著者
洙田 明男
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.128, 1963 (Released:2014-08-29)

人類にとつて爪の存在価値,その生理機能が何であるかは明らかでない.たとえ動物の進化過程における遺残物であるとしても,毛髪とともに皮膚附属器官として,その発生,成長の様相は,皮膚のそれと関連し,観察に便利である.さきに私は健康者の毛髪比重を測定して皮膚機能との関係を検討したが,爪もまた全身の栄養,内分泌系,植物神経系等と関係が深く,内部臓器障害の指標として診断に役立つことは明らかで,古くから爪の生理,生化学,組織解剖学的方面から多数の研究,調査,観察がなされて来た.しかし爪の生理学的,化学的および解剖学的性状の綜合的表現と考えられる爪の比重に関する文献はほとんどみられず,ただLeiderらが白人黒人について測定を行つているにすぎない(1954).従つて今回は毛髪に引続き日本人健康者について爪の比重を測定し,年代的推移,季節的変動,性別差,部位による差を追求したのでここに報告する.
著者
大谷 道輝 野澤 茜 大谷 真理子 松元 美香 山村 喜一 江藤 隆史
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.12, pp.2263-2267, 2013-11-20 (Released:2014-10-30)

保湿剤の先発医薬品と後発医薬品の効果の差を健常人15名で乾燥皮膚モデルを用いて試験を行った.10%尿素製剤のクリームの先発医薬品と後発医薬品を1日2回10日間塗布し,角層中水分量を比較した.その結果,後発医薬品の1品目が他の先発医薬品および後発医薬品に比べ,有意に水分量が増加した.皮膚外用剤では後発医薬品の使用は先発医薬品と効果が異なることを考慮すべきであるが,尿素製剤では後発医薬品は先発医薬品と同等あるいはより効果が高い製剤があることが示された.
著者
山本 俊幸 大槻 マミ太郎 佐野 栄紀 森田 明理 奥山 隆平 五十嵐 敦之 川田 暁
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.13, pp.2835-2841, 2018-12-20 (Released:2018-12-20)
参考文献数
14

日本乾癬学会による,3年間の乾癬性関節炎疫学調査の結果をまとめた.本邦患者の臨床的特徴は,1)男性が女性の2倍弱多い,2)乾癬発症の平均年齢は30歳代後半,関節炎は40歳代後半,3)乾癬のタイプは尋常性(局面型)が9割以上,4)関節炎のタイプは,多関節炎型かDIP型が多い,5)乾癬の家族歴は5~7%程度,6)付着部炎は2割強,7)指趾炎は6割前後に認められる,などであった.生物学的製剤による治療は,約半数に導入されていたが,中止または他剤へのスイッチ例も15~20%強に認められた.爪病変,併存症,職業についても合わせて調査した.
著者
大槻 マミ太郎 照井 正 小澤 明 森田 明理 佐野 栄紀 髙橋 英俊 小宮根 真弓 江藤 隆史 鳥居 秀嗣 朝比奈 昭彦 根本 治 中川 秀己
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.8, pp.1561-1572, 2011-07-20 (Released:2014-11-13)

Clinical use of TNFα (tumor necrosis factor α) inhibitors, adalimumab and infliximab, for psoriasis began in January 2010 when an additional indication for this disease was approved. In January 2011, an interleukin-12/23 p40 (IL-12/23 p40) inhibitor, ustekinumab, was newly approved as the third biologic agent with an indication for psoriasis. All of these biologic agents are expected to exhibit excellent efficacy against not only psoriasis but also psoriatic arthritis, and to contribute to the improvement of quality of life (QOL) of psoriatic patients. At the same time, however, they require safety measures to prevent adverse drug reactions such as serious infections. We therefore decided to prepare this Guideline/Safety Manual for the Use of Biologic Agents in Psoriasis (The 2011 Version) by revising that for the use of TNFα Inhibitors prepared by the Biologics Review Committee of the Japanese Dermatological Association in February 2010. In this new unified version for all three biologic agents including ustekinumab, requirements for clinical facilities for the use of biologic agents, contents of safety measures against reactivation of tuberculosis and hepatitis B, and recommendable combination therapies with biologic agents, have been renewed and added. This guideline/safety manual has been prepared to assist dermatology specialists experienced in clinical practice of psoriasis to use biologic agents safely and properly.
著者
尾藤 利憲 高島 務 原田 晋 堀川 達弥 市橋 正光 足立 厚子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.1403, 1996 (Released:2014-08-13)
被引用文献数
1

重度の妊娠中毒症のため約2ヵ月間にわたってラテックス製尿道バルーンを留置された後,ゴム製品やバナナ,栗などとの接触で蕁麻疹や喘息症状,さらには1ヵ月に1度の割合でアナフィラキシー様症状をおこすようになった30歳女性の症例を報告する.検索の結果,ラテックス,バナナ,栗に対する即時型アレルギーがこれらのエピソードの原因と判明した.ラテックスは様々な果物と交叉反応を起こすことが報告されており,自験例の栗やバナナによる即時型反応もラテックスとの交叉反応によるものと考えられる.栗とラテックスの交叉反応の報告はまだ少ないが,栗による即時型アレルギーはアナフィラキシーなど重篤な症状を示す頻度が高い.最近ゴム製品使用者を中心にラテックスアレルギーの増加が注目されているが,そのような患者においては様々な果物,特に栗に対する即時型アレルギー合併の有無を検索する必要がある.
著者
渡辺 晋一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.7, pp.1749-1754, 2012-06-20 (Released:2014-11-13)

