著者
岩佐 麻未 高沢 百香 伊藤 晃 牧野 七々美 城 由起子 松原 貴子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0425, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】疼痛に対する理学療法の有効性に関して1990年代より系統的な取りまとめが各国でなされ,その中でも運動は強く推奨されている。そのエビデンスは,近年の運動による疼痛緩和(exercise-induced hypoalgesia:EIH)に関する報告で示されているが,いずれも高強度・長時間の運動による効果であり(Julie 2010),疼痛患者に処方することは難しい。また,疼痛に対する理学療法を想定すれば低負荷の有酸素運動が適するが,歩行やランニング,自転車運動など有酸素運動の方法による効果の違いは明らかにされていない。一方,これまで我々は3METs程度の歩行,自転車エルゴメーターによる下肢運動,クランクエルゴメーターによる上肢運動の低負荷有酸素運動により広汎なEIHが得られる可能性について報告した(山形2013)。しかし,個人の運動耐性能により身体へ負荷される運動強度は異なることから,運動強度を統一したうえで運動方法の違いによるEIH効果を厳密に比較するまでには至っていない。そこで本研究では,個々の運動耐性能をもとに運動強度を統一し,歩行,下肢運動,上肢運動といった運動方法の違いによるEIH効果について比較検討した。【方法】対象は,健常成人45名(男性22名,女性23名,年齢21.4±0.7歳)とし,全身運動群,下肢運動群,上肢運動群の3群(各群15名)に無作為に振り分けた。全身運動群はトレッドミル(STM-1250,日本光電)による歩行,下肢運動群は自転車エルゴメーター(Ergociser EC-1200,キャットアイ)による下肢ペダリング運動,上肢運動群はクランクエルゴメーター(881E,Monark)による上肢ペダリング運動を各20分間行わせた。また,運動強度は予測最大心拍数を算出し,Karvonen法を用いて40%heart rate reserve(HRR)に設定した。評価項目は,圧痛閾値,心拍変動,および主観的運動強度の指標であるBorg scaleとした。圧痛閾値はデジタルプッシュプルゲージ(RX-20,AIKOH)を用い,僧帽筋,上腕二頭筋,前脛骨筋にて運動前(pre),運動終了直後(post 0)および15分後(post 15)に測定し,pre値で除した変化率を測定値とした。心拍変動は携帯型心拍変動記録装置(AC-301A,GMS)にて心電図を実験中経時的に記録し,心拍数,および心電図R-R間隔の周波数解析から低周波数成分(LF:0.04~0.15 Hz),高周波数成分(HF:0.15~0.40 Hz,副交感神経活動指標)とLF/HF比(LF/HF,交感神経活動指標)を算出し,圧痛閾値の測定に対応した時点のそれぞれ前1分間の平均値を測定値とした。統計学的解析は,経時的変化にはFriedman検定およびTukey-typeの多重比較検定,群間比較にはKruskal-Wallis検定およびDunn's法による多重比較検定を用い,いずれも有意水準は5%とした。【結果】圧痛閾値は,3群とも全ての測定部位にてpreに比べpost 0で上昇し,全身運動群では全ての測定部位,下肢運動群では上腕二頭筋と前脛骨筋,上肢運動群では前脛骨筋でpost 15においても上昇を示した。また,全身運動群は他群に比べ僧帽筋のpost 15で高値を示した。心拍変動は,3群ともpreに比べ運動中にHFが減衰,心拍数とLF/HFが増大し,群間に差はなかった。またBorg scaleも群間に差はなかった。【考察】すべての運動方法で,運動中の心拍数,自律神経活動,主観的疲労感は同程度であったことから,個々に負荷された運動強度は同一であった。運動方法にかかわらず非運動部を含め広汎な痛覚感受性の低下,およびその持続効果を認め,さらにその効果は全身運動で最も顕著であった。有酸素運動に関する先行研究では,60%HRR以上の高強度負荷によりEIHが生じ,さらに30分~2時間の負荷でその効果は大きいとされている(Kodesh 2014, Naugle 2014, Hoffman 2004)。しかし今回,低負荷・短時間の運動であっても,その方法にかかわらずEIHが生じた。さらに,歩行のようなより広範部の運動の方がEIH効果は大きかったことから,有酸素運動のEIHは全身性の運動で効果が増大する可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】有酸素運動は低負荷であっても疼痛を緩和させ,特に,誰もが簡便かつ安全に行える歩行のような全身性の運動がより大きなEIH効果をもたらす可能性が示されたことは,疼痛マネジメントとしての運動療法を確立する一助となる意義深い結果である。
著者
藤井 瞬 井ノ原 裕紀子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1619, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】交通事故による右小指切断再接合後の指尖壊死となった本症例が壊死部再切断を通知された後,理学療法士かつ保存療法を望む患者として提案した内容が医師の治療方針に影響を与えた経験を報告する。【症例提示】29歳男性。診断名:右小指切断中型バイク直進運転中,反対車線から右折してきた自動車と衝突し,前方へ体を投げ出した。衝突の際,バイク右ブレーキレバーの変形に伴い,小指を巻き込み引き抜き損傷のように遠位指節間関節(以下DIP関節とする)より離断した。2014年8月X日,同日マイクロサージェリー実施。尺側固有掌側指動脈のみ切断指と縫合し,橈側固有掌側指動脈,周辺静脈,内外側側副靭帯,深指屈筋,指伸筋は縫合出来ず未実施。K-wireにて末節骨と中節骨を固定。同日からX+3日まで上腕までシーネ固定。その後,近位指節間関節(以下PIP関節とする)伸展位のまま中節指節関節(以下MP関節とする)までのアルフェンスシーネ固定へ変更。X+49日より就寝時以外は皮膚保護剤のみに変更。【経過・方法】経過:手術日より5日間はプロスタンディンと生理食塩水を6時間毎交互に静注し,同時にワーファリンを1日3回内服。X+8日で退院。その後,週一回の外来通院を実施。現状では再接合部は壊死しているが感染症状はない。方法:湿潤療法および週3回40分以上の経皮的電気刺激療法を患部に直接実施。外来での週1回の消毒と管理(退院後から継続)。健康状態管理として週3回以上の15,000歩,ビタミンC摂取を注意して実施する。関節可動域練習:X+30日後よりPIP関節最終可動域で30秒持続を可能な限り実施。統計処理はMicrosoft Excel 2014を使用し,優位水準を5%未満とした。【結果】(初期)→(X+60日)※初期評価は疼痛評価と切断指状況のみ。疼痛検査:Numerical Rating Scale(以下NRSとする)断端先端部:安静時(4)→(1)。運動時(PIP屈曲時)(4)→(4)。PIP関節:安静時(0)→(0)。運動時(屈曲endfeel時)(8)→(7)。遠位切断指:(暗紫色,指型は残存)→(黒色,軟部組織が萎縮し指型から尖端に変化)近位切断指:(暗紫色,炎症所見著明)→(鮮赤色~赤色,炎症所見軽度)Arc Of Motion(AOM)(右小指):MP屈曲120°伸展-5°,IP屈曲100°(pain+)伸展0°。握力(kg)5回平均:右21.28±2.672,左:32.08±2.487。ピンチ力(*10.0kgf)10回平均:(右手)母-示:3.52±0.51,母-中:2.78±0.57,母-環:1.82±0.139。(左手)母-示:3.79±0.42,母-中:3.44±0.63,母-環:2.72±0.13。ピンチ力検定(t検定)左右:母-示:p<0.05,母-中:p<0.01,母-環:p<0.01。ADL制限:自動券売機のおつりが取りにくい,おつりを落とす。血液データ(事故後4時間値→X+7値)CRP:0.1→0.1,WBC:11270→6800。【考察】本症例の切断指は重度挫滅であり,再接合する確率は5割程度手術直後に医師から通知されている。マイクロサージェリーでは尺側固有掌側動脈のみの接合であり,深指屈筋,指伸筋,内側外側側副靭帯,周辺静脈の縫合は実施していない。切断指の状態は悪く退院時には既に壊死状態であり,断端形成のための再手術を考えておくようにと医師より打診があった。本症例は可能な限りの指延長を望んだことから,自ら情報を集め医師の指示に追加して断端面に対する電気刺激療法を提案し,その治療効果に関して医師に説明後,了承を得た事から治療を開始することになった。しかし,感染症等が発覚した場合は早急に手術をするとの条件もあり,身体面のリスク管理が必要と考えた。そこで,免疫力を高めるため,また末消循環を促すために軽度の身体活動として15,000歩を全身運動として取り入れた。その結果,X+61日のX-Pより骨髄炎の問題はなく,肉芽が末節骨中間まで発生している状況であるため,現在は再手術の緊急性はなく,指尖が自然脱落する治療方針に変化し,治療を継続することとなっている。しかし,感染症などの身体症状が生じた場合は緊急で手術をする状況は変化していない。今回の経験に関して,発症時期から早期であったこと,症例の年齢,職業から考えた事から可能な限りの指の延長を望んだ患者としての意見と,理学療法士としての意見を元に医師と治療方針を相談出来た事で希望に合った治療が可能になり,心身共に良好な状態が維持出来ていると考えられる。本人のQOLとって,望まない状況からの脱却はなされ,良好な結果で生じているのは事実である。【理学療法学研究としての意義】保存治療を望む本症例が医師の治療方針に対して,理学療法士かつ患者として治療方針の意思決定に関与出来た事例である。
著者
岡本 尚之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0645, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】身体のリアライメントおよびリラクゼーション効果のエクササイズに日本コアコンディショニング協会(JCCA)により推奨されているストレッチポールを用いたベーシックセブンエクササイズ(Basic Seven Exercise,BSE)がある。BSEについて先行研究では脊柱起立筋の筋硬度の低下,胸椎可動性,重心動揺に対する効果が報告されている。しかし臨床場面では,認知機能面や身体機能面などの要因で対象者がBSEを完遂することが困難な場合が多い。そこで本研究はBSE実施群とストレッチポール上で基本姿勢を保持する群(Maintain the Basic Position,MBP)を比較することで臨床上BSE完遂が困難な者に対してのストレッチポールエクササイズ適応を判断する材料とすることを目的とした。【方法】対象はストレッチポール使用経験のない健常成人22名とした。対象者を11名ずつ実施順にBSE群とMBP群とに振り分け,各エクササイズ前後でのFFD,体幹回旋可動域(ROM),円背指数,左右体重比を測定しその変化をみた。FFDおよびROMの測定は関節可動域測定法に基づき同一測定者が実施した。ROMについては両側を測定しエクササイズ前で可動域の低かった側をデータとして採用した。円背指数は両上肢下垂の座位で2m先の鏡の自身と視線を合わせた状態を測定肢位とし,自在曲線定規を用いC7~L4棘突起までの背部の彎曲をなぞりその形状を紙上にトレースした。紙上にトレースした彎曲C7とL4を結ぶ直線をL(cm),直線Lから彎曲の頂点までの距離をH(cm)とし,Milneらの式を用いその割合を円背指数(H/L×100)として算出した。