著者
勝亦 陽一 山田 亜沙妃 池田 達昭
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.205_3, 2016

<p> 本研究は、日本人一流競技者における小学生期の競技種目実施状況を明らかにすることを目的とした。対象は、14&ndash;55歳の日本人一流競技者790名(男性394名、女性396名)であった。対象の競技は、2000年以降のオリンピック競技種目とした。対象者には、専門競技および専門競技以外の競技経験(競技開始年齢、練習頻度)を質問紙に記入するよう指示した。本研究の結果、未就学期および小学生期に専門競技を開始したのは、男性が250名(63%)、女性が238名(60%)であった。小学生期に専門競技および専門競技以外の競技を実施していたのは、男性では69名(18%)女性では81名(20%)であった。専門競技以外の実施は、男性では水泳が40名、サッカーが34名、野球が26名と多かった。一方、女性では、水泳が44名、体操競技が7名と多かった。本研究で対象とした日本人一流競技者の多くは、小学生期に複数の競技を経験することによって多面的に運動能力を発達させたのではなく、専門種目のみを長期間に渡り実践することで種目特有の運動能力を発達させたと考えられる。</p>
著者
木村 和希 青柳 領
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.264_3, 2016

<p> バスケットボールの試合では、毎回試合内容を記録した統計値(STATS)が公開され、観客の興味を引くと同時に、試合分析にも利用されてきた。しかし、試合結果に影響するSTATSは多様で、競技水準、性、地域差に影響を受けると考えられる。そこで、本研究は試合結果に及ぼす影響を競技水準、性、地域差別にSTATSにより検討する。対象はアジアおよびアフリカ大会の男女、ジュニアおよびシニアの計6大会である。STATSは2点シュート試行数、3点シュート試行数、リバウンド数、ターンオーバー数などの14項目と、それらの比率14項目の計28個目である。そして、これらを独立変数とし、得失点差を基準変数として重回帰分析、および勝敗を基準変数とした判別分析を行った。結果、本数を独立変数にした女子のアフリカ大会の判別関数による結果が有意でなかった以外はすべて1%水準で有意差が見られた。得失点差および勝敗ともに2点シュート試行数、アシスト数、リバウド数、ターンオーバー数など8項目で両者に有意な関連をしていた。また、リバウンド数やリバウンド支配率は得失点差には有意な関連を示したが、勝敗には有意な関連を示さなかった。</p>
著者
栗原 俊之 伊坂 忠夫 岡本 直輝
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.221_1, 2017

<p> 全米プロバスケットボール協会(NBA)や日本プロバスケットボールリーグ(Bリーグ)は、各試合の内容を記録した統計値(STATS)を公開している。本研究は試合結果に関係するSTATS項目が日米のプロリーグで異なるかを検討することを目的とし、2016–17年シーズン全試合(NBA 1230試合、B1 540試合)のSTATSを使って統計解析を行った。一般的なSTATS項目(前後半得点、シュート、フリースローの試投数・成功数・成功率、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、ファウル、スティール、ブロック)に加え、攻撃回数、攻撃効率、防御効率および両チーム間の各項目の差を独立変数とし、得失点差を従属変数とした重回帰分析、勝敗を基準変数とした判別分析を行った。結果、重回帰分析では日米ともに攻撃効率、防御効率、シュート成功率、フリースロー成功数の差が選択され、NBAでは3点シュート成功数の差、Bリーグではファウル数の差が選択された。判別分析ではほとんどすべての項目が関与したがNBAでは3点シュートに関する項目が、Bリーグではリバウンドに関する項目が勝敗に大きく関係していた。</p>
著者
來田 享子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.45, 2016

