著者
幕内 忠夫 宇野 則男
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.483, 2011

当院における東日本大震災の被害と対策平成23年3月11日に起きた東北、関東地方を含む「東日本大震災」は、甚大な被害のあった東北三県とは比較にはならないが、茨城県内でも多数の被害が発生し、地域によっては現在も被災が継続している状況である。当院もまた少なからず影響を受けた。今回は震災当日の当院の被害と避難状況、ライフラインの確保への経緯、そして震災後の事後対策について報告する。震災当日は平日であったので午後とはいえ、入院患者のみならず外来診察者も多数院内に滞在していた。発生当時は停電もあり多少パニック気味であったが揺れが収まりしだい、災害対策本部が立ち上がり指令系統により職員各自は冷静に対応していたと思える。本館を含む建物が老朽化しているため患者方は院外へ避難誘導、身体不自由者は人力による車いすあるいはベッド毎の運搬。エレベーターは使用出来ないので階段を使用した。自家発電装置への人力での燃料運搬。停電が長く続くと燃料不足が懸念されたが、土浦消防署を通して、ようやく配達してもらうことが出来た。また非常食の炊事用のプロパンガスの確保も同時に進行した。当日午後10時を過ぎた頃に漸く電気が復旧した。何度か大きな余震が続いたため、非常時に備えて職員の多くは院内に待機宿泊の形となった。その後、被害箇所の確認、通行禁止区域の表示、不足が予想された飲料水、非常食の他施設からの援助による確保等が行なわれ、徐々に修繕作業も進行し現在に至っているが、未だ手つかずの状態の箇所も少なくない。今回の過去に類を見ないほどの震災を経験して、普段からの準備と人のつながりがいかに大切か痛感させられた。今後の対策として、充分な飲料水、非常食の確保、燃料の備蓄、災害時のみではない近隣の施設や業者との連携の強化を進めることが肝要である。
著者
渡 正伸 熊谷 元
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.91, 2006

<B><緒言></B>近年、日本はたばこ規制枠組条約を批准し、たばこ規制に対して国際レベルの行動が求められるようになった。喫煙の有害性が認められるようになり、禁煙運動も社会的に大きな流れとなっている。しかしながら我が国においてはタバコ産業の大株主は財務省であり、厚生労働省もたばこが有害と知りながらも縦割り行政の弊害のためか抜本的なたばこ対策が実施しにくい状況と言える。近年、男性の喫煙率が低下する一方で、若い女性における喫煙率が増加している。若い女性、つまり子どもを持つ母親の世代での喫煙率が増加していることは、喫煙行動が子どもにとって身近な事柄となっていることが推察され憂慮すべき状況といえる。このような状況下に置かれた子ども達にたばこの有害性を教えていくことは最重要課題の一つと考えられる。国、政府がたばこの有害性を知りながらも現状維持のたばこ政策を行うかぎり、国民、子どもは被害者でありつづけることになる。人々の健康を守ることは医師の使命の一つであることを考えると、たばこの有害性をまずは医師が率先して訴えなくてはならない。日々の診療をするにとどまらず、もっと積極的に疾病予防の見地に立って第一次予防に目をむけるべきである。<BR><B><方法></B>呼吸器疾患をはじめ循環器疾患など多くの疾病に喫煙の有害性が大きく関与している。喫煙患者の禁煙指導が必要な反面、健康者に対する禁煙教育、さらには防煙教育が重要と考えた。即ち、未だたばこを吸ったことのない小学生時代に喫煙の有害性を知っておくことが重要であり喫煙防止効果も期待できると考えた。最初は校医をしている知り合いの医師をとおして小学校に喫煙防止授業の提案を行った。快諾を得た後、小学6年生に喫煙の有害性について授業を実施した。その後は市の教育課長に依頼し市全域の小学校に働きかけをしてもらい、喫煙防止授業を実施するよう小学校に呼びかけた。授業は院内の診療業務の合間に予定して実施し、診療に重大な支障が生じないよう配慮した。<BR><B><結果、考察></B>2002年度から小学校を中心に喫煙防止教室を行ってきた。2002?2005年度で5、6、9、11校と授業を実施してきた。徐々に開催校は増加している。今後さらに喫煙防止授業を希望する学校が増加した場合、個人ではマンパワー不足となる可能性がある。対策としては協力者を募るか、地区医師会や校医の協力が必要となる可能性もある。若い女性、即ち小学生の子どもを持つような女性の喫煙率が増加している現在、喫煙に対する正しい評価と判断を下すためには、正しい知識を小学生のうちに身に付けてもらうことが重要である。そのためには我々医師が喫煙の有害性を具体的に教えていく必要があると考えられる。喫煙防止授業の活動がどれ程の成果をあげるかは未知であるが医師の大きな役割と考えている
著者
望月 善次
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.2, 2010

先ず、伝統ある「第59回日本農村医学会学術総会」において、「特別講演」の場を与えられたことを感謝致します。<BR> 講演テーマに掲げた「<われらはいっしょにこれから何を論ずるか>」は、いうまでもなく宮澤賢治「農民芸術概論綱要」の「序論」冒頭の文言です。<BR> 「農民芸術概論綱要」は、この文言の後、「おれたちはみな農民である ずゐぶん忙がしく仕事もつらい/もっと明るく生き生きと生活をする道を見付けたい/われらの古い師父たちの中にはさういふ人も応々あった/近代科学の実証と求道者たちの実験とわれらの直観の一致に於て論じたい」と続き、あの有名な一節「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない。」に至ることは御承知の通りであります。<BR> ところで、宮澤賢治は、通常の意味での「文学者」であったのではありません。「文学者でもあった生涯」だというのが私の考えです。〔望月善次「文学者でもあった生涯~ 「挫折からの甦り」が織り成す未完の人生 ~」、福島泰樹・立松和平責任編集『月光』第二号(勉誠出版、2010)pp.93~99.〕<BR> また、その生涯は決して順調なものではなく、「挫折と甦り」を繰り返した生涯でもありました。<BR> 典型的なものを列挙してみても次のようなものを挙げることができます。<BR> 現在的に言えば「落ちこぼれ」であった(旧制)中学校時代とその後の浪人時代〔明治42年~大正3年=13歳~18歳〕、盛岡高等農林学校を優秀な成績で得業(卒業)して、「研究生」として残ったのに、死因となった結核の徴候と考えられる体調の異変を感じ、花巻の家に帰り悶々とした頃〔大正7年=22歳〕、家出して上京し、宗教団体国柱会に賭けようとするが結局は故郷、花巻に帰った頃〔大正10年=25歳〕、「この四ケ年が/わたくしにとってどんなに楽しかったか」というほど充実していた「花巻(稗貫)農学校」の教師をやめ、「本統の百姓」になろうとしたのに〔★「農民芸術概論綱要」は、この時期に相当します。〕、農民と自分との間にある越えられない溝を徹底的に思い知らされる羅須地人協会時代〔大正15年=30歳〕、東北砕石工場技師としての再起と体調の異変〔昭和5年=35歳〕等々です。しかも最後の体調異変は、結局回復することなくこの世を去らなければならなかったのです。<BR> しかし、こうした賢治の生涯は、多くの人の心を揺さぶっています。それは、賢治が精一杯の生を生きたからでありましょう。<BR> 当日は、賢治の写真や作品なども紹介しながら、その生涯を辿り、その生涯の意味を共に考えることができればと考えております。<BR>
著者
垰田 和史
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.11, 2010

