著者
松元 俊 久保 智英 井澤 修平 池田 大樹 高橋 正也 甲田 茂樹
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-11, 2022-01-20 (Released:2022-01-25)
参考文献数
38

目的:日本においてトラックドライバーは脳・心臓疾患による過労死や健康起因事故が多い職種である.また,トラックドライバーは,脳・心臓疾患のリスクである高血圧症,肥満,高脂血症,糖尿病に関連する項目の定期健診での有所見率も高い.そこで,トラックドライバーの過労死防止策の立案に向けて,職種の特徴を踏まえた労働生活条件と,脳・心臓疾患に高血圧症,肥満,高脂血症,糖尿病を含めた健康障害,疾患前としての過労状態との関連について検討した.対象と方法:全国のトラックドライバーを対象として,上記の健康障害の既往歴および過労状態を含む,基本属性,生活習慣,働き方,休み方,運転労働の負担について質問紙調査を行った.47都道府県の1,082のトラック運送事業所に5部ずつ合計5,410部を配送し,1,992部を回収した(回収率36.8%).そのうち,女性41人および性別不明4件を除く男性1947人を解析対象とした.労働生活条件と各種健康障害との関連は多重ロジスティック回帰分析を用いて検証した.結果:解析対象トラックドライバーにおいて,肥満は22.2%,高血圧症は19.3%,高脂血症は8.5%,糖尿病は5.6%,心臓疾患は2.5%,脳血管疾患は0.7%,過労状態は6.0%に見られた.多重ロジスティック回帰分析の結果,健康障害の既往歴は,運行形態が長距離2泊以上と地場夜間早朝,勤務日の早朝覚醒有り,休日の過し方が不活発,夜間運転の重い負担と有意な関連が示された.また,過労状態は,勤務日の中途覚醒および睡眠不足感有り,休日の睡眠時間が6時間未満および睡眠不足感有り,ひと月あたりの休日数が0–3日,運転・夜間運転・作業環境の重い負担と有意な関連が示された.考察と結論:トラックドライバーにおける健康障害および過労状態と有意な関連は,夜間・早朝勤務への従事および夜間運転の負担が重いこと,また夜間・早朝勤務に付随する睡眠の量と質の低下に見られた.本研究より,過労死防止策を念頭に置いた勤務の改善点として,夜間運転の負担軽減や,十分な夜間睡眠取得および活動的に過ごすための休日配置の重要性が示唆された.
著者
岩切 一幸 松平 浩 市川 洌 高橋 正也
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.82-92, 2017-05-20 (Released:2017-05-31)
参考文献数
13
被引用文献数
6 6

目的:本研究の目的は,介護者に福祉用具を使用させるプログラムを作成し,そのプログラムによる組織的な福祉用具の使用が介護者の腰痛症状に及ぼす影響について検討することとした.対象と方法:アンケート調査は,対象施設とした2つの特別養護老人ホームのうち,1つを対照施設,もう1つを介入施設とし,その施設の介護者全員に対して介入前,介入1年後,介入2年半後の時期に実施した.調査票は,施設用および介護者用アンケートを用いた.介入施設では,福祉用具を適用すると判断した入居者に対し(全入居者の27.5%),移乗介助において移動式リフト,スライディングボード,スライディングシートを必ず使用するプログラムを作成し,介護者に実施させた.一方,対照施設では,福祉用具の使用に関する指導は行わなかった.両施設とも,介入前の時期から福祉用具は導入されており,介護者の判断で個々に使用されていた.結果:施設用および介護者用アンケートの平均回収率は100%と90.3%であった.介護者用アンケートの解析対象者は,3回の調査全てに回答した対照施設の23名,介入施設の29名とした.福祉用具は,介入前調査の時点において既に対照施設と介入施設に導入されていたが,福祉用具を必ず使用している介護者はいなかった.その2年半後には,介入施設の31.0%の介護者が,移乗介助時にリフトを必ず使用していた.しかし,対照施設では必ず使用していた介護者は4.3%のみであった.また,介入施設の27.6%の介護者は,スライディングボートまたはスライディングシートを必ず使用していたが,対照施設にて必ず使用していた介護者は4.3%のみであった.介護者の腰痛の訴えは,両施設とも2年半の調査を通して約6~7割を占めており,施設間および調査期間において統計的有意差はなく,介入施設における施設全体としての介入効果は認められなかった.しかし,介入施設では移動式リフト,スライディングボード,スライディングシートを積極的に使用していた介護者に腰痛の改善効果が認められた.一方,対照施設では福祉用具を使用していた介護者に腰痛の改善効果は認められなかった.考察:これらの結果から,介護者の腰痛症状を緩和したり,腰痛を予防したりするには,福祉用具を導入するだけではなく,介護者に福祉用具を使用させる組織的な取り組みが必要と考えられる.また,福祉用具を適用する入居者が今後増えると,この組織的な福祉用具の使用が介護者の腰痛をさらに改善し,より安全で健康な介護環境を構築するものと思われる.
著者
佐々木 真紀子 石井 範子 菊地 由紀子 工藤 由紀子 杉山 令子 長谷部 真木子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.164-172, 2016-09-20 (Released:2016-10-07)
参考文献数
44
被引用文献数
3 2