<p> 本報告では、1920年代後半から1930年代にかけ、メディアとオリンピックが結びつく中での女性選手たちとメディアとの関係をたどってみたい。この報告における問題関心は次の2点である。</p><p> 人見絹枝は1926年国際女子競技大会での活躍を描かれる側であると同時に、新聞記者として描く側でもあった。1934年第4回国際女子競技大会に出場した4名の選手たちは、海外から日本に向け、ラジオを通じ直接語りかけた。オリンピックがメディアによって/メディアのイベント化(浜田、2016)される中で、彼女たちは表象の対象であると同時に自らを表象する者でもあった。そこにはどのような意味を見出すことができるだろうか。</p><p> 人見絹枝が銀メダルを得たレースは、800m以上の距離が女性には激しすぎる走競技だとされたが、その判断にはメディアが大きな影響を与えていた(來田、2015)。1936年ベルリン大会で初の日本人女性金メダリストとなった前畑秀子の帰国時の写真には「次は結婚か」の見出しが添えられていた。メディアが彼女たちにジェンダーを刻印することは、オリンピックのイベント化にどのように作用したのだろうか。</p>
著者
稲垣 良介 岸 俊行
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.280_2, 2017

<p> 本研究は、学校体育における水難事故の未然防止に資する指導内容について検討するため、海水浴場の旗に対する理解の仕方や知識、注意の程度について調査した。調査対象者は、F大学の1年生145人であった。調査項目は、①旗の色の意味に関する項目、②遊泳に関する注意の程度に関する項目、③旗が示す意味の理解の有無を問う項目、④旗に関する学習経験に関する項目から構成された。回答は、度数を集計した後、χ二乗検定を行った(項目①③④)。注意の程度を問う項目は、VASを用いたため平均値と標準偏差値を算出した(項目②)。①について集計したところ、赤白両旗は、遊泳可20名(12.0%)、遊泳注意99名(59.3%)、遊泳禁止48名(28.7%)であった。③旗の色が示す意味を理解していた学生は3名(2.1%)であった。④旗の意味を学習した経験のある学生は3名(2.1%)であった。これら結果より、海水浴場における旗に対しては、情報を受信する側の認識は必ずしも十分でないことが示唆された。水難事故に対しては、事後対応的な学習だけでなく、未然防止に資する教育を充実させることが肝要であり、学習機会の充実を図る必要があることが示唆された。</p>
著者
石澤 伸弘
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.96_2, 2016

<p> 教員の高齢化や体罰事件などに端を発した、部活動やクラブ活動など課外活動(以下、部活動)への問題点や限界説が叫ばれて久しい。最近では「部活顧問はブラック過ぎる」とのことで、中学・高校の部活動を巡り、顧問を務める教員の多忙さや、休日返上の活動などの問題点を改善しようと、若手教員らのネットによる署名活動も行われている(氏岡、2016)。北海道教育大、東京学芸大、愛知教育大、大阪教育大の4教育系大学が連携して、教員養成の高度化支援システムの構築を目指す「HATOプロジェクト」において、全国の小・中・高校の教員を対象に「教員の仕事と意識に関する調査」を実施し、5,373名より回答を得た。本調査では、上記した部活動に関する問題点を裏付ける結果が示され、「部活動・クラブ活動の指導が負担である」と回答している教員が小学校で約35%、高校で約60%、そして中学では約70%存在することが明らかとなった。</p>
著者
鈴木 亜美 梅澤 秋久
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.259_1, 2017

<p> 本研究では、大学生に実施した回顧的アンケートで得られた知見を基に、伊藤ら(2001)が抽出した6つの学習動機因子のうち「充実志向」と「集団志向」を高める体育授業の在り方を検討した。「充実志向」とは、運動そのものに動機づけられている因子であり、「集団志向」とは、仲間に動機づけられている因子である。そこで、「自己」、「他者」、「モノ」の全体的な関係性によって、「文化の中心的な面白さ」を探究していく授業を構想し、実践を行った。対象はA国立大学附属B小学校第2学年の児童70名であり、2学級においてボールゲームを全6時間実施した。VTRで撮影した映像から描いたエピソード記述、毎授業後に実施した形成的授業評価と自由記述、参観者からのコメントを踏まえながらアクション・リサーチを行うことで理想とする実践の実現を目指し単元を進めた。その結果、①「運動の機能的特性」に触れる時間の確保、②教師や児童同士による良い動きの紹介・価値づけ、③ペアチームの設定等、児童が関わり合う必然性の確保、④ゲームの直前直後の作戦タイムの4つが「充実志向」「集団志向」を高めるために有効である可能性が示唆された。</p>
著者
有賀 雅史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.20_2, 2017