1 農作業の危険性は、年々、高まっている?<BR> 農作業による死亡災害者数は過去40年間を振り返って減少しておらず、毎年400人近くが命を失っている。この間に、交通事故死は1/3以下となり、最も危険な職種と言われていた建設業では死亡者数を1/4以下に減少させた。農業従事者数が大きく減少していく中で、農作業により命を失う農民の人数が「減らない」ことは、農業の危険性が、年々、高まっていることを示している。農作業で使用される農器具類の改良や圃場環境の整備が進んでいるとすれば、どうして農作業の危険性が、年々、高まり続けるのか検討する必要がある。<BR><BR>2 農作業災害の発生実態は不明<BR> 死亡災害は災害ピラミッドの頂点に観察される事象であり、底辺は多くの「死に至らなかった」災害が構成する。その構造は医療事故と同様で、重大事故の底辺に多くの軽い事故があり、その底辺により多くの「ヒヤリ・ハット」ケースが位置する。仕事に起因して生じる災害を防ぐためには、発生実態の把握と発生に結びついた要因を明らかにする必要があるが、我が国の農作業災害には、その実態を示す資料がない。災害の発生実態を把握するために農業傷害共済保険加入者を対象とした調査が行われたり、富山県のように地域の医療機関と協力して実態把握を蓄積している地域がある。しかし、それらは我が国全体から見れば、例外的な情報に止まっている。農業を除く他産業では、死亡事故はもとより休業災害や不休業災害についても国によって毎年調査され、災害防止の諸政策に反映されている。<BR><BR>3 農作業災害につながる農民と作業、農器具、農作業環境の関係性<BR> 農作業災害の発生要因を分析する際には、次の3つの関係性、すなわち1)農民と農作業、2)農民と農器具、3)農民と農作業環境に注目する必要がある。例えば「55歳の女性が、草刈り中に脚を滑らせて転倒しそうになり刈払い機の歯で脚を切った」事例では、「夕食の準備があるため休憩を取らないで連続作業をして疲れ、身体のバランスを崩した。しかも、保護具を装着していなかった。」ことは、1)農民と農作業に関わる要因としてあげることができる。刈払い機に安全装置が無く、女性にとっては重く、「歯」の種類が「丸鋸歯」だったことは、2)農民と農器具に関わる問題となる。草を刈っていた場所が急傾斜の法面で、炎天下の作業であったために「熱中症」気味だったとすれば3)農民と農作業環境との関係が問題になる。予防のための教訓が、それぞれの視点から導き出せる。<BR><BR>4 個々の農民に応じたリスクアセスメントが必要<BR> 農作業による心身の負担の大きさにしても、操作者の安全性や快適性を保証する農業器具の性能にしても、農作業環境にしても、農民の特性に応じて異なる。高齢者や女性が農業の主な担い手となりつつある現状では、農民の心身の特性に応じた農作業や器具の設計、また、リスクアセスメントが農作業災害の予防対策として不可欠となる。高齢になれば様々な疾患を持ちながら働き続けることになる。他産業の事業主は、労働者に対する責任として労働者に高血圧があれば夜勤作業を免除したり、心疾患があれば労働負担を軽減することがある。農民は、自分の健康状態と安全に遂行できる農作業負担との関係について「自己責任」で判断することになり、「無理」な働き方が災害につながる可能性がある。農民の主治医が、他産業での「産業医」のように、農民の快適で安全なはたき方について指導助言できればと願っている。
著者
近藤 真里子 鈴江 妃佐子 河合 靖子 鈴木 陽子 大堀 裕子 市川 芳枝 牧野 トモエ 中村 あつ子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.117, 2008

〈緒言〉あつみの郷は老健を中心に、在宅サービスの他、介護予防サービス事業所などからなる福祉複合施設である。看護を中心とした各事業所代表からなる感染防止対策委員会では、感染症対策の基本である手洗いと感染症の基礎知識を中心に毎年勉強会を開催し、その効果として手洗いの意識調査と実態調査をしてきた。認識度と実施率は年々上昇し、勉強会の効果を実感していた。ところが、平成18年秋、あつみの郷の老健内で短期入所利用者から感染性胃腸炎の発症が始まり、関わった職員・利用者へと感染が拡大し、結果として利用者37名、職員10名が感染した。感染拡大の原因として、知識不足から職員が伝播者となり感染が拡大したことが大きな原因と考えられ、感染防止対策委員会の力不足を思い知らされた。終息後、職員にアンケート調査した結果をもとに、19年度の活動計画をたて、その結果感染症の発生をゼロにすることができたので報告する。<BR>〈方法と効果〉活動計画(1)感染症対応時フロー整備。今まで感染対応のフローが統一されていなかったので発症報告から、ケアまでの流れを整備した。これにより、各事業所間の感染情報も共有化されるようになった。(2)勉強会の実施。5月に標準予防策など感染症について、特に手洗い方法の手技についてビデオ学習を取りいれ、11月はノロウイルスの予防と発生時の対応および消毒方法を実技指導した。勉強会の内容と、新聞等の感染症発生情報等を常時掲示板を使って、継続して職員周知した。(3)手洗いの調査。職員が使用するゾーンの手洗い蛇口やドアノブの汚染度を大腸菌群とブドウ球菌群の拭き取り簡易調査を毎月実施し、検査結果を掲示した。検査を始めて3ケ月は、特に大腸菌群が多数検出され、汚染状況に大変驚いたが、2回の勉強会、毎月の検査結果の公表が効果あったか、徐々に菌の検出は減少した。職員が手洗いの必要性と、手洗い実施のタイミングを理解した結果と思われる。(4)外部からのウイルス侵入防止。外部からのウイルス侵入を遮断するため、利用者家族を始め、出入り業者へもノロウイルス感染予防のための協力依頼文書を10月に配布した。施設内においては発生に備え、仮に発生しても混乱したり、拡大しないように消毒マニュアルと消毒セットを各トイレに準備し、利用者および職員から疑いのある症状が発生した場合の対応も掲示した。(5)職員の感染症に関する習熟度調査。年間を通し職員の感染に関する知識変化を把握するため、基礎知識と各感染予防法ごとに理解度を点数化し、5月の勉強会前と一年間の活動後とで習熟度を調査した。介護・看護など職種別に統計学解析に基づきT検定を実施した結果、いずれの職種も習熟度は有意(p<0.05)に上昇し、これは活動による効果と思われる。<BR>以上の様に年間を通し活動を実施した結果、平成19年の利用者発症は0、家族内感染職員は2名あったが、施設内での感染は防止することができた。集団発生しなかった理由として感染疑い利用者への対応が早かったことが57.1%、次に予防と対策の知識が根付いたことが35.7%になった。実際に、突然の熱発者や嘔吐発症者にも迅速に感染症対応するなど職員の危機意識が認められた。<BR>〈結論〉一年間の感染防止活動により、アウトブレイクを防止することができた。これは職員の意識改革による影響が非常に大きい。今後も施設全体で感染に関する情報の共有化を図り、啓蒙活動を継続し職員の意識を高め、引き続き感染防止に努力して行きたい。<BR>
著者
西島 健 高山 義浩 小林 智子 小澤 幸子 岡田 邦彦
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.67, 2007

