著者
田村 暢子 石井 則久
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.115, no.14, pp.2405-2407, 2005-12-20 (Released:2014-12-10)
被引用文献数
3

高齢の疥癬患者16例(平均年齢82.8歳,入院14例・外来2例)にイベルメクチン内服治療を行い,有効性と安全性を検討した.1回投与量200 μg/kgを1週間間隔で2回投与し,初回投与から3週間後に効果判定した.併用外用剤はレスタミン軟膏(頓用)のみとした.途中脱落・中止の3例を除いた13例中11例が治癒した.また,投与前後での血液生化学検査所見に異常を認めなかった.副作用は下痢1例,中毒疹1例で共に一過性で軽症であった.8例については4カ月後までに再発を認めなかった.以上よりイベルメクチン内服は高齢者においても有効性と安全性の高い治療であると考えられた.
著者
西井 貴美子 山田 秀和 笹川 征雄 平山 公三 磯ノ上 正明 尾本 晴代 北村 公一 酒谷 省子 巽 祐子 茶之木 美也子 寺尾 祐一 土居 敏明 原田 正 二村 省三 船井 龍彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.14, pp.3037-3044, 2009-12-20 (Released:2014-11-28)

大阪皮膚科医会は学校における水泳プール授業時のサンスクリーン剤使用の実態調査を大阪府下の公立学校1,200校を対象に実施したが,結果は約3割以上の学校がサンスクリーン剤使用を禁止または不要としていた.禁止の理由として水質汚染の心配が多数をしめたため,2007年夏に大阪府内の公立中学校14校の協力を得てワンシーズン終了後の水質検査を実施し,プール授業開始直後の水質と比較した.結果は文部科学省の学校環境衛生の基準に定められている6項目(pH,濁度,遊離残留塩素,過マンガン酸カリウム消費量,大腸菌,トリハロメタン)のうち濁度,過マンガン酸カリウム消費量,大腸菌,トリハロメタンに関しては基準値からはずれた項目はなかった.遊離残留塩素,pHについてはサンスクリーン剤使用を自由または条件付許可の学校で基準値より低値を示す傾向にあった.統計的検討はサンプル数,各校の条件の違いでむずかしいが,定期的にプール水の残留塩素濃度を測定,管理し,補給水の追加をすれば紫外線の害を予防する目的でサンスクリーン剤を使用することに問題はないと考える.
著者
原田 朋佳 山野 希 北尾 陸将 横山 大輔 増田 泰之 足立 厚子 嶋倉 邦嘉 千貫 祐子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.10, pp.2339-2350, 2022-09-20 (Released:2022-09-20)
参考文献数
21

獣肉アレルギー患者10例を対象に抗原検索を行い臨床的特徴をまとめた.方法:問診にて病歴,ペット飼育歴やマダニ咬傷歴,居住地を含む患者背景,臨床症状を確認し,プリックテストおよび抗原特異的IgE検査,ウエスタンブロット法による血清学的解析を行った.結果:10例中7例はgalactose-α-1, 3-galactoseによる獣肉アレルギー,2例はハムスターまたはネコ被毛に感作されたpork-cat syndrome,1例はコラーゲンを原因抗原とし,獣肉のみならず鶏や魚にも反応した稀な症例であった.
著者
梶田 章恵 久保田 由美子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.133, no.3, pp.481-491, 2023-03-20 (Released:2023-03-21)
参考文献数
26

33歳女性.深在性エリテマトーデスでヒドロキシクロロキン硫酸塩とステロイド少量内服中.コロナワクチン接種後から四肢,腰背部に皮下結節が新生,2回目接種3カ月後には下肢痛,弛張熱,発熱時の紅斑,高フェリチン血症を認め,成人スチル病の診断基準を満たした.皮下結節は著明なムチン沈着とlobular panniculitisを呈し,CT検査で両下肢の広範な脂肪織炎を認めた.ステロイドパルス療法とシクロスポリンを併用し約2カ月で改善した.コロナワクチン接種を契機に成人スチル病,マクロファージ活性化症候群を生じたと推測した.
著者
千貫 祐子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.3, pp.505-509, 2021-03-20 (Released:2021-03-20)
参考文献数
17

筆者らは,本邦における獣肉アレルギーの主要な原因抗原エピトープが米国からの報告と同様,糖鎖galactose-α-1,3-galactose(α-Gal)であることをつきとめた.さらに,マダニ唾液腺中に糖鎖α-Galを証明し得たことにより,本邦における獣肉アレルギーの感作原因がマダニ咬傷であることが推察された.獣肉アレルギー患者は,交差反応のために,カレイ魚卵や抗悪性腫瘍薬のセツキシマブに対してもアナフィラキシーを発症する.後者では死亡例も発生しており,我々臨床医は,マダニ咬傷による糖鎖抗原感作から生じる多彩なアレルギーに留意しなければならない.
著者
石川 治 西尾 麻由 石渕 隆広
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.12, pp.2595-2604, 2021-11-20 (Released:2021-11-22)
参考文献数
10

