著者
MATSUZAKI Kenji
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度では本近海沖(北日本、南日本)の海洋コアのデータ出しが終了し、約200万年間の黒潮暖流と親潮の流れの方向、強さ、そして当時の古水温の復元ができました。約200万年から100万年前の時代では南日本の結果によりますと黒潮の影響が弱く全体的に南日本から北日本までは寒い気候を示していることを復元しました。100万年前からは黒潮暖流の強さがとても強くなったことが本研究で分かりました。100万年前から現在までは黒潮の影響はさらに強くなり日本列島に温暖な気候がもたらされたことが本研究で復元しました。そのなかで約30万年前からは北日本のデータによりますと、親潮の影響が強くなったことを復元しました。北日本ですと30万年前からは黒潮と強い関係を持っている津軽暖流は親潮と同時に影響が強くなったことが分かりました。この設定は湧昇な海洋設定を作り地方に高い生産性の海水になったことを復元しました。現在の北日本の海洋設定は約30万年前につくられたことと考えています。黒潮が約100万前から影響が強くなり少しずつ現在の設定になったことを復元しました。本研究で復元しました古海洋復元、とくに暖流の影響の強さの変化は地球が太陽からもらうエネルギー、そして北半球の氷床の面積が広がったことによって行った環境変動ではないかと現在は考えています。今後の研究の課題にすることを考えています。現在は結果を3つの国際ジャーナルに投稿中です。一つはレフェリーの結果待ちです。
著者
中村 良子
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

宇宙を飛び交っている10^<15.5>eV以下の粒子(宇宙線)は、銀河系内の超新星残骸(SNR)で加速されていると信じられている。しかし、現在見つかっている~TeVまでの加速が行われているSNRは、系内のSNR 270個のうち10個程度しかなく、そのほとんどが爆発からん1000年経った若いSNRとなっている。従って、宇宙線加速とSNRの環境との関係、宇宙線加速の進化、そして宇宙線の主成分である陽子加速については未だ解明されていない。そこで私は加速源の環境と加速の進化を解明するために、(i)爆発から数万年経ったSNRから、電子加速の証拠となるシンクロトロンX線を発見すること、(ii)系内SNRのうちシンクロトロンX線が受かっているサンプルを集め、光度の時間変化を追うことの2点に着目して研究を行った。(i)については、古いSNR W28と、CTBS7Bという2つのSNRがら初めてシンクロトロンX線を発見した。次に、(ii)に述べたサンプルにW28とCTB37Bのデータを加え、光度の時間変化を見た。その結果、年齢の若いSNRはシンクロトロンX線の光度が10^<34>erg/secと明るく、古くなるにつれて光度がさがる傾向が見られた。この傾向を説明するために、我々はSNRの進化に基づいて衝撃波の速度、磁場、電子の最高エネルギーを計算し、シンクロトロンX線の半径に対する光度を求める簡単なモデルを構築した。その結果、プラズマの密度が0.01-1cm^<-3>の時に観測データを良く再現でき、密度が低い環境下にあるSNRほど高いエネルギーまで電子が加速され、加速のタイムスケールも長くなること発見した。同様のモデルを宇宙線の主成分である陽子加速にも適用した。その結果、陽子はSNRの進化の早い時期に一気に~1015eVまで加速されること、また最高到達エネルギーの密度依存性が小さいことがわかった。このように電子加速、陽子加速の進化を追った研究は世界で初めてであり、モデルを構築することによって宇宙線加速と環境の関わりを示唆できたことは、宇宙線加速解明への重要な成果であると言える。
著者
ボッレーガラ ダヌシカ
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

二つの対象物(エンティティ)間の関係Rを定義するためには2種類の方法がある。一つの方法はその関係にあるエンティティのペアを挙げることである(外延的定義,extensional definition)。もう一方の方法は関係Rを語彙パターンで表現することである(内包的定義,intensional definition)。本研究では、この双対となる関係の定義に基づくクラスタリング手法を提案し、それを用い関係抽出を行う。提案するクラスタリング手法の一つの特徴としては語彙パターンとentityペアを「同時に」クラスタリングすることであり、このように「お互い何らかの制約を満たしている二つの量を同時にクラスタリングする」クラスタリングアルゴリズムは統一的にco-clustering(共クラスタリング)アルゴリズムと呼ばれている。本研究もこのco-clusteringアルゴリズムの一種であり、関係の異なる定義の双対性という制約に基づいて実現する点に特徴がある。教師なし学習であるクラスタリングによるので、訓練用データを必要としない。co-clusteringによりentityペアの関係種別クラスタリングに使う特徴量となる語彙パターンも同時にクラスタリングするので、特徴次元を圧縮し安定的なクラスタリングを可能にする特徴をゆうする。Webのような膨大なテキストコーパスからエンティティ間の関係を抽出する際に、膨大な数のエンティティペアと語彙パターンを同時にco-clusteringする必要があるため計算量の小さいアルゴリズムが重要である。本研究ではオーダー0(nlogn)の計算量でco-clusteringできるsequential co-clusteringアルゴリズムを提案し評価した。
