著者
久松 洋介
出版者
東京理科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

デスリガンドの一種であるTRAILとデスレセプターを介するシグナル伝達は、がん細胞選択的にアポトーシスを誘導するため、副作用の少ない抗がん剤開発のための標的経路として注目されている。本研究は、生体内に存在する亜鉛イオンもしくは鉄イオンを用いて、Zn^<2+>(bpy)_3もしくは、Fe^<2+>(bpy)_3錯生成に基づくC_3-対称性の自己集積型TRAIL様人工デスリガンドの創製を目的として取り組んだ。採用1年目である本年度、C_3-対称性構造を有する自己集積型TRAIL様人工デスリガンドを開発するための配位子の選定を行い、1,10-フェナントロリン配位子に対してデスレセプターとの相互作用部位であるPatchA、PatchBペプチドを導入したリガンドの合成を行った。今後、合成した人工デスリガンドの精製およびTRAIL様活性評価と課題は残っているものの、一定の進展はあったと判断する。さらに、C_3-対称性構造に固定化されたトリスシクロメタレート型イリジウム錯体に関して、種々の誘導体化を行い、特徴的な発光特性を有する新規イリジウム錯体を見出した。この知見に基づき、イリジウム錯体にPatchAペプチドを導入したリガンドを合成し、現在、TRAIL感受性細胞を用いた活性評価に取り組んでいる。ドイツでの半年間の留学では、人工トランスフェクション試薬および4点型双生イオン部位を導入した自己集積型分子の創製研究に取り組んだ。特に後者では、高極性溶媒中で外的な刺激に応答可能な超分子ポリマーの生成に関して有用な知見を得た。
著者
牛島 光一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究プロジェクトの目的は健康と教育間の因果関係を明らかにすることである。平成24年度は本研究フロジェクトの第二年目であり、教育が健康に与える影響について研究を進めた。この研究では、親の教育水準が高いほど子供の病気を正確に評価できるという仮説を、二つの自然実験的状況((1)医療保障制度改革、(2)教育制度改革)を利用することで検証する。現在、親の教育水準と子供の健康間の除外変数(遺伝的な健康状態、時間選好など)を考慮した研究の蓄積は進んでおらず僅かに、母親の教育水準と乳幼児の健康の因果関係が明らかになりつつある状況である。本研究の分析方法を用いることで、これまで因果関係が明らかになっていない、母親の教育水準と小児の健康の因果関係を明らかにすることができる。本年度は、前年度にタイの家計調査データ(Health and Welfare Survey、2000、2003、2004、2005)から構築したデータセットを用いて分析を行った。このデータセットを用いて、観察された子供の入院率の医療保障制度改革前後の変化と親の教育水準の関係について分析を行った。分析の結果、以下の4点が明らかになった。(1)就学前の子供は、母親の教育水準が低い場合のみ制度導入によって、他のグループよりも入院率が有意に高くなった。(2)この入院率の上昇によって、就学前の子供の入院率は、就学後の入院率と同程度なったので、就学前の子供が過剰な医療サービスを受けたわけではない。(3)父親の教育水準は子供の入院率の変化とは、有意な関係ではなかった。(4)全国レベルの死亡統計によると、制度改革によって、就学前の子供の死亡率のみが減少していた(約43%減少)。従って、分析の結果より母親の教育水準が低いほど子供の健康評価能力が低く、その結果として、子供の健康資本の蓄積が阻まれることが示唆される。
著者
MIRANDA MARTINSANTIAGO (2014-2015) MIRANDA MARTIN SANTIAGO (2013)
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年度は量子気体顕微鏡の技術を活用して、原子が2次元光格子中に欠陥なく並んでいる状態を生成する段階に踏み込んだ。まず、Bose-Hubbard模型で実現される超流動状態からMott絶縁状態への相転移を、飛行時間測定法を用いて観測した。超流動状態では原子の位相が揃っているため、波動関数が拡散するとともに干渉縞が現れる。ポテンシャルの深さを徐々に上げていくとMott絶縁状態が誘起され、原子の位置が確定されると同時に位相が不確定になり、干渉縞が消えていくことが確認された。実験において相転移が生じたポテンシャル深さは、理論的な予想と一致していた。Mott絶縁状態が誘起されても、系の温度が十分に低くなっていない場合、一つのサイトに2個以上の原子が入ったり、あるいは欠陥が生じたりしてしまう。私が構築した量子気体顕微鏡は、サイト内原子数が0か1かを区別することはできるが、原子数が1か2以上かを判断することはできない。そこで、光会合技術を導入することで、同一サイト中の2原子を分子に変換・排除し、原子数の偶奇を判定することにした。実際に光会合光を照射した後、量子気体顕微鏡を使って光格子中の原子分布を直接観測したところ、各サイトの原子数が予想に反して揺らいでいることが確認された。原子数のゆらぎを抑圧するためには系の温度を1nK程度まで下げる必要性がある。別途、系の加熱レートを評価したところ、30nK/sec程度であることが判明した。超流動相からMott絶縁相への相転移を誘起し、顕微鏡で観測するためには、1sec程度の時間が必要となるため、上記した超低温度下での観測は難しいと言える。光格子を生成しているレーザーを吸収・自然放出することによる不可避な加熱レートを見積もったところ、僅か50pK/secであり、測定された加熱レートが、主に、レーザーの周波数・強度ノイズや、実験系の音響振動といった技術的なノイズによるものであることが明らかとなった。
