著者
セレスタ ギャヌ ラジャ 松本 昭英 樽谷 勝仁
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.647-652, 2017 (Released:2017-10-28)
参考文献数
27
被引用文献数
1

症例は80歳の男性, 糖尿病性腎症により, 2014年5月に血液透析導入された. 糖尿病に対して2014年11月よりビルダグリプチン (VDG) 100mg/日を投与された. 2015年6月に右上腕シャント部と左上肢前腕部に掻痒を伴う浮腫性紅斑, 水疱とびらんの皮膚症状を認めた. ステロイド軟膏による治療で経過観察するも緊満性水疱が現れ, びらんがさらに広がり, 皮膚症状が増悪した. 皮膚科を受診, 生検の所見ならびに抗BP180抗体が高値であったことにより水疱性類天疱瘡 (BP) と診断, 塩酸ミノサイクリン (MINO) 100mg/日とプレドニゾロン (PSL) 20mg/日の治療開始となった. 2か月後に皮膚症状が治癒傾向にあり, MINOを中止, PSLの投与量を漸減後中止した. しかし6か月後に右上腕シャント部に強い掻痒, 水疱とびらんの皮膚症状の再燃を認めた. MINOとPSLによる治療を再開した. この頃にVDGの薬物有害反応 (ADR) による国内でのBPを発症した症例の報告がありVDGを中止した. 皮膚症状の改善によりMINOを中止, PSLも漸減し, 中止した. 8か月経過したが皮膚症状の再燃はなかった. VDGの副作用による維持血液透析治療中に発症したBPの1症例を経験したので報告する.
著者
大槻 英男 中村 健三 下村 文彦 桑原 勝孝 塚本 拓司
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.299-303, 2014 (Released:2014-05-28)
参考文献数
13

日本透析医学会では,同内容の論文が他誌に掲載されているとの報告を受け,重複と判断いたしましたので,掲載を撤回いたします.
著者
上原 由美 島田 美樹子 柳澤 和美 内山 和彦 竹内 茂 野際 英司 中里見 征央 鈴野 弘子 石田 裕
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.553-561, 2014 (Released:2014-09-28)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

慢性腎臓病の食事療法として, 病気の進行によりP・K・たんぱく質の制限が必要になる. 透析患者の高齢化も進み, 簡便で継続可能な食事療法が必要と考える. 一般的には栄養指導の際, P・K含有量を抑えた治療用米飯の利用を推奨するが, 自作米中心の地域においては, 高価な治療食の購入には至らないことが多い. そこで, 洗米条件を調整することによりP・K・たんぱく質の低減が可能か否かを検討した. また, 透析患者の米の使用実態を把握するためにアンケート調査を実施した. 洗米におけるPの洗出率は5回目までは回数ごとに有意差が認められ (p<0.05), Kおよびたんぱく質の洗出率は4回目まで有意差がみられた (p<0.05). したがって, 洗米回数5回まで低減効果が期待できることがわかった. 5回洗米までにPの洗出率は, 50.2±3.02%, Kは46.0±3.89%, たんぱく質は5.40±0.42%となった. 透析患者のアンケート結果では, 洗米回数は3~4回の回答者が多く, 水を取り換えるまでの洗米時間も10秒前後とP・Kの低減を目的とした洗米条件としては不十分であった. 洗米において, 1回20秒間, 水を換えて5回行うことによってP・Kの低減効果があることが認められた. この方法は, 食品の制限や量の調整など多くのストレスを抱えている患者にとって, 簡便で持続可能な食事管理の一手段となり得ると考えられた. さらに毎日行う洗米に際し, 「P・Kを除去する」という意識を持つことによって, 怠慢になりがちな日常の食事管理に対する意識の醸成もなされ, QOL向上の一助となると思われた.
著者
藤倉 恵美 秋保 真穂 中道 崇 山本 多恵 佐藤 博 宮崎 真理子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.407-411, 2017 (Released:2017-06-29)
参考文献数
6