著者
友澤 悠季
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、「公害」および「環境」概念の歴史的な生成と展開のプロセスに働いた論理と力学を解明することである。これまで戦後日本の環境問題史は、〈「公害」から「環境」へ〉という概念の転換によって捉えられてきた。「環境」概念に対しては、「被害者」対「加害者」の対立構図をのりこえ、より複雑多様な問題を議論できるという点で積極的評価が与えられてきた一方、「公害」概念には、「企業対住民」といった素朴な二項対立でしか事件・問題を整理できないものといいう消極的な位置づけにとどまってきた。だが、本研究の結果、(1)「公害」「環境」概念の歴史的生成における、1970年および1989年という画期の存在、(2)「環境」概念は、国内外における政治経済社会的状況の流動の結果外挿された経緯をもち、その結果、地域社会固有の文脈で深められようとしていた「公害」概念をめぐる議論が強制的に閉じられたこと、(3)一方で、公害反対運動の当事者やそれを支えようとした研究者らの内面においては、「公害」概念を触媒とした思想的深化は連綿と続けられてきたことが明らかになった。本研究が考察の対象とした1960~70年代における各地の公害反対運動は、生業を脅かす企業や行政へ異議を申し立てるだけでなく、「公害」概念を自在に「再解釈」しながら、近代化出発時から社会が抱え込んだ差別的構造を根本から問い直そうとしていた。その背後には、単なる「公害(反対)」「環境(保全)」などの文言では語りつくせない、高度経済成長という嵐の中での個々人の生の選択という根本的な事柄が介在していたことが重要である。各分野における「環境」関連学が、この地平にこそ原点を持つことを踏まえ、「公害」概念を、単なる「環境」の部分概念とみなす思考をいったん捨て、現在への連続性の中で捉えなおすことが今後の課題である。
著者
神谷 和秀
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013

高効率かつ安価な酸素還元触媒の開発は燃料電池のさらなる普及拡大のために必要不可欠となっている。本研究では鉄と窒素をグラフェン面内に短時間熱処理によって導入した酸素還元触媒(Fe/N-graphene)のさらなる高活性化を目的としている。今年度は高活性化に向けて、Fe/N-grapheneの構造および酸素還元活性メカニズムを放射光を用いて明らかにした。まず広域X線吸収微細構造(EXAFS)によって鉄周りの配位構造を明らかにした。その結果、一般的な炭素触媒を作製するような30minを超えるような長時間の熱処理では容易に切断されてしまう鉄-窒素配位構造が、短時間熱処理によって作製する本触媒においては残存しており、その鉄-窒素配位構造が高密度にグラフェン面内にドープされていることが明らかになった。また、Fe/N-grapheneと窒素を加えずに作製したグラフェン(Fe-graphene)の鉄L端の軟X線吸収分光スペクトルを比較したところ、窒素から鉄への強い電子供与に基づき鉄の電子密度が向上していることが明らかとなった。これにより、鉄から酸素の反結合性π軌道に強いπ逆供与が生じ、その結果、酸素分子のO=O結合が活性化され、酸素還元反応が効率的に進行したと推察された。このように、短時間熱処理で作製した触媒は前駆体の触媒活性を決定する構造的本質(この場合は鉄-窒素配位結合)を残す形で炭素構造内に導入することが可能であることが示された。これは錯体触媒の活性と炭素材料の耐久性の両立した触媒の合成が可能であることを示している。
著者
泉田 勇輝
