著者
齋藤 壮馬 志賀 充
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.227_2, 2018

<p> 本研究の目的は、女子小学生を対象に4か月間に渡り、"弾む遊びをテーマにしたトレーニングの実施したときの疾走能力と跳躍能力の変化を検討することであった。対象者は小学生女子9名とし、測定項目は、50m走、立5段跳、ドロップジャンプ、反復横跳びを実施した。50m走及び立5段跳は各運動の側方からハイスピードカメラ(CASIO EX-F1)を使用し、毎秒300コマで撮影を行った。被験者にはトレーニング期間に月2回、1回の講座を90分実施した。また、月2回の指導の間になわとびによる運動課題を与えた。</p><p> 本研究の結果、疾走タイムは9.85±0.30secから9.68±0.35と有意に向上した。また立5段跳は6.73±0.47mから7.14±0.47mと有意に向上した。立5段跳びにおける跳び始めの接地時間と、2歩目から3歩目の滞空時間が有意に増加した。このことから、立5段跳の記録が向上した要因として、地面に対し適切に力を加えることが可能になり、滞空時間が増加し、1歩の歩幅が増加することによって、記録が向上したと考えられる。ポスター発表では動作分析のデータを加え、より詳細に要因について明らかにしていく。</p>
著者
岸本 肇
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.82_3, 2018

<p> 本研究は、旧東ドイツ(DDR)のサッカー選手"Jürgen Sparwassserの『自伝』を通して、社会現象としてとしてのスポーツのあり方について問題提起をしようとするものである。戦歴の素晴らしさはもちろんであるが、何よりも彼を有名な存在にしているのは、1974年6月22日、ワールドカップ・一次リーグ、ハンブルク・フォルクス・スタジアムにおける対西ドイツ戦において、1-0の決勝点の得点者であることと、1988年にDDRから逃亡したことの、2つである。</p><p> 1979年のシーズン終了後、引退した彼は、その後、サッカー指導者、スポーツ科学の研究者として、DDRで第二の人生を歩んで行くかに見えた。しかし彼は、1988年1月、西ドイツ側へ「逃亡」(Flucht)する)。やがて、時代は大きく変わり、1990年のドイツ統一、彼の活動も新たな展開を見せている。</p><p> 主たる報告内容は、「Sparwassserの幼少年期とKJS(青少年スポーツ学校)時代」「ワールドカップ1974、西ドイツとのDuell前後」「輝かしい選手経歴」「引退後、指導者・研究者への道」「逃亡後(西ドイツでの)の新たな課題」「現在のサッカー活動と社会的活動」である。</p>
著者
木下 秀明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.88_3-88_3, 2016

<p> 日本水泳連盟の前身である大日本水上競技聯盟(以下「水連」)は、大日本体育協会が競技団体連合体に改組するのを機に、1925(大正14)年4月24日に国際水泳競技界を念頭に置いて設立された。これに対し、その半年後の同年10月1日に武道である日本泳法の競技としての向上普及を目指して発足したのが、日本游泳聯盟(以下[游連」)で、隅田川水練場の系譜とされる。文部省が学生参加を事実上禁止した1926年の第3回明治神宮競技大会「水上競技」では、その準備委員の主体は水連ではなく游連であって、プログラムは、前回実施種目を踏襲した第1部と新規の日本泳法種目だけの第2部の二本立てとされた。ともに創立間もない時期にあった水連と游連とは、甲乙つけがたい存在だったのである。しかし、游連は1930年以降神宮大会運営から除外され、水連との協調にも失敗して弱小団体化した。その終焉は不明であるが、1941年には日本泳法の競泳と競技の第14回大会を開催している。水連は1931年に標準泳法を制定し、1933年に水泳史研究会を発足させた。発表では、これが、游連を意識しての措置であったことを明らかにする。</p>
著者
鈴木 秀人
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.28_3-29, 2017

<p> 私は体育科教育学が専門であり、学生への講義や実技指導とともに、現場の先生方とよりよい体育授業の在り方を検討している。そうした立場としては、歴史研究からの貢献を、例えば「体育理論」の授業で歴史研究の成果を活用できるというように矮小化したくはない。今回は体育授業の大半を占める実技の実践に焦点を当てて、目の前の授業を改善していく上で歴史研究を活かしてきたと考える私のこれまでの取り組みをいくつか紹介したい。教育現場では日々多くの授業実践がなされているが、「たとえ、ある特定の立場に立ってプログラムをつくろうとする意図的な企てがなかったとしても、それぞれのプログラムは、体育についての何らかの信念や思想を暗黙の裡に反映させている」というシーデントップの見解は、かかる取り組みの出発点となったものである。この見解をもとに、マニュアル的な指導法の習得に走りがちになる授業づくりの現実に対して向き合い、さらに授業の具体を考えていこうとする時に公式ルールを絶対視しないルールの工夫を導く手がかりを得たり、授業で常にもめごととなる審判の在り方について検討する時にも、歴史研究は重要な示唆を与えてくれてきたのである。</p>
著者
菊地 はるひ 是枝 亮
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.206_1, 2018

