著者
示野 貞夫
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4-5, pp.263-275, 1972-12-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
34

家畜飼料中の炭水化物は全栄養素の50%以上を占め, 脂質とともにエネルギー源として重要な役割を有している。しかし, 動物性蛋白質に対する要求が強い魚類では, 多量の炭水化物の投与は有害であるといわれている。魚類栄養学はこの十数年間に急速に進歩し, マスなど2・3の魚類については, その栄養要求が明らかになりつつある。しかし, 炭水化物投与による成育不良の原因はまだ解明されていない。魚類は水中に生息する変温動物であり, また多くの種類があるので, 闇哺乳動物の糖代謝に関する知見を魚類にそのまま適用できない面もあり, 魚類の特殊性に応じた基礎的な研究が必要である。私どもは, 魚類の糖代謝の特性を明らかにするために, それに関与する酵素について一連の研究を進めている。ここでは, 糖代謝に関与する酵素の分布とその代謝調節の問題を中心に, 魚類の糖代謝に関する研究の現状を総括することとする。
著者
間野 静雄 淀 太我 吉岡 基
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.185-192, 2018 (Released:2019-09-20)
参考文献数
28
被引用文献数
4

庄内川下流の小田井堰堤がアユの遡上に与える影響を明らかにするため,堰堤下流,魚道,河川中流における CPUE の経日変化,耳石 EPMA 分析から推定した河川進入時期,ならびに体サイズの特徴を解析した。堰堤下流では4月5日に投網で初めてアユが採捕され,6月中旬に CPUE が最高値を示した。魚道では5月中旬まで採捕される個体がきわめて少なかったが,5月下旬に急増し,同時期に CPUE が最高となった。堰堤下流には河川進入後80日程経過している体長の大きな個体がみられたが,魚道では体長の大きな個体はみられなかった。また,河川中流の個体の河川進入時期は4月上旬が最も多く,堰堤下流では4月下旬,魚道では5月中旬であった。以上のことから,早い時期に庄内川に進入した個体のうち,停滞なく小田井堰堤の魚道を利用した個体は上流へ遡上するが,すぐに利用せずに停滞した個体は環境の悪い堰堤下流に定住してしまうと考えられた。
著者
間野 静雄 淀 太我 石崎 大介 吉岡 基
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.89-97, 2014-03-20 (Released:2015-04-02)
参考文献数
23
被引用文献数
6

長良川ではアユの小型化が問題となっている。天然遡上個体以外に人工種苗,琵琶湖産種苗,海産種苗が放流されている長良川において,まず,各由来の放流用種苗の耳石 Sr/Ca 比と外部形態の特徴を把握し,その結果に基づいて10月下旬に夜網漁によって採捕した72個体の由来判別を行ったところ,86.1%が天然遡上個体,9.7%が人工種苗,4.2%が海産種苗と判別され,琵琶湖産種苗は認められなかった。また,天然遡上個体は放流種苗より有意に小さく,採捕時の体長は孵化日や遡上日との間に相関はない一方で,遡上時の逆算体長や河川生活期における瞬間成長率との間に正の相関がみられた。以上のことから,秋季に長良川でみられる小さなアユは,河川遡上時に相対的に体長が小さく,これにより遡上後も成長の悪かった天然遡上個体と考えられた。
著者
浜田 篤信 菊地 章雄
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.91-100, 2020 (Released:2021-06-20)
参考文献数
26

ニホンウナギの海産および内水面産の種苗採捕量変動を利根川下流域の環境変化と対比させて検討した。1957~2015年の間の種苗採捕量は8回の上下変動を繰り返しながら漸減してきたが,それらが利根川下流域環境変化に関係していることを明らかにした。これらの情報から「ニホンウナギの減少は,利根川下流に建設された水門による本種の遡上・降河阻害による」とする仮説を構築し,この仮説を利根川下流域環境の利根川から離れた水域のウナギ漁量への影響およびウナギ漁獲量と2年後の種苗採捕量の関係の検討によって検証,有効であることを確認した。
著者
中坪 俊之 廣瀬 一美
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.403-407, 2007-09-20
参考文献数
9

