著者
片平 理子 別府 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.371-375, 1991-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

トイレに関する意識調査を行った後, 公共トイレの洋式便座の一般生菌数を測定し, 分離菌を同定した.また, 市販便座クリーナー, カバーの効果を調べたところ, 以下の結果を得た.(1) 公共トイレの洋式便座には多くの人が「汚い, 不衛生」というイメージを抱いており, とくに何もせずに直接腰掛けて使用する人は10%弱であった.(2) 便座50cm2あたりの一般生菌数は4~1,400で, 場所によりばらつきがあったが, 夏期は冬期に比べ多い傾向を示した.(3) 大腸菌群が検出された頻度は検査した便座の10~60%で, 夏期のほうが高かったが, 検出された菌数は, 一般生菌数に比べると著しく少なかった.(4) 便座から分離された菌は, Aerecoccus, Microceccess, Staphylocoms, Bacillusが多く, 皮膚由来ではないかと推測された.以上 (2) ~ (4) の結果より, 便座からの感染の危険性は低いと予想された.(5) 市販便座クリーナー, カバーの使用による皮膚接触面の細菌汚染防止効果が認められた.
著者
大﨑 茂芳
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.521-528, 2015 (Released:2015-10-17)
参考文献数
43
著者
時友 裕紀子 山西 貞
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.347-353, 1993-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

タマネギ中の遊離糖含量と香気成分の加熱による変化を明らかにすることにより, 加熱タマネギの甘いフレーバーに寄与する因子について検討を行った.以前より加熱タマネギの甘味成分とされていたプロパンチオール (プロピルメルカプタン) は, その標準物質の水溶液の官能評価により甘味を呈さないこと, タマネギの加熱により減少すること, が明らかとなり, 加熱タマネギの甘味成分ではないことが明確となった.生タマネギ中に6%程度存在する遊離糖 (グルコース, フラクトース, シュークロース) の含量は加熱により変化しないか, あるいは, 減少する傾向にあり, 新たな遊離糖の生成はないことがわかった.そして, 水分の蒸発による糖濃度の上昇, 加熱による組織の破壊や軟化により甘味を強く感じるものと考えられた.焼きタマネギの香気成分の分析により, 35成分を同定, 推定した.加熱により, 生タマネギ香気の主成分である含硫化合物量は減少し, 糖の加熱分解により甘い香気成分が生成, 存在しており, 加熱タマネギの甘いフレーバーの一因と考えられた.
著者
渡壁 奈央 古田 歩 鈴木 麻希 杉山 寿美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.648-659, 2023 (Released:2023-12-08)
参考文献数
46

戦国期毛利氏の饗応献立について, 『元就公山口御下向之節饗応次第』に記された6回の饗応献立記録と, 『身自鏡』に記された季節の食材や調理法から, 饗応献立の料理構成を検討した. 膳部の本膳, 二の膳, 三の膳の料理の数は, それぞれ7, 5, 3であり, 異なる15の料理が供されていた. また, 1回の饗応で料理の重複は認められなかった. 一方, “かうの物” “かまぼこ” “あわび”等は, 6回の饗応すべてで供されていた. 御汁は, 二の膳, 三の膳で2つずつ供され, 二の膳では, 魚 (鯉, 鯛, 鮒) の汁と, 山菜または海藻の汁, 三の膳では鳥 (白鳥, 靏, 鴈) の汁と, 獺またはあわびの汁であった. 『身自鏡』には, 塩による保存の有無で魚, 鳥, 獺の汁の調理方法が異なることが記されていた. 献部では, 初献で“雑煮”, 二献で“さしみ”“鳥”“栄螺”が供されていた. 点心の献には, 上位の食材とされる鯉, 白鳥, 鶴や, 季節の情景を表した料理が, “御副物”として組み合わされていた.
著者
森 理恵 櫻井 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.225-236, 2012-05-15 (Released:2013-10-09)
参考文献数
18

