著者
高橋 謙 大久保 利晃
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.237-243, 1995 (Released:2009-03-27)
参考文献数
17

本稿は,特に安全衛生に関連した最近の国際労働条約を取り上げ,その特徴を明らかにした上で,総括を試みた.同分野に関連し, 1960-93年の期間中に採択された条約数は13である.これらの条約は,異なる目的をもって安全衛生分野の各領域を網羅しているため,対比的に記述した.条約は批准される必要があるため,日本の批准状況をILOおよびOECD加盟諸国と統計的に比較した.日本は, 1993年6月現在,このうちの3条約を批准したが,この水準はILO加盟国平均をわずかに上回るが, 24のOECD加盟国中11位の批准割合であった. ILO条約のうち,日本の批准割合の相対的水準は,安全衛生分野の方がそれ以外の分野よりも高かった. ILO条約は,引用や参照によって相互に関連しているため, 155号(労働安全衛生)や148号(作業環境)条約などの基本的条約の批准努力が安全衛生分野における他条約の批准を容易にすることが考えられる.
著者
大塚 俊昭 川田 智之 矢内 美雪 北川 裕子 菅 裕彦
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.78-78, 2011 (Released:2011-06-04)
参考文献数
30
被引用文献数
10 13

一職域男性集団におけるメタボリックシンドロームの発症率およびメタボリックシンドローム発症に関連する生活習慣因子の検討:大塚俊昭ほか.日本医科大学衛生学・公衆衛生学講座―目的:メタボリックシンドローム(MetS)の予防は職域健康増進活動における主要課題の一つである.そこで今回,我々は一職域男性集団におけるMetSの発症率およびMetS発症に関連する生活習慣因子の検討を行った. 対象と方法:対象は,神奈川県内の精密機器開発事業所における2005年度定期健康診断を受診し,本邦におけるMetSの診断に非該当であった男性社員948名(平均44歳)である.対象者の2006年度から2009年度の定期健康診断データを追跡し,MetSの新規発症の有無を調査した.2005年度の健康診断結果から,対象集団を腹部肥満の有無とその他のMetS構成因子(血圧高値,脂質代謝異常,空腹時血糖高値)保有数の組み合わせで分類し,各群におけるMetS発症率を算出した.また,生活習慣因子(食事内容,喫煙,睡眠,運動,飲酒)の相違によるMetS発症率を比較した.コックス比例ハザードモデルを用い,上記各因子からMetS発症リスク上昇を規定する因子を求めた. 結果:平均3.7年の追跡において,76人にMetS新規発症を認めた.MetSの年間発症率は2.2/100人年,カプラン・マイヤー法による4年発症率は8.5%であった.対象を腹部肥満の有無とその他のMetS構成因子保有数の組み合わせで分類すると,腹部肥満を認めずその他の構成因子を二つ以上保有する群で最も高い発症率(37.9%)を示し,これに腹部肥満を認めその他の構成因子を一つ保有する群が続いた(24.6%).年齢で調整したコックス比例ハザードモデルでは,「腹部肥満の保有」および「その他の構成因子数の1増加」はともにMetS発症に対する有意なハザード比の上昇を示した(5.23および4.79,ともに p<0.001).同様に,睡眠時間5時間以下,現在喫煙,およびエタノール摂取量300 g/週以上がMetS発症に対する有意なハザード比の上昇を示した.結論:本検討においては,腹部肥満を有する者のみならず,腹部肥満を有さずともその他のMetS構成因子を複数認める者においてMetS発症率は高率であった.また,睡眠不足,喫煙,および過剰飲酒がMetS発症リスク上昇に関わっていた.職域におけるハイリスク・ストラテジーに基づいたMetS発症予防対策を行うにあたっては,これらの病状や生活習慣を有する者を優先した活動の有用性が期待される. (産衛誌2011; 53: 78-86)
著者
下村 智子 若林 一郎
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.21-21, 2010 (Released:2010-02-05)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