輸血を拒否する患者に医療を行う際には, 救命を第一義とする医学の基本理念に反する判断を迫られることがある. 待機治療において患者本人の自己決定による輸血拒否や治療拒否は認められるべきであるが, 生命に危険が及ぶような緊急時の対応については医学的, 倫理的, 法的に議論が残る. このような重大な判断を行う際には個人の価値観だけでなく, 組織としての方針を決定しておくことが必要である. 今回われわれは輸血を拒否する慢性腎不全患者に緊急血液透析導入を行った. 病院のリスクマネジメントを展開するうえで, 患者の信仰上の価値観が治療方針に影響を及ぼすことの重大性を示した症例であった.
著者
吉田 省造 岡田 英志 土井 智章 中島 靖浩 鈴木 浩大 田中 卓 福田 哲也 北川 雄一郎 安田 立 水野 洋佑 宮﨑 渚 森下 健太郎 牛越 博昭 竹村 元三 白井 邦博 豊田 泉 小倉 真治
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-135, 2015

症例は50歳代の男性, キノコ狩りに行きキノコを焼いて食べた翌日に下痢・嘔吐などの消化器症状を自覚し近医を受診. 血液検査にて肝逸脱酵素上昇を認め入院となった. 翌日の採血で肝逸脱酵素の著明な上昇 (AST 5,000台, ALT 5,000台) を認め, 当院に搬送となった. 問診によりドクツルタケ摂取による肝障害を疑った. 入院当日より肝性脳症を認め, 昏睡型急性肝不全と診断. 挿管・人工呼吸管理として, 肝不全治療と同時に毒素除去, 高分子除去を目的として急性血液浄化療法を行った. 入院5日後に肝性脳症は改善し呼吸状態は良好で抜管, 経過良好にて入院9日後に転院となった. ドクツルタケ中毒における血液浄化療法は否定的な意見が多いが, 今回は肝不全を呈したドクツルタケ中毒に対し, 血液浄化療法を行い救命し得た. ドクツルタケの中毒を疑った場合には, 早急な血液浄化療法が有効である可能性が高いと考えられた.

1 0 0 0 OA (5)過剰血流

出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.917-920, 2011-09-28 (Released:2011-10-26)
参考文献数
34
著者
鈴木 一裕 鈴木 翔太 本田 周子 新田 浩司
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.153-156, 2017 (Released:2017-03-01)
参考文献数
7

スクロオキシ水酸化鉄 (以下SO) を使用した症例について検討した. 鉄剤投与を行っていない当院透析患者リン吸着薬内服21例について同用量のSOに切り替え, 切り替え前と12週後での血清リン値, 鉄関連検査値, 副作用発現頻度, 血清fibroblast growth factor 23 (FGF23) 値の変化につき検討を行った. SOを継続して内服できた18例のリン値は有意に低下した. 副作用中止例は3例 (下痢が2例, 軟便が1例) が内服中止した. 鉄関連検査値については投与前後で差を認めず, 血清FGF23値の変化は透析前血清リン値に依存した.
著者
平島 知圭 和泉 雅章 三角 文子 川越 英子 末光 浩太郎 成山 真一 福本 裕美 許林 友璃 中西 健
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.105-110, 2006-02-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
13
被引用文献数
2

メシル酸ナファモスタットは, 出血性病変を有する症例の血液透析施行時の抗凝固薬として広く用いられている. われわれは維持透析患者12名において, 同薬の先発品と後発品使用時における血液透析回路内の析出物の量, および抗凝固薬としての作用をそれぞれクロスオーバー法により比較検討した. 抗凝固薬としての作用は両者で差がみられなかったが, 回路内析出物の量に関しては, 後発品使用時の方が有意に大量であった. 析出物の量に違いが生じた原因としては, 先発品と後発品の添加物の違い, 不純物混入量の違いなどが考えられた. 後発医薬品導入の際には, それが先発品と完全に同じ薬剤とはいえない場合がありうることを考慮して, 作用の強さや副作用に関して慎重に検討する必要がある.
著者
中島 昭勝 東福 要平
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.1475-1481, 1994