左右体重比はwii-fitを使用して測定し,左右比50%:50%からの左右変位数の絶対値をデータとして採用した。各エクササイズ方法についてBSEはJCCA既定の手順で行い10分間を目安に完遂した。MBPはストレッチポール上で10分間の基本姿勢保持とした。分析は統計学的処理としてエクササイズ前後で対応のあるt検定(有意水準5%未満)を実施した。また,効果量をG-POWERを用いて検出した。効果量はCohenの報告「小=0.2,中=0.5,大=0.8」を基準に判定した。【結果】FFDにおける変化量の平均値はBSE群:-1.34cm(p値:0.0456),MBP群:-1.96cm(p値:0.0069)。効果量はBSE群:0.09,MBP群:0.22であった。ROMにおける変化量の平均値はBSE群:9.09度°(p値:0.0004),MBP群:10.9度°(p値:0.00005)。効果量はBSE群:0.9,MBP:1.19であった。円背指数における変化量の平均値はBSE群:-0.81(p値:0.0833),MBP群:0.03(p値:0.9624)。効果量はBSE群:0.46,MBP群:0.01であった。左右体重比における変化量の平均値はBSE群:-0.38(p値:0.3897),MBP群:-0.66(p値:0.2424)。効果量はBSE群:0.25(小),MBP群:0.43であった。【考察】今回,BSEとMBPの即時効果をFFDとROM,円背指数,左右体重比の4項目で比較した。その結果,両群ともFFDとROMにおいて即時効果を認めた。また,FFD,ROM,左右体重比の3項目においてMBP群で効果量が大きかった。平沼らによるとMBPの効果として胸椎伸展と胸郭挙上,前胸部リラクゼーション,仙腸関節リアライメント,股関節後方のリラクゼーションなどが報告されている。本研究の対象者はストレッチポール使用経験がなく不慣れなうえ,さらにBSEではストレッチポール上で四肢,体幹の動きを伴うためより不安定な状態になる。しかしMBPはストレッチポール上での基本姿勢保持であるため脱力が容易でありリラクゼーション効果がより得られたことが考えられる。円背指数の測定は座位で行うため抗重力位で体幹を長軸方向に起こす働き(体幹軸のElongation)が必要である。飯田らや布施らの報告ではストレッチポール上背臥位での上肢運動や体幹回旋負荷により腹横筋厚の優位な増加が確認されている。腹横筋は横隔膜や多裂筋,骨盤底筋群とともに一つのユニットとして腹圧を高める働きがあり,体幹軸のElongationにおいて重要である。今回のBSE,MBPでは腹横筋などのインナーユニットの賦活が不十分であったため優位な変化を認めなかったと考える。【理学療法学研究としての意義】BSEよりも簡便なMBPでリラクゼーション効果が得られた今回の結果より,臨床上BSE完遂が困難な対象者に対してもストレッチポールが有効に利用できることが考えられる。しかしながら本研究における可動域測定はFFDおよび体幹回旋の2項目のみで全身的なリラクゼーション効果は不明であるため今後の研究課題となる。
著者
市川 保子 中邑 まりこ 河合 麻美 飯高 加奈子 板垣 美鈴 大林 松乃 大和田 まりや 奥住 彩子 山田 紀子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0544, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】「PTママの会」(以下,本会)が発足し6年目を迎え,妊娠・出産・育児の過程において就労上での悩みが会員より多く寄せられている。マタニティ・ハラスメント(以下マタハラ)とは,働く女性が妊娠・出産を理由として職場で受ける精神・肉体的に不当な扱いをいう。今回,本会会員に就労におけるマタハラの意識・実態調査を行い,検討したのでここに報告する。【方法】本会会員330名を対象とし,全会員へ調査内容について説明,協力の意思を確認できた女性会員に調査を実施した。本会主催の勉強会(2013年4,2014年6月)参加者は即日回収し,その他会員にはE-mailを用いて調査を行い回収した(2014年7月から8月)。質問紙調査は無記名,選択回答および自由回答方式で実施した。調査内容は1)働く女性を保護する妊娠・出産に関する法律・制度について2)妊娠・出産・子育てに関する職場環境と心理3)マタハラの実情について聴取した。【結果】回答は66名より得られ,回収率は21%だった。1)働く女性を保護する妊娠・出産に関する法律・権利:全く知らない12.1%,法律・内容の一部を知っている54.5%,両方知っている33.3%であった。職場の妊娠・出産をする女性社員への支援制度:制度があり十分に活用している23%,制度は特にない25.7%,制度はあるが活用を推励する雰囲気ではなく,十分に活用されていない10.6%,制度はあるがよくわからない10.6%,無回答4.5%であった。2)妊娠・出産・子育てに関する職場環境と心理:在職中の妊娠では71.2%が不安を感じたと答え,仕事と育児の両立では60%が働きながら子育てしたいと答えた。また,他職員と対等に仕事ができない負い目を感じる30.7%,トランスファーや歩行介助等腹部への負担の心配が26%,妊娠を上司・他職員へ報告するタイミングに悩むが12.8%と多かった。3)マタハラの実情:マタハラを受けた経験有り42.4%,無し45.4%,無回答・妊娠未経験12.1%であった。自身の周囲で「職場にマタハラにあった人を見聞きした」の有無:有り48.4%,無し40.9%,無回答は10.6%となった。マタハラの内容:心無い言葉を言われた41.4%,相談できる職場文化がなかった17.0%で多かった。マタハラを受けた際の対応:家族に相談した28.9%,我慢した・相談しなかった23.6%,職場の上司・同僚・専門部署等への相談31.5%であった。マタハラが起こる原因:男性社員の妊娠・出産への理解不足22.9%,会社の支援制度設計や運用の徹底不足18.9%,職場の定常的な業務過多15.5%,女性社員の妊娠・出産への理解不足13.1%となった。【考察】本調査から,働きながら妊娠・子育てする権利が法律で守られていることを内容まで理解しているものは33%に留まった。職場で女性支援の制度を活用できているものは23%で,本会先行研究「理学療法士における妊娠経過の現状2011」では,70%以上の施設で妊娠に関わる業務軽減や配慮はあると回答を得ていることから,当事者が法律,制度を知ることと同時に,職場で制度を活用出来る体制作りがマタハラ回避の一手段になると考える。また,仕事と育児の両立を希望する者が60%を占める一方,マタハラ経験者は40%となり,働きながら妊娠した女性の25%がマタハラ経験者という報告(日本労働組合総連合)を上回る結果となった。マタハラの内容としては言葉によるものが多く,精神的な苦痛は社会的に表面化されにくい部分でもある。さらに,原因では他職員の理解不足,支援体制の活用不足が多かったことから,職場の妊娠・出産に対する理解,リスクマネジメント周知が重要であると考えられる。また,(公社)日本理学療法士協会(以下協会)が行った「女性理学療法士就業環境調査2010」では,妊娠・出産時のトラブルの有無で,切迫流産は25%,切迫早産は18%となっており,一般労働者の切迫流産17%,切迫早産15%(日本女性労働協会)より上回っている。これは,腹部等への負担を心配しながらも他職員と対等に仕事ができない負い目を感じる者が多く,女性理学療法士では無理をしやすい傾向があると推測される。これらの現状を踏まえ,協会においても妊娠経過や業務上リスクについて会員へ向けた啓発活動が重要であると考える。最後に,妊娠の経過は個々で異なるため,当事者と職場の相互理解を深めることが大切で,普段からの密な対話が必要といえる。【理学療法学研究としての意義】協会会員の40%が女性であり,働きながら妊娠・子育てをできる環境作りは必要である。本研究から得られた結果を共有することで,女性の就業継続や就労における質の向上について貢献できると考える。
著者
本間 佑介 宇賀 大祐 菅谷 智明 阿部 洋太 遠藤 康裕 中澤 理恵 坂本 雅昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1033, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】日本臨床スポーツ医学会は,1995年に少年野球による重篤な障害を防止する為の提言を行っている。少年野球において,選手自身の投球数や練習時間等の自己管理を徹底するのは困難であり,チームの監督・コーチや保護者に委ねる部分が多いと考える。本研究の目的は,少年野球チームの指導者に対し,投球障害予防に関連するアンケート調査を実施することで,指導者の障害予防に対する認識を明らかとすることである。【方法】2014年6月にT市の野球連盟学童部に所属した48チームの監督48名,コーチ89名の計137名に対し,集合調査法にてアンケート調査を実施した。アンケート内容は年齢,指導年数,少年野球指導者講習会参加の有無,予防教室の参加回数,野球経験の有無と経験年数,部員数,指導者数,1週間の練習日数・練習時間,投手数,1日の投球数,一人の投手が投げる連続試合数,年間試合数,ウォーミングアップ・クールダウンの実施状況・必要性,臨床スポーツ医学会による練習日数と練習時間の制限および投球制限についての認識,練習日数と練習時間の制限の必要性,投球障害予防教室の必要性,指導者の医学的知識の必要性とした。【結果】全回答者数131名(回収率95.6%)中,有効回答者数は101名(回収率77.1%)であった。内訳は監督30名,コーチ71名であった。対象者の平均年齢は41.3±5.6年指導年数は4.2±3.6年であった。部員数は,「15名以下」が36名(36%),「16名~30名以下」が65名(64%)であった。投手数は「3人」という回答が最も多く43名(42%)で,「1人」という回答は1名(1%)であった。92名(92%)の指導者に野球経験があり,そのうち高校野球経験者が64名(70%)であった。ウォーミングアップの実施率は101名(100%)で実施時間は30.1±12.3分であった。クールダウンの実施率は101名(99%)で実施時間は13.8±5.7分であった。1週間の練習日数は3.9±0.6日であった。練習時間は,平日2.3±0.8時間,休日6.2±1.4時間であった。練習日数と練習時間の制限の提言について,48名(48%)が知らなかったと回答した。練習日数と練習時間の制限の必要性は,7名(7%)が「必ず必要だと思う」,61名(60%)が「必要だと思う」,32名(32%)が「あまり必要ないと思う」,1名(1%)が「全く必要ないと思う」と回答した。投球数は,全体の60%が「51~100球」であった。投球制限の提言について94名(93%)が「知っている」と回答した。投球制限の必要性について,48名(48%)が「必ず必要だと思う」,51名(50%)が「必要だと思う」,2名(2%)が「あまり必要ないと思う」と回答した。指導者の医学的知識の必要性は,14名(14%)が「必ず必要だと思う」,83名(82%)が「必要だと思う」と回答した。【考察】船越ら(2001)は,小学生の1週間の練習日数の平均は4.6日であり,提言で推奨する1日の投球数50球未満を守っているのは20%程度と報告している。本研究において,1週間の練習日数は3.9±0.6日で,提言で推奨する週3日以内を上回る結果となった。練習時間は,平日2.3±0.8時間,休日6.2±1.4時間で,提言で推奨する1日2時間以内を上回る結果となった。現在,1日の練習時間や練習日数の管理は各チームに委ねているのが現状である。今回の結果を踏まえ,傷害予防の観点から1日の練習時間や練習日数について,野球連盟スタッフ主導のもと指導者が適切に管理する体制を構築し,指導者に啓発していく必要があると考える。投球制限の提言について94名(93%)が「知っている」と回答し,投球制限の必要性については殆どが必要性を感じていた。背景には,T市野球連盟学童部が大会にもよるが,投球制限やイニング制限を設けている為このような結果になったと考える。一方で,投球数について,61名(60%)が「51~100球」と規定数を超える傾向にあり,認識と実際の指導に乖離が認められた。具体的な投球内容等について詳細な聞き取り,分析が必要と考える。投球数については船越らの報告と同程度の結果であった。指導者の医学的知識の必要性について,9割以上の指導者が必要と回答している。指導者の多くは選手の父親であり,指導年数は4.2±3.6年であることから,一定期間で指導者が入れ替わることが予想される。以上より,指導者ライセンス制度の導入やメディカルスタッフとして理学療法士の介入の必要性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】少年野球指導者の投球障害に対する認識を把握し,理学療法士として障害予防の観点から指導者の投球障害に対する認識向上を図ることで,学童期の少年少女の健康・安全の一助となる。