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年度は主に二つの研究課題に取り組み、成果を得た。(i)有限時間で動作する熱機関、具体的には有限時間カルノーサイクルに局所平衡を仮定してその最大仕事率時の効率論を構築した。有限時間過程においても作業物質に熱力学諸変数が定義可能(局所平衡仮定)とすることで、熱力学的力と流れやこれらを結ぶ関係式について作業物質や熱源の熱力学変数を用いた新しい表現を導いた。これらの表現を用いて、有限時間カルノーサイクルが線形非平衡状態での最大仕事率時の効率の上限値を達成するモデルであることを示すことにも成功した。こうした局所平衡仮定に基づく熱機関の定式化は従来の非平衡熱力学と親和性が高く、非平衡蒸気機関の理論を構築する際の第ゼロ近似としての役割を果たすことも期待できる。以上の成果をまとめた論文を現在投稿中である。続いて(ii)結合振動子系における「同期のエネルギー論」の構築に取り組んだ。結合振動子がリズムを揃える同期現象は位相方程式によって簡潔に記述される非線形力学系の一例である。一方、リズム現象自体はエネルギーの流出入がバランスすることで維持される非平衡散逸系の典型例であり、非平衡熱力学の研究対象として考えることもできる。本研究では微小生物の鞭毛の流体力学的相互作用による同期現象を念頭に、結合振動子系にエネルギー論を導入した。まずそれぞれ円周上に束縛された二つの結合振動子に独立な白色ガウスノイズが加わった系のフォッカー・プランク方程式を考え、その解析解を導いた。続いて得られた確率分布関数を利用し、非平衡熱力学や揺らぎの熱力学を適用することで、結合振動子の振動に伴うエネルギー散逸率の公式を導出した。これを流体力学的相互作用するストークス球などへ適用し、同期・非同期によるエネルギー散逸率への影響を定量的に評価することにも着手した。これらの成果は日本物理学会において発表され、現在論文を準備中である。
著者
坂井 教郎
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

亜熱帯島嶼条件下にある沖縄農業において経営間の連携を進めていくためには,耕地面積の約半数を占めておりながら,他部門との連携が非常に希薄なさとうきび経営の連携構築が必要である。本研究では,さとうきび作における連携の主体を借地型の大規模経営と想定し,それが零細さとうきび農家や園芸・畜産経営と連携していくための課題や条件について検討する。ここでは大規模さとうきび経営が,作業の受委託を媒介にして零細経営と連携するための条件を明らかにするために,佐敷町のさとうきび農家の収穫方法,収穫規模に関する個別データを用いて,収穫方法別の生産実績の推移,農家の性格の違いを分析し,同地域における収穫委託の特徴と位置づけを明らかにした。結果は次のとおりである。1.零細生産者と中規模以上の生産者では収穫委託の位置づけが異なる。収穫を委託する零細な生産者は全ての収穫を委託する傾向があり,中規模以上の生産者は可能な限り委託を減らし,手刈できない部分のみを委託する。2.収穫を全委託する零細生産者の多くは5年以内でさとうきび作を廃止しており,多くの小規模農家にとって,収穫委託はさとうきび廃止の契機となつている。一方,さとうきびを廃止する生産者は,(収穫委託を経ず)手刈から直接辞める人が大半である。つまり収穫作業の委託とは関係なくさとうきび作を廃止している。このように収穫の受委託の推進によるさとうきび生産者数の維持の効果は限定的である。3.今後,高齢世代のリタイヤによる生産者の急激な減少が予想されるなかで,さとうきびの生産量を確保しなければならない状況にある。このようなかで収穫の作業受委託が前向きな意義を持つのは,収穫量の一部を委託する中規模以上の生産者に対してである。
著者
波平 宜敬 HOSSAIN Md. Anwar HOSSAIN Md. Anwar
出版者
琉球大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年,医療用システムとして断層画像診断技術(OCT)が注目されている.OCT技術においての横分解能は,顕微鏡の開口数に依存するため,高開口数が必要とされている.OCTで使われる波長830 nm,1060 nm,1310 nm帯での高開口数用PCFの設計を,有限差分法(FDM)を用いた数値シミュレーションにより行った.本研究では,この数値解析モデルをOCTに応用することを提案している.OCTにおける画像明細度(分解能)は使われる光源とファイバスコープにより決められ,その光源がインコヒーレント,つまりスペクトルの広い光であればあるほど画像明細度(縦分解能)は上がり,そのファイバスコープが高開口数であればあるほど画像鮮明度(横分解能)は上がる.しかし,高開口数ファイバスコープをつくろうとしても,PCFは複雑な構造となり製造が難しいため大きな開口数を得られていないのが現状で,横分解能が不十分は状態であった.本研究では,眼科,消化器科,歯科に使われている波長830 nm,1060 nm,1310 nm帯における,OCTのため製造が容易な構造をもった高開口数ゼロ分散シングルモードPCFを推奨する.シミュレーション結果は推奨するPCF構造がOCTシステムの横分解能を向上させることを示している.なお,数値解析手法として有限差分法を用いた.波長830 nm,1060 nm,1310 nm帯における高開口数分散フラットPCFの数値シミュレーションを行った結果,高開口数を有するPCFであることが確認でき,このPCFをOCTに応用することによってOCTの横分解能を現在の20倍近く向上させることができた.