【緒言】第2報では、2002年より2006年までの5年間に佐久総合病院を受診した新規HIV感染者について、AIDS発症者数、国籍、医療保険の有無、初診時受診契機、感染経路、転帰により分析する。そこから対策すべき課題を検討し、とくに佐久総合病院が実施もしくは検討している外国人感染者を対象としたHIV対策を紹介する。<BR>【結果】2002年1月より2006年12月までに39人の新規HIV感染者の受診があり、24人(61.5%)のAIDS発症者の受診があった。その国籍の内訳は、日本人27人(69.2%)、タイ人12人(30.8%)であった。また、タイ人感染者のうち医療保険のない者が6人(15%)を占めていた。これら39人の初診時契機は、AIDS関連疾患の発症 61.5%、その他の疾患による受診 17.9%、パートナー陽性のために検査 12.8%、妊娠時検査 7.7%であり、自主的に検査を受けて陽性が判明したケースは1例もなかった。感染経路は、84.6%が異性間性的接触であり、大多数を占めた。以下、同性間性的接触による感染 7.7%、薬物使用 2.6%、不詳 5.1%と続いた。また、その転帰は当院通院中 71.8%、死亡 10.3%、帰国支援 7.7%、行方不明 5.1%、他院に紹介 5.1%であった。<BR>【考察】農村地域ではHIV感染の拡大が進んでおり、いわゆる「いきなりエイズ」症例が全国と比しても高く、早期発見がすすんでいない状況が継続している。その背景には、自主的に検査を受けて判明するケースが認められないことからも、一般市民への啓発活動の遅れが大きな要因と考えられる。日本人については様々な施策が展開されつつある。しかし、次いで外国人への感染拡大が確認されるものの、無資格滞在外国人であることが少なくないため、自治体行政によるアプローチが困難となっている。よって、医療機関と地域のNGO活動との連携による展開が求められている。無資格滞在外国人の感染が判明した場合に、単に帰国させる対応では単なる感染者のたらい回しにすぎず、国内でもHIV検査を受けるように促すことができない。よって、陽性判明後に彼らが医療面・社会面において安心して受診できるシステムを事前に策定しておく必要がある。<BR>【提言】この地域でエイズ治療拠点病院として活動してきた佐久総合病院は、自治体や保健所などと連携して様々なHIV対策を実施もしくは検討している。しかしながら、外国人向けの対策は途上であり、感染増加の状況からも緊急の課題と考えている。これまでも外国人向けの医療相談会を年に2回程度実施してきたが、本年度より在日タイ国領事館と協力して佐久総合病院内に移動領事館を開設。このとき併せて、佐久総合病院として医療相談会を実施する方針としている。こうして、タイ人らへの社会的・身体的問題へ包括的に対応できる体制を整え、外国人らとの信頼関係を深めてゆきたい。また、無保険の外国人においてHIV感染が判明した場合、何らかの方式による医療費助成制度を策定し、帰国支援まで安定した医療サービスを提供できるようにしたいと考えている。
著者
大浦 栄次
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.9, 2010

富山県農村医学研究会では、農作業と健康のテーマで、農作業従事による健康障害に関する調査研究を行ってきた。<BR> 以下に、農作業事故と農薬の生体影響に関する主な研究課題の概要を紹介する。<BR><BR>1.農作業事故に関する研究<BR>(1)事故調査方法<BR> 昭和45年以来、県内の全ての外科、整形外科、皮膚科、眼科、ICUを標榜する診療科、および接骨院約900カ所に、毎年、前期・後期の2度にわたり、往復葉書で農作業事故の臨床例の「有無」を問い、「有り」と回答のあった医療機関に、詳細調査用紙を送付し、臨床例の収集を行ってきた。さらに、併せて、全共連富山県本部の協力にて、生命共済・傷害共済証書の中から事故事案を抽出し事故情報の収集に努めている。<BR> また、実際の事故事例について、受傷者及び事故死された方の遺族に事故時の様子などを事故現場でのケーススタディについても過去40件あまり実施してきた。<BR><BR>(2)富山県における農機事故の実態と対策について<BR> 最も、農業機械事故が最も多かったのは昭和50年の年間399件であった。その後、国の農業機械の安全鑑定制度が出来、むき出しのベルトやチェーンなどにカバーが掛けられるようになり機械事故は減少し、昨年度は65件であった。<BR> 機種では、草刈機、トラクター、耕耘機、コンバインが多く、これらの事故対策を集中的に行う事により、多くの事故の予防に繋がると考えられる。<BR> ところで、年々受傷者の年齢は上昇しており、昭和45年の男の受傷者の平均年齢は、45.8歳、女が40.4歳であつたが、昨年度は、男63.7歳、女64.7歳と約20~25歳上昇しており、今後の農機事故対策は高齢者を中心に行う事が求められる。<BR> 流布されているマニュアルは、極めて詳細であるが、高齢者が読みこなすには余りにも煩雑であり、今後、ポイントを絞ったマニュアルが必要と考えられる。<BR><BR>(3)農業機械以外の農作業事故<BR> 農機事故と同様の方法で、昭和56年より農機以外の農作業事故調査を実施してきた。<BR> 平成21年度は、171件であり、農業機械事故より多い。そのうち用手具が関わった事故は55件であり、はしご20件、脚立11件であり、用手具関係の56%を占めている。<BR> このはしごや脚立の事故は、転落など中心であり、重大事故や死亡事故が多い。今後、これら用手具の科学的な問題点の把握や改善が必要と考えられる。<BR><BR>2.農薬の生体影響に関する調査研究<BR> 富山県農村医学研究会では、農薬中毒臨床例調査を農業災害と同様に県内の関係する医療機関700カ所を対象に昭和56年から平成14年まで実施してきた。<BR> 同様の方法で、1990年代に中国河南省の2つの県で実施し、中国の農薬中毒が日本の約20倍、中国全土では約100万人の中毒が発生している可能性を指摘してきた。<BR> また、農薬の生体内残留が単に農薬散布のみならず、食品由来の可能性があることを農薬の尿中代謝物の測定で明らかにし、ポストハーベスト農薬の問題についても、今後注視する必要性があることを示しつつある。<BR>
著者
貞方 隆史 川澄 明子 河合 智康 川本 珠美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.196, 2008