著者
田中 孝平 田中 稔 竹垣 淳也 藤野 英己
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0361, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】心不全,慢性閉塞性肺疾患,腎臓病等の慢性疾患では,呼吸循環器系の機能低下に伴い身体活動量が減少し,骨格筋の代謝機能の低下が生じる。さらに,疾患の重症化により炎症性サイトカインの血中濃度が上昇し,代謝異常症候群である悪液質を呈する。悪液質では,身体活動量の低下だけでなく炎症性サイトカインの増加が骨格筋の代謝機能を低下させる主要な原因となる。炎症性サイトカインはミトコンドリア新生やTCA回路における酵素活性を抑制し,骨格筋の有酸素性代謝能力を低下させることが知られている。一方,治療的電気刺激(TES)は積極的な運動療法が困難な場合に筋活動を代償するための代替手段として注目されており,骨格筋の代謝機能を改善する効果が多く報告されている。骨格筋の有酸素性代謝能力の維持は,効率的なATP産生により運動耐容能を維持する効果が期待できるが,これまで悪液質状態の骨格筋に対するTESの効果は検討されていない。そこで,本研究では悪液質モデルマウスを用いて,炎症性サイトカインによるミトコンドリア機能障害に対するTESの効果を検討することを目的とした。【方法】5週齢の雄性ICRマウス(n=15)を使用し,対照群(Cont群),リポポリサッカリド(LPS)投与により悪液質を惹起した群(LPS群),LPS投与期間中にTESを行った群(LPS+TES群)の3群を設けた。LSPは1日あたり10μg/gを腹腔内に投与した。TESは前脛骨筋に対して超最大収縮の刺激強度にて実施した。刺激波形には2500Hzの中周波を100Hzに変調した変調波を使用し,1秒間の刺激を2秒毎に20回行い,5分間の休憩を設けて6セット行うセッションを1日2セッション行った(Kim, 2007)。介入期間は4日間とし,介入期間終了後に前脛骨筋を摘出し,体重,筋湿重量を計測した。悪液質の指標として血液サンプルを採取し,血清中の腫瘍壊死因子(TNF-α)産生量をELISA法にて測定した。また,ミトコンドリア機能の指標としてコハク酸脱水素酵素(SDH)活性をSDH染色より計測し,クエン酸合成酵素(CS)活性をSrere法にて測定した。ミトコンドリア新生因子であるPGC-1α発現量,炎症性サイトカインからのシグナルを受けるp38のリン酸化蛋白及び総蛋白発現量をWestern blot法にて測定した。得られた結果の統計処理には一元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を使用し,有意水準は5%とした。【結果】LPS群及びLPS+TES群の体重はCont群と比較して低値を示した。また,LPS群及びLPS+TES群の筋湿重量はCont群と比較して低値を示したが,LPS+TES群はLPS群と比較して高値を示した。TNF-αはCont群では検出されなかったが,LPS群及びLPS+TES群では発現が認められ,2群間で発現量に有意差は認められなかった。また,LPS群のSDH及びCS活性はCont群と比較して低値を示したが,LPS+TES群はLPS群と比較して高値を示した。さらに,LPS群及びLPS+TES群のPGC-1α発現量はCont群と比較して低値を示したが,LPS+TES群はLPS群と比較して高値を示した。また,LPS群のp38のリン酸化割合(リン酸化p38/総p38)はCont群と比較して高値を示したが,LPS+TES群はLPS群と比較して低値を示した。【考察】LPS投与による悪液質では,TCA回路の律速酵素であるSDH活性やCS活性の低下が認められた。SDH活性やCS活性等のミトコンドリア酵素活性はミトコンドリア数と密接に関係すると報告されており,本研究ではLPS投与によりミトコンドリア新生に重要な蛋白であるPGC-1α発現量の減少が認められた。また,LPS投与によりTNF-α発現量やp38リン酸化割合が増加した。悪液質において産生が亢進するTNF-α等の炎症性サイトカインは,p38のリン酸化を促進し,PGC-1αの発現を抑制すると報告されている。本研究では,TNF-αによってリン酸化したp38がPGC-1αの発現を抑制し,ミトコンドリア新生が抑制され,ミトコンドリア数が減少し,TCA回路の機能低下が惹起されたと考えられる。一方,TESによる介入はp38のリン酸化を抑制すると報告されている。本研究では,TESによって炎症性サイトカインによるp38のリン酸化を介したPGC-1α発現量の減少を抑制した。PGC-1α発現量の維持によりミトコンドリア新生が促進され,一定のミトコンドリア数が保たれた為,ミトコンドリア酵素活性が維持されたと考えられる。本研究の結果より,TESは悪液質におけるTCA回路の機能低下を予防する介入方法として有効であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】活動量の低下をもたらす背景となる慢性疾患特有の病態である悪液質に対する治療的電気刺激の有効性を示した点で理学療法研究として意義を持つと考える。
著者
森下 誠也 三浦 理沙 曽我本 雄大 山中 孝訓 森 一起
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0022, 2015 (Released:2015-04-30)

【目的】ICU入院中の患者に対して理学療法実施中に心停止となった患者の経験に対する考察【症例提示】年齢性別:70歳代男性。診断名:脳梗塞,第5頸髄損傷,右肋骨骨折,右肩甲骨骨折,外傷性気胸。現病歴:外来リハビリ受診時にレベル低下。MRI施行し脳梗塞にて入院。第26病日に頚動脈血栓内膜剥離術施行。第31病日に転落により第5頸髄損傷,右肩甲骨骨折,右肋骨骨折,右外傷性気胸及び血胸受傷。【経過と考察】第32病日に呼吸状態悪化し気管挿管し人工呼吸器管理。第37病日理学療法実施中に心停止。ボスミン投与後即座にセラピストによる胸骨圧迫を行い,3分後心拍再開。第39病日より理学療法再開。その後のバイタルサインや意識レベルに関しては心肺停止による影響はなかった。今回の心肺停止の原因は挿管チューブが若干浅く,側臥位への体位変換時に更に浅くなり,人工呼吸器での換気が不十分になったことによる低換気が引き金になったと考えられる。理学療法再開までの期間が短期間であった理由に,ICUでの理学療法であったため心停止の認識が早かったこと,心拍再開までの時間が短かったことが挙げられる。その他,セラピストはBasic Life Support(BLS)を受講しており心停止時の胸骨圧迫に対する知識および技術が十分にあったことも要因の一つであったと考えられる。今回のようなモニタリング管理下でのリハビリは,異常があればアラームが鳴ることや医師や看護師が近くにいるため,緊急時の対応は行いやすい。しかし,リハビリの実施場所はモニタリングのないリハビリ室や,他の職種のいない訪問リハビリでの現場の方が多く,その際は各セラピストが緊急性の判断を行うこともある。今後,リハビリスタッフへの救急救命教育が必須であると考える。
著者
飯島 弘貴 青山 朋樹 伊藤 明良 山口 将希 長井 桃子 太治野 純一 張 項凱 喜屋武 弥 黒木 裕士
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0814, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】変形性膝関節症(膝OA)は膝関節痛やこわばりを主訴とする代表的な運動器疾患である。その病態の中心は関節軟骨の摩耗・変性であるが,近年では病態の認識が改まり,発症早期より生じる軟骨下骨の変化が,関節軟骨の退行性変化を助長している可能性が指摘されるようになった。我々も同様の認識から,半月板損傷モデルラットを作成し,その早期から軟骨変性と軟骨下骨嚢胞が共存していることを明らかにした(Iijima H. Osteoarthritis Cartilage 2014)。理学療法を含む非薬物治療は,膝OAの疼痛緩和を目的とした治療戦略の大きな柱であるが,このような早期膝OAの病態を考慮した,OA進行予防策に関する研究蓄積は乏しい。また,病態モデル動物を用いた研究において,歩行運動が関節軟骨の退行性変化を予防しうる,という報告は散見されるが,そのメカニズムは不明であった。そこで,我々はこれらの課題に対して,早期の病態に関与する軟骨下骨変化を歩行運動によって抑制することが,膝OA進行予防に寄与するのではないかと着想し,これまで不明であった,運動による膝OA進行予防メカニズムの解明へと研究を進めてきた。本研究では,我々が報告した半月板損傷モデルラットを使用し,疑似的に早期膝OAの状態を作り出し,歩行運動が軟骨下骨変化に与える影響を評価し,軟骨変性予防効果との関連性を検討した。【方法】12週齢のWistar系雄性ラット24匹に対して,内側半月板の脛骨半月靭帯(MMTL)を切離する内側半月板不安定性モデルを作成した。MMTLの切離は右膝関節のみに行い,左膝関節に対しては偽手術を施行し,対照群とした。その後,術後8週間に渡り自然飼育を行うことで,OAを発症・進行させるOA群(n=8)と,早期膝OAの状態となる術後4週時点からトレッドミル歩行(12m/分,30分/日,5日/週)を行う運動群(n=8)の2群に分類した。時系列変化を評価するため,術後4週まで飼育する介入前群(n=8)を設定した。主な解析対象および群間の比較は,MMTLを切離した全群の右膝関節とし,対照群とも比較した。解析内容は,μ-CT撮影および組織学的手法を用いて,4週間にわたる歩行運動介入の効果を検討した。μ-CT撮影所見より軟骨下骨嚢胞の最大径を評価し,組織学的解析では破骨細胞マーカーである酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)染色とともに,骨細胞死数,軟骨下骨損傷度(0-5点)を評価した。また,軟骨変性重症度(0-24点)を評価し,軟骨下骨損傷度との関連性の評価としてSpearmanの順位相関係数を算出した。【結果】μ-CT所見では介入前から脛骨内側関節面にて軟骨下骨嚢胞が確認されたが,運動群では最大嚢胞径が縮小し,介入前およびOA群よりも有意に低値を示した(P<0.01)。組織学的所見では,軟骨下骨嚢胞内にTRAP陽性破骨細胞が多数観察され,直上の関節軟骨が嚢胞内に落ち込む所見が介入前群では30%で確認された。OA群ではその後悪化し,80%で確認されたが,運動群では0%であった。併せて,介入前およびOA群では多数の骨細胞死が観察されたが,運動群ではいずれも軽度であり(P<0.01),軟骨下骨損傷度は介入前およびOA群よりも有意に低値を示した(P<0.05)。軟骨変性重症度は,運動群で最も低値を示し(P<0.05),軟骨下骨損傷との間に強い相関を認めた(P<0.01,r=0.91)。【考察】半月板損傷後に発症した早期膝OAに対する緩徐な歩行運動は,骨細胞死の減少とともにTRAP陽性破骨細胞活性に起因する軟骨下骨嚢胞を縮小させることが明らかになった。つまり,半月板損傷後に生じた損傷軟骨下骨は可逆的な状態にあり,自然飼育のみでは進行する一方,歩行運動によって治癒することを示している。軟骨下骨の損傷により形成された陥没は,関節軟骨に加わるひずみを増大させる要因となるだけでなく,関節軟骨-軟骨下骨間の炎症性サイトカインの交通を介してOAを進行させることが知られている。したがって,軟骨下骨の治癒が歩行運動によってなされることで,その直上の軟骨に加わる力学的,化学的ストレスを緩和させ,膝OAの進行予防に一部寄与しうることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】膝OAに対する従来の理学療法は,摩耗・変性した関節面へ加わる応力を,分散あるいは減弱させることを主目的としてその進行予防に寄与してきたため,歩行運動のような運動負荷を治療手段とするという考え方は希薄であった。本研究結果は,半月板損傷後の早期膝OAに対する一定の運動負荷がOA進行予防に寄与する可能性を提示し,そのメカニズムの一部を病態モデル動物を使用して病理組織学的にはじめて明らかにしたものである。