著者
宇田川 幸大
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

平成24年度は、これまでの調査・研究で得られた成果を踏まえ、活字論文化のための作業や研究成果の公表を重点的に行った。また新たな資料収集・分析も行い、これまで充分に検討してこなかった東京裁判の被告たちの戦争責任観・戦争観・戦後社会観についても活字論文化の作業を行った。これまで作業を行ってきた日本側の裁判対策の内容や審理での弁明、検察側の方針と審理での立証内容、そしてこれらが判決に与えた影響については、弁護側と検察側の関係資料や『極東国際軍事裁判速記録』(全10巻、雄松堂書店、1968年)などの資料を再度検討しつつ作業を進めた。海軍側の裁判対策と審理での動向については、研究論文が近く公表される予定である。東京裁判の被告の戦争責任観・戦争観・戦後社会観については、既に研究論文として研究成果を発表している。なお、「通例の戦争犯罪」に関する検察側・弁護側の立証・反証内容、及び判決での言及内容について、平成24年度は、これまで充分に検討出来ていなかった大蔵省、企画院、木戸幸一などの弁明内容についても明らかにすることが出来た。平成24年度は本研究課題の最終年度に当るが、3年間の調査・研究の結果、(1)東京裁判における日本側の戦犯対策過程と対策内容の全容、(2)検察側の戦争犯罪追及方針の全体像(特に「通例の戦争犯罪」に関する方針)、(3)日本側の戦犯対策が、内容によってはかなりの程度「成功」する場合があり、審理過程や判決に大きな影響を与えるケースが存在したこと、(4)外務省関係被告(特に重光葵)について、裁判審理や報道が裁判後の権力基盤温存や「復権」への追い風となった可能性があること、(5)東京裁判の被告たちの戦争責任観・戦争観・戦後社会観の一端、がそれぞれ明らかになった。
著者
金 志虎
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

今年度は、昨年度の当麻寺本尊の様式研究と当麻寺の伽藍配置の研究に引継ぎ、当麻寺における信仰の問題について検討することにした。まず当麻寺本尊の尊名の問題について検討した。現在当麻寺本尊の尊名は弥勒仏として伝わっているが、創建当初から弥勒であると伝える同時代の史料はなく、当麻寺本尊が創建当初から弥勒如来として制作安置されていたかははなはだ疑問である。当麻寺は古代日本において死者が往く場所として認識されていた二上山の東麓に立っており、当麻寺を建立した当麻氏は、その二上山の入口で喪葬関連の任務を担っていた氏族であったこと、そして、『日本書紀』や『続日本紀』などには当麻氏が天皇の死後に誄をのべるなど、喪葬関連の記事に多く登場していることに注目した。さらに七世紀後半の日本では、弥勒下生信仰に基づいた弥勒如来の造像例がないことを考慮すると、当麻寺本尊の尊名は弥勒ではなく阿弥陀とみるのがより自然な解釈である。つぎに当麻寺が浄土信仰の代表寺院として発展した背景について考察した。治承四年(1180)に平家勢の攻撃によって被害を受けた当麻寺では、復興するための手段として、聖徳太子信仰を利用しようとしたが、太子関連寺院として発展する要素がなかったため、新たに曼荼羅堂の当麻曼荼羅の存在に注目しなおし、太子信仰から当麻曼荼羅信仰に方向を転換した。その後、当麻曼荼羅は浄土宗西山派によって日本全国へ転写されるようになり、その結果当麻寺は当麻曼荼羅と中将姫の信仰の中心地として日本全国へ知られるようになった。鎌倉時代以降、当麻寺の復興事業が順調に進んでいることを考えると、当麻曼荼羅と中将姫を中心とする浄土信仰は成功したといえよう。報告者は、未だ解明されていない当麻寺史の全貌について美術史、仏教史、考古学の方向から新たな解釈を試みた。今後の当麻寺研究において新しい角度からより活発な議論が出ることを期待する。
著者
VONG BINHLONG (2014) VONG Binh Long (2013)
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

Motivation and Objective: Ulcerative colitis (UC), an inflammatory and intractable disease in colon area, affects millions of patients worldwide. Moreover, UC increases the risk of the development of colitis-associated colon cancer.Oral chemotherapy is the preferred treatment for colon cancer. However, this strategy faces many challenges, including instability in the gastrointestinal (GI) tract, insufficient bioavailability, low tumor targeting, and severe adverse effects. In this study, we designed a novel redox nanoparticle (RNP) that is an ideal oral therapeutics for colitis-associated colon cancer treatment.Results: RNP possesses nitroxide radicals in the core, which act as reactive oxygen species (ROS) scavengers. Orally administered RNP highly accumulated in colonic mucosa, and specifically internalized in cancer tissues, but less in normal tissues. Despite of long-term oral administration of RNP, no noticeable toxicities were observed in major organs of mice. Because RNP effectively scavenged ROS, it significantly suppressed tumor growth after accumulation at tumor sites. Combination of RNP with the conventional chemotherapy, irinotecan, led to remarkably improved therapeutic efficacy and effectively suppressed its adverse effects on GI tract.Conclusion: RNP is promising oral nanotherapeutics for UC and colon cancer treatment.
著者
市川 豪
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は、平成23年度にフランスのラウエーランジュバン研究所で17日間にわたって取得した実験データの物理的な解析を行った。超冷中性子の量子状態の位置分布を、凸面鏡を用いて拡大するというこれまでに前例のない実験手法であり、解析の方法についても、結果を実験的に確認したものが無いため、新たに考案する必要があった。中性子の分布が拡大円筒で反射されてピクセル検出器上で検出されるまでの過程は、鉛直方向の位置だけではなく運動量にもよるため、位相空間上の中性子分布を用いる必要がある。そのため、ウィグナー関数を用いて位相空間上の準確率分布を考え、ガイド端の位相空間上の点とピクセル検出器上での検出位置の対応関係を、古典力学による軌跡で近似することで、検出器上の中性子分布を与えるモデルを立てた。量子状態の各準位の確率は、古典力学と同じエネルギー分布を持ち中性子ガイド内に入射した超冷中性子が、ガイドの中で床と天井によって取り除かれていく、という過程を定式化して計算を行った。実験データの中性子分布と、量子力学に基づく計算による分布はよく一致し、特にはじめの数個の分布の濃淡が一致していることが確認出来た。これは、明らかに、古典力学に基づいた計算からは得られない結果である。中性子分布を測定する精度は、0.7マイクロメートルであると評価した。これまでの中性子の分布を測定する精度は、検出器単体の分解能の数マイクロメートルに限られていたが、この研究によって、これを越えるサブミクロンの精度で測定することに世界で初めて成功した。
著者
平田 郁恵
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本期間中には,回路素子として前期間に作製したトランジスタの動作特性の解明を行った.具体的には,自己組織化単分子膜の共吸着によって作製した自己組織化単分子膜(self-assembled monolayers; SAM)の表面形状と電位を測定し,トランジスタ特性の変化と比較した.また,共吸着されたSMA上の有機半導体の結晶構造の変化を観察した.まず,共吸着されたoctylphosphonic acid(HC8-PA)とperfluorooctylphosphonic acid(FC8-PA)の表面形状と電位をKFMによって観察した. FC8-PAの混合比であるχが大きくなるにつれ表面電位は平均的に上昇した.しきい値電圧の変化はビルトイン・ポテンシャルによって誘起される固定電荷をもとに考えるモデルに従うことがわかった.また,χが小さくなるにつれ,絶縁膜表面が平滑化されることがわかった.この結果は,SAM混合比と絶縁膜表面のトラップ密度との関係とも整合性がある.すなわち,FC8-PAの増加によって,表面の平坦性に起因するトラップ密度が減少したと考えられる.次に,共吸着したSAM表面に有機半導体であるdinaphtho[2,3-b:2’,3’-f]thieno[3,2-b]-thiophene(DNTT)を熱蒸着し,その結晶構造についてXRDを用いて観察した.その結果,混合比を変えることによって,特にb軸方向の結晶面間の増加が顕著となることがわかった.DNTT結晶でホール移動度について最も実効的であるのがa軸,次にb軸である.トランジスタとしての移動度の変化は,これに起因するものであると考えられる.