著者
野々瀬 晃平
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度では実際の現場観察やシミュレータを使ったより実現場に近い実験環境での行動観察データを用い、チーム協調におけるメタ認知の重要性を検討した。具体的には2006年、2007年に行われた北関東セクターを用いたシミュレータ実験および同様のセクターを用いた東京コントロールで行われた実現場の記録データを用い、対空席と調整席という二人一組で構成されるエンルート航空管制官のチーム認知モデルの構築を行った。まず、航空管制官同士の言語的、非言語的インタラクションを記録データより抽出し、それを相互信念に基づくチーム認知を用いた「意図の次元」(インタラクションの理由)とタスク分析に基づく「内容の次元」(インタラクションの内容)を組み合わせたコミュニケーション分析マトリクスにより分析した。これは、インタラクションが行われた空域状況や航空管制官の指示、理由等について管制官の資格を持つ協力者に確認しつつ行った。その結果、対空席と調整席ではその役割の都合上、協調時の主要なメタ認知のあり方が異なることが示唆された。対空席はレーダー画面の監視を行い、トラフィック状況や航空機の現在の指示状態など自身の認知過程に対するメタ認知を行い、また調整席に対し自身の認知状態の補完を求めるインタラクションが多く見られた。一方で、調整席は自身もトラフィック状況や航空機の現在の指示状態などを確認しつつも、対空席の行動を見ながらその認知状態を推測し、その信念の正確さや十分さを補完するインタラクションが多く見られた。また、対空席の考えを確認した上でより良い管制プランを提案、補助するなどの行動も見られた。そしてこの分析結果及び航空管制官の認知モデルに関する先行研究の知見を合わせ、航空管制官のチーム認知モデルの構築を行った。これらの成果は今後予想される管制システムの自動化の際、チーム協調の観点からシステムを評価することに寄与すると期待される。
著者
所 木綿子
出版者
東京外国語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は19世紀北アフリカのアルジェリアにおいて、フランス植民地軍に対する武装闘争であるジハードを指導し、思想探求者としても知られる、アミール・アブドゥルカーディル・ジャザーイリー(Amīr 'Abd al-Qādir al-Jază' irī, 1807-1883、以下アブドゥルカーディル)の思想について、彼の準拠していた国際法としての側面を以下の点から明らかにすることを目的とした。①異教徒との対立、調停におけるイスラーム法の役割、イスラームにおいて言及されてきた社会秩序について、政治哲学、国家思想の側面からアブドゥルカーディルの思想における法の役割について②彼の著作で述べられているイスラーム法と関連する概念について他のイスラーム学者との見解の共通点と差異について分析することで、彼の思想の位置づけについて。①1844年隣国モロッコがフランスとの戦争に敗北した結果を受け、アブドゥルカーディルに対するモロッコの態度が援助から敵対に転じた事例、イスラーム国家と非イスラーム国家との間に締結された和平の是非に焦点を当てて検討を行った。このときアブドゥルカーディルは自らのジハードの遂行を妨げる、和平の是非について、エジプトの法学者ムハンマド・イライシュに法的判断を仰いだ。それによるとモロッコが住民の安全上必要不可欠であるとして和平を締結したことは、受け入れざるを得ないものであった。したがってアブドゥルカーディルの法的判断とは、ジハードの必要性を最大限主張し、その指導者である自らの立場をも主張したといえ、戦闘の劣勢によりジハードより和平が優先される事態を食い止めきれるものではなかったといえる。②アブドゥルカーディルの主張は、伝統的なイスラームのマーリキー学派、シャアフィイー学派の見解に依拠し、とくに北アフリカの法学者によって多く参照され、スペインの「国土回復運動」の渦中にあった15世紀の法学者、ワンシャリースィーの議論を土台としていることが今回注目された。彼の議論のイスラームと異教徒との関係をアブドゥルカーディルがどのように再考してきたのか、彼に至る思想の歴史の実態とはどのようであったのか今後も検討していきたい。
著者
河邉 真也
出版者
福井県立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