著者
知脇 希
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0670, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】理学療法士の国際協力では,青年海外協力隊の活動が多く報告されている。しかし,網羅的に調査を実施したものは,平成10年に日本理学療法士協会が実施した「理学療法士青年海外協力隊アンケート調査報告書」以来見当たらない。このため,理学療法士(以下PT)・作業療法士(以下OT)青年海外協力隊(以下協力隊)として派遣され帰国した隊員へWEB調査を実施した。国際協力機構のボランティア事業の目的は,「開発途上国の経済・社会の発展,復興への寄与」「友好親善,相互理解の深化」「ボランティア経験の社会還元」である。本研究では,この指標に添った主観的評価の結果と,派遣中と派遣後の活動について報告を行う。【方法】協力隊経験者2名にインタビューを実施し,質問紙調査票を作成した。調査はWEB調査とした。平成26年1月31日現在帰国している協力隊経験者は639名(PT373名,OT266名)であった。国際協力機構青年海外協力隊事務局に協力を仰ぎ,事務局から調査依頼と調査実施のURLを記載したEメールを送信した。事務局にEメールアドレスを登録している者は269名(PT144名,OT125名)であったが11名は送信できず,258名に送信した。加えて,協力隊経験者全員に送付されている季刊広報媒体「協力隊かわら版」と,PT・OTを中心とした協力隊経験者の会「JOCVリハビリテーションネットワーク」メーリングリストでの調査協力の呼びかけを行った。筆者に連絡を頂いた17名へは,調査実施のURLを個別に送信した。WEB調査期間は平成26年3月3日から3月30日とした。【結果】平成26年1月31日現在までの協力隊派遣で最も派遣人数が多いのは,国別ではマレーシア(PT29名,OT40名),地域別ではアジア地域(PT128名,OT118名)であった。回答者は111名(帰国者を母数とした場合回答率17.3%,調査URL送付を母数とした場合40.4%)であった。回答者の属性をみると,職種はPT59名(53.2%),OT52名(46.8%),性別は,男性37.8%,女性62.2%,派遣時年齢平均値は28.0歳,現在の年齢平均値は35.5歳であった。派遣時の経験年数平均値は5.2年,現在は12.2年であった。隊次は,平成21年度が最も多かった(18名)。活動先を見ると,配属先は病院27.0%,経営母体は公立65.8%,配属先の従業員数は1~29人51.4%が最も多かった。PTは病院,OTは小児施設の派遣が最も多く,配属先が病院又は福祉施設であった者の1日当たり担当患者数平均は8.1(最小値1,最大値25,中央値6)人であった。技術移転に関する設問をみると,カウンターパートがいた者は89.5%,勉強会を開催した者は79.3%,研修会に参加した者は70.3%であった。友好親善に関する設問をみると,派遣中任国の友人宅を訪問した者は97.3%,協力隊員と協力してイベントを開催した者は68.5%であった。社会還元に関する設問をみると,帰国後も任国への支援を行っている者は18.9%であった。協力隊参加後に災害ボランティアに参加した者は37.8%,その他のボランティア活動に参加したものは25.2%であった。主観的評価は5段階で尋ねた。各設問で「あてはまる」「ややあてはまる」を合わせた割合は,「任国のリハビリテーションの発展に寄与した」41.4%,「任国の障害者の生活改善に寄与した」48.6%,「任国と日本の友好親善に貢献した」81.0%,「任国と日本の相互理解を深めた」82.9%,「ボランティア経験を社会へ還元している」54.0%であった。【考察】協力隊事業の対象年齢は20歳から39歳までであるが,派遣時の年齢平均は28歳,経験年数は5年と若くして参加するものが多いようだ。派遣先は,公立の小規模施設が多かった。技術移転の機会として期待できる勉強会を開催している者が多いが,主観的評価をみると,友好親善や相互理解は約8割が貢献したと考えているものの,「任国のリハビリテーションの発展に寄与した」の肯定的回答は約4割と低く,技術移転が困難であったことが推察される。これは,PT・OTの活動の場が病院や小児施設が中心であること,また任国からの要請を受け草の根レベルで活動していることが関係していると考えられる。【理学療法学研究としての意義】PT・OTの協力隊活動は,事例報告や国別分析が多い。本研究は総合的に分析を行った点に,意義があると考える。
著者
宮崎 哲哉 松井 知之 東 善一 平本 真知子 瀬尾 和弥 森原 徹 堀井 基行 久保 俊一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1365, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに】体幹深層筋である腹横筋は,脊柱の安定性向上,腰痛予防や立位バランス向上などにおいて重要である。Richardson(2002)は,腹横筋による胸腰筋膜の緊張と腹腔内圧の増加が脊柱の安定性に寄与すると報告している。また,太田(2012)は慢性腰痛者に対する体幹深層筋トレーニングで疼痛が有意に軽減したとし,種本(2011)は体幹深層筋への運動介入で重心動揺が安定したと報告している。しかし,腹横筋のみを意識的に収縮させる選択的収縮の獲得は時間を要し,指導も困難である(村上2010)。今回,われわれはテーピングを腹横筋の走行に沿って貼付することで無意識的に腹横筋の収縮を誘導する方法を考案し,テーピングが腹筋群に及ぼす影響について検討した。【方法】対象は,健常男性20名(平均年齢:17.9±2.2歳,平均身長:175.49±6.48cm,平均体重:72.15±10.06kg)とした。超音波画像診断装置(日立メディコ:MyLab Five 10MHz)を使用し,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋の筋厚をテーピングなし,プラセボテーピング,腹部賦活テーピング(abdominal musculature activation taping:AMAT)の3条件において0.1mm単位で測定した。測定中は通常呼吸を行わせ,呼気終末の筋厚を測定した。テーピングはキネシオオロジーテープ50mm(ニチバン株式会社)を使用し,1.4倍の長さまで伸張し貼付した。測定部位は,過去の報告に従い左側前腋窩線上の第11肋骨と腸骨稜との中央部より下部で,筋厚が最も明瞭に描写できる位置とした(犬飼2013)。プラセボテーピングは,臍部から3横指遠位を開始位置とし,腹直筋の走行に沿って剣状突起レベルの高さまで左右1枚ずつ貼付した。AMATは,臍部から3横指遠位を開始位置とし,第11肋骨下端を通り背側上方に押し上げるよう左右2枚ずつ半円状に貼付した。測定肢位は安静立位とし,貼付したテーピングに抵抗しないように指示した。なお,筋厚測定およびテーピング貼付は検者間誤差をなくすため,すべて同一検者で行った。統計は,各測定値の被験者内比較には繰り返しのある一元配置分散分析を行い,主効果が有意である場合にはTurkey-Kramer法の多重比較検定を行った。【結果】外腹斜筋の筋厚は,テーピングなし10.64±2.51mm,プラセボテーピング10.73±2.44mm,AMAT 12.36±2.36mmであり,3条件で一元配置分散分析を行った結果,有意な主効果を認めなかった。内腹斜筋の筋厚は,テーピングなし18.00±3.82mm,プラセボテーピング18.00±3.16mm,AMAT 17.70±4.07mmであり,有意な主効果を認めなかった。腹横筋の筋厚は,テーピングなし6.21±1.21mm,プラセボテーピング5.93±0.86mm,AMAT 8.02±1.53mmであり,有意な主効果を認め,テーピングなし,プラセボテーピングに比べAMATが有意に高値を示した(p<0.05)。【考察】有意な主効果を認めたのは腹横筋のみで,テーピングなし,プラセボテーピングと比較してAMATで筋厚が増加した。Urquhart(2005)は体幹深層筋トレーニングのドローインによる外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋の筋厚変化を検討し,腹横筋の筋厚のみ有意に増加すると報告した。腹横筋の収縮を得るためには,表層の腹筋群が活動しないことが重要であると考えた。今回,AMATでは貼付したテーピングに抵抗しないように指示したことで,無意識的にドローイン状態を維持し,腹横筋の選択的収縮を促すことが可能であると考える。体幹トレーニングを行う上で,初期段階は,腹横筋の選択的収縮(小泉2009,村上2010)を行わせ,最終段階では,無意識下での腹横筋収縮活動の獲得が重要である。AMATは腹横筋の選択的収縮が可能,かつ無意識下で収縮を獲得できる方法であり,体幹トレーニングにおいて有効な方法と考えた。【理学療法学研究としての意義】腹横筋は,脊柱の安定性向上,腰痛予防や立位バランス改善などにおいて重要である。体幹深層筋トレーニングとして代表的なドローインでは,意識的に腹横筋を収縮させるのに時間を要す。しかし,AMATは対象者にテーピングを貼付することで,無意識的な腹横筋の収縮が可能である。評価においては,理学療法士が短時間,かつ,意図的に腹横筋を収縮させることができるため,貼付前後の疼痛,動作機能の変化をとらえ,問題点の抽出に有用であると考える。治療においては,AMATを貼付した状態で日常生活が可能なため,腰痛や動作機能を改善できる可能性がある。また,持続的に腹横筋を収縮させることが可能であり,学習効果を得られると考える。
著者