コロナワクチン接種後皮膚副反応と診断した22例を臨床的に検討した.患者は20~60歳代,モデルナ社製12例,ファイザー社製10例で,凍瘡型6例はモデルナ社製ワクチン被接種者のみに認められ,接種6~10日後発症していた.麻疹型はモデルナ社製では2~4日後,ファイザー社製では7~22日後,接触皮膚炎型は両社製とも2~8日後であった.10例は副腎皮質ステロイド薬を内服し,22例とも治療開始後1~2週間で軽快した.皮膚副反応に関する正しい情報の発信が求められている.
著者
野澤 茜 大谷 道輝 松元 美香 杉浦 宗敏 内野 克喜 山村 喜一 江藤 隆史
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.371-373, 2012-02-20 (Released:2014-11-13)
被引用文献数
1

保湿剤の先発医薬品と後発医薬品の効果の差を健常人5名で乾燥皮膚モデルを用いて試験を行った.ヘパリノイド製剤のローションとクリームの先発医薬品と後発医薬品を1日2回10日間塗布し,角層中水分量を比較した.その結果,先発医薬品のローションとクリームいずれも後発医薬品に比べ,有意に水分量が増加した.医師は先発医薬品から後発医薬品に切り替えて使用する場合,期待した効果に有意な差が認められることを考慮すべきである.

19 0 0 0 梅毒

著者
大里 和久
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.11, pp.1709-1713, 2007-10-20 (Released:2014-12-03)
被引用文献数
1

梅毒患者は近年減少している.一般に遭遇するのは偶然の機会に発見される潜伏梅毒患者である.これらは抗梅毒抗体を調べる梅毒血清反応検査によって診断される.治療はペニシリン剤の内服を行う.ペニシリンアレルギーにはビブラマイシン,ミノマイシン,テトラサイクリン,アセチルスピラマイシンなどを用いる.治癒判定はSTS抗体価の1/4以上の低下をもって行う.治療後ある程度の抗体が残存するのは免疫の面から望ましい.HIV感染者に梅毒検査陽性者が多いので,梅毒患者に抗HIV抗体検査を勧奨することが重要である.

19 0 0 0 梅毒

著者
立花 隆夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.1389-1393, 2011-06-20 (Released:2014-11-13)

梅毒はこれまで治療しないと治らない疾患とされていたが,最近では治療をしなくともその多くは自然治癒すると考えられるようになった.その臨床経過は一定ではなく,必ずしも第1期潜伏,第1期顕症,第2期潜伏,第2期顕症というような経過はとらない.また,STSのガラス板法や梅毒トリポネーマ抗原法のTPHAの代わりに,最近は検査技師の判定を必要としない自動分析システムによる梅毒検査を採用する病院や施設が多くなっている.
著者
小宮根 真弓
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.11, pp.2151-2156, 2009-10-20 (Released:2014-11-28)

表皮細胞の角化はすなわち表皮細胞の分化である.表皮は角化することにより,適切なバリアー機能を発揮し,外界の刺激から人体を守っている.表皮細胞の分化にあたり,多数の分子が順序良く精密に制御されながら発現している.これらの分子に遺伝的に異常が生じることにより,それぞれ特徴的な臨床症状を発現する遺伝性皮膚疾患が発症する.表皮の角化に影響を与えるもう一つの因子として炎症がある.炎症により発現する炎症性サイトカインによって,表皮の角化・分化に関与する遺伝子の発現が影響を受け,その結果角化の異常が生じる.表皮に生じた異常により,表皮のバリアー機能の破綻をきたしたり,樹状細胞やリンパ球に影響を与えることにより,全身の免疫機能にも影響することが最近の報告で明らかになっている.
著者
森脇 真一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.9, pp.2043-2046, 2020-08-20 (Released:2020-08-21)
参考文献数
20

太陽光に最も多く含まれる可視光線は,近年,皮膚アンチエイジング治療の有用なツールとしてLED,IPLが開発されたことから,臨床的,実験的にそれらの有用性が実証されてきた.その一方で,可視光線曝露がかえって酸化ストレスを生じさせて「光老化」を加速させる可能性も示唆されている.眼科領域では,可視光線による活性酸素を介した網膜障害が問題になってきている.紫外線同様,可視光線も生体にとっては「諸刃の剣」かもしれない.