事業所での定期健康診断における貧血有所見率の地域差:下村智子ほか.兵庫医科大学環境予防医学―貧血項目は労働安全衛生法により定期健康診断の法定項目に含まれている.本研究では事業所定期健康診断における貧血有所見率の地域差について調査し,その要因について検討した.平成14年度の全国都道府県別の定期健康診断の有所見率について,生活習慣と関連する主な7項目中で特に貧血有所見率に注目し,都道府県別の諸因子との関連性についてSpearman順位相関係数を用いて検討した.貧血有所見率には地域差(5.2-11.7%)が見られ,岩手県,秋田県,山形県などの東北地方と,福井県,島根県,長崎県などで高い傾向を示した.都道府県別の貧血有所見率は血圧,血中脂質,肝機能,心電図,血糖,尿糖のすべての項目の有所見率と有意な相関を示した.都道府県別の貧血有所見率は貧血の受療率と有意な相関を示したが,子宮筋腫患者数や子宮悪性新生物粗死亡率とは有意な相関を示さず,鉄欠乏性貧血患者数や鉄摂取量との間にも有意な相関は見られなかった.都道府県別の貧血有所見率は,女性人口比率,女性就業者比率および就業者平均年齢と有意な相関を示し,一方,大規模事業所(300人以上の従業員数)の割合(50人以上の従業員数の全事業所数に対する)とは有意な負の相関を示した.事業所定期健康診断の貧血有所見率には大きな地域差が見られるが,その要因としての性器出血を伴う婦人科疾患の頻度や食事性鉄摂取量の関与は少なく,事業所での衛生管理状態や女性就業者比率を反映する可能性が示唆された. (産衛誌2010; 52: 21-27)
著者
小杉 正太郎 大塚 泰正
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.55-62, 2001-05-20
参考文献数
6
被引用文献数
8

我々は1980年以来, 総計約10,700名の従業員を対象として, 積極的メンタルヘルス活動に依拠する心理カウンセリングサービスを展開している. 我々のカウンセリング方法は, 心理ストレスモデルに基づくものであり, 以下の3段階に分割される. 第1段階は, 職場ストレス・スケール(JSS)による一斉調査である. 一回の調査は500名程度の従業員を対象として実施され, 調査結果は, 結果通知表によって社内便により全従業員に通知される. 第2段階は, 不適応状態にある従業員に対して実施される半構造化面接である. 面接対象となる従業員は, JSSの心理的ストレス反応得点によって判断される. 面接者は, JSSの構成要因, すなわち, 職場ストレッサー, コーピング方略, ソーシャル・サポート, 心理的ストレス反応, のそれぞれについて被面接者に説明を行う. 第3段階は, 心理カウンセリングである. カウンセリングの対象となる従業員は, 以下の基準により判断される. 1)来室者自らがカウンセリングを希望する場合, 2)精神疾患が疑われる場合, 3)職場ストレッサーが低得点であるにもかかわらず, 心理的ストレス反応が高得点である場合, 4)家庭における問題が認められる場合. これら4段階を踏襲することによって, 従業員のカウンセリングに対する抵抗を低減することが可能となると考えられる.
著者
舟越 光彦 田村 昭彦 峠田 和史 辻村 裕次 西山 勝夫
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.235-247, 2003-11-20
被引用文献数
5 8

タクシー運転手の腰痛の実態と腰痛に関わる労働要因を明らかにするために,福岡市内某タクシー事業所の男性運転手を対象に1999年(n=280名,以下第1回調査)と2001年(n=284名,以下第2回調査)に腰痛と労働実態に関する質問紙調査を実施した.調査は,1)第2回調査時における腰痛の有訴率と腰痛に関わる労働要因についての断面研究と,2)第1回調査で腰痛の既往がなく,かつ,腰痛の訴えがなかった運転手で,第2回調査時に「最近1年間の腰痛あり」と新規に回答した者を腰痛の罹患例とし,腰痛の罹患率と腰痛罹患にかかわる第1回調査時点の労働要因について検討した縦断研究である.この結果,タクシー運転手の腰痛の有訴率は45.8%で,腰痛多発が報告されている他の職業運転手と同様に高率であり,タクシー運転手にとって腰痛が重要な問題であることが示された.また,2年間の腰痛の罹患率は25.9%と推定された.断面研究と縦断研究の結果,腰痛と有意な関連を認めた労働要因は,「運転席座面(以下,座面)の適合性」,「車両の延べ走行距離」,「全身振動」,「職務ストレス」および「タクシー運転手としての乗務経験年数」であった.さらに,腰痛と「車両の延べ走行距離」の問には有意な量反応関係を認めた.以上より,タクシー運転手の腰痛に「座面」の人間工学的問題と「全身振動」および「職務ストレス」が関与していることが示唆された.また,「車両の延べ走行距離」が腰痛に関与しているとの報告例はなく,「車両の延べ走行距離」が腰痛発症に関与する機序について今後の検討が必要であると考えられた.さらに,「全身振動」の影響の評価のため,実車両を対象とした曝露振動の実態把握が必要と考えられた.
著者
足立 はるゑ 井上 眞人 井奈波 良一 岩田 弘敏
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.79-87, 1999-07-20
被引用文献数
9 6