マガキは、他の多くの水棲生物と比べて様々な環境ストレスに強い耐性を示し、特に低酸素状態に陥る空気曝露に強い耐性を示す。これは、マガキが空気に晒される潮間帯の岩礁などに生息する固着性二枚貝類であることから、遺伝的に獲得してきた能力であろう。しかし、空気曝露ストレスに応答して発現するストレス応答遺伝子群の転写レベルでの調節機構の詳細は殆どわかっていない。プロモーター領域をクローニングしたところ、空気曝露により転写誘導される分子シャペロンCRTおよびGRP94には低酸素応答エレメントHREが認められた。このことから、これら遺伝子は空気曝露の間、低酸素応答性転写因子HIF-1によってその転写レベルが調節されていることが示唆された。また、熱ショック転写因子HSF1のプロモーター領域にもHREが認められた。real-time PCR法による発現解析の結果、マガキのHSF1は転写レベルで空気曝露誘導性を備えており、8種のHSF1変異体の応答様式は各種異なることが明らかとなった。各々のHSF1変異体は、機能モチーフの構造が異なることから、遺伝子発現制御において異なる役割を担うと考えられた。また、哺乳類でHSF1によりその転写が誘導されるHSP70は、空気曝露の間、マガキにおいてはHSF1の発現以後に転写レベルで顕著に誘導されていた。また、構成型であるHSC71は、空気曝露の間、転写レベルでの誘導は認められなかった。これらの結果から、マガキの空気曝露応答機構において、HIF-HSF経路およびHSF1の新規アイソフォームを介した全く新規の空気曝露応答機構の存在が示唆された。
著者
渡部 昌平
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

一年目は、「(1)内部自由度を有するボース系の集団励起に対するトンネル問題」、「(2)二成分フェルミ系の集団励起」の研究を計画に挙げた。まず、(1)の研究実施状況を報告する。spin-1 BECの励起において、ポテンシャル障壁による励起の散乱効果は研究されておらず、スカラーBECでの「異常トンネル効果」との関係は未知であった。これらの解明は、ボース系を理解する上で重要である。我々は、この系の透過特性を調べた。まず、強磁性相、ポーラー相で、障壁存在下での凝縮体波動関数を求め、各相に存在する3つの励起について透過係数を求めた。結果として、強磁性相の四重極的スピンモードのみ長波長極限で完全反射を示し、その他のモードには異常トンネル効果と同じ完全透過性があることを解明した。また、接合系での透過係数、波動関数の特徴、変数依存性、可積分条件下での議論も行った。一部は、論文[Watabe and Kato, JLTP, 158,(2010)23]で発表した。一方、超流動流上での励起のトンネル問題の知見を用いて、一様系と非一様系における超流動の安定性を研究した。この研究は年次計画にないが、ボース系を理解する上で重要である。我々は、局所密度スペクトル関数によって、超流動の安定性を判定することを提案した。この方法は、ランダウの判定条件を含む、一般的なものである。このような議論はこれまでになく、新しい結果である。一部は、論文[Watabe and Kato, JLTP, 158,(2010)92]で発表した。次に(2)を報告する。フェルミ多体系の励起はこれまで多く研究されてきたが、第零音波と第一音波のクロスオーバーを、有限温度の効果を適切に入れて一つの枠組みで求めたものはない。我々は、モーメント法を用いて、このクロスオーバーを、温度と相互作用定数の関数として研究した。結果は、論文[Watabe, Osawa, and Nikuni, JLTP,158,(2010)773]で発表した。
著者
金山 浩司
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

1940年代日本における技術論--技術とはどういう性格をもつものかという論点をめぐる--論争を、従来は知られていなかった当時の論者の論考を渉猟・精読しつつ、再構成する作業を行った。1930年代に日本の技術論論争はマルクス主義に傾倒していた論者たちの間でマルクス主義の概念装置を用いて行われており、戦後もこの傾向が引き継がれていたが、言論弾圧が苛烈化した1930年代後半から終戦までの時期の技術論論争史はよく調べられてこなかった。代表的論者の一人である相川春喜に着目することで、かつてマルクス主義に傾倒し「転向」した知識人の一部が、戦時下の日本でもてはやされた反機械論、全体論の観点--これはマルクス主義の基本的観点と相反するものではない--を技術論の中に持ち込むことで、従来の論争を換骨奪胎しつつ、また当時の状況下で要請されるような理論的装置を用いつつ、高度な言論活動を維持しようとしていたことが明らかになった。また、当時の相川の議論は高名な物理学者である武谷三男との討論を通じて一面においては鍛えられたものでもあり、これを精読することは戦後の武谷の技術論を再検討するうえでも役立つものである。こうした成果は2月、東京工業大学において開かれたセミナーの席上で口頭発表され、現在学会報告・論文化の準備を進めている。また、ソ連と日本との科学哲学分野における知的交流についても若干の調査を行った。日本の物理学者坂田昌一が、最晩年(1960年代末)にソ連の科学哲学者オメリャノフスキーの慫憩に応じて素粒子論の哲学的問題に関する論考を執筆していたことが明らかになった。ロシア語で発表された同論考を訳とともに日本人読者に紹介する準備を進めている。ソ連における物理学をめぐる哲学論争についてロシア史研究会年会において発表し、この内容を英語の論考にまとめ科学史の学術雑誌に投稿した。現在、査読結果に応じた修正を行ってしいる。