岡 恭正 治朗丸 卓三 野口 真一 小島 高広 和智 道生 森 健児 金沢 伸彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0974, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】近年,筋電図を用いて慢性腰痛者の動作中における筋活動パターンについて幾つも報告されている。その特徴的な筋活動パターンを理解することは,日常生活場面やスポーツ場面における動作中の痛みに対してアプローチする上でも重要となる。特に立位から体幹を屈曲した際,体幹屈曲最終域にて健常者では腰背部筋群の筋活動が消失する屈曲弛緩現象(Flexion Relaxation Phenomenon:以下FRP)は,Allen(1948)により初めて報告され,今ではその現象は広く知られている。また,Geisser et al.(2005)やMayer et al.(2009)は,FRPの消失が腰痛増悪と悪化に関与するとし,その感度と特異度が共に高いことから,腰痛の客観的な治療効果判定の指標になりうることを報告している。しかし,慢性腰痛者の筋活動パターンについては未だ不明な点も多く,慢性腰痛者における体幹伸展中の筋活動についての報告は屈曲に比べ少ない。中でも,腰部腸肋筋(以下IL)のFRPが消失している慢性腰痛症者を対象として,腰背部筋群,腹筋群,股関節周囲筋群の筋活動パターンを検討した報告は見当たらない。そこで今回,立位での体幹伸展中の腰背部筋群,腹筋群および股関節周囲筋群の活動を計測し,慢性腰痛者と非腰痛者の筋活動パターンの検討を行った。【方法】対象は成人男性20名(年齢21.9±2.8歳,身長173.2±6.0cm,体重66.3±9.5kg),健常群10名,腰痛群10名とした。健常群は①過去6ヶ月以内に神経学的及び整形外科的疾患を有さず,②ILにFRPが出現する者とした。また腰痛群は①過去3ヶ月以上伴う疼痛,②神経根および馬尾に由来する下肢痛を伴わない,③解剖学的腰仙椎部に局在する疼痛,④ILにFRPが消失する者とした。測定筋は右側のIL,胸部腸肋筋(以下IT),多裂筋(以下MF),腹直筋(以下RA),外腹斜筋(AE),内腹斜(AI),大殿筋上部(GMaU),大殿筋下部(GMaL),腸腰筋(ILIO),大腿筋膜張筋(TFL),大腿直筋(RF),縫工筋(SA)の12筋とした。表面電極は皮膚処理を十分に行い,電極中心距離は20mm,各筋線維方向に並行に貼付した。筋電図測定にはMQ16(キッセイコムテック社製)を用いた。まず体幹屈曲運動は先行研究を参考にまず開始姿勢を立位とし,両上肢は体側へ自然に下ろした肢位とした。開始肢位では3秒の安静立位後,体幹を4秒かけて屈曲,最大屈曲位で4秒静止,その後開始姿勢に4秒かけて戻る動作とし,その際の筋活動を計測した。FRP出現の定義は,三瀧ら(2007)を参考に,安静立位時の筋活動の大きさより低値をFRPの出現の判定とした。次に課題動作としては,安静立位姿勢時(以下安静立位時)と体幹最大伸展時(以下体幹伸展時)の2つの姿勢維持中の筋活動を計測した。筋電図データは,KineAnalyzer(キッセイコムテック社製)を用いて,フィルタ処理を行い(バンドパス10~500Hz),その後,二乗平均平方根(以下RMS)を算出し,最大随意位等尺性収縮(以下MVC)を基に正規化した。測定は各2回の平均値で5秒間のMVCを実施し,間3秒間のRMSを用いた。統計学的分析はSPSS12.0Jを用いて姿勢間の変化に対し筋ごとに対応のあるt検定を行った。なお有意水準は5%とした。【結果】安静立位時と体幹伸展時での%MVCを比較した際,健常群ではIT,MF,GMaUの3筋に体幹伸展時で有意な減少が認められた(P<0.05)。またRA,AEの2筋では体幹伸展時で有意な増加が認められた(P<0.05)。これに対し腰痛群ではMFに有意な減少が認められ(P<0.05),RA,AE,AI,ILIOでは有意な増加が認められた(P<0.05)。【考察】本研究は体幹伸展動作時において体幹筋群及び股関節周囲筋群の筋活動の計測を行った。安静立位時に比べ体幹伸展時において健常群ではIT,MF,GMaUで優位に減少し,腰痛群ではIT,GMaUで有意差は認められなかった。この結果から体幹伸展時において腰痛群ではIT,GMaUに過活動が生じることが明らかとなった。さらに,健常群では,安静立位時に比べ体幹伸展時でRA,AEが有意に増加したのに対して,腰痛群ではRA,AEに加えてAI,ILIOにも有意な増加が認められた。この結果から,体幹伸展時において腰痛群ではRA,AEに過活動が生じていることが明らかとなった。以上の結果から,健常群と腰痛群では体幹伸展での筋活動において異なる筋活動パターンが生じていることが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】本結果は,慢性腰痛者における客観的な治療効果判定の指標として,今後臨床応用への一助を与える基礎的情報になると考える。
著者
大江 厚 木村 貞治 Ah Cheng Goh 高橋 淳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0805, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】先行研究では,慢性腰痛患者における安静時の側腹筋群(腹横筋;TrA,内腹斜筋;IO,外腹斜筋;EO)の形態について超音波画像診断装置を使用して観察した結果,動作時の脊柱安定化に貢献するとされるTrA筋厚が,健常者に比較して低下しているという報告や,差がみられないという報告がされている。このような見解の違いには,被験者の体格差や,腰痛の重症度などの特性の違いが影響しているものと考えられる。しかしこれまでの報告では,慢性腰痛患者における安静時の側腹筋群の筋厚を体格を考慮した上で健常者と比較した報告や,腰痛の程度など重症度との関連性を検討した報告が少ないのが実情である。そこで本研究では,側腹筋群全体の筋厚に対するTrA,IO,EOの筋厚率を慢性腰痛患者と健常者とで比較するとともに,重症度など腰痛の特性との関連性についても検討することを目的とした。【方法】A病院の整形外科外来を受診した下肢症状を伴わない腰痛患者のうち,腰痛が3カ月以上続いていて,X線およびMRI画像上で器質的な変化を認めない慢性腰痛患者30名(男性14名,女性16名,平均年齢33.23±9.01歳)を腰痛群とし,体幹から下肢にかけて整形外科的疾患とその既往の無い健常者30名(男性13名,女性17名,平均年齢35.37±9.42)を対照群とした。腰痛群においては,外来理学療法初診時に,腰痛の部位,程度および能力低下の状態について,Body Chart,Visual Analog Scale(VAS),Modified Oswestry Low Back Pain Disability Questionnaire(ODQ)を使用して評価した。次に被験者全員における両側のTrA,IO,EOの筋厚を超音波画像診断装置(GE Healthcare,Cardio & Vascular Ultrasound System Vivid 7)を使用して測定した。測定肢位は膝立て背臥位とし,肋骨弓下端と腸骨稜上端の中間で中腋窩線の2.5cm前方に7MHzリニア型プローブを接触させ,Mモードにて安静呼気時における側腹筋群の画像化を行った。撮影は左右2回ずつ行ったが,左右の測定順序については乱数表を用いて無作為化した。得られた画像から,超音波画像診断装置内の計測ソフトを使用して,各筋の筋膜間の距離(mm)を計測し,2回の測定値の平均値を各筋の筋厚の代表値とした。また,被験者の体格差を標準化するために,各筋の筋厚を3筋の筋厚の合計である側腹筋厚(TrA+IO+EO)で除し,TrA筋厚率(TrA/TrA+IO+EO),IO筋厚率(IO/TrA+IO+EO),EO筋厚率(EO/TrA+IO+EO)を算出した。統計解析はSPSS ver. 18.0を用い,まず健常群内および腰痛群内において各筋の筋厚率に左右差が無いことを,対応のあるt検定で確認した上で,各群における各筋の筋厚率として左右の筋厚率の平均値を算出した。次に,健常群と腰痛群間における各筋の筋厚率の差について対応の無いt検定を行った。また腰痛群においては,各筋の筋厚率とVASおよびODIとの関連性について,ピアソンの積率相関分析を行った。なお有意水準はBonferroniの補正を行い1.67%未満とした。【結果】各筋の筋厚率の平均値と標準偏差は,健常群ではTrA:0.21±0.03,IO:0.45±0.04,EO:0.33±0.04,腰痛群では,TrA:0.19±0.03,IO:0.45±0.05,EO:0.36±0.05となった。各筋の筋厚率の群間比較の結果では,腰痛群におけるTrA筋厚率は健常群よりも有意に低い値を示し(P=0.008),腰痛群におけるEO筋厚率は,健常群よりも有意に高い値を示した(P=0.005)。相関分析の結果では,腰痛群における各筋の筋厚率とVASおよびODIとの有意な関連性は認められなかった。【考察】本研究の結果より,腰痛群は健常群に比べ安静時の側腹筋群の筋厚全体からみたTrAの筋厚率が低く,逆にEOの筋厚率が高くなるということが示された。これは,先行研究で報告されているように,慢性腰痛患者における動作時のTrAの機能低下とそれらを代償するとされるEOの過剰収縮の影響を反映した結果であると考える。また,慢性腰痛患者の各筋厚率は,VASやODIとは関連性が無かったことから,筋厚率の変化は腰痛や能力低下の程度以外の要因が影響している可能性があるものと推察された。今後は,患者の身体活動量や罹患期間,腰痛のタイプとの関連性などについて調査していきたい。【理学療法学研究としての意義】慢性腰痛患者における安静時の側腹筋群の筋厚率を明らかにすることで,より効果的な側腹筋群の筋力トレーニングを検討する際の指標となり得ると考える。また,筋厚率に影響を及ぼす要因を明らかにすることで,特定の筋の萎縮や機能低下を予防するための介入内容を検討する上での有用な情報になるものと期待される。
著者
小野寺 智亮 梅田 健太郎 菅原 亮太 谷口 達也 瀬戸川 美香 村田 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0277, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに】大腿骨近位部骨折の機能予後に影響する因子は,諸家により年齢,受傷前移動能力,認知機能,大腿四頭筋筋力などがあると報告されている。骨折の機能予後には,骨折型や術後整復位が影響することが多いが,大腿骨近位部骨折においてその報告は少ない。大腿骨近位部骨折における機能を大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折で比較した研究は散見され,大腿骨転子部骨折の方が機能低下しやすいとの報告(kristensen,川端)が多い。しかし,大腿骨転子部骨折は大腿骨頚部骨折とは病態が異なり,骨膜や股関節周囲筋群付着部を含む骨折であることや術式が異なることから,これは当然の結果であると考えられる。今後は大腿骨転子部骨折での骨折型ごとの検討が重要と考えるが,大腿骨転子部骨折での詳細な骨折型を比較した報告はほとんどない。また,従来行われてきたX線画像による大腿骨転子部骨折の骨折分類(evans分類,jensen分類)では読影のミスマッチが報告されている。近年では中野(2006)により,3D-CTを利用した中野3D-CT分類が提唱され,前述したX線画像による分類よりもその有効性が報告されている(正田,2014)。今回,大腿骨転子部骨折について中野3D-CT分類を用いて骨折型を分類し,各骨折型の術後早期移動能力について比較検討したので報告する。【方法】2013年4月~2014年6月までに当院で骨接合術が施行された大腿骨転子部骨折239例のうち,下記の除外基準に該当しない59例(平均81.5±8.2歳,男性15名,女性44名)を対象とした。