〈はじめに〉当院手術室では、各出版会社からの手術室看護手順書などを参考に各科の手術手順書を作成している。近年手術技法の著しい進歩により、同じ予定術式であっても執刀医により手術手順、使用する鋼製小物や医療材料に違いがあるため手術手順書への追加記載が必要となる。しかし、スタッフ各個人のメモへの追記に止まりがちで、共有の手術手順書の活用は充分とは言えない現状である。そこで術後、器械出し看護師と外回り看護師によるシートに沿ったショートカンファレンスのデータ、スタッフに対する意識調査より、手術手順書の効果を明らかにしようと考えた。〈方法〉シート記載:平成19年6月~9月、腰椎麻酔・全身麻酔の手術260件を対象に担当した看護師がシートに沿って話し合い記載したものを項目毎に結果を単純集計した。それらから、手術に入る看護師すべてのメンバーが手術手順書を活用した群を1群とし、以下メンバー3人のうち2人の活用を2群、メンバー2人のうち1人の活用を3群、メンバー3人のうち1人の活用を4群、メンバー全員が活用しないを5群とした。手順書活用群別に、『医師から助言・指導を受けた』『手術室外に鋼製小物などを取りに出た』の有無。さらに予定通りの手術・途中術式変更の違い、予定手術・緊急手術の条件の違いによる差を解析した。アンケートによる意識調査:平成19年5月と10月に器械出し看護師担当時・外回り看護師担当時に『手順書の活用』は出来ているか、『医師からの伝達の共有』は出来ているかをそれぞれ5段階のスケール選択方法により意識調査を行い比較した。さらに、10月に自由記載法による意識調査を行った。<結果>1)手順書活用群別に、『医師から助言・指導を受けた』は、1群32%、2群36%、3群35%、4群24%、5群18%であった。『手術室外に鋼製小物などを取りに出た』では、1群68%、2群52%、3群71%、4群60%、5群66%であり、それぞれに明らかな差はなかった。さらに、予定通りの手術と途中術式変更の違い。予定手術と緊急手術の条件の違いでも、『医師から助言・指導を受けた』『手術室外に鋼製小物などを取りに出た』の有無にそれぞれ明らかな差はなかった。 2)手順書活用に関する意識の5月と10月の比較では、「器械出し担当時の手順書活用」の意識調査は、やや評価を下げてしまったものの「外回り担当時の手順書活用」「医師からの伝達は共有できている」の意識調査は評価を上げた。10月の自由記載による意識調査では、情報の共有ができる。手術に対し振り返りができる。手順書活用、追記の意識が高まった。などの記載が複数あった。<BR>〈考察〉手術室経験年数や個人の手術看護に対してのスキルの違いから手術手順書の活用方法が違ってくると推測される。手術後話し合うことは、手術を振り返りができ、医師からの伝達の共有ができるに繋がったと考えられる。また共有の手術手順書は最新の情報でなければならない。と言う意識が高くなったと考えられる。今回の研究で使用したシートの項目は手術治療の介助に関することが主であったため、今後はチーム自らの看護を振り返るきっかけにしていきたい。<BR>〈まとめ〉手術手順書を活用した場合と活用しない場合とでは、『医師から助言・指導を受けた』『手術室外に鋼製小物などを取りに出た』の有無のいずれにも関連性はない。<BR>
著者
木田 秀幸 近藤 敬三 飯田 健一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.121, 2005

【はじめに】<BR>院内感染対策において臨床検査室は様々な役割を担っている。その中でも感染情報の提供は、治療薬剤選択や院内感染への迅速な対応に不可欠でありリアルタイムな情報が必要とされる。しかし日常業務の中で全ての医師にリアルタイムな情報提供を行なうことは困難であるのが現状である。そこで新しい感染情報提供の方法として株式会社富士通北海道システムズの協力の下、細菌Webの構築を行なったので報告する。<BR>【システム構成】<BR>当院オーダシステム及び検査システム更新(2004年3月1日)に伴い、Webサーバとして検査システムサーバを利用し、クライアントとしてLAN接続されている全てのオーダリング用及び検査システム用PCを使用した。<BR>ソフトウエアは、WebサーバInternet Information Server、情報データベースOracle、WebデータベースMicrosoft Access2002を用いた。クライアントの動作環境はInternet Explorer5.0以上、Adobe Acrobat Reader5.0以上とした。また、書類のスキャニングを行なうために当初設置予定であったレーザープリンタ1台をスキャナー付プリンタへ変更した。<BR>セキュリティ対策としては、ログイン情報、患者情報の暗号化や医師以外の閲覧者をある程度制限することとし、パスワード、ログイン名については検査室で管理することとした。<BR>【方法】<BR>月に1度開催される院内感染対策委員会の資料については、スキャニング後PDFファイルとしてアップロードを行ない、夜間の検査システム日時更新処理中に細菌Webへ反映される。<BR>前日-当日間で最終報告された細菌検査結果を毎日午前7時に情報データベースより自動収集しWebデータベースの自動更新を行なう。臨床サイドは各病棟、診察室に設置してあるクライアントから細菌Webへアクセスし必要な情報を検索する。<BR>【結果】<BR>Web導入以前の感染情報は、医師からの問い合わせや検査技師からの連絡、月1度開催される感染対策委員会報告などに限られていたが、細菌検査室よりリアルタイムな情報をWeb上に公開することにより、必要な感染情報を比較的容易に得ることができ、また無線LANを装備したノート型PCも各病棟等に設置されているため病棟内を移動しながらの検索も可能となった。<BR>「感染委員会提出文書一覧」では委員会に提出された文書を月別に、「その他の文書一覧」ではWeb操作手順書などが添付されている。「リアルタイム集計表示」では様々な検索条件での絞込み機能を持つことにより必要なデータを容易に引き出すことが可能となった。また、システム更新の数か月後に検体検査の最終報告書出力の廃止を行なったが細菌検査の報告書出力も同時に廃止することができ、技師・看護師・事務員等の作業軽減につながった。<BR>【まとめ】<BR>当院の細菌Webは、検査システムとLAN回線を利用することにより、新たなソフトウエアやハードウエアを購入することなく構築することができた。また、クライアントにオーダリング用PCを用いているためWeb参照後のオーダが容易であり対象患者の病室は、オーダシステムにある病棟マップにより確認が可能である。<BR>臨床へ提供する情報としては満足できるものが構築できたと思うが、今後は利用状況などを調査し、より利用されるよう啓蒙していかなければならないと考える。<BR>(尚、本研究は北海道農村医学研究会の助成物件によるものである)
著者
宮野 美幸 熊原 比路美 風間 裕子 岡澤 敬彦 金城 浩和 赤塩 恵子 清水 敏夫 外間 政信 木村 薫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.33, 2011