著者
熊田 陽子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、性風俗世界(性風俗産業を中心に成る経済・文化・政治の複合的世界)の適法性をめぐる政治を明らかにしながら、日本の都市的生活様式の核である都市的"性"様式を解明することにある。平成22年度の成果は以下の通りである。第一は、「当事者」概念を使った本研究の方法論に関する検討である。本研究は民族誌的方法を用いた実証研究であり、実証性の確保には、調査研究方法、データの質・量、分析の妥当性などが鍵となる。研究の意義や意味を問う「当事者」議論の蓄積には、同時に実証性への問いが多く含まれる。現象学的な視点から「おんなのこ」(性労働者)と「私」(調査者)の関係を再考し、「当事者か否か」ではなく「(調査の場にいることを)許されるか否か」という点を重視して「当事者」概念を理解した本成果は、様々な実証研究に対する援用が可能である。第二は、本研究の軸となる性風俗世界と法の関係の検討である。詳細な分析の蓄積が薄かった「風営法」の条文を精査し、そのうえで、性風俗営業主体と性労働者が「適法性」を確保すべく行う諸実践を重点的に検討した。性労働者の視点を軸に、客や営業者とのつながりから性風俗世界を捕捉する本成果のアプローチは、(女性)性労働者と客・営業者を対立しあう存在として捉えることの多かった女性学や法学の成果に対して新たな視点をもたらす。第三は、「『おんなのこ』の民族誌」に向けた情報収集及び執筆活動である。東京都市部の性風俗店における参与観察調査の中で、性労働者と関係者を対象に、性労働に限られない様々な経験について情報を収集した。現在執筆中の本成果は、性風俗産業を経済・文化・政治の複合的世界として捉える本研究の根幹を成す。性の問題系から都市の人々の生を理解することは現代日本社会に生きる人々のありかたについて考えることに他ならず、都市研究を始め多くの研究分野に対する成果還元が可能である。
著者
奥山 輝大
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

採用1年目、2年目でメダカの配偶者選択行動の結果、メダカメスは見知ったオスを好んで配偶相手として受け入れることを見出し、その意思決定段階に終神経GnRH3ニューロンが関わることを明らかにしたが、この「個体の記憶に基づく意志決定のシステム」の進化的保存性については未知な部分が多い。そこで、一般化するためMIT利根川研究室においてマウスを用いた個体記憶に関する行動定量システムを独自に考案した。このシステムとオプトジェネティクスの手法を組み合わせて海馬での個体記憶を担う領域を同定した。まず初めに、マウスの個体記憶をアッセイする行動実験系として、社会性識別テスト(social discrimination test)と 侵入者テスト(resident-intruder test)の行動実験系 を立ち上げた。社会性識別テストは、マウスが新規な個体に強く接近することをアッセイするテストであり、 テストチャンバーのなかに新規個体と既知個体を入れたペンシルホルダーを設置すると、マウスは新規個体の周囲を好み、積極的に匂いを嗅ぐ。テストマウスの動きをチャンバーの上から録画した後、行動解析ソフトでマウスの鼻の位置をトラッキングし、鼻が sniffing areaの中にいた時間を自動で検出したところ、確かに有意に新規個体へと接近することを確認した。さらに、緑光刺激依存的に神経興奮を阻害する eArchT3.0タンパクを用いて、個体記憶を担う脳領域の探索を行った。AAVrh8-CamK2:eArchT-EYFP を顕微注入したマウスを用いて、 社会性識別テストと侵入者テストを行った結果、海馬の小領域の神経興奮を阻害したマウスは社会性識別テストと侵入者テストに異常を示した。
著者
東中野 多聞
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