飼育下において、マンボウ8個体の全長を計測し、追跡法により成長を調べた。140〜1556日の飼育期間では供試魚はすべて直線的な成長を示した。同様の成長傾向を示した7個体の供試魚の成長データを基に、推定年齢を算定し、集団的にvon Bertalanffyの成長曲線の当てはめを行った結果、次式が得られた。TLt=318.4×{1-exp[-0.149×(t-0.031)]}。マンボウが全長3mに達するためには約20年を要し、今回用いた供試魚は、すべて成長期であることが推測された。
著者
崔 相
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-24, 1963-05-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

1) 水槽内においては稚貝が最もよく動き回り, 成貝, 老成貝の順に動き方が弱くなるが, 特に老成貝は移動力が乏しい。2) アサリの移動運動は, 1.足を前方へのばし, その収縮, 伸長のくり返えしによる前進運動, 2.足を横または後方へ出し, のばした足を支点として体を押し出す, 3.方法2の飛躍形であって, 瞬間的に殻長の2~3倍の前進を行なう等の3方法がみられる。方法1は各大きさの貝でみられる最も一般的な動き方であり, 方法2, 3は主に稚貝, 幼貝においてみられ, 老成貝においては方法3による動き方は全くみられない。3) 天然漁場においても成貝と比べて幼貝の移動が活発であり, 幼貝の30日間における移動距離は砂質地帯 (生息環境が良好でない場所) では4.8~5.7m, 砂れき質地帯 (生息環境が比較的良好な場所) では, 1.4~1.5mであった。4) アサリは自力によって遠距離の移動を行なうとは思えない。しかし, 風波, 潮流など他動的な要因により, かなり広範囲の移動が行なわれることが想像される。5) アサリの土砂の堆積に対する抵抗性は弱い。砂に埋没されたアサリの浮上の難易は, 貝の大きさ, 埋没深度と密接な関係がある。6) 10cm埋没では底生初期稚貝と老成貝には斃死がなかったが, その他の貝では3~18%の斃死がみられ, 15cm埋没では, 貝の大きさに関係なく37~50%の斃死がみられ, 20cm埋没では稚貝, 幼貝, 成貝で63~97%が斃死し, 老成見では70~100%の斃死がみられた。7) 表層までの浮上時間は10cm埋没では幼貝, 成貝が5~9時間, 老成貝が12時間を要し, 15cm埋没では, 幼貝, 成貝が11~12時間, 老成貝が15時間以上を要し, 20cm埋没では幼貝, 成貝でさえ17~20時間を要した。8) 陸性浮泥を用いて, 殻長10~15mmのアサリを3, 6, 9, 12cmの深さに埋没した結果では, いずれの深さにおいても約2週間にわたってアサリには障害がみられなかった。
著者
藤岡 豊 福村 郁夫
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.69-72, 1984-09-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
7

1. 安息香酸エストラジオールの経口投与により, アユの雌性化について次の結果を得た.2. 各試験区において雌雄同体の個体が出現した.3. 安息香酸エストラジオール濃度0.2μg/gから雌性化傾向が見られ, 1.3μg/gと2.7/μg/gにおいては92~93%の雌性化が見られた.4. 生存率は安息香酸エストラジオールの濃度が高くなるにつれて, 低下する傾向を示した.5. 雌性化については安息香酸エストラジオール濃度1.3μg/gが, 最も良い結果を示した.
著者
GONZALES Benjamin J. 岡村 収 谷口 順彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.7-15, 1996-03-20
参考文献数
19
被引用文献数
4
著者
加納 光樹 斉藤 秀生 渕上 聡子 今村 彰伸 今井 仁 多紀 保彦
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.109-114, 2007-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
25
被引用文献数
12

2005年1月から2006年1月にかけて, 渡良瀬川水系の水田周辺にある排水路において, カラドジョウとドジョウの出現様式と食性を調査した。調査期間中に採集されたカラドジョウは171個体 (体長27~115mm) , ドジョウは3023個体 (体長25~149mm) であった。カラドジョウは7月にだけ出現したのに対し, ドジョウは調査期間を通じて出現した。カラドジョウとドジョウの共存時期において, 両種の主要な餌はともにカイミジンコ類, 水生昆虫の幼虫, ホウネンエビであった。どちらの種でも体長30mm未満ではカイミジンコ類を食べていたが, 体長30mm以上になると水生昆虫の幼虫やホウネンエビなども食べるようになった。同じ体長階級ごとに胃内容物組成についてSchoenerの重複度指数を算出したところ, 0.69~0.90の高い値が示され, 両種が同所的に出現したときの餌資源分割が明瞭ではないことがわかった。
著者
池田 譲 櫻澤 郁子 桜井 泰憲 松本 元
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.391-400, 2003-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
27