著者
佐藤 萌
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

江戸時代の雛人形の頭髪(スガ糸)には、タンニン酸と鉄媒染により染められた黒染め生糸が用いられ、繊維は酸や鉄による触媒作用の影響を受けて経年とともに劣化し粉末化することが問題となっている。本研究では、これまで修復困難で処分され、調査・研究の対象とされてこなかったスガ糸の制作技法を明らかにし、スガ糸の劣化速度を把握し寿命予測を行う評価法を確立することを目的とした。江戸時代の人形77体の頭髪剥落片の繊維素材を光学顕微鏡による断面観察とSEMによる表面観察により同定し、劣化因子である鉄イオンの有無をエネルギー分散型X線分析により確認した。生糸は53体、精練糸は10体、靱皮繊維は11体、人毛は3体で、殆どの繊維から鉄元素の存在が確認出来たことから、江戸時代のスガ糸には生糸と鉄媒染剤が使用されたことを明らかにした。さらに従来染織文化財の物性評価に用いられてきた引張試験に代わる評価法として、KES(Kawabata Evaluation System)圧縮試験によりスガ糸の圧縮回復性を求めることで、微量文化財試料での劣化度診断法の開発を行った。モデル試料を作製し(1wt%タンニン酸水溶液で染色の後2wt%硫酸第一鉄水溶液で媒染)、加速劣化(70℃,RH75%,70日間)に伴う繊維の圧縮特性と引張特性の経時変化を追った結果、試料の破断伸度が低下するにつれて圧縮回復性も低下する傾向にあった。江戸時代のスガ糸も、モデル試料で得られた脆弱な試料と類似した物性値を示した。このことから、今後引張試験を行うことが出来ない微量で脆弱な文化財試料に対して、その圧縮特性を測定することにより、ある程度の劣化度合いを計測することが出来ると期待する。
著者
福山 真央
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013

本研究は、マイクロ流体デバイス内で生成した数百ナノメートルサイズの液滴(ナノ液滴)を用い、新たな微少量分析操作の開発を目的としている。本年度は、前年度に開発した自然乳化を利用したナノ液滴生成法を利用した、新たな選択的濃縮法の開発を目指した。1. ナノ液滴生成を利用したマイクロ液滴内包物の選択的濃縮法の開発前年度に、非イオン性界面活性剤(Span 80)を含む有機相中にマイクロ水滴を生成すると、マイクロ水滴からミセルへと水が分配し、マイクロ水滴界面から100 nm程度のナノ水滴が生成する(自然乳化)現象を見出した。この現象を利用し、マイクロ水滴内包物の濃縮が可能であると考えた。蛍光色素を含む40μm径のマイクロ水滴を用意し、自然乳化に伴うマイクロ水滴縮小と、マイクロ水滴内の蛍光強度の液滴径依存を観察した。その結果、親水性またはサイズの大きい分子はマイクロ水滴内に濃縮することが判明した。親水性の高いスルホローダミンを用いた場合、500倍に濃縮されることが分かった。また、サイズが小さく疎水性の分子はナノ水滴に分配し、マイクロ水滴内に濃縮されないことが分かった。2. 新規選択的濃縮法の生化学分析への応用可能性実証上記濃縮法の生化学分析への応用として、ビオチン・アビジンを利用したbound complex/ free ligand(B/F)分離を実証した。以上の成果は、マイクロ液滴を利用した微少量分析操作システムにおいてボトルネックであった、液滴内包物検出の感度向上を可能にすると期待する。これまで、マイクロ液滴は微少量試料分析のための反応場として注目を集めている一方で、液滴の光路長の短さと試料量の少なさゆえに、その内包物の検出法が限られていた。本研究の選択的濃縮法により、液滴内包物の検出法の自由度が向上し、より柔軟な微少量試料分析システムの開発が可能になると期待する。
著者
ANAK AGUNG GEDE DHARMA SATYA (2014) ANAK AGUNG GEDE Dharma Satya (2013) ANAKAGUNGGEDE DharmaSatya (2012)
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

平成26年度の研究進捗状況を以下に述べる。1.新しいハプティック・インターフェースの開発手法の提案をHCII 2014に発表し、LNCS vol.8511に採択された。2.進化的アルゴリズムを用いたデータベースによるハプティック・インターフェースの進捗状況をADADA 2014に発表した。3.進化的アルゴリズムを用いたデータベースによるハプティック・インターフェースの開発を完成し、ユーザーの主観的評価による検証実験を行った。本年度の研究業績を以下に述べる。1. 国際論文誌(査読有り) :1本;2. 国際学会発表(査読有り):1本;3. 国内学会発表(査読無し):1本