当院ではかつてノロウイルスによる院内集団感染が発生した。平成23年春に、再び院内集団感染が発生してしまったが、その経過と対策を集計し、次の流行期に向けて方針を検討したので報告する。<BR><B>経過</B>:H23.3/16にS2病棟で下痢・嘔吐の患者が6人、職員3人が発生、感染元は1日で退院した患者を推定。3/23にH3で発症患者発生、S2スタッフの伝播を疑う。3/26にH4で同様の発症患者発生、H3からの転棟患者から感染を疑う。4/14にS3で集団発生。持込患者の汚物処理が不適切であり広がった可能性。これら4病棟の集団感染は最終的に患者32人、職員26人となった。<BR><B>対策</B>:病棟からの連絡で直ちに感染対策小委員会を開催し、感染制御対策を検討・実施した。具体的には、発症者のゾーンニング、隔離病室の環境整備、次亜塩素酸Naによる病棟の全面消毒、面会制限、入院制限、転棟制限などであり、病棟の全面消毒は、新たな感染者が発生しなくなるまで継続した。<BR><B>考察</B>:今季は地域の保育施設や学校で流行があり、近隣の複数の介護施設で集団感染がおき、幾人かは当院に救急搬送、入院となるケースが続いた。期間中に8人が入院しているが、入院してくる患者の隔離、入院制限、転棟制限のなかで、病室確保に苦慮した。また、本来はある程度の病棟が決められた診療科でも他の病棟に入院が振り分けられ、スタッフから病原体の伝播が起きるなど、更に感染拡大につながってしまった。いかに感染者を特定するかは重要で、今回の感染拡大では疑いの段階からゾーニングをするタイミングが遅れていた。期間中の吐物・便の処理は、常に感染性胃腸炎を念頭に処理する必要があった。多くの職員が感染したことから、個人防護具の適切な使用とともに、手指衛生の重要性を再認識した。<BR><B>方針</B>:流行前に研修会を開催する。下痢・嘔吐の患者は常にゾーニングで対応する。スタッフの手洗いと個人防護具の適切な使用を徹底する。期間中は環境消毒を徹底する。
著者
金澤 淑子 川名 麻依子 勝間田 麻衣
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.297, 2008

手術を受けた婦人科悪性疾患患者の受診に対する抵抗感に関する意識調査<BR>金澤淑子1)川名麻依子1)勝間田麻衣1)<BR>1)神奈川県厚生連伊勢原協同病院<BR>〈緒言〉婦人科には、内診という特有の診察法があり、診察対象が生殖器であることから、患者は強い羞恥心を抱く。苦痛を伴う検査、処置が行われる場合もあり、不安、恐怖心がある。さらに、プライバシーの問題もあり、他科受診に比べ受診への抵抗感が強いと考えられる。私たち病棟看護師が手術を通して患者と関わる中、悪性疾患で手術を受けた患者から術後、「婦人科にかかるのはやはり躊躇した。でも、もう少し早く受診していればこういう結果にならなかったのかもしれないと今は思うようになった。」などの声が何度も聞かれた。そこで、婦人科受診への抵抗感に関する要因を明らかにし、その抵抗感がどのような影響を及ぼすのかを分析することを目的とし調査を実施した。その結果より、今後の看護援助のあり方に示唆を得たので報告する。<BR>〈方法〉2003年1月から2007年6月に当院において婦人科悪性疾患(子宮頸がん、子宮体がん、上皮内がん、卵巣がん)で手術を受けた患者135名を対象に郵送法による質問紙調査を実施した。(調査期間)2007年7月12日~8月10日(調査内容)1)対象の背景・年齢、婚姻、出産、手術後の化学療法、現在の体調 2)症状出現から受診までの期間 3)婦人科受診に対する抵抗感 4)抵抗感に関連した要因「男性医師による診察」「内診」「プライバシー」「検査や処置の内容」「検査や診察に伴う痛み」「施設や設備」の6項目を多肢選択法とした。(倫理的配慮)各対象者に対して質問紙は無記名とし、質問紙前文で調査趣旨、協力の可否は対象者の個人的意思に基づくものであること、個人が特定されないようにデータ管理は厳重に行うことを説明し、回収は郵送法とした。(分析方法)統計ソフトSPSS を用いて、記述統計および独立性の検定を行った。<BR>〈結果〉質問紙の回収率は68.1%であった。対象者の平均年齢は54.6歳であり、術後化学療法を行った患者は32.6%であった。術後、進行度により補助療法として化学療法が行われる。本研究において、術後化学療法を行った患者は対象者全体の約1/3であり、病期が進行していた患者が多いことがうかがわれる。受診への抵抗感について「あった群」は57.6%であった。症状出現から受診までの期間が3ヶ月以上の患者が42.4%と最も多く、1ヶ月以内が32.6%、最も短い1週間以内は25.0%であった。抵抗感と受診までの期間、受診までの期間と化学療法には有意傾向にある差が認められた。(P<0.01 社会学的統計処理による)抵抗感に関連した要因として「内診」がどの年齢層においても最も多く、40.7 %であった。続いて「検査や処置の内容が不明で不安がある。」が24.0%であったが、30歳代でこの項目を選択した患者はいなかった。以上のことから、受診への抵抗感を軽減することが受診までの期間を短くし、受診までの期間を短くすることが病気の進行を遅らせる可能性があると示唆された。そのために私たち看護師に最も求められることは羞恥心を低減させるための身体露出に対する配慮、予期不安を低減させるための婦人科受診についての情報の提供であると考えられる。身体露出部位、露出時間を最小限にするための配慮と患者が安心できるような雰囲気づくりに努め、外来待合室などでの検査、処置内容の表示など患者が手軽に情報を得られるような環境づくり、地域での情報公開活動などを今後検討していきたい。
著者
長岡 里奈 鈴木 理恵子 大瀧 雅文 保前 英希 金元 信子 酒井 利佳 只石 かほり 島田 勝規
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.491, 2011

当院における地域医療連携室での転院調整は、1)療養型病院への転院 2)紹介元への転院 3)地域連携クリニカルパスを利用した転院に分けられる。今回は3)の地域連携クリニカルパスを利用した転院調整に焦点を当て、地域医療連携室の役割について考察する。<BR>十勝圏では、2008年度より『十勝脳卒中地域連携パス(以下脳卒中パス)』の運用を開始した。脳卒中パスは現在、急性期病院3病院と回復期病院4病院間で運用されている。当院(計画管理病院)では、2010年度末までの3年間に計284名が回復期病院へ転院している。<BR>脳卒中パスの運用における地域医療連携室の役割として、1)転院・退院調整看護師による医療・看護アセスメント 2)医療ソーシャルワーカー(以下MSW)による患者・家族との面談 3)パスデータを用いた転院調整業務が挙げられる。看護師とMSWが協働し転院調整窓口となることにより、患者や患者家族が抱える諸問題の早期発見・早期解決、院内外関係職種との連携強化につながっている。<BR>1)転院・退院調整看護師による医療・看護アセスメントとは、患者基礎情報の集約(病態理解および病態予測)、転院先・退院先に向けた医療連携(入院中の医療処置や看護を回復期病院もしくは維持期へ繋げていくための調整)等が挙げられる。2)MSWが行う患者・家族との面談では、各種制度等の情報提供および利用支援(介護保険・傷病手当金・身体障害者手帳申請等)、医療費未払い防止(高額療養費・生活保護申請支援)等についての説明を行っている。3)脳卒中パスデータを用いた転院調整業務としては、院内各職種のデータ集約・データを用いた回復期病院への打診・転院日程調整業務等が挙げられる。<BR>
著者
小川 昭正 度會 正人 中村 麗亜 大江 英之 服部 哲夫 城所 博之 久保田 哲夫 加藤 有一 宮島 雄二 久野 邦義
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.55, 2007