理化学研究所脳科学総合研究センターでは, 脳を知るためのモデル動物としてイカ類に注目し, 行動学的および分子生物学的研究を行うために内陸部初のイカ長期飼育施設を開設した。これに伴い, 各種イカ類の輸送, 水槽の種類, 餌料などについて飼育実験より検討した。飼育には閉鎖循環系の大型円形水槽 (10, 0001) , 小型円形水槽 (1, 7001) , マルチハイデンス水槽 (20l-8基, 50l-8基) , 角形水槽 (600l) を用いた.ヤリイカ, アオリイカ, シリヤケイカ, ミミイカを卵から飼育するとともに, ヤリイカ, アオリイカ, スルメイカ, ヒメイカ各成体をそれぞれ畜養した。その結果, シリヤケイカおよびアオリイカの累代飼育に, また, ヤリイカの2か月間の孵化飼育にそれぞれ成功した。閉鎖系における3種成体の畜養も可能でありスルメイカでは産卵も観察された。これらに基づき各種ごとの飼育の問題点について考察した。
著者
李 凰玉 芳賀 穣 近藤 秀裕 廣野 育生 佐藤 秀一
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.333-346, 2019

<p>植物性蛋白源により完全に魚粉を代替した無魚粉飼料(NFM)にタウリンを段階的に添加した飼料を10週間与えたマダイの成長,消化吸収率,腸管の形態ならびに炎症性サイトカイン遺伝子の発現に対する効果を調べた。魚粉主体飼料(FM)区では日間成長率(SGR)と増重率(WG)が NFM 区よりも有意に高く,タウリン添加による改善は見られなかった。FM 区の飼料効率とタンパク質効率は,NFM+1.0T 区および NFM+1.5T 区よりも有意に優れたが,NFM+2.0T 区の間では飼料効率に差がなかった。NFM+1.0T 区以外では FM 区と同等のタンパクと脂質の消化率が見られた。NFM 区では,腸管の粘膜下層において典型的な大豆による腸管障害である好中球の浸潤が見られ,サイトカインの発現も FM 区よりも有意に高かった。NFM 区の遺伝子の相対発現レベルはタウリンの添加により有意に低下した。以上の結果より,マダイではタウリンの添加は植物原料を配合した NFM による炎症反応等の一部を緩和することが示唆された。</p>
著者
今井 正 出濱 和弥 坂見 知子 高志 利宣 森田 哲男 今井 智 山本 義久 岡 雅一
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.273-280, 2016-09-20 (Released:2017-09-20)
参考文献数
27

ろ材の洗浄工程での硝化細菌の活性を維持するために,セラミックスろ材のアンモニア酸化能力に及ぼす乾燥の影響を調べた。25℃でろ材のアンモニア酸化活性測定後,それを海水から出して25℃の異なる3条件(湿度30%と60%の空気中,袋に入れて湿度飽和)で保存した。ろ材を30日目まで保存した後,再度アンモニア酸化活性を測定した。最初の活性と比較して,湿度30%と60%で保存したろ材の活性は,それぞれ6日目と21日目に半減した。湿度30%で保存したろ材の活性は7日目に失われたが,湿度60%では30日目にも3.2%の活性があった。湿度飽和状態では,ろ材は30日目でも約50%の活性を持っており,ろ材のアンモニア酸化細菌と古細菌は最初の状態と同様であった。湿度飽和で保存したろ材を海水に戻し,アンモニア源を添加すると,その活性は3日後に回復した。よって,洗浄工程においてアンモニア酸化活性を維持するためには,ろ材の乾燥を防ぐ必要がある。
著者
浜口 昌巳 川原 逸朗 薄 浩則
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.189-193, 1993-06-20 (Released:2010-12-10)
参考文献数
24