<p> エアロビック競技は、「芸術点」「実施点」「難度点」の3つの観点から評価をし、合計点で順位を競う採点競技である。演技は、複雑で強度の高いエアロビック動作パターン(AMP)を音楽に合わせて連続して行うことを基本とし、完璧な遂行度を持つ難度エレメントを組み込んで構成することが求められる。国際大会は、国際体操連盟(FIG)の採点規則であるCode of Points(COP)に則って行われるが、COPは4年に1回のサイクルで改訂されている。2017年から適用されているCOP 2017-2020では、演技時間、芸術点の採点方法、実施点の減点幅、難度エレメントの評価点および実施制限等の変更があった。そこで本研究は、改訂後のFIGワールドカップ大会における上位選手の演技構成、演技内容を分析し、採点規則が及ぼした影響について検討した。採点規則の改訂は、競技の特性を尊重し、正確かつ明確な評価を行うために必要となる事項を再確認して行われるものであり、競技の方向性を決めることになる。分析結果から現採点規則の問題点を見いだし、エアロビック競技が競技スポーツとして発展するために必要な内容を考察した。</p>
著者
青野 光子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.227_3, 2017

<p>【1.緒言】近年、子どものロコモティブシンドローム(運動器症候群)が問題になっており、保育者養成学生においても体の硬い学生が目に付き、3年前よりロコモティブ・シンドロームの実態を探るべく新入学生に「しゃがみこみ」調査と実践対策を行なってきた。【2.研究方法】2015年~2017年 保育者養成短期大学学生1年生(130名)前期15回授業にて、第2回~13回にペア・ストレッチ(しゃがみ・はずみ運動等)、「雑巾がけ競争」と伝承遊び(郵便屋さん)を行い、第2回と第13回に「雑巾がけ」タイム測定を実施した。【3.結果と考察】(1)しゃがみこみができない学生の割合:130名中:平均10.5%~11.5%(2015~2016)、22.0%(2017)の学生に「しゃがみこみ」ができない学生がいることが判明した。その実践対策として、毎回、ペア・ストレッチ、雑巾がけと伝承遊び、物まね動物の実践を試み、以下の成果を得た。(2)「雑巾がけタイム」A/B/Cクラス平均:0.46秒短縮した。(3)「しゃがみこみ」ができない学生の割合:平均11.0%から5.4%に減少(2015,2016)した。【4.まとめ】:ペア・ストレッチ、雑巾がけと伝承遊びの実践において、ロコモ対策の効果が認められた。</p>
著者
向後 佑香 中島 幸則
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.287_1, 2018

<p> 平成28年4月の障害者差別解消法施行を受け、全国の高等教育機関に在籍する障害学生数は今後更に増加する傾向にあるとみられている。それに伴い体育指導者は、障害学生に対する体育実技指導や支援方法について正しい知識やノウハウを習得することが必要不可欠であると考える。</p><p> 本研究では、自然環境など外的要因の影響を強く受けるスキー・スノーボード場面に焦点を当て、聴覚障害者が感じる不安と危険について調査を行った。調査対象者は、聴覚に障害がある大学生約40名、聴覚障害児に対するスキー指導に長けたスキー指導者約20名、合計60名であった。調査内容は、「スキー及びスノーボードを行う際に"聞こえにくい・聞こえない"事によってどのような不安や危険を感じますか」という問いに対し、自由記述によって回答を得た。類似する記述内容をカテゴリー毎に分類した後、それぞれの出現件数及び割合を算出した。その結果、「死角からの接近・気配に気がつかない(27.9%)」という回答が最も多く、次いで「注意喚起の声に気がつかない(14.8%)」、「放送の情報が伝わらない(13.1%)」、「視覚情報の制限(8.2%)」等の記述が多く見られた。</p>
著者
鈴木 宏哉 根本 みゆき
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.12_1, 2018

<p> 昨年、日本体育学会第68回大会本部企画(若手研究者特別委員会)として、「若手が担う体育学の未来~温故知新、そして若手ネットワークの構築に向けて~」を行った。この企画は、日本体育学会のこれまでの歩みと変化する学会内外の状況を踏まえ若手研究者が自らの立ち位置を自覚的に問いながら、体育学の未来を展望する試みであった。その中で、現在の体育・スポーツ系大学院生は必ずしも体育学会に入会していない、言い換えると、体育学の軽視とも思える実態が浮き彫りとなった。一方で体育学会が15の専門領域を有する多様な研究者集団である強みを生かす必要性も指摘された。</p><p> 体育学(会)の発展においては、体育学を専門に学ぶ若者を増やすことは必要不可欠である。その意味では、大学院進学後の学びや修了後の進路について、魅力あるロールモデルを示すことが求められる。</p><p> 本企画では、多様な学びと研究テーマ、そして多様な経歴をもった若手研究者をパネリストに招き、学生時代に何を考え、現在何を思うのかを語ってもらう。さらには研究者としての夢や体育学(会)の今後について語ってもらい、岐路に立つ若手研究者や大学院生に対する道しるべとしたい。</p>
著者
征矢 英昭
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.21_2-21_2, 2016