Based on an examination of books on hand-knitting published during the first half of the twentieth century, the authors observed three major trends.First, the repertoire of items that Japanese people knitted by hand, such as accessories and innerwear, gradually expanded to include various types of garments. Moreover, in the 1920s, there was an increase in the types of tools and in the variety of imported and domestic yarns used for knitting.Secondly, the authors determined that there were two periods when hand-knitting flourished: the first phase dates from the latter half of the 1880s to the early 1900s, and the second phase dates from the 1920s to the early 1930s.Third, the discourse on hand-knitting shifted over time. From the 1900s, hand-knitting was appreciated from a practical and economical viewpoint, and then from the 1910s to 1920s it was also regarded from an aesthetic and technical point of view. After the 1920s movement to ‘make good use of leisure time’ and ‘create an artistic home,’ hand-knitting came to be seen as one of the duties women should engage in.Throughout the mid-twentieth century, connections between hand-knitting and femininity were strengthened by this discourse.
著者
大塚 斌 菊田 文夫 近藤 四郎 高橋 周一
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.311-318, 1992-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
19

(1) 足の形状とその革靴のサイズとの関連を検討するために, 日本人成人の男性149名, 女性178名の左右両足について, 足長および足囲ボールを計測した.この計測値をもとに, 靴の適正サイズをJIS規格によって判定した.同時に足の靴に対する「適合感」の好みを, 「ぴったり」・「ふつう」・「ゆるめ」の三つに分類して, その分類ごとに靴の適正サイズと自称サイズの一致度を検討した.(2) 革靴の自称サイズのうち最も多いのは, 足長サイズでは男性が25.0 (cm), 女性が23.0 (cm) であって, 足囲ボール表示サイズをあわせてみた場合には, 男性では25EEE (ボール部周径が255mm), 女性では23EE (ボール部周径が234mm) であった.(3) 足長の適正サイズと自称サイズの一致度は, 男性では約41%, 女性では約32%であった.被験者のうち, 男性は38%の者が, 女性は59%の者が自分の足長サイズは知っているが, 足囲ボール表示サイズについては知らなかった.この結果は, とくに市場に多く出回っている婦人靴に, 足囲ボールサイズの表示がない場合が多いが, DやEに相当するものが多いという事情によるものと考えられた.(4) 足長の自称サイズと適正サイズとの差異をみると, 「ぴったり」, 「ふつう」, 「ゆるめ」と移るにつれて, 男性では自称サイズが適正サイズよりも大きい者の割合が増加するが, 女性ではこの傾向は認められなかった. (5) 足の靴に対する「適合感」の好みを, 「ぴったり」・「ふつう」・「ゆるめ」の三段階に分けてみると, 男女ともに「ぴったり」・「ふつう」・「ゆるめ」と移るにつれて, 自称の足囲ボール表示サイズはしだいに大きくなる傾向がみられた.(6) 女性の自称サイズは, 足長・足囲ボールの計測値から判定される適正サイズよりも大きい傾向が認められた.
著者
貝田 さおり 玉川 雅章 渋川 祥子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.147-154, 1999-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5
被引用文献数
2

牛肉の最適加熱時間を決定するために, 厚さ 20 mmの牛肉を 120~220℃ の範囲で熱板焼きする場合の熱板温度の違いによる影響を, 肉の中心温度を 55, 70, 85℃ の 3 段階に変えて検討するとともに, 各加熱温度における時間の算出方法について検討した.その結果は次のようにまとめられる.(1) 熱板温度の違いが影響するのは表面の焼き色であり, 硬さや厚さは肉の中心部を何度まで加熱するかによって決まることが明らかになった.(2) 生の肉の熱物性値から, 非定常の熱伝導の解だけを利用する方法で加熱時間の推定を行うことができた.(3) 厚さ 20mm の牛肉を熱板で焼く際の最適な加熱条件として, 程よく焼き色がつく熱板温度と加熱時間を提示することができた.
著者
玉木 雅子 鵜飼 光子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.69-76, 2003-01-15
被引用文献数
4

タマネギを充分に褐変するまでいためたときの性状の変化を調べた。(1)タマネギを長時間炒めると水分の蒸発とともに,色,味,香りが変化した。できあがり量が40%から20%へと減少する過程で色調が急激に変化し,刺激臭も消失,甘く香ばしい香りへと変化した。炒めることにより甘味だけでなく酸味や苦味も生じた。(2)タマネギの色が褐色に変化するまで炒めると,グルコース,フルクトースおよび遊離糖総量が減少した。(3)炒め時間の異なるタマネギからスープを調整すると,材料となる炒めタマネギとは味や香りの感じ方が異なり,フレーバーの優れるスープを調整するためには炒めたタマネギよりも長時間の炒め操作が必要であった。(4)炒めタマネギやオニオンスープの糖含有量と,官能評価による甘味の強さとは対応しなかった。
著者
西村 公雄 後藤 昌弘
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.713-721, 1999-07-15
被引用文献数
1