〈緒言〉小児における上室性頻拍はしばしば経験するが、乳児期に発症するものは急激にうっ血性心不全が進行し、重篤な状態となる。また年長児では、ときに再発が多く日常生活のQOLが障害される。近年小児でもカテーテルアブレーション治療が行われるようになり年長児の生活のQOLが改善され福音となっている。<BR>そこで、最近7年間に当科で経験した上室性頻拍症の15症例について臨床像、短期治療、長期治療につき検討した。<BR>〈結果〉乳児期発症は9例(男児4例、女児5例)、幼児期以降の発症は6例(男児4例、女児2例)であった。乳児期発症例はすべてが生後3ヵ月以内に発症していた。3例は初診時に著明なうっ血性心不全を呈していたが、残りの6例は、偶然に発見されていた。うち1例は胎内で一時頻拍を指摘されたが出生時は不整脈は認めず生後4日から上室性頻拍発作を発症した。急性期の治療は、1例は治療開始前に自然軽快したが、他の8例は digoxinの急速飽和とATP急速静注をおこない発作は治まった。 幼児期以降発症の6例の年齢は4歳から13歳で、発作時心拍数は毎分160から270であった。症状も腹痛や胸部不快感・動悸で、循環呼吸状態への大きな影響は認められなかった。薬物治療は、ATPの急速静注、又はATPとDigoxinの併用であった。乳児期発症の9例のうち非発作時の心電図から副伝導路の存在が示唆されるものは3例であった。発作予防薬は、digoxinが5例、digoxinとpropranololの併用が3例 頻回に再発した1例はdigoxin,propranolol,disopyramide の併用をおこなった。digoxinは血中濃度に注意して全員が内服した。予防内服の期間は 全例で8ヶ月~1歳までで、内服中止後 発作が再発した例は、なかった。幼児期以降発症例では、1例がmanifest WPWであった。発作予防薬は原則的には無しとしていたが、経過中発作が頻回になった2-3ヶ月間のみ、やむをえず予防内服を行った。2例では、薬物が必要な発作の頻度が高く、年齢が高くなるにつれて生活に支障を来たすようになった。そのため高周波カテーテルアフ゛レーションの適応と考え、施行したが、その後は上室性頻拍発作はなく良好な経過をたどっている。<BR>(結語)□乳児期早期の発症例では重症の心不全に陥る前の発見が重要でその後数ヶ月を良好な発作予防をすることが重要であり、年長児では頻回発作する例ではカテーテルアブレーション治療にもちこむことがQOL改善のため重要であることを再確認した。
著者
鈴木 良典 小川 貴之 服部 洋美 伊藤 祐子 岩渕 恵美 富田 弘美 中原 亜衣 望月 剛
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.257, 2011

〈緒言〉当院は愛知県尾張北部医療圏に位置する678床の二次救急医療機関病院である。当院は同一市内にあった2病院が平成20年5月統合開院し電子カルテを導入した。現在、1ヶ月に1,700件を超える書類作成依頼のうち約48%は電子カルテにて作成が可能となっているが、それ以外のほとんどが手書きにて作成されている。そのため、医師の書類作成は時間外に及ぶことが多く溜まった書類をまとめて記入するなど、本来の診療業務に負担となっているため、書類に掛かる業務の負担軽減と書類の作成期間を短縮する必要性が高まった。<BR>〈方法〉医師の文書作成の負担軽減策として文書作成管理システムを導入する。<BR>この文書作成管理システムの特徴は以下の通り。<BR>(1)約700種の書式がフォーマット。<BR>(2)属性、病名、入退院日、手術名、術式コード(Kコード)等の連携。<BR>(3)前回の入力内容や電子カルテの記載内容の複写・引用機能。<BR>(4)入力必須項目の記載漏れチェック機能。<BR>(5)期限超過した依頼文書の医師別一覧出力。<BR>上記の特徴を最大限に活用できる運用を作成することで書類作成期間の短縮及び問い合わせ件数の減少に繋げる。<BR>そのため、文書管理係として専属で文書管理を行う事務員を5名配属し平成23年5月9日より文書作成管理システムを本稼動させた。文書管理係は文書作成管理システム出力文書・手書き文書共に入退院日や通院日、病名や術式等の医師以外でも記載可能な部分を下書き入力し、医師は事務の記載部分の確認と空白部分への入力及び完成書類への署名のみとなる。また、システム導入以前に記載のある文書書式のものは過去記載分を事務側にてすべて複写を行い、医師は今回の依頼分に対し加筆・修正を行うだけとなる。<BR>〈結果〉文書作成管理システムの導入により月約1,500件(約89%)の文書が電子化された。全体としての効果については今後アンケートを実施し学会時に発表する。
著者
北島 幸也
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.333, 2009

〈はじめに〉当院では,脳転移に対する定位手術的照射<BR>(stereotactic radiosurgery : SRS)を2005年1月から実<BR>施している。SRS 施行前には必ず精度測定が行われポイ<BR>ンタ調整,機械的回転精度測定(ガントリ回転,カウチ回<BR>転)およびSRS 専用ツーブス取付け調整が行われる。今<BR>回,治療精度を最も左右するSRS 専用ツーブス取付け調<BR>整について検討した。<BR>〈対象と方法〉対象は,2005年1月から2009年2月までの<BR>25件(うち34病変)で,取付け調整したツーブスは,10mm<BR>10件,15mm11件,20mm4件,25mm1件,30mm2件<BR>である。取付け調整された各ツーブスにおいて,ガントリ<BR>0°,90°,270°の3方向でライナックグラフィによりアイ<BR>ソセンターにセットアップしたアブソルート(直径8mm<BR>の仮想ターゲット)を撮影した。撮影されたフィルムを<BR>D-Dsystem でスキャンし,取付け調整した各ツーブスの<BR>照射野がアイソセンターからどの程度ずれているかを測定<BR>し検討した。<BR>〈結果〉30mm ツーブスにおいて最大0.751mm のずれが<BR>生じていた。全てのツーブスにおいてガントリ90°,270°<BR>ではアイソセンターより照射野が床側にずれる傾向を示し<BR>た。また,長軸方向はガントリ0°,90°,270°全て足側に<BR>ずれる傾向を示した。<BR>〈考察〉ツーブス調整は手動にて行うため,照射野が大き<BR>くなればアブソルート中心に合わせにくく,調整者による<BR>違いや測定による誤差も生じていると考えられる。<BR>〈結語〉当院におけるSRS 専用ツーブス取付け調整にお<BR>いて精度は1mm 以下である。<BR>
著者
浅沼 信治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.10, 2010