本年度の研究成果の一つとして、「昭和十八年九月三十日の御前会議-国策と戦争指導の相剋-(附)オーストラリア国立戦争記念館所蔵、草鹿任一日誌」(『東京大学日本史学研究室紀要』第8号2004年3月)が挙げられる。従来、昭和十八年九月三十日の御前会議で決定した絶対国防圏については、陸軍と海軍の対立で語られることが多かった。そこで、陸海軍内部の上下対立や、中央と現地軍との対立に注目し、絶対国防圏の設定が日本の国家戦略上どのような意味を持っていたのかを明らかにした。それは、軍事的にみれば、ラバウルに地上部隊を投入するのと同時に、ラバウルを放棄するという矛盾に満ちた非情な決定であった。後方の防備を固めるためには、ラバウルで出来るだけ長く「持久」する捨て石部隊が必要であった。一方、政治的にみれば、絶対国防圏の設定によって陸海軍内部に亀裂が生じ、その結果、陸海軍大臣の統帥部長就任と、海軍中堅層の海相更迭運動とが発生した。そして、両者は、東条内閣総辞職の原因となる。オーストラリア国立戦争記念館に所蔵されている南東方面艦隊司令長官兼第十一航空艦隊司令長官草鹿任一中将日誌の一部の活字化も行った。草鹿は、ラバウルを中心とするソロモン方面の海軍作戦の最高責任者であり、現地軍の史料としてきわめて貴重である。本資料は、連合軍が戦後、草鹿より没収したため、国立戦争記念館に残されている。太平洋戦争においては制空権が重要な意味を持ち、その点では小さな島々の持っていた価値はきわめて高かった。これらは、航空機の発進基地となったのである。太平洋戦争は、いわば、飛行場の争奪戦であったといえる。小さな島々の陥落は、軍事的にも政治的にも大きな衝撃を国内政治に与え、国内体制の崩壊速度を加速させていったのである。
著者
西尾 祥子
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究は、家庭でも見られるテレビ番組を公共の場で集団視聴する「パブリック・ビューイング」と呼ばれる21世紀の新しい集合行為を、日独オーディエンスの比較分析によって実態解明し、狭義には「メディア・イベント」研究の新たな理論構築を目指すものである。本年度は、前年度までに行った社会調査を踏まえ、データの分析を完了させ、データと文献調査を踏まえた従来メディア・イベント論の問題指摘およびメディア・イベント論の新たな可能性について明らかにし、最終的には本研究の成果として博士学位論文を提出することが課題であった。今年度行った具体的な研究内容は下記の通りである。1. 博士学位論文の完成 : 博士学位論文「パブリック・ビューイング体験の日独比較分析-メディア・イベント論の再構築を目指して-」が、受け入れ研究機関である名古屋大学大学院国際言語文化研究科に受理され、申請者は平成26年3月25日に博士(学術)の学位を取得した。2. 得られた成果についての国内外での学会発表等学位論文として研究を完成させるにあたって、学会発表および学術論文の執筆によって自己の研究のフィードバックを受け、得られたアドバイスを最終的に博士学位論文に反映させることができた。3. ドイツ地域における文献調査およびフィールドワーク博士学位論文を完成させるにあたって、ドイツ地域にて文献調査およびフィールドワークを行った。4. 異分野研究者への研究成果の共有本研究によって得られた成果や、本研究が依拠するメディア論・社会学について、領域内だけではなく多様な分野の研究者と共有することができた。
著者
宮崎 匠
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

ジュネーヴ大学図書館などの研究施設を利用し、18世紀ジュネーヴの絵画論、およびそれとの影響関係が考えられる美術関連書を閲覧・調査した。その結果、同都市の美術理論に関しては、スイスの他の都市の絵画論以上に、フランスやイタリアの理論との関係が密接であることが判明したため、それら他地域の絵画論とジュネーヴの絵画論の特徴的理論の内容を比較分析した。これによりヨーロッパ美術理論史上におけるジュネーヴ絵画論の相対的な位置づけを明らかにした本研究の成果は、口頭での研究発表と外国語・日本語による論文の中で発信された。まずジュネーヴの画家J. E. リオタールが重点的に論じている、作品の「仕上げ」に関する理論を分析した結果、それがオランダの画家J. ファン・フイスムの作品に対する評価や、17世紀イタリアの画家F. アルバーニの自然描写に関する理論と密接に関係していることが明らかになった。またジュネーヴの美術愛好家F. トロンシャンの絵画論については、特に気候風土が作品様式に及ぼす影響に関する理論などは、当時のフランスで知られていた絵画論を発展的に受容しつつ形成された可能性が高いことを明らかにすることができた。他にヴェネツィアの美術愛好家F. アルガロッティの書簡を分析した結果、アルガロッティがリオタールやトロンシャンと同様にアルプス以北の画家の「仕上げ」を高く評価する傾向を持っていたこと、すなわちイタリアとジュネーヴの絵画論には近似する趣味の傾向が認められることが判明した。さらに同時代のフランスで出版された美術辞典などの資料との比較からは、リオタールが絵画論の中で高く評価するパステルに特有の鮮やかな発色などの特徴は、同時代のフランスの美術関係者たちにも利点として認識されていたこと、つまり流行の画材に関する隣国の趣味にも、ジュネーヴの絵画論は敏感に反応していたことを究明することができた。
著者
林 昌宏
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013