<p> いかなるスポーツも、好きになって自ら練習を重ねること(アドヒレンス)が上達の鍵となる。アウトカムとなるパフォマンスは、少し上がるだけでも運動習熟(練習)に好循環をもたらし、更なる向上を後押しする。あのイチロー選手も、幼少期からバッティングセンターに通い、より速いボールをうまく打つというアウトカムベースの試行錯誤を幾度となく繰り返したことだろう。これには「高意志力:Will-power」と呼ばれ、前頭前野背外側部を基盤とした実行機能(注意、判断、計画立案などの認知機能)を高く保つ必要がある。この機能は子どもにさえ蔓延する運動不足、肥満、抑鬱で低下する一方、我々は、超低強度の運動でも10分間継続するだけで高まり、前向きな気分になれるかどうかが効果を左右すること、更に、持久力とも相関することを明らかにした(Neuroimage, 2014; 2015)。スポーツは導入次第では前頭葉への刺激を通じてWill-powerを引き出し、アクティブライフに転換させることで運動パフォマンスを高めるポテンシャルをもつ。これは学習やビジネスにも応用できる。本講では、運動で引き出すWill-powerの重要性について論じたい。</p>
著者
増澤 拓也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.97_2, 2018

<p> バランス能力を向上させる手法として、2点間に張った平らなロープ上でバランス維持するスラックライントレーニング(SL)と、体幹部の堅牢性を高める体幹トレーニング(CT)が、近年注目を集めている。この両者のトレーニングはいずれもバランス能力の向上を目的としているが、SLは重心位置を動かすことで積極的に安定点を探る制御方法をとり、CTは重心位置を動かさず支持基底面から逸脱させない制御方法をとるため、制御様式が大きく異なる。本研究の目的は、SLおよびCTが姿勢安定性向上に及ぼす効果を明らかにすることである。実験参加者をSL群、CT群および統制(CO)群に配置し、15分間のトレーニングを週2回のペースで合計8回実施した。その訓練前後において重心動揺計とビデオカメラを用い、姿勢安定性の評価・分析をおこなった。分析の結果、SL 群は片・両脚の安定面と不安定面上それぞれで重心動揺が改善され、CT群は両脚時のみ重心動揺が安定化した。</p>
著者
植木 章三 冨山 浩三
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.19_1, 2016

<p> 平成24(2012)年に「スポーツ基本計画」が策定され、「スポーツを通じてすべての人々が幸福で豊かな生活を営むことができる社会」をめざして「年齢や性別、障害等を問わず、広く人々が、関心、適性等に応じてスポーツに参画することができるスポーツ環境を整備」することが掲げられた。また、平成23(2011)年には、日本体育協会と日本オリンピック委員会より「スポーツ宣言日本~二十一世紀におけるスポーツの使命~」が発表され、スポーツの二十一世紀的価値とは、「素朴な運動の喜びを公正に分かち合い感動を共有することであり、身体的諸能力を洗練することであり、自らの尊厳を相手の尊重に委ねる相互尊敬である」としている。それにより、われわれが中長期的に取り組むべき課題が示されることになったが、そのひとつはオリンピック・パラリンピックムーブメントの融合(インクルージョン)であろう。</p><p> そこで本シンポジウムでは、この「融合(インクルージョン)」を進めていくための課題について、クーベルタン卿や嘉納治五郎先生、グッドマン博士の思想を取り上げて議論するために3名の先生にご登壇いただく。真田久先生には、嘉納先生の視点から多様性を認め合う重要性について、小倉和夫先生には、パラリンピックの理念の変遷と今後の課題について、そして藤田紀昭先生には、オリンピック・ムーブメントとパラリンピック・ムーブメント融合の可能性と課題についてそれぞれお話いただき、オリンピック・パラリンピックムーブメントの融合(インクルージョン)の意義と方向性を示すことを目的とした。</p>
著者
瀬戸 恵佑
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.260_3, 2016

<p> 現在野球界において効率的なトレーニング方法の研究が数多く行われている。しかし育成年代の野球選手における多くのトレーニングは非効率であり、トレーニング時間も長時間におよぶことが桑田らをはじめとして問題提起されている(2010)。本研究では男子中学生シニアリーグ選手のトレーニング中の移動距離および移動速度と生理学的応答について、携帯型GPS装置、携帯型心拍数計を用いて測定し、トレーニング時間および運動強度を明らかにすることを目的に行った。本研究で得られた主な結果は以下のとおりである。トレーニング時間は8時間であり、トレーニング中の総移動距離は9732 ±434m、トレーニング中の最大速度は19.6 ±3.7km/h、トレーニング中の心拍数は平均126 ± 9拍/分、最大心拍数が170 ± 10拍/分、そして心拍数水準は61 ± 4%であった。また投球練習中と打撃練習中における酸素摂取量、エネルギー消費量、METSの測定も行った。以上のことからシニアリーグにおけるトレーニングは長時間におよび、比較して実際のプレー時間が極めて短い可能性があるため、間欠的トレーニングや少ない時間で効率を重視するようなトレーニングを取り入れていく事が重要であると考えられる。</p>