某公立病院看護婦の精神健康状態とストレス対処行動の問題を検討するために230名の看護婦を対象に自記式質問紙調査をおこなった. GHQ 60及びSSCQによる評価ではストレッサー及びストレス評価尺度での高得点者が多くいることがわかった. GHQでは卆後1-2年の看護婦, 婦長, 手術室及び外来勤務の看護婦の精神健康度が低い傾向を示した. SSCQでの高得点者は卆後5年未満と当院で仕事の中心的な存在となっている卆後10年以上の者に多かった. 本調査で特徴的なことはGHQ調査で精神健康度が高い者のなかにもストレス対処行動等において高得点者, つまりストレス予備群を発見できたことである. 以上より, 職場の健康管理において, 職場環境及び労働条件, 勤務配置, 卆後教育等の配慮が必要であると共に看護婦自身が自らの健康状態やストレスを自覚し, 主体的な健康行動をとることが重要であると考えられた.
著者
和田 耕治 森山 美緒 奈良井 理恵 田原 裕之 鹿熊 律子 佐藤 敏彦 相澤 好治
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.103-109, 2007-05
被引用文献数
5

慢性疾患は労働者の仕事の生産性に影響を与える.本調査は関東地方にある事業場の労働者を対象にして慢性疾患による仕事の生産性への影響の評価として,慢性疾患の有訴率,慢性疾患の影響として労働障害指数,欠勤による損失労働時間を測定することを目的とした.関東地方にある4つの製造業の事業場における労働者544名を対象に2006年4月から6月の定期健康診断の際にStanford Presenteeism Scaleの日本語版を配布した. 433名(回答率79.6%)から有効な回答を得た.48.9 %の労働者が,なんらかの慢性疾患が仕事の生産性に影響を与えたと回答した.最も仕事の生産性に影響を与えていた慢性疾患のうち,有訴率が高かったのは,「アレルギー」(13.3%),「腰痛・首の不調」(9.7%)であった.労働障害指数が高かった慢性疾患は,「うつ病・不安又は情緒不安定」と「偏頭痛・慢性頭痛」であった.最も影響を与えていた慢性疾患で欠勤により損失した労働時間の総計は,対象労働者の総労働時間の1.4%であった.欠勤による損失労働時間の高かった疾患は「アレルギー」,「腰痛・首の不調」,「うつ病・不安又は情緒不安定」であった.こうした結果をもとに,生産性に影響を与える疾患に対しての対策を講じることが可能となる.
著者
縄田 敬子 石田 裕美 山下 直子 上西 一弘
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.176-182, 2006-09-20
被引用文献数
6

本研究では首都圏在住の男性勤労者の歩数とbody mass index (BMI)との関係を検討することを目的とした.対象者は310名(30〜59歳)である.連続7日間の歩数および生活時間調査を行なった.歩数は歩数計を用いて測定した.また,生活時間調査の結果からエネルギー消費量を推定した.食物摂取頻度調査によりエネルギー摂取量を求めた.身長,体重は自記式の質問紙により調査した.BMI25以上の者は81名(26.1%)であった.出勤時の歩数は平均10,682±4,365歩,休日の歩数は7,135±4,536歩であった.エネルギー消費量は2,259±378kcal,身体活動レベル(physical activity level: PAL)は1.5±0.1であった.エネルギー摂取量は1,974±488kcalであった.出勤日,休日の歩数はPALと有意な正の相関関係を示した(出勤日r=0.301,休日r=0.296,いずれもp<0.001.)また,出勤日の歩数はBMIと有意な負の相関関係を示した(r=-0.188,p<0.01).出勤日の歩数とエネルギー摂取量の中央値を用いて対象者をI群(9,894歩以上,1,901kcal未満),II群(9,894歩以上,1,901kcal以上),III群(9,894歩未満,1,901kcal未満),IV群(9,894歩未満,1,901kcal以上)に分類した.IV群の平均BMIは24.7で,他の3群よりも有意に高値を示した.III群は生活習慣病の者の割合が最も多かった.
著者
横山 和仁 荒記 俊一
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.A15-A16, 1998-01-20
著者
日本産業衛生学会頸肩腕障害研究会
出版者
日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.A15-A19, 2007-03
被引用文献数
1