著者
森本 拓也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.80_3, 2017

<p> 広島カープにおける事例研究として、近畿カープ後援会は後援会設立当初、会員にとって同郷集団的機能を果たしたが、カープ黄金期を経て同郷人的結合に拠らない結節が混在していることを高橋(2005)は明らかにしている。こうした結合には、少なからず「アンチ(巨人)」という志向も含まれていると考えられる。</p><p> 「アンチ巨人」と呼ばれる人は読売ジャイアンツを嫌い、批判するという点で結節している。そのつながりは巨人が嫌いというものであり、作田啓一が「我々体験」と呼んだ「拡大体験」をもとにした人のつながりと捉えることができる。しかし、アンチ巨人は単純な拡大体験と呼べるのであろうか。他球団のファンが巨人の強さや財力、巨人に在籍したスター選手のプレイなどの魅力に没入した時に、他方で同じく作田が述べた「自我の壁」が喪失する体験=「溶解体験」が「アンチ巨人」現象には同時にみられるのではないか。それは、溶解体験を可能とした巨人の「共視」(北山,2005)でもありうる。</p><p> 本研究では、このようなスポーツファンに現れる「アンチ」現象がもたらす社会的結合の二面性について、いくつかの事例をもとに検討することを試みてみたい。</p>
著者
佐々木 玲子 石沢 順子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.208_2-208_2, 2016

<p> 子どもの体力・運動能力の低下や身体活動量の減少が問題とされている中で、幼児期から適切な運動の量と質を確保することの重要性が指摘されている。日常的に身体活動量の多い子どもは運動能力も高いという傾向がこれまでの研究で示されてきたがその多くは横断的なデータによるものである。そこで本研究では、幼児を対象にしたこれらの関係を縦断的な視点から検討することを目的とした。対象は、東京都内の公立幼稚園に通う男女45名であり、年少クラス在籍時および1年後同時期の年長クラス在籍時に同一の測定を行った。運動能力は25m走、立幅跳、ソフトボール投げ、体支持持続時間、連続両足跳越しの5種目を、身体活動量は3軸加速度計式活動量計を用いた8日間の連続測定により1日あたりの歩数と中高強度活動時間を指標とした。それらから運動能力や身体活動量の経年変化および各項目の関係性について検討した。全般に運動能力は各種目とも1年間で統計的に有意な向上を示した。身体活動量は、平日における中高強度活動時間のみ有意に増加した。運動能力、身体活動量、ならびに各項目間の関係性は、年少から年長かけてより明確にみられる傾向であった。</p>
著者
八板 昭仁 青柳 領 倉石 平 野寺 和彦 大山 泰史 川面 剛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.253_2-253_2, 2016

<p> バスケットボールのゲーム中のショットは、様々な要因に影響され同様の種類や位置からの試行であっても状況によって難易度は大きく変わることになる。本研究は、昨年の本大会におけるショット決定に影響する諸要因からショット状況の難易度についての報告の第2報である。第66回全日本大学選手権大会の男子準々決勝以降の試合を対象に、1,010本のショットの成否とそれに影響すると考えられる14項目を調査した。ショットの成否を目的変数として、クロス表によるχ2乗検定とロジスティック回帰分析による解析を行った。クロス表によって各要因の成否への影響を検討したところ11項目で有意であった。ロジスティック回帰分析では、χ 2乗値(df=96)が187.59、p<0.01で、回帰式の当てはまりは良好であり、Wald値はショットエリア7.95(df=2)、ショットポジション24.63(df=13)、防御者との間合い9.18(df=5)、防御者の手の位置8.12(df=4)、被ファウル5.41(df=2)の各項目が大きな値を示した。ショットの成否に影響する複合的な要因として、ショット試行位置と相手防御者の状況や対応が大きいことが示された。</p>
著者
八板 昭仁 青柳 領 倉石 平
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.237_1, 2017

<p> バスケットボールのゲーム中のショットは、様々な要因が関与しており状況によって難易度は大きく変わると考えられる。これまでショットの成否と影響する諸要因からショット状況の難易度を数量化する方法について報告してきた。本研究は、それらを利用してショット成功率と難易度別のショットの関連、およびゲームの勝敗との関連について検討した。第65回全日本大学選手権大会女子準々決勝以降の12試合を対象に、1,789本のショットの成否に影響する状況9項目を調査した。ロジスティック回帰分析を用いて算出した予測値から難易度を数量化し、難易度の高いショットをTough-Shot、平均的なショットをAverage-Shot、難易度の低いショットをEasy-shotとして、ピリオド別の相手チームとの得点差との関連を検討した。試投数については、Easy-shotと得点差の間に1%水準の有意な関連が認められ、Tough-shot、Average-shotに相関はみられなかった。成功数については、すべての難易度のショットに相関が認められた。また、ゲームの勝者と敗者に分類すると異なる傾向が認められ、ゲームを有利に進めるためには低難易度のショットの試投数や成功率が影響していることが示された。</p>
著者
石川 峻 青木 敦英
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.230_1, 2017