血液透析患者において, 致死的不整脈をきたしうる心電図QTcの延長について検討した. 対象および方法: 対象は, 維持血液透析患者のうち, 3か月以上症状が安定している維持透析群32名 (男24名, 女8名) で, 血液透析前後で, 心電図QTc, 血液ガス分析, 血清電解質, 血中イオン化カルシウム (Ca<sup>++</sup>), 血中HANP, 体重, 血圧などを測定し, またこれらの患者と年齢, 男女比をマッチさせた正常対照群32名 (検診受診者) について心電図QTcを測定した. 結果: 透析前で維持透析群のQTcは, 0.439±0.025secと正常対照群の0.396±0.021secと比較し, 有意に延長していた (p<0.01). 維持透析群の中で0.438sec (正常対照群の平均値+2標準偏差) 以上のものが15名 (46.9%) であり, これをA群, 0.438sec未満のものをB群として, 両群を比較すると, 血清Caは, A群で8.8±1.0mg/d<i>l</i>, B群で9.8±1.2mg/d<i>l</i>と有意差が認められ (p<0.05), 他の血清電解質, 血中Ca<sup>++</sup>, 血液ガス分析, 血中HANPには, 両群間で有意差は認められなかった. QTcの透析前後の変化量 (<i>Δ</i>QTc) は, 血清Ca, 血中Ca<sup>++</sup>, HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>の各変化量と相関したが, その他のデータとは相関しなかった. 透析後, A群において血清Caは平均9.6mg/d<i>l</i>まで上昇したが, QTcは平均0.450secと延長したままで, 短縮傾向は認められなかった. 結論: 慢性透析患者では, 透析前すでにQTcは延長を示す例が約半数を占め, 1回の血液透析で血清Caが正常化しても, QTcの延長の改善は認められなかった. そのQTcの延長については, 血清Ca以外に血液透析に伴う種々の原因による心筋自体の障害, 自律神経系の異常などについても検討する必要があると考えられた.
著者
笹本 洋子 松村 正 小林 由佳 内古閑 修 長澤 利彦 十川 裕史 佐々木 環
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.599-604, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1

7X歳女性, 血液透析 (HD) 歴1年. 透析当日, 来院時から全身倦怠感と発熱 (37.5°C) を認め入院となった. 血液培養検査でG群β溶血性レンサ球菌を検出した. 一時40°C近い発熱と敗血症様の症状を呈し全身状態が悪化したが, 抗菌薬の点滴により全身症状は速やかに改善した. しかし同時に両眼の視力低下を認め, 敗血症による両眼の内因性細菌性眼内炎と診断された. 内因性細菌性眼内炎は, 視力予後不良な疾患として知られているが, 幸いにも速やかな診断の上で抗菌薬の全身投与と抗菌薬の頻回点眼により最終的には視力回復を得た. 今回, われわれは早期の診断と適切な抗菌薬の全身投与によりG群β溶血性レンサ球菌 (GGS) の敗血症から発症した内因性眼内炎から視力回復した症例を経験した.
著者
竜崎 崇和 松下 雅博 半田 みち子 古川 智洋 猿田 享男
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.45-51, 1998

カルシウム拮抗薬ベシル酸アムロジピンの血液透析患者における有用性と血液透析による透析性を検討した. 対象は維持血液透析施行中の高血圧を合併した慢性腎不全患者で, 観察期透析前血圧が収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧95mmHg以上の外来患者19例. 2~4週間の観察期の後, アムロジピンを2.5~7.5mg/日の量にて投与開始. 服薬は夕食後の1日1回投与とし, 12週間の投薬期間中透析前後で血圧を測定し比較した. その間, 他の降圧薬を服用している患者では降圧薬の変更を禁止し, その後も除去率やクリアランスの測定を施行した例では薬剤の変更は行わなかった.<br>アムロジピンの血清濃度の測定を第1週および第2週目に透析前に施行, 4週以上投与された安定期-1と, 12週以上投与された安定期-2にクリアランステストを施行し, 除去率も計算した.<br>アムロジピン5mg/日服用の15例では, 観察期の透析前収縮期圧, 拡張期圧は, 199±4/95±3mmHgであった. アムロジピン服用開始1週後より有意に血圧は低下し, 12週後には170±5/83±3に低下した. また, 心拍数は観察期には81±2拍/分であったが, 服用開始1週間後に有意に減少し75±2となった. 服用開始2週目以降は観察期と比べ有意な変化は認められなかった. また, 透析後の血圧および心拍数の変動では服用開始1週以降に収縮期血圧で有意な低下を認めたが, 拡張期血圧は第4週と8週に有意な低下を認めただけであった. 透析後の心拍数については, 有意な変化は認められなかった.<br>透析前アムロジピン血清濃度は5mg/日服用者で, 第1, 2, 4週以降, 12週以降でそれぞれ, 6.8±0.8ng/ml, 7.1±0.7, 8.1±1.0, 8.6±1.2であったが有意な差は認められなかった.<br>透析後のアムロジピン血清濃度は透析前の値と比較しても, また, 透析が行われなかった場合の予測値と比較しても有意に低下していた. 透析による除去率は14%から18%であったが, 透析開始1時間という一時点でのクリアランスでは負の値を示した.<br>アムロジピン投与にて血液透析患者の透析前血圧は投与1週間後より12週間まで有意に低下した. また, 少なくとも投与12週間までの間では, 5mg/日の投与量では有意な蓄積傾向はなく, 血液透析による除去率は14~18%であった.<br>結論: ベシル酸アムロジピンは透析患者においても通常投与量で長期投与にても蓄積なく, 安全に降圧し得ると思われた.
著者
濱田 真宏 森川 貴 山崎 大輔 竹内 由佳 大野 良晃 柴田 幹子 岸田 真嗣 今西 政仁 北林 千津子 小西 啓夫
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.297-303, 2016 (Released:2016-04-28)
参考文献数
21