目的:化学療法中の患者を看護している看護師の抗がん剤の職業性曝露の状況と看護内容との関連を検討する.対象:北東北2カ所の一般病院で化学療法中の患者を看護している女性看護師10名で,原則として抗がん剤の混合調製を実施していない看護師とした.方法:化学療法中の患者の看護に従事した日の24時間の尿を採取し,オランダのEXPOSURE CONTROL研究所に依頼して,尿中のシクロホスファミド(CP)とα-フルオロ-β-アラニン(FBAL)の定量分析をガスクロマトグラフ質量分析で行った.また,年齢,化学療法中の患者への看護内容とその際の防護具装着状況,最近の健康状態等について質問した.結果:CPは9人の看護師の24の尿サンプルから検出された.CPの総排泄量は一人あたり5.4~44.2 ng/24 h,平均は16.8 ng/24 hで病院間に有意な差はなかった.FBALはいずれの尿サンプルからも検出されなかった.CPは勤務開始前の尿からも検出され,またCPの点滴中の患者を看護していない看護師の尿中からも検出された.健康状態では脱毛があると回答したものが9名で最も多かった.考察と結論:本研究ではCPの点滴中の患者の看護を行っていない場合でもCPによる曝露があることが明らかになった.曝露の経路としてCPの吸入や皮膚からの吸収が考えられる.曝露を最小限にするためには,看護の様々な場面でも適切な個人防護具の装着が必要である.また今後は環境中の抗がん剤のモニタリングや看護師の健康状態のモニタリングを定期的に行っていくことが重要である.
著者
岩切 一幸 外山 みどり 高橋 正也 劉 欣欣
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.198-210, 2022-07-20 (Released:2022-07-25)
参考文献数
30

目的:介護施設における介護職員(以下,介護者と記載)の人材不足が問題となっている.この対策として,働きやすい職場の構築が求められており,労働生活の質(Quality of Working Life:QWLと以下記載)の向上が必要になっている.しかし,優先的かつ重点的に取り組むべきQWL要因は明らかではない.そこで本研究では,現在の介護施設における介護者のQWLに影響する主要な要因と取り組むべき優先度を明らかにすることを目的としたアンケート調査を実施した.対象と方法:調査は,施設用および介護者用アンケートを用いて2018年10~12月に実施した.対象施設は全国の特別養護老人ホームから無作為抽出した1,000施設とし,対象介護者は1施設あたり8名の計8,000名とした.解析では,ロジスティック回帰分析を用いてQWLに影響する要因を抽出した.結果:解析対象施設は504施設,解析対象者は3,478名であった.解析の結果,介護者QWLとの関係において有意かつ最も高いオッズ比(OR)を示したのは人間関係(OR: 3.92, 95% CI: 3.09–4.97),次いで作業人数・配置(OR: 3.69, 95% CI: 2.56–5.32),コミュニケーション(OR: 3.42, 95% CI: 2.66–4.40),施設からのサポート(OR: 3.37, 95% CI: 2.69–4.23),労働時間・休み(OR: 3.20, 95% CI: 2.53–4.04),裁量(OR: 3.09, 95% CI: 2.46–3.88)と続いた.一方,給与はQWLと有意に関連したが,人間関係などに比べてオッズ比は低かった(OR: 2.81, 95% CI: 2.19–3.61).また,腰痛のない者ほど高いQWLが示された.考察と結論:介護者のQWLを向上させるには人間関係,さらには作業人数・配置,コミュニケーション,施設からのサポート,労働時間・休み,裁量に関する改善を優先的かつ重点的に実施すべきと考えられた.QWL向上のための改善策としては,介護者の不満理由から勘案して,上司・同僚との情報交換の促進,労働時間や休暇,メンタルヘルスを相談できる担当者の活用などが必要と思われた.給与はQWLを向上させる要因ではあるが,人間関係などに比べて関連性は低く,以前ほど重要ではなくなっていた.また,介護者の腰痛対策は,QWLの改善に貢献すると思われた.
著者
熊谷 信二 田井中 秀嗣 宮島 啓子 宮野 直子 小坂 淳子 田淵 武夫 赤阪 進 小坂 博 吉田 仁 冨岡 公子 織田 肇
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.131-138, 2005 (Released:2006-01-05)
参考文献数
32
被引用文献数
18 10