1.農薬の使用と中毒発症の現状<BR>1)農薬使用状況の推移<BR> わが国で農薬が本格的に使用されるようになったのは、第二次世界大戦後である。戦後、農薬は農作物の生産性向上、労力の軽減など農業には重要な資材としての役割を果たしてきた。生産量の推移をみると、戦後30年の間に急増し、1974年に過去最高の75万トンに達し、その後は暫時減少し、90年代後半からは60年代の水準(30万トン台)になっている。殺虫剤の使用が最も多いが、兼業化など人手不足による省力化のため、除草剤の使用も多くなっている。<BR>2)急性中毒および障害<BR> かつてはホリドールやテップなどの毒性の強い農薬による中毒が多かったが、1971年に強毒性農薬が禁止になり、中毒事故は減少した。しかし、その後パラコート系除草剤による死亡事故(主として自殺)が相次いだ。1976年にパラコート系除草剤のうちグラモキソンが製造中止になり、代わってプリグリックスLが使われるようになり、死亡事故はやや減少した。<BR> 農村病院を受診した者の統計からみると、急性中毒と皮膚障害が多い。「健康カレンダーによる調査」によると、4人に1人が中毒症状の経験がある。<BR><BR>2.農薬使用の問題点<BR>1)2006年5月の「ポジティブリスト制度」の施行による問題点<BR> 「ポジティブリスト制」は、基準が設定されていない農薬が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度である。以前の「ネガティブリスト制」は、農薬の残留基準値がない場合、規制の対象にならなかったが、新制度により一律基準0.01ppmが適用、規制される。消費者にとっては残留農薬の減少など好ましいことではあるが、生産者にとってはドリフトなど問題が多い。これは農薬の登録制度にも問題がある。<BR>2)ネオニコチノイド系農薬の使用<BR> 最近、有機リン農薬に代わって新農薬「ネオニコチノイド」(新しいニコチン様物質)が大量に、しかも広範囲に使用されている。今、ミツバチが忽然と姿を消す怪奇現象が多発し、その原因の究明が急がれているが、ネオニコチノイド系の農薬もその一つに挙げられている。<BR>3)農薬の表示についての問題点<BR> 日本では、「農薬」と表現されているように危険なイメージは少ない。 農薬には、その中毒を防止する観点から「毒物・危険」の表示が必要である。アメリカはドラム缶に「ドクロマークとPOIZON」表示がされている。フィリピンでは、その毒性により分類し、農薬のビンの下に幅広のテープを貼ったように色を付けている。色分けされ、一見してこれがどのランクの毒性を持つ農薬なのかが分かる。しかも毒性の強い農薬は、一般の店では販売されていない。日本は赤地に白文字で「毒物」、白地に赤文字で「劇物」と小さく書かれているだけである。<BR>4)農薬による皮膚炎<BR> 農薬による中毒・皮膚炎などにはその種類により特徴があり、注意する点も多い。とくに石灰硫黄合剤による皮膚傷害は深刻である。中毒を防ぐためにマスクの使用や、通気性がよく防水性のある防除衣の使用などについても考えてみたい。
著者
北原 保雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.2, 2008

(1)「問題な日本語」の氾濫<BR>(2)日本語ブーム<BR>『明鏡国語辞典』『問題な日本語』『明鏡ことわざ成句使い方辞典』『KY式日本語』<BR>(3)日本語の「乱れ」の原因<BR> どんな時に、日本語が乱れていると思うか<BR>若者や子供の会話を聞いて 1716人<BR>テレビを見て 1710<BR>飲食店などで対応されて 881<BR>ネットを見て 131<BR>雑誌や漫画を読んで 68<BR>新聞を読んで 48<BR>最大の原因は?<BR>テレビ 1080人<BR>活字離れ 441<BR>家庭のしつけ 403<BR>タレント 255<BR>学校教育 125<BR>チェーン店のマニュアル 121<BR>(4)「問題な日本語」と思われている言葉遣い<BR>すぐに直してもらいたいと思う言葉遣いは?<BR>・私ってすごく忘れっぽい人じゃないですか 1055人<BR>・千円からお預かりします 1040<BR>・わたし的にはOKです 1036<BR>・コーヒーのほうお持ちしました 781<BR>・ご注文は以上でよろしかったでしょうか 654<BR>・全然いい 616<BR>・おタバコはご遠慮させていただきます 360<BR>・記念品を受付でいただいてください 340<BR>・コーヒーで大丈夫ですか 276<BR>・ご住所書いてもらっていいですか 243<BR>・歌わさせていただきます 181<BR>・これってどうよ 178<BR>・ご負担いただくようなかたちになっています 176<BR>・一緒にやろうよ、みたいな話だった 176<BR>・すごいおいしい 148<BR> 朝日新聞2005年12月10日(土)<BR>(5)「問題な日本語」追加<BR>・患者様 ・お陰様をもちまして ・お名前をいただけますか<BR>(6)KY語の流行<BR> IT KD GOT BM DD JK 3M MMK FFK GHQ<BR>(7)日本語力向上の必要性 日本語能力検定の動き<BR>(8)今どきの子供の名<BR>「人名用漢字」の改定<BR>(9)ことわざ成句の誤用<BR>1病膏肓(こうもう)に入る(こうこう)<BR>2怒り心頭に達する(発する)<BR>3熱にうなされる(浮かされる)<BR>4目鼻が利く(目端)<BR>5手も口も出ない(足)<BR>6顔を突っ込む(首)<BR>7耳を合わせる(揃える)<BR>8顔に火が付く(から火が出る)<BR>9腹が煮えくりかえる(腸)<BR>10毒を盛って毒を制す(以て)
著者
高田 真寸子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.48, 2008