<p> 「リバウンドを制する者はゲームを制する。」という言葉があるように、バスケットボールにおいてゲームを優位に進めるためにはリバウンドの獲得が重要であることは、これまで多くの研究で報告されてきた。バスケットボールには様々なポジションがあるが、一般的にリバウンドの獲得は、チーム内で比較的身長が高く、ゴール付近でプレーすることの多いインサイドプレイヤーに求められている。しかし、レベルが高くなるほどインサイドプレイヤー同士のリバウンドの取り合いが激しくなることや、相手チームに強力なインサイドプレイヤーがいることなどから、より人数をかけてリバウンドを獲得しにいく必要がある。そのため、アウトサイドプレイヤーもリバウンドの獲得を求められることがある。そこで本研究では、公式試合のBOX SCOREからポジション別のリバウンド獲得状況を明らかにすると共に、勝敗との関係を分析し、今後の指導の一助となることを目的とした。分析対象試合は、関西学生バスケットボール連盟2部に所属しているA大学の平成28年度リーグ戦13試合とその後の入れ替え戦1試合の計14試合である。結果は本学会にて発表する。</p>
著者
中山 紗織 會田 宏
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.218_3, 2017

<p> 本研究の目的は、小学生年代における日独トップレベルのチームを対象に、記述的ゲームパフォーマンス分析を用いて、セット局面における攻撃および防御活動の特徴を明らかにすることであった。分析対象試合は、日本は全国小学生ハンドボール大会での10試合、ドイツはザクセン州U10大会での試合を含む11試合であり、いずれも日独両国内の最高峰の試合であった。分析結果を日独両国間で比較した結果、日本チームは攻撃においては、セットオフェンスの導入局面でポジションチェンジ等のチーム戦術を用いることがドイツチームより有意に多く、防御においては、フリースローライン内で消極的に位置を取ること、ボールの方へ寄って守ることが有意に多かった。ドイツチームは攻撃においては、1回の攻撃あたりのパス回数が有意に少なく、個人で突破を試みることが有意に多かった。防御においては、パスインターセプトおよびドリブルスティールが有意に多く、ボールの位置に関係なく対峙する選手をマークして守ることが有意に多かった。これらのことから、攻撃および防御のいずれにおいても日本はチーム戦術を、ドイツは個人戦術を多く用いていることが示唆された。</p>
著者
岡田 康太 東川 安雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.191_1-191_1, 2016

<p> 2015年度シーズン第1クール終了時点で、広島東洋カープはセ・リーグ最下位という成績にも関わらず、観客動員数はセ・リーグ6球団で最も高い比率で増加していた。これまでのプロ野球界では、勝利の喜びをファンと選手で共有することや華麗なプレーを見せることが、観客動員数やファンの増加に直結するという考え方が主流であったように思われる。このような中で、カープは必ずしも良い成績を残さなくても、観客動員数やファンを維持・増加させてきた。この現象から、カープファンには優勝や勝利といった成績以外に大きな価値を持ったものが存在している可能性があると推測された。そこで本研究の目的を、カープファンの成績以外の期待や欲求を調査・分析し、明らかにすることとした。まず、カープファンは、成績への期待もあるが、その他の大きな期待が存在していることを確認した。そして、カープファンは成績以外に、2015年度シーズンからカープに復帰した黒田博樹投手に関する期待と、ただカープを応援したいという欲求があることを明らかにした。これらのことから、カープは今後も成績に関係なくファンに支えられ、これまでと同様に黒字経営が可能であると考えられた。</p>
著者
伊藤 耕作 小泉 卓也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.280_1, 2017

<p> 本研究ではタブレット端末を活用した体育実技の課題解決型学習の可能性を探る。具体的には、本学体育実技で採用しているバレーボールの授業に、iPadアプリ(ゲーム分析アプリ「V-Notes」や映像分析アプリ「Dartfish Express」など)を活用することで、内容への動機づけ、課題解決力、コミュニケーション活動などにおいていかなる効果があるかを、授業を受けた学習者の反応から検討する。対象は山口県内の国立高等専門学校1年生4クラス160名とし、調査は2017年4月から5月の期間に行った。調査期間中の授業は、グループミーティング(10分)、グループワーク(20分)、メインゲーム(50分)、振り返り(10分)の順で行い、90分の授業時間内に、課題解決の手順に基づく4つのタスク(T1:課題の発見 T2:解決策の立案 T3:計画の実行 T4:解決策の評価)を各グループに課した。調査の結果、タブレット端末を活用した課題解決型学習の利点や課題がいくつか明らかになったが、その詳細は当日の発表で紹介する。</p>
著者
川野 裕姫子 出村 慎一 長澤 吉則 松浦 義昌
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.227_1, 2016