平成25年度は、当初計画で提示した研究課題のうち(1)地方政府の権限拡大をめぐる・アクターの行動の分析に関する作業を中心に進めた。これは、地方政府が、どのような政治的・社会経済的背景のもとで権限を拡大し、それをいかなる意図をもって活用していくことになるのか。また、その際には、権限を喪失する中央政府が、どのような行動を取ろうとするのか。これらを、主に日本における港湾管理権の移譲を事例に明らかにする試みである。具体的には、東京の国立国会図書館東京本館などで、1950年の港湾法制定ならびに港湾管理権の地方政府への移譲に関する文献・論文・資料を調査・収集した。そして、地方政府が権限を拡大していくにあたり、関係するアクターがどのように行動しているのかという観点のもとに、収集したそれらの分析を進めていった。こうした作業で得られた知見については、2013年6月に福島市(コラッセふくしま)で開催きれた日本公共政策学会2013年度研究大会などで発表した。(1)の研究課題に関する作業に目途が立ったこともあり、2013年の冬から(2)地方分権の進展が政府間関係・政策帰結に及ぼす影響の分析に関する資料の調査・取集を開始した。(2)の研究課題は、(1)の分析を踏まえて、地方分権の進展によって権限を拡大した地方政府が、他のそれらや中央政府、超国家組織との商に、どのような関係を築くのか。そして、それが政策帰結に、いかなる影響を及ぼすことになるのかについて明らかにしようとするものである。(2)の主な作業は、先進諸国の地方自治制度(大都市制度を含む)、欧米、特に米国、オランダ、ドイツの港湾の整備・管理に関する文献・論文の収集になる。こちらについても平成25年度は東京の国立国会図書館東京本館を中心に、それらの調査・収集を進めた。また、来年度に調査を予定しているオランダの地方自治システム、港湾の管理・整備システムの分析を並行して進めることができた。
著者
加藤 久典 JIA Huijuan JIA Hujiuan
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

これまでにパセリの熱水抽出物がヒト結腸がん由来細胞株HT-29の増殖抑制効果が認められたことから、パセリには抗結腸腫瘍活性を有する可能性が示唆された。細胞レベルから生体レベルへのパセリの腫瘍増殖抑制作用を検証するために、まずは最初の一歩として、デキストラン硫酸ナトリウム誘導潰瘍性大腸炎モデルマウスを用いてパセリ摂取による大腸炎の抑制作用を検討した。体重減少、血便、下痢の3つのスコアからなる大腸炎の指標であるDAI (Disease Activity Index)を評価するとともに、トランスクリプトーム解析を基盤とした統合オミクス解析を活用し、その作用分子機構の解明を行った。パセリ摂取マウスにおいて大腸炎の発症に伴うDAI上昇および腸管の短縮は有意に抑制され、血中腫瘍マーカーのSerum amyloid A1 (SAA1)、および炎症マーカーのIL-6 (Interleukin 6)、Matrix metalloproteinase-3 (MMP3)の濃度も顕著に減少した。大腸のトランスクリプトーム解析では、炎症サイトカインのI1-6、ケモカインCc15、下流のHaptoglobin、cluster of differentiation 163、および線維化マーカーのTissue Inhibitor of Metalloproteinase l、Mmp3、Mmpl0の発現が有意に減少し、パセリの摂取により炎症の抑制、腸管短縮の改善に関与すると示された。肝臓トランスクリプトーム解析では、Saa1、c-Jun、S100 calcium binding protein A8など腫瘍マーカーの発現減少、stearoyl-CoA desaturase-1、ELOVL family member 6, elongation of long chain fatty acids、fatty acid synthase、NADP-dependent malic enzymeなど脂肪酸合成関連遺伝子の発現増加から、パセリを摂取したマウスにおいて腫瘍マーカー濃度の減少および体重減少の改善との関与が考えられた。また、肝臓プロテオーム解析では、クエン酸サイクルおよび尿素サイクルにかかわるタンパク質の発現増加、メチオニン・リサイクル経路にかかわるタンパク質発現減少から酸化的リン酸化の改善、酸化ストレスの低減が示唆された。以上のように、トランスクリプトミクスとプロテオミクスを組み合わせた統合的な解析から、パセリ摂取による大腸炎抑制作用メカニズムの遣伝子-タンパク質ネットワークを解明できた。今後、メタポロミクス解析を加えさらに詳細に解析する予定である。
著者
小松 輝久 ROTHAUSLER EvaAnja ROTHAUSLER Eva Anja
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