90℃加熱中に生じる鶏もも肉浸出液によるホワイトソースの分離は,2.4 m_M N-ethyl-maleimide (NEM)または,10 m_M ethylendiaminetetraacetic acidの添加により抑えられた.一方,浸出液中のタンパク質は,ホワイトソースのクリーム層と結合せず,また,加熱凝集した浸出液をホワイトソースに加えて再加熱しても分離は生じなかった.以上のことは,加熱中に浸出液中のタンパク質分子間にSS結合と2価カチオンが関与する相互作用が生じ,その結果ネットワークを形成する際にカゼインミセルや油滴をトラップすることが,分離の原因であることを示している.さらに,浸出液中のタンパク質表面疎水性の加熱による増加にNEMは影響を与えなかった.このことは,NEMが存在してもしなくても,浸出液中のタンパク質の凝集が同程度であることを示している.
著者
緑川 知子 登倉 尋實
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.323-330, 1994-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
30
被引用文献数
2

寒冷環境における帽子の保温効果について, 着帽による被覆部の保温効果が, 体全体からの熱放散をどれほど減少させているか, 果たして直腸温・鼓膜温にどれほど影響を及ぼしているのかを, 温熱生理学の立場から明らかにするために, 7人の女子学生を対象に, 環境温10℃の寒冷環境において, ウサギの毛皮でできている防寒帽着用時と無帽時について, 体温調節反応を調べた.得られた主な知見は, 以下の通りである.1) 環境温19℃における鼓膜温は, 無帽時36.67±0.11℃, 着帽時36.65±0.12℃で, ほぼ同じレベルであったが, 寒冷暴露直後, いずれの場合にも約0.1℃下降した.無帽時の鼓膜温は下がり続け36.54±0.13℃に至ったが, 着帽時の鼓膜温は, 寒冷環境において着帽により, むしろ0.3℃の上昇を示し, 36.77±0.12℃となり, 無帽時より有意に高いレベルを維持した。有風下では, 無帽時には0.25±0.05℃の下降を示したが, 着帽時には0.11±0.03℃しか下降しなかった.2) 頭頂部毛髪上温は, 前室では無帽時には29.8±0.9℃, 着帽時に30.8±0.5℃で, ほぼ同じレベルであったが, 寒冷暴露後無帽時に直ちに約8℃下降し21.5±0.7℃になった後, 有風時には更に4.6℃の下降を示した.寒冷暴露後の着帽時の頭頂部毛髪上温は, むしろ1.7±0.5℃上昇を示し, 無帽時よりも有意に高い32.9±0.5℃のレベルを維持した。有風時も僅か0.5±0.7℃しか変化しなかった。帽子の表面温は, 前室に置いているときにはほぼ室温と同じ19℃であったが, 寒冷暴露後は, 環境温に近い13℃を示した。これは, 無帽時の頭頂部毛髪上温21.5±0.7℃よりも, 更に低い値であった.3) 前額部表面温は, 前室では無帽時に32.9±0.1℃, 着帽時に32.4±0.2℃でほぼ同じであったが, 寒冷暴露後は, 無帽時に2.4±0.4℃下降を示し30.3±0.4℃となり, 有風時にはさらに5.6±0.6℃下降した.着帽時には寒冷暴露後1.9±0.2℃上昇を示し, 無帽時よりも有意に高い34.6±0.2℃となり, 有風時も0.7±0.2℃の下降しか認められなかった.4) 前室における直腸温は, 無帽時には37.02±0.09℃, 着帽時には37.00±0.12℃で, ほぼ同じであった.寒冷有風時における直腸温は, 無帽時には0.02±0.02℃の有意な下降を示したが, 着帽時には変化が認められなかった.5) 無帽時の心拍数は前室における78.41±11.9beats/11ninから, 寒冷暴露後有意に低下して68.9±10.7beats/minになったが, 着帽時には有意な低下は認められなかった (前室では76.9±12.7beats/min, 寒冷暴露後71.8±11.5beats/min).寒冷環境並びに有風下において, 耳部は着帽時にも無帽時と同様に露出されていたにも拘わらず, 鼓膜温が着帽時に無帽時よりも有意に高く保たれたのは, 着帽時には帽子の保温効果により頭頂部毛髪上温, 前額部皮膚温が無帽時のように低下しなかったことにより, 組織伝導による熱放散が少なく, また対向流熱交換も行われて, 鼓膜温を低下させなかったと考察した.無帽時に認められた寒冷有風時における直腸温の有意な下降が, 着帽時には認められなかった.これは, 着帽によって体全体からの熱放散が抑制されたからと考えられる。また, 着帽時には前額部が保温されたので, 無帽時に認められた寒冷刺激による徐脈が, 着帽時には消失した.
著者
高田 式久
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.745-749, 2012 (Released:2014-02-14)
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
渕上 倫子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.479-491, 2014 (Released:2015-01-01)
参考文献数
74
被引用文献数
1
著者
峯木 眞知子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.297-302, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1
著者
川嶋 比野 数野 千恵子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.553-560, 2009 (Released:2012-01-05)
参考文献数
16
被引用文献数
5