症例は66歳男性. 32歳から2型糖尿病, 52歳時に慢性C型肝炎による膜性増殖性糸球体腎炎からの末期腎不全で血液透析導入となった. X年2月, 腰痛の出現後から左下肢の筋力低下と両下肢痛が出現し歩行困難となったため入院となった. MRIにて胸椎2-3レベルの脊髄の腫大を認め, 左側よりにT1, T2強調画像で淡いhigh intensity areaを認めた. 髄液検査にて水痘帯状疱疹ウイルスを認めたが, 皮疹を認めないことから無疹性帯状疱疹に伴う脊髄炎と診断した. 免疫能が低下していると皮疹が現れにくいといわれており, そのため診断に苦慮することが多い. 本例は糖尿病, 肝硬変, 腎不全などによる免疫不全状態がその要因と考えられた.
著者
天野 栄三 水田 耕治 橋本 寛文 今冨 亨亮
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.34, no.13, pp.1549-1553, 2001-12-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
19

症例は58歳男性, 原疾患は糖尿病. 1995年4月, 血液透析導入. 導入時より慢性C型肝炎, 肝硬変を合併していた. 1997年7月頃よりエリスロポエチン抵抗性の貧血が持続. 定期的上部消化管造影・内視鏡にて下部食道表在癌と診断され, また, 腹部造影CT, 選択的腹腔動脈造影にて肝細胞癌と診断された. 食道癌に対しては放射線療法を行い, 肝細胞癌に対してはSMANCS (styrene maleic acid neocarzinostatin)/TAE (transcatheter arterial embolization) 療法を計3回施行した. 治療後, 上部消化管造影では隆起性病変は消失し, SMANCS/TAE後のCTではリピオドール集積像が比較的良好に認められたが, 次第に肝機能障害増悪, 維持透析継続困難となり, 1999年2月死亡した. 透析患者は細胞性免疫能の低下により, 一般的に悪性腫瘍の発生頻度が高く, 自験例のような重複癌や多発癌の発生する可能性は十分に予想される. 早期診断, 早期治療のためには積極的な定期検査の重要性が強調される.
著者
中島 惠仁 小池 清美 深水 圭 楠本 拓生 玻座真 琢磨 松元 貴史 上田 誠二 奥田 誠也
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.493-499, 2013-05-28 (Released:2013-06-08)
参考文献数
32

ロサルタン,フロセミドによる中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)を発症し救命しえた1例を経験した.症例は76歳,男性.慢性腎不全と高血圧の教育入院中にTENを発症した.原因薬剤中止後も改善せず,ステロイド内服とステロイド外用薬に加え,ステロイドパルス療法,血漿交換を施行し,口腔内膿瘍合併に対しヒト免疫グロブリン大量静注療法(Intravenous immunoglobulin:IVIg)を併用した.リンパ球幼弱化試験(DLST)陽性と臨床経過よりロサルタン,フロセミドを原因薬剤と判断した.TENの原因薬剤としてロサルタンは本邦初,さらにフロセミドもまれであるため報告する.腎不全患者で薬疹が疑われた場合は速やかに被疑薬を中止し,薬疹が改善しない場合は重症薬疹を考え迅速に対症することが重要と考えられた.
著者
松橋 秀典 若佐 友俊 田北 貴子 古橋 三義
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.381-385, 2014