<p> 超高齢化社会を迎え、今後介護労働者の大幅な増加が予想される。一方、介護労働者は、身体的・精神的ストレス、および賃金・待遇問題や職場での人間関係に関するストレスが要因となり、高い離職率が問題視されている。本研究は507名の介護労働者を対象にストレス要因(身体、精神、賃金や待遇、および利用者との関係)に関する調査を行った。仕事以外の日常生活においてストレスを「多いに感じている」と「やや感じている」と回答した351名(女性269名と男性82名)を分析対象とした。解析の結果、いずれのストレス要因も性と経験年数の異なる群間に有意差は認められなかった。身体と精神的ストレス要因は、年代間に有意差が認められ、多重比較検定の結果、前者は30~50歳代の方が60歳代より、また後者は20~40歳代が60歳代よりストレスを感じていた。結論として、60歳代の介護労働者は、30~50代に比べ人生及び介護経験の豊富さから身体的及び精神的ストレスを感じないで要領よく介護の仕事をこなしていると推察される。</p>
著者
大森 重宜 櫻井 貴志 佐々木 達也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.289_2-289_2, 2017

<p> 「青柏祭の曳山行事(通称でか山)」は、石川県七尾市の大地主神社の例大祭「青柏祭」に奉納される山車の曳行行事で1983年(昭和58年)に国重要無形文化財に指定され、2016年ユネスコ無形遺産に登録された33の「山・鉾・屋台」の一つである。</p><p> 日本の祭りは、華やかな神輿の渡御や山車曳行などがその中心にある。本研究では日本一巨大な山車「青柏祭の曳行行事」を身体運動文化と捉え、神輿、山車などを担ぎ、舁き、曳くという遊びとしての山車曳行の身体技法と神事での祝詞などから儀式性を考察し、青柏祭曳山行事の身体性と真正性を考察する。</p>
著者
田邉 智
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.148_3, 2017

<p> 本研究では、スリーポイントショットの成功試技と失敗試技の動作を比較することで、ショットを安定して成功させるための動作要因を明らかにしようとした。被験者は大学バスケットボール部に所属する男子3名であった。被験者にはバックボードを使わず、直接リングをねらってスリーポイントショットを打つよう指示した。その時の身体各部位およびボールに貼付した反射マーカーの座標を、3次元モーション計測システムを用いて算出した(250Hz)。リリースパラメータについて、成功試技に比べ失敗試技(リングをオーバーした試技)では投射角度が有意に低く、投射位置(前後方向)は有意にゴール方向であった。一方、ボール初速度と投射高に有意差は認められなかった。各関節運動によって生み出されたボール速度ベクトルの方向を調べたところ、肘の伸展および手首の掌屈動作によるボール速度ベクトルは失敗試技の方が有意に下を向いていた。つまり、失敗試技では、よりゴール方向でボールを投げていたため、肘や手首の位置もゴール方向になり、それによって肘の伸展および掌屈によるボール速度ベクトルが下を向いてしまい、ボールの投射角度が低くなったと考えられた。</p>
著者
杉山 卓也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.18_1-18_1, 2017

<p> 静岡はサッカー王国として名を馳せ、清水エスパルス、ジュビロ磐田という名門チームや、バスケットボール、ラグビー、陸上の強豪チームを抱えるなど、温暖な気候もあってか、スポーツは盛んのように思える。サッカーにおいては、日本代表における静岡県出身者は減り、前述したJリーグの2チームは近年2部リーグ落ちを経験するなど苦戦しているが、静岡県内にJクラブは4チーム存在し、静岡という地域に本当にサッカーが根付いているのだと感じる。依然として、若年層のサッカー競技人口も多い。かなりの割合の子供がサッカーをやっているように思えるが、現実的にはプロのレベルに到達するまでに、大多数が淘汰される。彼らに他のスポーツの適性を見いだすことはできるのであろうか?他の選択肢を与えることで、彼らが高いレベルで競技を行ったり、好きな種目に出会える可能性を高めることができるのではないだろうか。それらを踏まえ、若年層での多様なスポーツ経験の必要性や、身体的側面・心理的側面からの適所に人材を配置するなど、限られた人的資源を有効に活用すべく、依然として多いサッカー競技者からの種目転向の可能性を考える。</p>
著者
金丸 雄介
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.62_3-63, 2016

<p> 演者はこれまで全日本男子強化コーチを8年間務めた。また、所属する実業団柔道部のコーチを務め、世界選手権やオリンピックのメダリストを輩出した。コーチとしての情報活用を振り返ると、膨大な試合データの中から、選手が必要とする真の情報(結果論)を抽出し、分かりやすく伝えることは想像以上に難しかった。しかし、この部分がコーチの感性(実践知)が最も必要とされるところであり、コーチの技量が試されたところだと考える。</p><p> 2012年ロンドンオリンピックでは、男子チームが金メダル0という結果に終わり、歴史的敗戦となった。その後、井上康生男子新監督の指揮のもと、情報戦略の充実が強化プランの一つに挙げられた。2013年から情報戦略部隊が外国人選手の試合を撮影・収集するだけでなく、試合内容を詳細に分析し、数値化した。この情報をコーチが持つ情報と擦り合わせながら、各大会で活用した。また、柔道のための試合分析ツールが構築され、コーチは自身で簡単に試合分析ができるようになった。これにより、コーチ特有の分析も可能になった。</p><p> 本シンポジウムでは、世界で戦う最前線での「情報活用」の一端を事例として、今後の課題解決に向けて議論を深めてみたい。</p>