッツに基づき、ポジションをガード、フォワード、センターに区分し、オフェンシブスタッツ(2P%、3P%、FT%、オフェンスリバウンド、アシスト、ターンオーバー)ディフェンシブスタッツ(ディフェンスリバウンド、スティール、ファウル)の計9項目から、勝利と因果関係のある項目を分析・検討した。本研究の成果は、選手が自分のポジションにおいてチームの勝利に貢献するために用いられるばかりか、日々のトレーニングにおいて強化すべき重要なポイントにもなりうるであろう。</p>
著者
松本 沙羅 玉城 耕二 柴原 健太郎 本郷 由貴 木下 佳子 西條 修光
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.268_3-268_3, 2016

<p> オープンスキル系のバスケットボール競技では、絶えず変化する状況の中で、その場に応じた的確な状況判断が要求される。これまで、認知的トレーニングの研究が多くなされてきたが、一致した効果はみられていない。その原因の一つは、認知的トレーニングの介入効果が主に指導者の評価に依存し、選手自身の状況判断の変容に目が向けられていないことである。例えば、夏原はMcpersonの言語報告から知識を定量化する方法を用いて、熟練者ほど優れた知識構造を持っていることを明らかにしている。そこで本研究は、選手自身の知識構造の変容を明らかにすることで、認知的トレーニングの介入効果を検討することにした。実験参加者は関東大学女子2部リーグに所属するA大学の女子バスケットボール部員14名であった。認知的トレーニングの介入効果を検討するために、関東大学女子1部リーグの公式戦の映像を用いた状況判断テストに加え、40分のゲームを行った。状況判断テストでは、当該状況での判断に至るまでの知識構造を目的、条件、動作の分類から評価し、介入前後での変容について検討した。方法の詳細及び結果、考察については発表当日に報告する。</p>
著者
加藤 彩乃
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.337_3-337_3, 2016

<p> 本研究は、障害者のスポーツ・運動実施を支える人づくりをテーマとしたものであり、昨年の本学会での報告の第Ⅱ報である。よって本研究では、障害者スポーツの体験や新たなスポーツの創造を主とした授業に着目し、大学生の障害への認識がどのように変化するかを明らかにすることを目的とした。対象は、A大学の障害者スポーツの体験やスポーツの創造を行う授業の受講生13名(男性7名、女性6名、うち教職希望11名)であった。データは、授業の初期と終期に、障害者や障害者スポーツへの認識に関するアンケートを実施して収集し、分析を行った。その結果、全体の傾向として、障害者のスポーツ実施について、日常的なスポーツの重要性を強く感じるとともに、スポーツ技術の向上が可能であると捉えつつも、できるスポーツが限られていると認識している者が多く見られた。また、障害者スポーツの体験等を通して、社会の中での障害者差別に関する項目と、障害者との関わりについての自己有能感の項目において、授業の前後で変化が見られた。これらの結果をもとに、実際の障害者スポーツ・運動支援につながるための授業スタイルについて考察した。</p>
著者
山下 大地 荒川 裕志 有光 琢磨 河野 隆志 和田 貴広 清水 聖志人
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.202_1-202_1, 2016

<p> 日本レスリング協会と国立スポーツ科学センターはこれまで日本代表選手の体力測定およびフィードバックを実施し、国際競技力の向上を図ってきた。近年では育成世代にも一貫した発掘・育成システムの構築を推進しており、同様の測定方法にて形態・体力測定を実施している。本研究では、育成世代の男子エリートレスリング選手の体力水準を明らかにすることを目的とした。2013年度から2015年度にかけて、各世代の育成キャンプに招集された延べ219選手を対象に、形態・体力測定を実施した。測定項目は身長、体重、体脂肪率、背筋力、握力、腹筋テスト、ロープ登りテスト、300mインターミッテントテストであった。出場階級をもとに軽量級、中量級、重量級に分け、各階級(軽・中・重)および世代(U-20・U-17・U-15)を要因とする二元配置分散分析をおこなった。U-20世代の軽量級は他世代の軽量級と比較して筋力、疾走能力が高かった。一方、U-20世代の重量級は、他世代の重量級より筋力は高値を示すものの、体脂肪率が高く、腹筋、疾走能力が低値を示した。これらの結果は、選手の発掘や育成システム構築に必要な指針となりうるものである。</p>
著者
片岡 尚也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.105_3-105_3, 2016

<p> 近年多発するスポーツ界や運動部をめぐるいじめ、未成年による飲酒や暴力事件をはじめとした不祥事は、メディアを通して社会的関心を集める。そして、このような不祥事を起こした運動部は、所属組織により処分が科されることになる。不祥事に関するこれまでの研究は、その発生原因(杉本、2013)や処分に対する責任性に着目した研究(大嶺・友添、2014)などがなされてきた。しかし、実際に不祥事を起こした運動部やその部員がどのように変容していくのかについては十分に検討されていない。そこで本研究は、不祥事を起こした大学運動部を事例に、不祥事を起こした当事者だけでなく、他の運動部員も含め、彼らが「無期限活動停止処分」をどのように意味づけながら更生していくのかを明らかにすることを目的とした。不祥事が発生してからの経時的な流れに即して、対象の運動部員に対して複数回のインタビューを行った。その結果、対象者らは「無期限活動停止処分」を「不安」や「絶望」を生む負の装置として意味づける過程から、「部活動から離れる」ことで「成長」や「おかげ」という価値ある体験として意味づけていく過程がみられた。</p>
著者
平田 英治 松山 博明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.266_3-266_3, 2016

<p> 2011年ドイツで行われた女子ワールドカップにおいて、なでしこジャパンが優勝し、女子サッカーブームが起こり、女子サッカーの登録人口もそれまでの1.5倍となった。(JFA、online)このような女子サッカー人気の高まりから、大学女子サッカー部を創設する流れが大きくなっている。2015年、四国大学は女子サッカークラブを創設した。Jリーグクラブのトップチームからユースチームまでの指導経験がある筆者の指導によって、僅か11名のメンバーでありながら創設1年目で、皇后杯、インカレ全国大会出場を成し遂げることができた。2年目の2016年、新たな部員7名が加わり部員数15名に増員した。そこで本研究では、四国大学女子サッカーにおけるトレーニング内容の時間比率が競技力向上にどのように影響を与えるか検討することとした。具体的には、1年間に3回にわたる選手競技力に関するJFAフィジカル測定や心理的競技能力検査(以下 : DIPCA)によって、実態を明らかにすることを目的とした。その結果、1回目に行ったDIPCA測定結果では、新入生が新たにチームに入る不安や自信のなさなどが感じられた。また、JFAフィジカル測定結果では、在学生と新入生のフィジカル能力の差が見られた。</p>
著者
瀬戸 邦弘
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.330_3-330_3, 2016

<p> 本研究ではいわゆるジャパノロジー(日本研究)のひとつとして大学應援團に注目している。應援團活動では独自の「応援団文化」を継承・護るために、時に「時代錯誤」ととも揶揄される行動様式や人間関係を頑なに堅持する傾向にある。そのため、時代の流れにあわず多くの応援団が休部(もしくは廃部)の憂き目にあって来ている。その一方で、そこには現在すでに失われている「学生体育会黎明期の文化」が残存しているとも捉えられ、近年では逆に海外から「日本的」な要素(クールジャパンコンテンツ)として評価・注目されることにもなってきている。本研究では海外という新たな視座から「応援団の現在」を検証することになる。</p>