17 0 0 0 化学熱傷

著者
湊原 一哉
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.1121-1127, 2007-06-20 (Released:2014-12-03)
被引用文献数
1

化学熱傷とは酸やアルカリを代表とする様々な化学薬品によって引き起こされる熱傷様の皮膚・粘膜障害である.その病態は刺激性接触皮膚炎の範疇に位置付けられている.原因となる化学物質は膨大な数におよぶ.そのため,初期の対応にとまどうことが少なくない.本稿では原因となる主な物質の分類と作用機序,診断時のポイント,および一般的な治療について述べ,さらには本邦でこれまで報告された症例をもとに具体的な事例についてまとめた.

16 0 0 0 HPV感染症

著者
江川 清文
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.1401-1407, 2011-06-20 (Released:2014-11-13)

ヒトパピローマウイルス(HPV)により伝播する性感染症としては古くから尖圭コンジローマが知られて来たが,子宮頸癌からHPV16/18が発見されたのを契機に,ボーエン様丘疹症や外陰部や手指のボーエン病にも同様のHPVが検出されることが分かり,これらは性行為あるいはその類似行為により伝播されるHPV感染症と考えられるようになった.一方で,HPVに不顕性感染が多いこともわかり,無症候性キャリアーの問題が浮かび上がって来た.本稿では,原因のHPVと肛門・性器に発症することの多いHPV関連疾患について概説した.
著者
田邉 洋
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.12, pp.2563-2572, 2021-11-20 (Released:2021-11-22)
参考文献数
55

毛包虫(毛囊虫)と皮膚科で呼称されるニキビダニ類は,終生ヒトを固有宿主として寄生する節足動物であり分類上はクモの仲間である.健常者顔面から高率にニキビダニ類の寄生が確認できるので,ニキビダニの病原性について以前から議論があったが,近年酒皶や睫毛炎の病態への関与が報告されている.また,その過剰寄生による皮膚障害であるニキビダニ症は臨床で留意すべき疾患である.ニキビダニ症の臨床像は多彩だが,ステロイド外用薬で改善しない鱗屑を伴う顔面の紅斑丘疹膿疱には,直接鏡検やダーモスコピー検査によりニキビダニ症を鑑別し,ステロイド外用の漸減や中止を考慮する必要がある.ニキビダニ症の治療は酒皶や痤瘡に準じるが,スキンケアの修整が重要であり,時に抗ダニ療法が奏功する場合がある.本稿では,いまだ不明な点が多いニキビダニ類とその関連するニキビダニ症について概略する.
著者
小林 由季 足立 剛也 新川 宏樹 稲積 豊子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.1, pp.69-73, 2022-01-20 (Released:2022-01-20)
参考文献数
9

77歳男性.新型コロナウィルスワクチン(コミナティ筋注Ⓡ)2回目接種2日後より紅斑が出現し,全身へ拡大した.接種3週間後の初診時,躯幹四肢に環状で6 cm大までの融合傾向のある浮腫状暗紅色斑が散在し,一部標的様を呈した.経過・検査所見より,コミナティ筋注Ⓡ接種後の多形紅斑と診断した.新型コロナウィルスワクチン接種後の多形紅斑の報告はまだ少なく,今後ワクチンのさらなる普及に伴い,同様の皮疹を呈する例の増加も予想される.陰性対照も含め提出したコミナティ筋注ⓇのDLST結果及び文献的考察を加え報告する.
著者
渡辺 晋一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.8, pp.1619-1625, 2019-07-20 (Released:2019-07-20)
参考文献数
16

顔面の色素病変には色素性母斑や皮膚癌など種々のものがあるが,美容目的で来院する患者の主訴の多くは“シミ”である.そしてシミを主訴に来院する患者の60%近くは老人性色素斑で,12%は顔面真皮メラノサイトーシス(FDM)である.次いで扁平な老人性疣贅が7%程度を占め,教科書でその俗称がシミとされている肝斑は,10%以下である.これらの色素病変は治療法がそれぞれ異なるので,その鑑別が治療成功の鍵となる.
著者
中瀬 恵亮 野口 雅久
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.12, pp.2555-2562, 2021-11-20 (Released:2021-11-22)
参考文献数
29

世界中で薬剤耐性(AMR)対策として抗菌薬の適正使用が求められている.痤瘡においては,アクネ菌の異常増殖が増悪因子となるため,抗菌薬治療が行われる.そのため,薬剤耐性アクネ菌が出現・増加し,抗菌薬治療の有効性を低下させている.アクネ菌の薬剤耐性は遺伝子変異が主因であったが,耐性遺伝子の伝播による多剤耐性株が増加しており,薬剤耐性のさらなる拡散が危惧される.薬剤耐性菌の出現と拡大を防止するためには,薬剤耐性アクネ菌の特徴と耐性メカニズムを知り,適切な抗菌薬治療を行う必要がある.