<p> 競技力向上のための適正なトレーニングプログラムを作成のためには、事前に競技特性を考慮したフィジカルテストを実施し、その測定結果を分析し目標となる体力要素を把握することが重要である。ストロングポイントとウイークポイントを明確にし、各パフォーマンスを向上させるトレーニングプログラムを作成、プログラムを実行、効果判定修正、再テスト、継続のサイクルを繰り返す。本セミナーでは、高校サッカーのためのフィジテストの実例から、テスト結果の検証、各体力要素の関連、トレーニングプグラム作成を紹介する。また、近年の新たな測定装置の登場により可能となった反応アジリティの意義についても検討する。反応アジリティとは、オープンスキルとしても知られるランダムな情報を認知、判断、実行する敏捷性の能力である。</p>
著者
吉田 聡美
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.28_2, 2016

<p> パラリンピック選手への心理サポートは、2002~2003年のニーズ調査を機に2004年からスタートした。夏期、冬季のパラリンピック大会を重ねるごとに心理サポートの重要性が高まり2012ロンドンパラリンピックでは、試合期での心理的コンディション維持と、これまでの継続的なサポートから選手村にて日本選手団255名を対象に487名に心理サポートを実施した。</p><p> 主なサポート内容は、自律神経のバランスを分析する加速度脈波測定器、パルスアナライザープラスビューTAS9VIEW(株式会社YKC社製)を用い、自律神経のバランス・肉体的疲労度を測定し、心理的コンディションを客観的・主観的に確認。その後、選手の訴えに応じて試合に向けての心の準備や振り返り、気持ちの切り替えや次の試合に向けて目標設定、リラクセーション等の心理的スキルを提供した。生理的指標や面談により、主観的な感覚と生理指標が一致し安心に繋がった、試合に伴う精神的ストレスが緩和した等の意見が選手・スタッフから得られた。他の国際試合でも同様に心理的コンディショニングの重要性が認識されている。</p>
著者
高橋 靖彦 本谷 聡 堀口 文
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.224_1, 2017

<p> ラート競技は、器具の特性を活用した運動の難しさと出来映えを競う評定競技であり、直転、斜転、跳躍の3つの種目がある。主な採点項目には、演技の価値を示す「難度点」と、演技の正確性を示す「実施点」があり、国際審判団によって最終得点が決定される。近年は国際競技規則改訂が繰り返され、選手はそれに適応した演技を構成するために、最新のトップ選手の演技動向を把握する必要がある。本研究では、世界選手権2016の団体戦での上位入賞国(ドイツ、日本、スイス、オーストリア)が出場した、世界チームカップ・ラート競技選手権2017における全演技について調査を実施した。その結果、種目別の最高得点は直転が11.85点(難度点5.00点)、斜転が11.85点(難度点6.80点)、跳躍が10.30点(難度点5.80点)であった。2014年の前回大会と比較すると、斜転の最終得点が大きく上昇する傾向が認められた。その要因として、本大会から、斜転において従来の最高難度であったD難度(0.80点加点)に加え、R難度(1.00点加点)が導入され、難度点の上限がより高くなったことが考えられる。</p>
著者
高橋 靖彦 本谷 聡 堀口 文 小出 奈実 相原 奨之
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.269_2-269_2, 2016

<p> ラート競技は、3種目の演技中に実施される運動の難しさとその出来映えを競い合う採点競技である。大会では、直転、斜転、跳躍の3種目が実施され、主に演技における技の難しさを示す「難度点(difficulty score)」とその演技の出来映えを示す「実施点(execution score)」で最終得点が決定される。それらの採点の基準には国際ラート連盟競技規則(IRV code of points)が適用されるが、体操競技やフィギュアスケートなどの採点競技と同様に、国際審判員の主観的な判断により採点傾向が異なることが報告されている(本谷ら、2011)。そのため、選手は競技規則を理解するだけではなく、近年の国際審判団の採点傾向を把握することが重要と考えられる。本研究では、2016年6月にアメリカ・シンシナティで開催された第12回世界ラート競技選手権大会における、種目別決勝出場選手の演技構成ならびに各採点結果を調査及び分析することによって、今後のトレーニング計画に役立つ実践的な示唆を得ることを目的とした。なお、詳細な演技構成ならびに各採点結果については当日発表する。</p>