除外基準は,受傷前の移動が自立していない者,入院時HDS-Rが21点未満の者,重篤な合併症を有する者,術後荷重制限のある者,当院入院期間中に歩行器歩行獲得に至らなかった者とした。なお,全例で髄内釘による骨接合術が施行されていた。中野3D-CT分類による骨折型は主治医を含む当センターの医師数名で分類を行なった。中野(2006)は小転子骨片の有無が安定性に影響すると報告しており,それに準じて安定型と不安定型に分けた。移動能力獲得の基準については,起立はつかまり立ち,平行棒内歩行は2往復,歩行器歩行は20Mとして各動作が監視となった日を獲得日とし,当センターの理学療法士2名以上で判断した。各移動能力獲得日について,まず各骨折型間で比較検討し,さらに安定型・不安定型にわけた2群間での比較検討を行なった。統計学的手法としてKruskal-Wallis検定,welch検定を用い,有意水準は5%とした。【結果】対象者の骨折型の内訳は2partA:13例,3partA:14例,3partB:12例,4part:20例であり,安定型(2partA,3partA):27例と不安定型(3partB,4part):32例に分けられた。各骨折型において,年齢,移動能力に有意差は認めなかった。安定性での比較では,歩行器歩行獲得日数は安定型が11.0±6.0日,不安定型が14.6±7.9日であり,安定型の歩行獲得が有意に早かった(p<0.05)。その他の移動能力について有意差は認めなかった。【考察】大腿骨転子部骨折での安定性での比較では不安定型で予後不良とする報告(stark,1992)と有意差はないとする報告がある(武田,2006)。これらはX線画像上での分類であり,前述したとおり信頼性には疑念が残る。また,福田(2013)は大腿骨転子部骨折では術後整復位の重要性を報告し,その分類であるAP3×ML3分類で,正面像で外方型・側面像で髄内型が予後不良とした。当院ではそれに基づき,術中に外方・髄内型は必ず整復されており,術後整復位で差はない。よって今研究では信頼性の高い中野3D-CT分類を用い骨折型のみで検討したところ,安定性で術後歩行器歩行器獲得に有意差が認められた。これについては,荷重時痛と筋力が関係していると考えられる。歩行器歩行は,起立・平行棒内歩行よりも患側股関節に多くの荷重がかかる。不安定型では,荷重のかかる内側皮質の破綻が大きいことから,荷重時痛が強い可能性がある。また,川端(2014)は杖歩行の獲得には股関節外転筋力が重要であると報告し,甘利(2012)は,大腿骨転子部骨折における大転子骨折の形態に着目し,中殿筋機能の破綻が機能予後に影響を与えると報告している。4partなどの不安定型では,大転子部の骨折を含んでおり,同部位に付着する中殿筋が筋力低下をきたしている可能性がある。今研究では,疼痛と筋力についての検討に至っておらず,今回の結果を第一報として,今後は筋力や疼痛などの因子を含めた多変量解析を実施していくことで,大腿骨転子部骨折における予後規定因子を明確にしていけると考える。【理学療法学研究としての意義】信頼性のある中野3D-CT分類での大腿骨転子部骨折の骨折型は機能予後に影響する有用な因子であることが示唆された。
著者
戸田 晴貴 長野 明紀 羅 志偉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0947, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】高齢者の歩行中の筋活動は,若年者と比較し全般的に大きくなり,活動パターンが異なることが報告されている(Finley, 1969)。しかしながら,高齢者と若齢者の筋活動パターンの違いの定量的な分析は,我々が渉猟した範囲においてはなされていない。主成分分析は,次元数を減らす統計学的手法で,歩行分析において運動学,運動力学,筋電図の時系列データの全体的な量,形状,時間的パターンの分析に用いられる。本研究の目的は,健常高齢者と若年者における歩行中の大腿四頭筋とハムストリングスの筋張力パターンの特徴の違いを,主成分分析を用いて分析することとした。【方法】対象者は,65歳以上で歩行補助具および介助なしで歩行可能な高齢者20名(男性10名,女性10名)と若年者20名(男性10名,女性10名)であった。歩行に影響を及ぼす疾患を有しているものはいなかった。課題動作は定常歩行とした。対象者は,7 mの直線歩行路にて最も歩きやすい速度で歩行した。運動学データは,赤外線カメラ8台を用いた三次元動作解析装置VICON MX(VICON Motion Systems社製)を用いて計測した。同時に床反力は,床反力計(AMTI社製)8枚を用いて計測した。得られたマーカー座標データと床反力データからOpenSim3.2を用いて筋張力の推定を行った。モデルは,23自由度92筋を使用した。各筋の活動度の2乗値の和が最小になるように最適化が行われた。解析した筋は,大腿直筋,大腿広筋群,ハムストリングスであった。各筋張力の大きさは,体重で正規化した。本研究の高齢者と若年者の筋張力波形の特徴を抽出するために主成分分析を行った。分析を行うにあたり,データから筋ごとに40(対象者数)×101(100%に正規化した波形)の行列を作成した。この行列を用いて主成分分析を行い,主成分と成分ごとに主成分得点を算出した。分析は,第3成分まで行った。各主成分が示す特徴を解釈するために,主成分得点が高い5試行を平均した波形と低い5試行を平均した波形の特徴を視覚的に確認した。高齢者と若年者の各主成分得点の比較は,性別の影響を考慮し,年齢と性別の2要因による2元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を用いて行った。統計解析には,SPSS 17.0 J for Windows(エス・ピー・エス・エス社)を使用した。有意水準は,5%とした。【結果】本研究のすべての変数において,年齢と性別の交互作用は有意にならなかった。つまり男性と女性は,同様の傾向を示した。大腿直筋における第3成分の主成分得点は,高齢者は若年者と比較し有意に大きかった。大腿直筋の第3成分は,立脚中期から後期の筋活動の大きさと解釈され,高齢者の大腿直筋は,立脚中期からつま先離れまで活動が持続的であるという特徴を有していた。またハムストリングスにおける第2成分の主成分得点は,高齢者は若年者と比較し有意に小さかった。ハムストリングスの第2成分は,踵接地後の小さな筋活動と遊脚中期の活動の大きさと解釈され,高齢者のハムストリングスは,踵接地後の筋活動が大きく,遊脚中期の筋活動が小さいという特徴を有していた。大腿広筋群の筋張力波形は,高齢者と若年者の間に統計学的な違いがなかった。【考察】本研究の結果,高齢者と若年者の膝関節周囲における筋張力パターンの違いは,大腿直筋とハムストリングスに認められた。よって,高齢者の膝関節周囲筋では,2関節筋の筋活動パターンに加齢変化が見られることが示唆された。Ostroskyら(1994)は,高齢者は若年者と比較し,歩行中の膝関節伸展角度が減少し屈曲位での歩行となることを報告した。高齢者において初期接地時にハムストリングスの筋張力が増加することは,大腿四頭筋との同時収縮により膝関節の剛性を高めて荷重する戦略をとっている可能性を示している。またこのことは,高齢者の初期接地時の膝関節伸展角度の減少と関連も示唆している。さらに高齢者の大腿直筋の筋活動は,立脚初期に活動が見られず立脚中期から後期にかけて持続していた。このことから,高齢者では膝関節屈曲位で歩行を行うことにより,膝関節の安定性を高めるために大腿直筋が過剰に働いていたことが推測された。【理学療法学研究としての意義】本研究の意義は,歩行中の高齢者と若年者の膝関節周囲筋の筋活動パターンに違いがあることを示したことである。歩行の加齢変化に対して,膝関節周囲筋においては筋力低下に対する介入だけでなく,2関節筋が適切なタイミングで活動できるよう介入することが必要である。
著者
長澤 由季 猪村 剛史 今田 直樹 沖 修一 荒木 攻
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1885, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】脳梗塞の病態には,アテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞に加え,1989年にCaplanが提唱した脳血管穿通枝入口部のアテローム血栓性病変により閉塞が生じるbranch atheromatous disease(以下,BAD)が知られている。BADの好発部位にはレンズ核線条体動脈,傍正中橋動脈領域があり,進行性の運動麻痺が生じやすく,ラクナ梗塞と比較して,身体機能の予後は不良と報告されてきた。しかし,臨床での予後に関する報告数はまだ少なく,臨床像は明確ではない。本研究では,脳梗塞の病型の違いによる運動機能の変化や予後の差異について検討した。【方法】対象は,平成24年4月から平成26年9月までに脳梗塞の診断で当院に入院した120名とした。対象者はいずれも錐体路症状を呈し,除外規準は既往に脳血管障害を有する者,精神疾患を有する者,骨折・四肢欠損患者とした。運動機能評価には急性期病棟退院時のNIHSS運動項目を用いた。また,FIM効率(FIM利得/在院日数),在院日数についても評価した。統計解析には,一元配置分散分析を用いた。【結果】病型の内訳は,アテローム血栓性脳梗塞は67名,BADは24名,ラクナ梗塞は29名であった。急性期病棟退院時のNIHSS運動項目の合計点は,アテローム血栓性脳梗塞は2.1±2.8,BADは0.6±2.0,ラクナ梗塞は0.4±1.5で,一元配置分散分析の結果,病型に主効果がみられた(p<0.01)。群間比較の結果,NIHSSのスコアでは,アテローム血栓性脳梗塞でラクナ梗塞(p<0.01)およびBAD(p<0.05)と比較して有意に高かった。また,ラクナ梗塞とBADではNIHSSスコアに有意な差を認めなかった。FIM効率では,アテローム血栓性脳梗塞は1.3±1.7,BADは1.7±1.3,ラクナ梗塞は1.6±1.0で,アテローム血栓性脳梗塞はラクナ梗塞と比較して,有意に低値であった(p<0.01)。ラクナ梗塞とBADではFIM効率に有意な差は認めなかった。在院日数では,アテローム血栓性脳梗塞は71.0±70.1日,BADは39.1±43.6日,ラクナ梗塞は19.3±23.8日で,アテローム血栓性脳梗塞はラクナ梗塞と比較して有意に在院日数が長かった(p<0.01)。ラクナ梗塞とBADでは在院日数に有意な差は認めなかった。【考察】本研究では,脳梗塞の病型別における運動機能や予後予測因子の関連を調査した。結果より,NIHSSの得点,FIM効率,在院日数において,アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞では有意な差を認めたが,BADとラクナ梗塞では有意差は認めなかった。従来,BADとラクナ梗塞の運動機能の比較を行った場合,進行性の運動麻痺はBADで多く認め,NIHSSやmRSの得点はBADの方が高いことが多く報告されている。一方で,BADはアテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞の中間の病態であり,BADとラクナ梗塞の重症度の差は少ないとの報告もある。BADには非進行性の病態もあり,発症部位によっても重症度は異なり,必ずしも予後不良でない可能性もある。理学療法介入を行う上で,病型の確認に加え,損傷部位・損傷の程度・画像所見などを比較しながら,予後について検討する必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】本研究を通し,理学療法介入を行う上で,従来の報告に加えて予後予測の一助となると考えられる。