著者
川内 陽平
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

餌生物転換期(全長30m程度)前後において,スケトウダラ太平洋系群稚魚が好適な飼料・物理環境に適合することは重要と考えられるが,充分に検証されてこなかった。本研究では,2011、2012年の北海道噴火湾周辺における昼夜で計量魚群探知機による音響調査,海洋環境観測,稚魚と動物プランクトン採集を行うことによって,稚魚の分布と周囲環境との関連を詳細に検証した。稚魚の摂餌状態と餌料環境の結果から,30mm以上の大型稚魚は小型のものと比較してより大きなカイアシ類等を摂食し,中底層では大型稚魚の栄養状態は良かった。摂食量については全体的に夜間のほうが多い傾向にあった。大型の餌であるEucalanus属は大型稚魚に好適な中底層に多い傾向が確認された。しかしながら,昼夜・湾内外における各体サイズの稚魚の鉛直分布状況の違いや捕食者からの影響の可能性を考慮すると,当海域の稚魚は代謝や逃避等とのバランスをとって摂餌していた可能性がある。また,年のよって卓越した餌種が変わったことから,太平洋系群の各年級群の栄養状態や成長の違いに大きく関わると考えられる。一般化加法モデル(GAM)による2011年の湾全体の稚魚分布と物理環境との関係の結果から,全ての環境要因(水温,塩分,分布深度)が稚魚の分布選択の説明因子として有意であることが示された。また,おおまかに昼間は低温な中層で,夜間は温かい表層に分布する傾向があったものの,湾内外で詳細な分布特性は異なるものであった。これまでの局地的な結果とよく一致するとともに,さらにより広範囲かつ場所に応じた詳細な稚魚の分布特性を定量的に捉えることができたといえる。以上の結果を踏まえ,さらに経年的な解析を行うことで当該時期が太平洋系群に与える影響についての傾向明らかにしていく予定である。
著者
寺田 悠紀
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究は、テヘラン現代美術館の設立(1977)と変遷を事例として調査し、近代の概念・施設と言われる「ミュージアム」(美術館)を通して、イランにおける「近代」の受容と反発について理解を深めることを目指している。また、公共空間に展示される美術品の内容の変遷に注目しながら、「美」という概念と社会政治的要因の関わりについて明らかにすることを目的としている。今年度得られた成果は以下である。今年度はイラン・イスラム共和国テヘランを訪れ、1)昨年度収集することが出来なかった雑誌等のアーカイブの収集と、ペルシア語の資料を精読し用語の使い方等についての分析をすること、2)イランにおける「ミュージアム」の形成を更に深く理解するため、美術館だけでなく他多数の博物館の展示内容にも注目することを計画していた。1)についてはテヘラン現代美術館の付属図書館、ホセイニーイェ・エルシャード図書館、マレク国立図書館と博物館、イラン文化遺産・手工芸・旅行業協会などの機関を訪れ、革命後の博物館について書かれた専門誌「ムーゼハー」をはじめとする政府の文化政策の変遷を明らかにするための関連文献を収集した。また、1979年のイラン革命前に刊行されていた雑誌「タマーシャー」のバックナンバーやシーラーズ芸術祭(1967年から1977年までペルセポリスにて開かれた祭典)のために特別発行された新聞を入手した。これらのペルシア語の資料は、革命前後の変化を明らかにするために重要だと考える。2)については、2012年に建設された聖なる防衛博物館(イラン革命とイランイラク戦争に焦点を当てた展示)や旧アメリカ大使館の内部に設けられた博物館など、政府の政治的メッセージが強く打ち出されている施設に現代美術作品が展示されるという最近の傾向を概観し、調査対象の美術館への理解が深まった。
著者
岩本 通弥 KIM H.-J. KIM H.-J 金 賢貞