流れ藻はブリやマアジ稚魚の生息場として非常に重要である.特に,ブリ養殖では,流れ藻ごと採集するブリ稚魚のモジャコに種苗を全面的に依存しており,流れ藻の生態について正確に知りたいという要望は非常に強い.ブリの最大の産卵場である東シナ海では,アカモクのみからなる流れ藻しかなく,流れ藻は中国から輸送されると考えられている.しかし,アカモクの浮遊期間や,それに影響を及ぼす環境要因も明らかになっていない.そこで,研究対象としてアカモクを選び,その浮遊期間を推定するために必要な,水温や光合成有効放射,紫外線などの環境条件とアカモクの生理生態および浮遊期間の関係を調べることにした.平成23年度は,青森県にある東北大学浅虫海洋生物研究センターにおいて,アカモク流れ藻に及ぼす水温の影響の評価を目的に,アカモク8個体を実海域で,20日間,人工流れ藻としてロープで縛り生長と環境条件について,また,アカモクの葉片を採集し,低水温(6.8±0.2℃),環境水温区(15.8±1.9℃),高水温(20.7±0.3℃)に制御して,それぞれ8個体の生長と生理状態を20日間調べた.野外実験の結果,実験終了時に3個体のみが浮いていた.海底に固着していた個体には,生殖器官がなく,20日間浮かんでいた人工流れ藻は沈んだ人工流れ藻よりも多くの生殖器を発達させていた.このことは,成熟期に流れ藻となり,環境に順応できた個体は20日以上浮遊でき,新しい場所へ分散し,再生産して定着できる可能性があると考えられる.室内実験の結果,高水温区では,気胞は低水温区よりも早く脱落したが,高水温区の生殖器のバイオマス(25%)は,低水温区(3%)や環境水温区(11%)よりも多かった.高水温環境は海藻を早く沈降させ,分散のポテンシャルを減少させることになることが示された.
著者
高橋 政代 JIN Zi-Bing
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

網膜色素変性(RP)は網膜視細胞の機能が障害される遺伝性の疾患群であり、遺伝性失明、また、60歳以下視覚障害者の最大の原因である。原因となる遺伝子変異は多数解明されているものの遺伝子診断を一般的な臨床検査とするまでにはまだまだ多くの課題が残っている。まず、全身疾患を伴わないRPについてこれまでに原因遺伝子が判明しているのは少なくとも40個と多数ある。RP患者の半分以上は弧発や遺伝形式不明であり、遺伝子診断や遺伝カウンセリングはほぼできないのが現状であり、多数の患者が遺伝子診断及び遺伝カウンセリングを受けられないのである。そこで、我々は効率とコストの面を考えながらdHPLCを用いた方法で遺伝形式を問わず全てのRP患者における網羅的な変異解析を試みた。約15%の弧発例や遺伝形式不明の患者で原因と思われる遺伝子変異を検出。結果はその内、18個が新規変異であった(Journal of Medical Genetics,2008)。効果的な治療法が現れない現状では、世界の研究者はES細胞やiPS細胞からin vitro分化してきた視細胞あるいは前駆細胞などを網膜細胞移植の重要なソースと期待しており、我々は世界初マウス、サル及びヒトES細胞から網膜視細胞への分化を効率よくできた(小坂田、高橋らNat Biotech 2008)。この成果により、視細胞分化誘導法及び移植細胞源に関する問題を解決できた。しかし、胚性幹細胞の生命倫理学的な配慮と移植における免疫拒否などの問題は残っている。そこで最近、皮膚などの組織体細胞から再生医療の大きな武器である「多能性幹細胞」を人工的に作ることに成功した(山中)。我々はこのips細胞を用いて視細胞の前駆細胞及び視細胞への分化に取り組み、ヒトips細胞から視細胞の分化に成功した(Hirami et al.,unpublished)。更に小分子を用いて新たな分化方法を効率よくできた(OsaRada F,Jin ZB et al.,unpublished)。これらの研究結果から、網膜色素変性症患者に対して遺伝子診断の臨床応用をでき、また、網膜再生の移植ソースとして視細胞分化を効率よくできた。
著者
坂本 邦暢
出版者
東京外国語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

今年度はこれまで進めてきた研究成果をまとめ、一本の論考と複数の発表に結実させることができた。まず博士論文以降すすめてきた研究成果をまとめた論文「アリストテレスを救え 16世紀のスコラ学とスカリゲルの改革」を論集『知のミクロコスモス 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』(ヒロ・ヒライ、小澤実編集、中央公論新社、2014年3月)に寄稿した。古代からルネサンス期までの知の歴史を追う形で執筆された本論文には、15世紀後半から16世紀前半までのイタリアでの大学教育について行った研究成果が反映されている。また結論部において、アリストテレス主義の哲学が新科学の台頭の中いかに生きのびていったかをしるすことで、17世紀以降についての調査成果も統合した。この成果と並んで、4月と7月にそれぞれアメリカと日本の学会にて研究成果を発表した。両者とも16世紀のアリストテレス主義をめぐる発表である。以上の論考執筆、発表と平行して、本年度は書籍の解説記事やいくつかの書評記事の執筆を行うことで、研究成果の共有と評価につとめた。榎本恵美子『天才カルダーノの肖像ルネサンスの自叙伝、占星術、夢解釈』(勁草書房、2013年)の解説記事では、16世紀の医学者カルダーノをめぐる近年の研究状況を解説し、あわせて同書の特色と意義を論じた。書評記事としては、古代から近世までの生理学を扱った論文集と、アリストテレスの物質論の歴史を扱う論集をとりあげた。