細菌感染症の治療の際には,起炎菌に感受性がある抗菌薬を投与しなければならないが,感受性がある抗菌薬を投与しても,十分な治療効果が得られないことがある.それは抗菌薬の投与量が少なかったり,不適切な投与法のためと思われる.ここでは最近のPK/PD理論を解説し,抗菌薬の有効性と安全性を高め,また耐性菌の出現を抑えるための適切な抗菌薬の使い方を紹介する.また肝・腎機能低下時の抗菌薬の使い方も述べる.
著者
西口 麻奈 渡邊 有史 上中 智香子 古川 福実 小森 涼子 安井 昌彰 村田 顕也 伊東 秀文 立石 千晴 鶴田 大輔 石井 則久 金澤 伸雄
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.126, no.13, pp.2433-2439, 2016-12-20 (Released:2016-12-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

大阪府出身の74歳男性.65歳時に四肢の異常感覚が出現し,67歳頃から歩行困難となった.70歳時に顔面と四肢に環状・不整形の浸潤性紅斑が出現し,73歳時に皮膚病理所見と血中ACE高値からサルコイドーシスと診断され,以前から腎障害に対して内服していたプレドニゾロンを継続した.74歳時に当院神経内科に入院し多発性単神経炎と診断され,皮疹について当科紹介となった.兎眼を呈し,皮膚スメア検査と病理組織のFite染色にて多数のらい菌を認め,多菌型ハンセン病と診断した.多剤併用療法にてスメア菌量は減少したが,血中ACE値上昇を伴って皮疹と神経症状が徐々に悪化したため,1型らい反応と診断しプレドニゾロンを増量した.
著者
大谷 道輝 松元 美香 野澤 茜 山村 喜一 江藤 隆史
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.14, pp.3117-3122, 2013-12-20 (Released:2014-10-30)
被引用文献数
1

ステロイド外用剤と保湿剤併用時の塗布順序と効果や副作用の関係については報告がほとんどないことから,皮膚科医や薬剤師は塗布順序を経験的に指示している.ステロイドの軟膏と保湿剤の併用について,ヘアレスラットを用いて塗布順序の副作用への影響を調べた.副作用の指標として,体重,脾臓重量,副腎重量および皮膚の厚さを調べた.混合した製剤も塗布順序と比較した.ステロイド外用剤はクロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏を,保湿剤はヘパリン類似物質含有製剤および尿素製剤を選択した.その結果,ステロイド外用剤と保湿剤の併用では塗布順序は副作用に影響しないことが示された.また,混合後に塗布しても重ねて塗るのと差は認められなかった.
著者
森脇 真一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.9, pp.1861-1867, 2010-08-20 (Released:2014-11-28)

色素性乾皮症は紫外線性DNA損傷の修復異常で発症する重篤な遺伝性光線過敏症である.臨床的には日光曝露のたびに繰り返す光線過敏症状,雀卵斑様の色素異常などの光老化皮膚の進行,さらには厳重な紫外線防御を怠ると高率に日光露光部皮膚に悪性腫瘍が出現するという特長を有する.本邦では過半数の症例で精神運動発達障害などの中枢・末梢神経系の異常を合併し,その進行度や重症度が患者予後に強く影響する.診断は各種DNA修復試験,遺伝子解析を駆使してなされるが,できるだけ若い年齢での確定診断と専門スタッフによる遮光指導,患者ケア,皮膚悪性腫瘍の早期発見,早期切除が患者,家族のQOL向上に大きく寄与する.
著者
上出 良一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.6, pp.1115-1119, 2014-05-20 (Released:2014-05-26)
参考文献数
28

サンバーンは最も普遍的な急性の紫外線傷害の皮膚症状である.24時間をピークに生じ,軽症の場合は軽度の灼熱感とびまん性紅斑であるが,高度になれば浮腫,水疱,びらんを伴った暗紅色斑となり強い灼熱感を伴う.重症の場合は悪寒戦慄,発熱,脱水など全身症状を呈する.皮膚障害はUVBによるシクロブタン型ピリミジンダイマー形成による直接的DNA損傷が主因であるが,UVB, UVAによる酸化的傷害も加味される.多様な炎症メディエータやサイトカインが産生され,炎症細胞浸潤も伴うため,一旦生じた後に抑制することは困難である.一般的に第一選択とされる副腎皮質ステロイドホルモン外用の効果は極めて限定的である.なるべく早期から1日2回のステロイド外用を開始し,1週間続けることが症状回復を早める可能性がある.ステロイドの全身投与も重症例では慣用的に行われているが,十分な根拠はない.むしろ非ステロイド系抗炎症薬がプロスタグランジンによる炎症と疼痛の緩和に有用である.患者には再発予防のため具体的に紫外線防御対策を指導する.
著者
川田 暁
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.9, pp.2031-2034, 2020-08-20 (Released:2020-08-21)
参考文献数
18

太陽光は人間の健康にとって利益と不利益の両面をもたらす.太陽光に露光することは,種々の皮膚疾患や季節性疾患の治療や予防に有用である.太陽光中の紫外線は皮膚でのビタミンD3の合成に必須である.血清ビタミンD3の低下によって死亡率や種々の癌の発生頻度が上昇する.一方紫外線は皮膚に対して急性及び慢性の障害(光老化)を引き起こす.光老化の予防にはサンスクリーン剤を中心とした紫外線防御を行う必要がある.光老化を防ぎつつビタミンD3の低下をきたさないような適切な紫外線防御が重要である.