著者
木下 和昭 橋本 雅至 中 雄太 米田 勇貴 北西 秀行 大八木 博貴
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1394, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】簡便な下肢筋力推定方法であるスクリーニングとして30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30)や5回椅子立ち上がりテスト(以下,SS-5)がある。CS-30は歩行速度(曽我2008)や下肢伸展筋力(Jones CJ 1999),SS-5はレッグプレスによる下肢伸展筋力,Timed up and go test(以下,TUG)など(牧迫ら2008)と関係性を認め,それぞれ信頼性が報告されている。またCS-30とSS-5の間には有意な相関が認められ,相互に代用ができることも報告されている(大村ら2011)。しかし,これらは対象が虚弱高齢者や脳卒中片麻痺などであり,変形性膝関節症の患者(以下,膝OA)やその後,手術に至った患者での有用性は明らかにされていない。そこで本研究は膝OAの人工膝関節全置換術前(以下,pre)と人工膝関節全置換術後(以下,post)にて,この2種類の椅子立ち上がりテストの有用性について検討した。【方法】対象は膝OAの50名(年齢73.2±8.6歳,身長153.9±9.2cm,体重60.4±10.3kg)とした。測定項目はCS-30,SS-5,膝関節伸展筋力,台ステップテスト(以下,ST),TUGとした。2つの椅子立ち上がりテストは安静座位を開始肢位とし,両上肢を胸の前で組ませ,最大努力で40cm台からの立ち座り動作を繰り返す課題を行った。SS-5は5回の立ち座り動作の所要時間をストップウォッチにて測定した。CS-30は30秒間にできるだけ多く,立ち座り動作を繰り返させた回数を測定した。膝関節伸展筋力は加藤ら(2001)の方法に従い,端座位から膝関節屈曲90°位での最大等尺性収縮をハンドヘルドダイナモメーターにて測定した。測定値は体重にて除した数値とした。STはHillら(1996)が提唱した方法を一部改変し,静止立位をとった対象者の足部から前方に設置した20cm台の上に,最大努力で一側下肢を10秒間ステップさせた回数を測定した。TUGは椅子座位を開始肢位とし,任意のタイミングで立ち上がり3m前方のコーンで回転して開始肢位に戻るまでの歩行時間を計測した。本研究では,最大努力を課す変法(島田ら2006)を用いた。検討方法は手術2日前以内(pre)と退院時(post)に各項目を測定し,術前後の関連を検討した。統計学的手法はSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準を5%未満とした。【結果】CS-30はSS-5との間に有意な負の相関が認められた(pre r=-0.65 p<0.01;post r=-0.83 p<0.01)。pre SS-5はpreの全ての測定項目との間に有意な相関が認められた(術側膝関節伸展筋力r=-0.44,p<0.01;非術側膝関節伸展筋力r=-0.37,p<0.05;術側ST r=-0.49,p<0.01;非術側ST r=-0.80 p<0.01;TUG r=0.46,p<0.01)。pre CS-30はpre術側のST以外に有意な相関が認められた(術側膝関節伸展筋力r=0.43,p<0.01;非術側膝関節伸展筋力r=0.33,p<0.05;非術側ST r=0.60 p<0.01;TUG r=-0.38,p<0.01)。post SS-5はpostの術側の膝関節伸展筋力以外に有意な相関が認められた(非術側膝関節伸展筋力r=-0.32,p<0.05;術側ST r=-0.48,p<0.01;非術側ST r=-0.61 p<0.01;TUG r=0.58,p<0.01)。post CS-30はpostの術側の膝関節伸展筋力と術側のSTにおいて,それぞれ有意な相関が認められなかった(非術側膝関節伸展筋力r=0.31,p<0.05;非術側ST r=0.38 p<0.01;TUG r=-0.49,p<0.01)。【考察】SS-5は今回測定した他の動作テストとの関係性が確認でき,先行研究と同様に膝OAに対して使用が可能であることが示唆された。CS-30はpreとpostともに,術側の動的バランステストとの関連を示さなかったため,人工膝関節全置換術前後の術側の評価においてはSS-5の方が短時間にて可能であり,負担が少なく,有用性の高いテストであると考えられた。しかし,下肢の筋力の推定を行う場合や立ち上がりが不可能な場合は,回数の規定がないCS-30の方も有用であると考えられ,荷重関節である膝関節に障害を持つ対象者に合わせて使用することが望ましいと考えられる。またpostでは今回用いた2つの椅子立ち上がりテストは,術側の膝関節伸展筋力と関係を示さず,退院時の術側の膝関節伸展筋力を推定するには課題があり,術後の動作に影響を及ばす関節可動域や変化した下肢アライメントなどが考慮されなければならないことが示唆された。【理学療法学研究としての意義】椅子立ち上がりテストは,臨床現場で簡易に行えるパフォーマンス(動作)テストであり,人工膝関節全置換術前の膝OAにも使用可能であったが,人工膝関節全置換術後の患者では術側の筋力を推定するには術後の動作に影響を及ばす他の要因を考慮する必要性が示唆できた。
著者
両角 淳平 青木 啓成 村上 成道
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1037, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】Jones骨折は難治性の骨折であり,TorgやKavanaughは保存療法において22-67%が遷延治癒もしくは偽関節になると報告していた。現在の治療方針は,競技への早期復帰のために髄内固定による手術が中心となっており,手術治療の実績に関する報告が多い。その一方で,術後の再発例における報告も散見され,三河らは遷延治癒や術後の再骨折を来した症例に対して,スクリューの適合性を高めるために再手術を優先すると報告している。当センターでは,遷延治癒の傾向にあるJones骨折に対し,セーフス(SAFHS4000J,TEIJIN)による超音波治療と継続的な理学療法の介入を行っている。本研究は,Jones骨折を発症した選手の身体特性を詳細に検討する事,また改善させる事を目的とした理学療法が,競技復帰と再発予防へ与える影響について検証した。【方法】当院を受診した高校サッカー選手4例を対象とした。3例は,保存療法を行っていたが4週経過し仮骨が出現しない症例であり,1例は,他院での内固定術後に2回の再骨折を繰り返し,約1年間の遷延治癒を来していた。セーフスによる治療と理学療法を,競技復帰1ヶ月後まで継続した。理学療法では,第5中足骨近位骨幹部へストレスを与える要因として,足部・足関節及び股関節機能における身体機能因子と,姿勢や動作パターンの運動因子を挙げ,特有の障害パターンを検討し,その改善に努めた。介入頻度は,仮骨が出現するまでは週に1回,骨癒合が得られた以降は2週に1回とした。介入時は医師と協議し,運動負荷量を確認した。セーフス開始にあたり,骨折部へ的確に照射するよう透視下のマーキングを行った。4例の治療経過として,再発の有無と免荷期間,ランニング開始,競技全復帰,仮骨形成,骨癒合までの日数を集計した。【結果】4例全てにおいて,再骨折や遷延治癒を認めず競技復帰が可能であった。免荷期間は発症から平均24.3日(3-4週),ランニング開始は82.5日(10-14週),競技全復帰は126日(13-23週)であった。また仮骨形成を認めたのは64日(7-11週),完全骨癒合は113.8日(11-21週)であった。特有の障害パターンにおいて,身体機能因子のうち足部・足関節では,内反足(内側縦アーチの増強と前足部内転,後足部回外位)と,第5趾の可動性低下(足根中足関節や第4,5趾の中足間関節の拘縮)を認め,股関節では屈曲及び内旋制限が生じていた。運動因子は,片脚立位とスクワット,ランジ動作で評価し,いずれも股関節の外旋位をとり,小趾側が支点となり,重心は外側かつ後方への崩れが生じていた。筋力は,腸腰筋と内転筋,腓骨筋で低下を認めた。足部への具体的なアプローチは,第5中足骨へ付着し,かつ距骨下関節の可動性低下にも影響する長・短腓骨筋の短縮や,内反接地の反応により過活動が生じる前脛骨筋腱鞘や長母趾屈筋の軟部組織の柔軟性低下を徒手的に改善させた。足関節,股関節の可動域の改善後,姿勢・動作で重心の補正を行った。低下していた筋力に対して,単独での筋力強化は行わず,姿勢・動作練習を通して意識的に筋力の発揮を促した。【考察】治療過程において,運動強度の拡大については,X線による骨の状態を確認しながら検討し,仮骨形成後にランニングを開始し,骨癒合後に競技全復帰を許可した。しかし,X線上の問題がなく,圧痛や荷重時痛が一時的に減少しても,骨折部周囲の違和感や痛みの訴えは変動するため,継続的に運動強度の調整を行った。運動負荷の段階的な拡大に伴い,特有の障害パターンが再燃するため,骨癒合が得られるまでの期間は,早期に発見し修正するための頻回な介入が必要であると考えられた。術後の復帰過程において,横江らは,術後1週で部分荷重,3週で全荷重,2ヵ月でジョギング,3ヵ月で専門種目復帰としている。今回の4例の平均値と比較すると,ジョギング開始と競技全復帰までの期間は,約1ヶ月程度の遅れに留まった。理学療法により骨折部へのストレスを軽減させ,症状の変動に応じて運動負荷の調整を継続的に行う事は,骨癒合を阻害せず,保存療法であっても競技復帰に繋げられると考えられる。【理学療法学研究としての意義】手術及び保存のどちらを選択しても,骨折部の治療だけでは再発予防としては不十分である。身体特性から発生要因を検討し,その改善に向けたアプローチを充実させる事は,スポーツ障害における理学療法の捉え方として重要であると考えられる。
著者
槌野 正裕 荒川 広宣 小林 道弘 中島 みどり 高野 正太 山田 一隆 高野 正博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1750, 2015 (Released:2015-04-30)