著者
片山 由美
出版者
立正大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-26

本年度は申請にあたって目標に掲げた課題に取り組むにあたり、インド仏教における『法華経』の受容と展開に注目し、昨年度の研究成果を整理しなおして国際学会で発表を行った。『維摩経』と『法華経』の両経典には共通した構造を持つ物語(「法供養」)が見られる。『法華経』「普門品」と『維摩経』「菩薩品」の梵文写本、蔵訳、漢訳に着目し、そこに見られる「法施」の概念が両経典で異なることを指摘した。また神変表現に着目し、両経典が共通のソースを基盤としている可能性を指摘した。『法華経』第14章「安楽行品」の冒頭散文部分、ya khalv esu dharmesv avicarana avikalpanaの解釈について取り上げ、梵文諸写本、蔵訳、漢文と比較しながら検討をした。梵語写本の解釈可能性は一通りではなく、様々な解釈可能性があるが、文脈を考慮すると「avicaraとavikalapana」と解釈するのが適切であると考えられる。また中国の注釈書の解釈も二通りに分かれる。「不分別を行ぜず」と「行ぜず分別せず」という解釈である。前者は慧思の『法華経安楽行義』や天台大師の『妙法蓮華経文句』に見られる。天台大師は慧思の解釈を踏襲し、中道を中心とした理論に当てはめ、「不分別」を「無相」「中道」と置き換え、それにさえも執着しないと解する。後者は吉蔵の『法華義疏』、法雲の『法華経義記』、基の『妙法蓮華経玄賛』にみられる。吉蔵は、「分別せず」の対象として「亦行」と「不行」と分けて解釈する。基は、「行ぜず」「分別せず」に分けて解釈し、その根拠を『般若経』の「無所住に住する=無諸行を行ずる」に求めている。「行ぜしところなし、分別せずところなし」というように、その目的語がないことを、「真際」であらわす。法雲は、両者を2つにわけ、その根拠を「空」に求め、法空を得た時、無分別であるが故に、行ぜざると解釈する。
著者
ファガラサン シドニア TAKAHASHI Lucia TAKAHASHI Lucia
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

The aim of the project was to dissect the contribution of the adaptive immune system in establishing the symbiosis between host and bacteria in the gut.We found that: 1) mice deficient for B cells, T cells or both, fail to support complex bacterial communities in the gut; 2) the reconstitution of T cell-deficient mice with CD4+ T cells expressing the transcription factor Foxp3 (Foxp3+ T cells) restores both the diversity and the phylogenetic structure of bacteria; 3) Foxp3+ T cells helped diversification particularly of the non-virulent Clostridia species, which were recently reported to induce Foxp3. This means that not only Clostridia induce Foxp3, but that the Foxp3+ T cells contribute to the persistence and diversification of Clostridia of the Firmicutes (the most diverse bacterial species in both mice and humans); 4) Foxp3+ T cells act outside and inside germinal centers, by preventing inflammation and by regulating selection of IgAs, respectively; 5) the coating of bacteria with selected IgAs was required to maintain the bacteria in the gut and to prevent the expansion of opportunistic species which could become pathogenic.The research was published in Immunity, 2014.