1:JA茨城みなみ管内の概要<BR>時はさかのぼって平成元年8月1日。県内3番目の広域合併JAとして、組合員の多様化するニ-ズに応えるため、5つの市町村単位JAが広域合併し「JA茨城みなみ」は誕生しました。<BR>管内は、県最南端(首都圏40km)に位置し、豊かな水と緑があふれ、住宅地や商業地、田園地帯が混住する地域です。利根川や小貝川の水源に恵まれ、県内有数の米の産地としても知られています。<BR>交通網は、管内を南北に走る「国道6号線」を軸に、「常磐自動車道」の谷和原インタ-をはじめ、取手駅の「JR常磐線・営団地下鉄千代田線・関東鉄道常総線」を拠点に、都心や県内への玄関口になっています。<BR>また平成17年8月に「首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス」が開業し、管内2カ所に駅が設置され、守谷駅から秋葉原駅間が32分(快速)で結ばれました。新たな交通として、利便さがさらに増しています。<BR>組合員数は、平成20年1月末現在9462人(正組合員6674人:准組合員2788人)。都市近郊農業や地産池消、食農教育などを積極的に進め、次世代に「農」を伝えるために担い手の育成や支援に取り組んでいます。<BR>2:助け合い組織の設立<BR>地域で高齢化が進む中、JA茨城みなみ女性部(部員:平成20年1月末現在870人)は立ち上がりました。地域農業を守り、農業基盤を存続させていく上で、高齢者や女性の担っている役割は、とても大きなものがあるからです。<BR>このようなことから、高齢者が生活しやすい環境を整備し、生きがいのある生活が送れるよう平成10年5月、助け合い組織「いなほ会」が発足しました。<BR>介護保険制度の導入が2年後に迫り、高齢者福祉制度がスタートします。しかしながら、問題がすべて解決されたわけではありません。むしろ、制度の外枠では「心の介護(話し相手・ミニデイサービスなど)」ささいで身近な生活の支援が必要だと考えました。<BR>3:「いなほ会」のこれまでと今後<BR>設立当初は、組織への理解と協力を呼びかけるため、JA関係組織や組合員に対し、PRを強化してきました。地域の老人ホームを訪れ、施設でのボランティア活動などと共に、数々の介護研修会を開き、目標としていたミニデイサービスの立ち上げに全力を尽くしました。<BR>努力の甲斐もあり翌年6月、谷和原地区をモデル地区に、おおむね65歳以上のお年寄りを対象に、初のミニデイサービスを開くことができました。しかしながら初回の参加者は12人。決して満足な内容だとはいえない、規模もかなり小さいものでした。<BR>その後、反省会や企画会議、外部研修などを進め、毎月1回1会場で実施していたミニデイサービスは、現在、毎月3会場で開くまでに大きく成長しました。高まる利用会員の声に応えることができたのも、女性部の熱い想いと、行動力、なんといっても仲間の「輪」の賜物です。<BR>今では、約150人ものお年寄りが、この日を楽しみに待っていてくれます。お世話をする協力会員は100人(内ホームヘルパー50人)を超えました。送迎から始まり、血圧測定などの健康チェック、手芸や作品作り、ゲームや体操の実施など、月ごとに思考を凝らした充実した内容です。お昼には、同加工部会が心を込めて作る、季節感あふれるお弁当も大好評です<BR>ここまで定着すると、部員からも色々な発想や可能性について、活発な意見が寄せられるようになりました。ここ最近の傾向は、型にはまらない柔軟さを大切にしています。お年寄りの「これがしたい」というような自主的な意見を取り入れ、自分たちから行動してもらいます。普段の生活の中では、自分から楽しみを見出すという力も大切なことだからです。<BR>女性部の活動の拠点のひとつに「活き粋きセンター」があります。センターでは、これまでの活動をふまえ、お年寄りが自主的に気軽に立ち寄れ、お茶を飲みながら楽しく交流することのできる「ふれあいの場」のようなものを作ろうと計画が進んでいます。きっと笑顔の絶えない素敵な憩いになることでしょう。<BR>これからも「ありがとう」の5文字を心の励みに、「人が元気」「組織が元気」「地域が元気」となる助け合いの輪を広げていきます。まずは、自分たちができることから取り掛かり、少しずつ協力しながら、夢は大きく!<BR>
著者
米丸 亮 カラガン 徳代 黒石 正子 荒幡 篤 宮崎 聡 山本 誠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.220, 2009

新幹線運転士の停止位置ミスが睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)に起因したことが判明したことを契機に,我が国においても社会的問題が次々と明らかとなり,SAS が注目されるようになった。本研究では職場作業の安全管理上SAS に関心の高い某事業場の従業員183名に対してアプノモニターにてスクリーニングを実施した。事業場の産業医の指示にて実施したアプノモニターのデータを,当院の医療連携室を経由して生理検査室にて分析した。被検者183名中アプノモニターによる無呼吸/低呼吸指数(Apnea/Hypopnea Index : AHI)が5以上15未満を示す要指導者が28名(15%)存在した。AHIが40以上を示す者はいなかったが,15以上40未満を示す者が18名(10%)認められ,当院においてPolysomunography(PSG)検査を実施した。PSG によるAHI が10以上の者が10人認められ,SAS と診断された。SAS の有病率は5.5%(10/183)であった。また,AHI が20を超える者5名については,CPAP を導入した。至適CPAP 圧はマニュアルタイトレーションにより決定し,平均7.9cmH2O であった。CPAP 導入によりAHI は平均27.8から平均3.7に低下し,AHI の減少率は87%であった。CPAP導入患者については,定期的外来管理を継続しており,日中帯での眠気を認めていない。必要に応じ在宅での状況をメモリーチップに記憶させ,当院にてその後AHI の経過観察に利用している。事業場の健康管理センターと地域連携を構築し,症状が乏しい従業員に対して効率の良いSASの診断,CPAP 治療の導入により,地域の健康増進に貢献できると考えられた。
著者
田中 直樹 小辻 俊通 大倉 実紗 小西 敏生
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.299, 2007

〈はじめに〉当院は病床数460床の地域中核病院であり、平成17年に臨床工学部門であるCE部が設立された。現在、臨床工学技士8名でME機器管理業務、血液浄化業務、循環器業務などを行っている。医療技術の進歩に伴い各種ME機器が導入され、業務拡大を求められるなか、効率的に業務を行うため、臨床工学技士業務支援システム(以下CE Office)を作成したので報告する。〈方法〉CE Officeは、データベースソフト「File Maker Pro」で作成し、サーバーとして「FileMaker Server 7」を設置した。クライアントは各部門に設置し、院内LAN上で接続し、どこからでも情報が閲覧、書き込みができる環境にした。また、各クライアントごとにアカウントとパスワードを設定し、セキュリティーを強化した。機能としては、掲示板として、メッセージ(申し送り)、勤務表、待機表の作成。ME機器管理では、バーコードを使った貸し出し返却システムや、機器管理台帳、メンテナンス計画。血液浄化では、透析記録用紙やサマリーの発行、検討会の資料作成。循環器では、心臓カテーテル検査、PCI、QCA、IVUSデータ管理や、物品管理などがある。又、メッセージを必ず見るように、掲示板を初期画面とし、そこから各部門のデータベースにアクセスできるようにした。〈結果〉院内LANを使用することにより、どこからでもアクセスでき、効率的に業務が行うことができた。掲示板を使用することで伝達が確実かつスムーズに行うことができた。ME機器管理では、貸し出し返却システムにバーコードを使用することで、容易に作業が行うことができ、誤記入がなくなり、データの信頼性が向上した。血液浄化では、患者データを透析記録用紙に反映することにより、転記ミスや記載漏れを少なくすることができた。循環器では、患者個別でデータをリアルタイム入力することができた。また、過去のデータ検索が容易になり、医師に迅速な情報提供がおこなえた。〈まとめ〉データベースを自作することにより、低コストでシステムを構築することができ、施設に即した情報だけを管理することができるので、効率的に業務を行うことができた。また、必要に応じてシステムを変更することができ、今後の業務改善につながると考えられる。