漏血警報は透析膜の破損により, 血液と透析液が透析膜の壁を隔てずに直接接触することを意味する重大な警報である. 近年, 透析液清浄化の技術が広く普及し, 透析液の水質は多くの施設で清浄化レベルが確保されてきているが, 透析液の水質の確保されていない透析施設での漏血事故は, 血液へのエンドトキシンや細菌混入などをひき起こす危険な事故である. 今回われわれは目視にて透析液ダイアライザー出口側より赤褐色様濾液が確認できる漏血警報発生時に, ダイアライザーを交換しても警報を回避できず, 偽漏血が疑われた1例を経験したので報告する. 症例は77歳女性, 心不全に伴う腎機能悪化にて維持透析を実行. 透析治療はHD3時間とECUM1時間の4時間治療を行っていた. 除水の多かった治療日に, HDからECUMに変更後, 漏血警報が発生. ダイアライザーを同器種に交換し治療を再開したが, 再度漏血警報が発生した. さらにダイアライザーを他種膜に変更したが, 再び漏血警報が発生し, 漏血警報が回避できなかった. 漏血警報発生の原因として, 使用していたダイアライザーに膜破断などの異常は認められなかった. 当日の装置漏血検知器の状態にも問題はなく, 誤警報である可能性はなかった. 血中ハプトグロビンの値が10mg/dL未満であり, 溶血が起こっていると考えられたが, 透析由来の溶血は否定的であり, 心臓の人工弁による機械的溶血が原因となる偽漏血であると考えられた. 心臓の弁置換の行われている透析患者で漏血警報が発生した場合には, 溶血による偽漏血の可能性も考慮する必要があると考えられた.
著者
大前 清嗣 小川 哲也 吉川 昌男 佐倉 宏 新田 孝作
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.287-294, 2015 (Released:2015-05-28)
参考文献数
30

透析患者に広く使用されるRenin-Angiotensin系抑制薬 (RASI) のうちAngiotensin変換酵素阻害薬 (ACEI), AT1受容体拮抗薬 (ARB) と生命予後との関連を当院databaseにより検討した. 2006年4月以降databaseに登録された透析患者を対象とした. 対象の傾向スコア (PS) を算出し3群 (ACEI, ARB, 非RASI群) からPS近似例を抽出した. 疾患死をエンドポイントとした3群の生存曲線を作成し比較した. 対象の347例から31組93例が抽出, 3群間に有意差なく4.2年で全死亡30例, 心血管死19例であった. 全死亡はACEI群7例, ARB群14例, 非RASI群9例でACEI群が予後良好であったが心血管死は有意差を認めなかった. 透析患者においてACEIによる全死亡抑制を認めたがARBは予後に影響しなかった. 今後多施設での前向き研究が必要と考えられた.
著者
草野 浩幸 丸山 寿晴 野澤 幸成 高山 英一 浜田 寛昭 須藤 祐司 丸山 高史 里村 厚司 川本 進也
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.281-286, 2015 (Released:2015-05-28)
参考文献数
9

血液透析患者258名における遊離カルニチン濃度と各種検査値との関連を調査した. 健常者125名の遊離カルニチン濃度と検査値の関連を調査し, 健常者と血液透析患者の検査値を比較検討した. 血液透析患者190名を4群に分け, カルニチン静注, 栄養指導による効果を各種検査値で比較する前向き研究を実施した. 透析患者の年齢と遊離カルニチン濃度は負の相関を示していた. 遊離カルニチン濃度とプレアルブミン, 筋肉量/身長2は正の相関を示した. 透析患者と異なり, 健常者では遊離カルニチン濃度は年齢と正の相関を示した. カルニチン静注により, 血液透析患者で遊離カルニチン濃度の著明な上昇を認めた. 栄養指導のみでも遊離カルニチン濃度は有意に上昇した. そのほかエリスロポエチン抵抗性指数, 下肢つれなども調査したが, カルニチン補充療法の効果には限界があると考えられ, その使用には症例を選ぶ必要があると考えられた.