【背景】我々は,大腸肛門病の専門病院として,第42回当学会より,理学療法士の視点で直腸肛門機能についての研究を継続している。研究結果から得られた知識を基に,治療の質向上を図っている。今年度は,大腸肛門リハビリテーション科による便秘外来の開設に伴い,理学療法士も排便障害を主訴として受診された方に対して,バルーン排出訓練を行っている。特に,ROMEIIIF3領域の症例に対して介入し,排便姿勢や骨盤底筋群の弛緩方法,腹圧の加え方などを指導して,快適な排便を目指して治療を行っている。今回,医師から指示された症例に対して,バルーン排出訓練をポータブルトイレで実施し,訓練の際に直腸内の圧変化と息み時間を評価したので以下に報告する。【対象と方法】バルーン排出訓練を理学療法士も介入して実施した女性6例(平均年齢77.7±9.6歳)を対象とした。バルーン排出訓練では,患者はシムス体位で臥床し,シリコン製のバルーンを肛門から挿入する。肛門管を過ぎて直腸内にバルーンを留置し,airを50ml送気したものを疑似便に見立て,通常の排便のごとく息んで排出する。訓練中には,一連の圧変化をスターメディカル社製直腸肛門機能検査キットGMMS-200で評価する。訓練は下記の方法で行い,1.から5.を比較検討した。患者は,1.airを送気して便意を感じた状態で起き上がり,ポータブルトイレへ移動する。移動が完了したら,2.背筋の伸ばした伸展座位で排出する。3.排出ができなければ前屈座位で排出する。4.伸展座位で排出できた症例も前屈座位での排出を同じように実施する。訓練終了後に,パソコンのモニターを用いて,5.排出までの息み時間を計測した。また,一連の排便動作における圧の変化を説明し,腹圧の加え方や骨盤底筋群の弛緩を促した。【結果】1.臥位からポータブルトイレへ着座した時点で,直腸圧が21.8±6.9cmH2O上昇した。2.伸展座位での排出では,2例が可能(94.9±161cmH2O)であり,4例は不可能(90.5±44.1cmH2O)であった。不可能な4例は,直腸圧が高まっていても排出ができない症例が2例,直腸圧が高まっていない症例が2例であった。3.前屈座位での排出では,4例が可能(120.8±22.5cmH2O)であり,2例が不可能(73.1±28.1cmH2O)であった。伸展座位で直腸圧が高まっても排出できなかった2例は排出可能であった。また,排出不可能であった2例のうち,1例は伸展座位でも排出できない症例であり,1例は普段から伸展座位でしか排出できない症例であった。臥位,伸展座位,前屈座位の全ての姿勢で排出できた症例の息み時間は,臥位10.5秒,伸展座位5秒,前屈座位3秒でバルーンの排出が可能であった。5.伸展座位と前屈座位で,排出までに息んだ時間は,排出が可能な場合は9.0±5.7秒,9.5±4.4秒,不可能な場合は15.1±10.5秒,9.8±3.2秒であった。全体で排出可能な場合は,9.5±4.4秒,不可能な場合は13.3±8.7秒であった。【考察】今回,バルーン排出訓練での直腸圧の変化と息み時間を比較した。まず,着目したことは,臥位と座位では直腸圧が変化している点である。臥位よりも座位では,直腸圧つまり腹圧が21.8±6.9cmH2O上昇した。このことは,オムツを着用したままの臥位での排便ではなく,便意を逃さずトイレへ誘導し,便座へ着座してから排便を促すことが重要であることの根拠になると考える。また,伸展座位では排出可能,不可能にかかわらず同程度の直腸圧であったが,前屈座位では排出が可能な例で直腸圧が高く,不可能な例では低い傾向であった。排出までに息んだ時間は,排出可能な場合は9秒,不可能な場合は伸展座位で15秒,前屈座位では10秒と伸展座位で排出できない場合は長く息んでいた。我々の過去の研究では,肛門内圧は骨盤前傾位で高く,後傾位で低くなること。前屈座位では伸展座位よりも肛門直腸角が鈍角になりやすいことを報告しており,出口である骨盤底筋群は伸展座位で弛緩が困難なため息みが長くなり,前屈座位では弛緩し易いために息みが短かったと考えられる。これらの結果から,前屈座位では腹圧が適度に上昇し,骨盤底は弛緩するため排出が行い易くなったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】理学療法士が排泄についての生理を知識として持つことで,在宅生活を送るための支援につながり,生活の質を高めることが出来ると考えている。
著者
岡 徹 古川 泰三 中川 拓也 末吉 誠
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0116, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに】腓骨筋腱脱臼は比較的珍しく,また症状が足関節外側側副靭帯と酷似するために見逃されることが多い。そのため症例数が少なく治療方針や手術方法,術後理学療法の評価や治療プログラムの報告が非常に少ない。今回,我々は外傷により生じた腓骨筋腱脱臼の1例を経験したので報告する。【症例紹介】56歳男性,瓦職人。仕事中に屋根から転落し左足から接地して受傷,左足外側に痛みが出現する。他院にて治療するが歩行時の疼痛と脱力感や不安感が改善せず,受傷から2ヶ月後に当院を受診しMRI,CTおよびレントゲン検査にて左腓骨筋腱脱臼(Eckert分類・GradeI:上腓骨筋支帯と骨膜が連続した状態で腓骨より剥離)と診断され手術となる。手術手技はDas De変法で腓骨外果後方部に骨孔を作成し,上腓骨筋支帯断端を付着部に再逢着した。【方法】疼痛(以下:NRS),足外反筋力(MMTにて計測),足背屈ROM,片脚立位保持時間,日本足の外科学会足関節判定基準(以下:JSSFスコア)などの各評価を術前,術後4週,8,12,及び24週で評価した。理学療法は術後2週間はギプス固定,3週よりプラスチック短下肢装具装着し部分荷重と超音波治療を開始,6週でサポーターと足底板を使用し全荷重独歩となる。12週でスポーツ動作練習のランニング開始しとなる。術後より,筋力強化練習(体幹・股・膝・足関節患部外)をおこない,術後6週より患部外反筋強化運動とROM運動を開始した。その後,足底板のチェックを行いながら,バランス練習,スポーツ動作を実施した。【結果】歩行時の脱力感や不安感は全荷重時より改善したが,疼痛は術前NRS4/10が術後12週で3/10と改善したが16週までは残存した。外反筋力は術前,術後8週,12,24でMMT3,3,4,5と改善した。背屈ROMは術前0度が術後12週で10度と健側と同等まで回復した。片脚立位保持時間は術前5秒が術後24週で30秒以上の保持が可能となった。JSSFスコアは術前,術後4週,8,12,24で59,32,65,81,100点と改善した。ADLは術後16週ですべて痛みなく自立し,仕事復帰は術後12週で可能となった。足関節のサポーターは術後24週まで装着した。【考察】新鮮腓骨筋腱脱臼はまれな疾患であり保存療法では再脱臼率が74~85%と高いとされ,新鮮例の場合でも診断が確定すれば手術療法を選択したほうが良いとされる。受傷機転としては,強制背屈や外反により腓骨筋腱を押さえている上腓骨筋支帯が腓骨より剥離あるいは断裂して生じる。本症例も転落時の左足強制背屈回旋により発症したが,術後の足機能は良好な回復となった。これはDas De変法の上腓骨筋支帯断端を付着部に再縫着し長腓骨筋腱の不安定性が改善したためと考える。Das De変法術後の固定期間の報告では,白澤らは2週,新井らは3週,安田らや萩内らは4週間の固定と様々である。今回,我々は術後6週まではギプスとプラスチック短下肢装具で他の報告よりも長めに固定した。また,その後のサポーターも術後24週まで継続して装着した。術部の足外反筋強化運動も術後6週以降に自動介助で痛みに留意して進め,早期より炎症の軽減や癒着防止などを目的に超音波治療も積極的に施行した。Das DeらはDas De変法術後の長期成績として21例中3例に疼痛や瘢痕でのROM制限を認め,白澤らも17例中2例に再脱臼を認めたと報告している。Das De変法を用いた術後理学療法は,上腓骨筋支帯断端部の癒合が未完成な術後12週までは上腓骨筋支帯断端部の再断裂や縫着部位の炎症に注意しながら慎重に理学療法を行うことが重要と考える。また,仕事やスポーツ復帰後も継続的な筋力強化運動が必要である。【理学療法学研究としての意義】本疾患の報告は少なく,理学療法の評価方法や治療プログラム,患者の回復経過などの報告はほとんどない。今後,本疾患の予後や評価,理学療法プログラムの一助になると考える。
著者
由谷 仁 中川 恵嗣 諏訪園 秀吾
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1944, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)をはじめとする神経難病においては,筋力低下の進行が発声器官におよび,コミュニケーションに大きな問題をもたらす症例が少なくない。また進行に伴い通常のスイッチが押せなくなるなどの障害が頻繁にありうるため,様々なスイッチや意思伝達装置を再検討し,身体状況に合わせて使用しているのが現状である。2013年末,パーソナルコンピューター(以下PC)のマウスカーソルを視線で操作出来る装置The Eye Tribe Tracker(以下EyeTracker)が開発された。我々は第68回国立病院総合医学会に於いて,EyeTrackerをALS患者に試用し,臨床での有用性を検討した。その際,マウスカーソルは眼球運動にて動かし,クリックは右足関節底屈による空気圧スイッチにて行う方法であった。今回は注視によりクリックが可能となるソフトウェア「しのびクリック」(吉村隆樹作)を使用し,眼球運動および注視によって意思伝達装置を操作出来るようにした。このEyeTrackerをALS患者1名と演者にて試用し有用性を検討したので報告する。【方法】対象者はALSにて意思伝達装置を使用している60歳代女性1名(以下,症例)と演者で,症例はADL全介助,右足関節底屈にて空気圧スイッチを操作している。使用機器はEyeTracker(Eye Tribe社製)およびEyeTracker用専用ソフトウェア,意思伝達装置としてHeartyLadder,クリックするソフトウェアとして「しのびクリック」,それらをインストールしたPC(OS:Widows7)である。環境設定として,Bedの背上げ角度は15~30°,アーム式PC固定具およびHeartyLadderCD付属のワンタッチ短文入力画面を使用した。方法は眼球運動および注視によって同一の短文(17文字)入力を行った。評価としては,1)利用の適否,2)試行した時間,3)入力に要した時間,4)生じ易いミス・誤作動,5)眼球運動・瞬目・開閉眼など,6)要望・感想とした。【結果】1)演者は利用可能,症例では入力が不安定。2)演者は30分程度,ALS患者は一週間に一度30分程度を3ヶ月程度実施。3)演者は32秒,症例はミスが多く不可。4)マウスカーソルが,見ている場所と若干ズレることにより正確な入力が難しい。クリックまでの時間設定が難しく,選んでいない文字を選択し易い。5)症例の眼球運動はゆっくりでも速い動きでも特に問題なし。瞬目・開閉眼は上下眼瞼部の動きが不十分で努力を要す。連続5分程度使用すると,上眼瞼部の軽度下垂が認められる。6)一文字に焦点を合わせること,注視すること,それを短時間でも継続することが疲労をもたらしやすい。【考察】演者では文章作成可能であったが,症例では困難であった。この問題点を大きく分類すると「目でマウスを動かすこと」と「目でクリックすること」の2点に分けられる。「目でマウスを動かすこと」はPCとEyeTrackerと目との位置関係を適切に設定すること,視線をEyeTrackerがしっかり認識することが必要不可欠である。その際,眼瞼下垂によって瞳孔に上眼瞼が近づきすぎるとEyeTrackerが上手く認識出来ないことが多いと思われる。「目でクリックすること」はしのびクリックを使用して可能であるが,文字を一定時間注視し,視線を固定することが必要となる。この一定時間注視し視線を固定することが症例では難しく,ミスが多くなり文章が作成できなかった要因と思われる。また瞬きでクリックできるような改善も望まれる。よって現時点での最もよい適応としては,上眼瞼部の下垂が少なく,連続で注視しても目の疲労が少ない人であると考えられる。また現在,使い易くするためには個人でプログラミングする必要があるため,技術を持った人間が多く関わることで,より適応範囲が広がると思われる。以上から,現時点での(ソフト開発を自在に行わない範囲)EyeTrackerの臨床適応範囲が明確となり,症例を選べば極めて有用である可能性が示された。【理学療法学研究としての意義】EyeTrackerにより視線入力を可能にすることで,更なる症状の進行にも対応出来る可能性が広がり,コミュニケーションの継続が期待できる。また,世界中でIT及びプログラミング教育の必要性が叫ばれており,日本に於いても国策として「産業競争力の源泉となるハイレベルなIT人材の育成・確保」という項目が挙げられている。今後はrehabilitationとITはより密接な関係が必要であり,我々の活動分野の拡大にもつながるため,非常に意義がある。