佐賀県栽培漁業センターで1992年の4月に採卵・孵化したのち, 種苗生産を行っていた稚アカウニに8月後半から9月初旬にかけて大量斃死が発生した。発生時の水温は23~25℃で, 斃死個体は黒斑や脱棘が顕著ではなく, 囲口部の変色や付着力の低下などの症状を呈していた。また, 管足表面には多数の糸状とも思える長かん菌の蝟集が認められた。この菌はFlex-ibactey maritimus2408株に対する抗血清とよく反応した。海水で調製した改変サイトファガ培地上で分離したところ, 無色で周辺が樹根状のコロニーを形成した。この細菌による人為感染試験を菌液塗布法 (2.3×106cells/ml) と浸漬法 (3.8×106, 3.8×105cells/ml) によって行ったところ, いずれも発症・斃死にいたった。このことから, 今回の大量斃死は細菌感染症であることが明らかとなった。
著者
鵜沼 辰哉 野口 浩介 澤口 小有美 長谷川 夏樹 町口 裕二
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.331-339, 2013-12-20 (Released:2015-04-02)
参考文献数
39

フロック状のマナマコ用配合飼料を開発した。海藻粉末と市販のナマコ用配合飼料を混合し,ここに約2.4倍量の無機成分(珪藻土とゼオライト)を加え,海藻粉末に含まれるアルギン酸を粘結剤として攪拌しながら塩化カルシウムでゲル化することにより,フロック状に粗い粒子の集合した飼料を調製した。この試験飼料を体長約7.8 mm の稚ナマコに29日間与えたところ,生残率,日間成長率とも海藻粉末区,市販ナマコ用配合飼料区よりも有意に高かった。また,体重約96 g の親ナマコに42日間与えたところ,日間成長率は市販ナマコ用配合飼料区よりも有意に高く,生殖巣指数も高い傾向を示し,組織学的観察から卵形成がより進んだと考えられた。これらの結果から,本飼料は稚ナマコ育成,採卵用親ナマコ養成の双方に有効であると考えられた。
著者
田子 泰彦
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.115-118, 1999-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
6
被引用文献数
4

近年, 神通川と庄川ではサクラマス親魚の遡上できる範囲と漁獲量は徐々に減少した。神通川における親魚の遡上範囲と漁獲量の関係はy=-3.97+0.0827xの回帰直線式で示され (r=0.693) , この式は庄川にも当てはまった。この事実は, サクラマス資源の減少は, ダムの建設などによる河川環境の大きな変化と密接に関係していることを示唆している。
著者
橘川 宗彦 大場 基夫 工藤 盛徳
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.231-236, 2006-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
13

ワカサギ卵を水生菌の発生を抑え効率よく孵化させるため, 陶土を用いて不粘着処理した受精卵を高密度で収容できる孵化器を用いる方法と従来の屋外飼育池に敷設した着卵基質に付着孵化させる方法とで孵化管理の比較試験を試みた。孵化器では屋外飼育池に比較し今回の試験では約5分の1省スペース化され, 使用水量も約3分の1に節水された。発眼率では有意差は認められなかったが, 飼育池で観察された卵の脱落による減耗も孵化器では防止できたことや, 受精卵の収容から孵化までの死卵の分離除去が容易であり, 薬剤等を使用せずに水生菌の抑制ができる等の利点があった。一度に多量の受精卵収容作業では不粘着処理に多少時間を要するが, 不粘着処理した受精卵を孵化器に収容する新たなワカサギ受精卵の効率的な孵化管理法を紹介した。
著者
平山 和次 松江 吉行 小牧 勇蔵
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.95-102, 1960-10-31 (Released:2010-03-10)
参考文献数
2

1) 恒温動物に対する麻痺毒として知られていたイソメ毒は, 魚貝類に経口的に与えた場合は無害であるが, 飼育水中に加えると飼育動物に強い麻痺作用が起こる。2) 飼育水中に加えたイソメ毒の毒性は, pHの値に大きく支配され, アルカリ域では毒性を示すが, 酸性域では殆んど無毒となる。3) イソメ毒はイソメの体表部組織中のみに含まれ, 他の部分には存在しない。4) イソメ毒はイソメの死後速かに体表にしみ出るが, 生時に分泌されるようなことはない。5) ゴカイ, イトメ, クロイトメなど他の多毛類中にはイソメ毒のような毒は検出されない。6) イソメ毒とフグ毒とを比較すると, 前者は恒温動物に対しても, 飼育水に加えた場合は魚貝類などの変温動物に対しても, 麻痺作用を示すが, 後者は相当量を飼育水中に加えても魚貝類に対しては麻痺作用を示さない。