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究「文化遺産ガバナンスと社会関係資本の構築と実践に関する民俗学的研究」の目的は、日本のローカル社会における綿密なフィールドワークに基づき、文化遺産に関連する政策の形成・実施・管理をめぐる多様な主体たちの実践を「文化遺産ガバナンス」というパースペクティブから分析するとともに、この社会的現象のダイナミズムが「社会関係資本」の構築にいかにつながっているのか、そのメカニズムのあり方を民俗学的に検討することである。具体的には、1)日本のローカル社会における「文化遺産ガバナンス」の実態の究明と、2)土着の文化遺産、地域固有の経験知と市民的公共性の構築の可能性の検討とに二分できる。以上の目的を達成するため、最初予定していたとおり、フィールドワーク地の埼玉県秩父市に居住地を移し(平成23年8月末)、以下に示す手順に従って現地調査を実施した。まず、平成23年度の4月から9月までのあいだ、第2次集中的現地調査(Second Intensive Fieldwork)を通して、秩父夜祭における中核的祭礼集団としての「中町」にフォーカスを合わせて主要なインフォーマントや、祭りの維持・管理におけるコアー・アクターたる人物を対象にインタビュー調査をした。ほかにも、地元の観光化を推進する行政主体として秩父市の産業観光部観光課や秩父観光協会や秩父商工会議所において聞き取り調査を行った。また、文化財行政のあり方を把握するために、秩父市の教育委員会文化財保護課についても同様に聞き取り調査を実施した。この一連の調査を通して、かなり規模の大きい秩父夜祭の伝承と維持・管理の体制がある程度明らかになったと考える。ほかにも、本研究における主要な方法論であり、かつ認識論的側面をなしている「社会関係資本」の構築の現状を考察するために、このような文化遺産ガバナンスに密接にかかわっている人々、とりわけ、中町などの地元住民たちが、土着の文化としての秩父夜祭の持続と管理以外にも別のネットワークを通して社会と関係を結んでいるのか、また、それが、当該地域社会における公共的生活をめぐる種々の情報の交換や共有、地域社会において生じるトラブルの解決のための協力・協調のネットワークを作り上げるのに、本研究において文化遺産ガバナンスと位置づけた秩父夜祭の伝承と維持・管理に関連する諸実践が役立っているのかを検討するため、地元の住人に焦点を当ててその人間関係や地域生活の実態を調べた。加えて、土着文化としての秩父夜祭とは直接的なかかわりを持たずとも、地域生活の質の向上や問題解決のためにアソシエーションを作って活動する人々のネットワークや実践のあり方をも調べるために秩父ボランティア交流会など、NPO団体についても調査を行った。次に、同年度の10月から翌年の2月まで第3次集中調査(Third Intensive Fieldwork)を実施し、以前の調査のフォローアップを図った。その結果、秩父夜祭の中核的祭礼集団ではなくても不可欠の参加集団であり、にも拘らず、常に周縁に位置づけられる秩父歌舞伎の伝承団体の正和会を新たに調査した。最後に、もともと平成24年度の3月にドイツ民俗学の現状を視察する調査を予定していたが、諸般の事情により中止した。
著者
濱田 彰
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は,学習意図の無い状況下で起こる英語語彙学習の認知プロセスを明らかにすることである。具体的には,日本人英語学習者の文脈内語彙学習に焦点を当て,推論による未知語処理を通して記憶される語彙情報が,どのようなプロセスを経て知識として体系化されるのかを明らかにする。本課題の最終年度となる平成27年度は,これまでの実験環境で得られた結果を教室環境で再現すること,および研究成果を博士論文としてまとめることを中心に研究を進めた。これまでの研究結果から,日本人英語学習者は単語と文脈の意味的類似度に基づいて未知語の意味を推論し,推論内容を心内に符号化していることが明らかになった。実験的な要因として使用した意味的類似度は,言語統計解析モデルの一つである潜在意味解析により規定されていた。そこで,英語リーディングのような言語活動に付随する語彙学習の効率を上げるための教材作成に向けて,潜在意味解析の応用可能性をさらに追及した。単語―文脈の意味的類似度が文脈内語彙学習の成果を予測する要因になるのかを検証したところ,意味的類似度が高くなるほど未知語の意味・用法の付随的学習が促進され,その効果は意図的学習の場合よりも大きくなることが分かった。以上の結果は,付随的語彙学習の認知プロセスは,潜在意味解析理論が前提とする,言語学習の用法基盤モデルに従うことを示している。また,付随的語彙学習はテキスト理解に伴う記憶表象構築のプロセスと密接に関連していることが分かった。博士論文では結論部分で,英文テキストからの付随的語彙学習の効果を向上させるための教育的介入として,潜在意味解析を利用した教材開発,タスクを用いた読解指導の在り方,語彙知識の多面的な評価方法を提案している。