The effect of the proportion of blue on a plate, between white and blue, on the appetite was investigated. Three types of plate were used: Japanese, Western, and Chinese style plates that were blue and white, or only blue. Depending on the ratio of blue to white, the plates were classified into four groups: A (10-20%), B (25-35%), C (55-65%), and D (100%). Two meals of Japanese, Western, and Chinese food, involving a total of six dishes, were served on each type of plate, and photographed. An evaluation panel looked at the pictures of the A, B, C, and D plates simultaneously and evaluated their effect on appetite by scoring on a questionnaire. The evaluated mean value for the A plates was significantly higher than that for C and D, suggesting that the plates with a blue-to-white ratio of 10-20% increased the appetite. The evaluated mean appetite value for D was significantly low with all the meals, suggesting that all-blue plates reduced the appetite. The correlation coefficient between the ratio of blue to white and mean appetite was -0.79, indicative of a negative correlation between these variables. The effect of the saturation of blue was also examined. Plate E with a blue-to-white ratio of 100% at a lower saturation than D was tested, and a similar questionnaire survey was conducted. The evaluated mean appetite for E was lower than that for D in all cases except with one Western meal. The results suggest that a blue plate with low saturation reduced the appetite more than a blue plate with high saturation.
著者
道本 徹
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.203-209, 2001-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
17

昨年都立病院で発生した女性患者が消毒液の注射により死亡した事件で, 死亡した患者の遺族が医療ミスとその隠蔽工作によって受けた精神的苦痛に対して提訴する考えであることが報じられており, これに対し病院側は医療事故対策を検討し再発防止のために「航空機の事故防止対策の手法を取り入れ, 事故報告をどんどん出すように奨励している」と述べている.また, 今年の5月の朝日新聞の記事では医療ミス防止に向けてNASA (航空宇宙局) 方式を導入する米国の復員軍人省の例が紹介されている.NASA方式というのは航空の自発的安全報告制度のことでFAA (米国連邦航空局) から委託を受けて第3者であるNASAが1976年から運用している制度であり, 人間はミスを犯す者であるとの認識から故意でない限り, 報告者を罰するより事故の再発防止の方を重要視する免責制度を基本とした安全報告制度である.この制度は航空機のパイロットや客室乗務員, 整備士, 航空管制官等が, 安全を脅かすようなミスを犯したり, いわゆるヒヤリ・ハット的な出来事を自発的に報告し, 事故となる前にプロアクティブに対策をとり事故を未然に防止するために活用されている.米国においてはこのような免責を基本とする安全報告制度は航空の世界だけでなく他の交通機関や医療の事故を未然に防ぐ対策を取るうえで有効とされている.最近の航空機事故の原因を分析するとヒューマンファクターに起因するものがほとんどであり, 事故後のパイロット, 整備士あるいは管制官の証言で「その問題は前から分かっていたんだよ」ということがしばしばある.GAINはこれら航空に携わる人々の自発的な安全情報を集め, 分析し, 事前に安全対策を取る世界的なネットワークを構築しようとするものである.本稿は航空の専門家でない利用される立場の皆様に航空界で現在進められている安全報告制度「GAIN」の活動についてご紹介すると共に, 「GAIN」のプロアクティブな事故防止の考え方はあらゆる方面での事故防止対策に応用され得るものであることをお伝えするものである.