高齢者介護施設の介護労働者における腰部負担を評価するために,30秒スナップリーディング法を用いて,6名の介護労働者の作業内容および作業姿勢を調査した.また,傾斜角モニターを用いて,上体傾斜角の調査も行った.作業内容については,「入浴・洗面関連」が勤務時間の22.5%,「食事関連」が21.1%を占めていた.「排泄介助」「移動・移乗介助」および「シーツ交換」はそれぞれ9.3%,8.7%および8.3%であった.介助作業を合計すると43.7%であった.作業姿勢については,「立位」が勤務時間の36.1%,「前傾」が29.5%を占めていた.腰部負担のある3姿勢(「前傾」「しゃがみ」「膝つき」)を合計すると39.0%を占めていた.上体傾斜角が20度以上の時間帯は45.7%に及んでいた.「入浴関連」「シーツ交換」および「排泄介助」における腰部負担姿勢はそれぞれ68.3%,58.2%および49.6%を占めており,これらの作業は腰部への負担がかなり大きいものと考えられた.
著者
山内 貴史 島崎 崇史 柳澤 裕之 須賀 万智
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.63-73, 2023-03-20 (Released:2023-03-25)
参考文献数
17

抄録:目的:わが国における「治療と仕事の両立支援」では,診療報酬改定や,制度についての事業所,医療機関ならびに労働者への情報提供と普及啓発が進められてきた.一方,われわれは,(1)中小企業の労働者は病気の治療のため両立支援を申し出ることにデメリットを強く感じていること,および(2)産業保健スタッフや柔軟な勤務・休暇制度の有無などの要因とは独立して,職場の協働的風土が労働者の両立支援の申出意図を高める可能性があること,を明らかにしてきた.本研究では中小企業の労働者を対象とし,協働的風土および被援助への肯定的態度と,情報提供前・後の両立支援の申出意図の変化との関連を分析することを目的とした.対象と方法:2021年10月,中小企業勤務の20歳~64歳の正社員で,病気による就業制限の経験がなく,両立支援について内容を把握していない労働者モニター3,200人を対象としてオンライン調査を実施した.対象者はわが国の業種・従業員規模別の就業人口割合の縮図となるようサンプリングされた.まず,回答者ががんや脳卒中などに罹患し,主治医から通常勤務は難しいと指摘された場面を想定させ(情報提供「前」),このような状況下での両立支援の申出意図を尋ねた.次に,両立支援のリーフレットを提示し概要を把握させたうえで(情報提供「後」),再度両立支援の申出意図を尋ねた.協働的風土および被援助への肯定的態度を主たる説明変数,両立支援の申出意図を目的変数とした2項ロジスティック回帰分析を実施した.結果:2,531人(79.7%)が両立支援を「情報提供前・後ともに申し出る」と回答した一方で,情報提供前に「申し出ない」と回答した586人のうち173人は情報提供後に「申し出る」と回答が変化していた.「情報提供前・後ともに申し出ない」を参照カテゴリとした2項ロジスティック回帰分析において,産業保健スタッフや柔軟な勤務・休暇制度の有無などの要因とは独立して,協働的風土が強く職場内での支援の先例がある場合には両立支援の申出意図の報告が多かった.とりわけ,情報提供「前」に両立支援を「申し出ない」と回答した者のうち,従業員数が50人~299人の事業場に勤務し,協働的風土が良好で社内に支援の先行事例がある者では,情報提供「後」に支援を「申し出る」への回答の変化が有意に多かった.考察と結論:中小企業の労働者において,リーフレットを用いた情報提供前・後で両立支援の申出意図に顕著な変化は見られず,約8割が「情報提供前・後ともに申し出る」と回答した.協働的風土が良好で社内に支援の先行事例がある者では,情報提供「後」に支援を「申し出る」への回答の変化が有意に多かった.本研究の結果から,協働的風土や支援事例の有無などの職場環境要因が,両立支援に関する情報提供の有用性や両立支援の申出意図を高める可能性が示唆された.
著者
吉田 麻美 三木 明子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.17-019-B, (Released:2018-02-01)
被引用文献数
5 4

目的:プレゼンティーズムには,仕事のストレッサーに加えて,ワーカホリズムの働き方やうっかり者などと形容される失敗傾向が関連すると考える.また,加齢変化に伴う健康上の問題の増加により,中高年看護師のプレゼンティーズム対策は若年看護師と異なる可能性がある.以上より本研究では,若年看護師と中高年看護師それぞれにおけるプレゼンティーズムに関連する要因を明らかにすることを目的とした.対象と方法:10病院に勤務する全看護師2,006名に無記名自記式質問紙調査を実施し,40歳未満の若年看護師761名,40歳以上の中高年看護師536名を対象とした.プレゼンティーズムは日本語版Stanford Presenteeism Scaleの労働障害指数を,関連要因は仕事のストレッサー,ワーカホリズム,失敗傾向を測定した.労働障害指数を従属変数,関連要因を独立変数とする重回帰分析を行った.結果:健康上の問題がある若年は70.8%,中高年は82.5%であり,労働障害指数は若年の方が中高年と比べて有意に高かった (p < 0.001) .また,若年は,「仕事の困難さ (β = 0.28, p < 0.001)」のストレッサーの高さやワーカホリズムの下位尺度である「働き過ぎ (β = 0.18, p < 0.001)」の傾向,「アクションスリップ (β = 0.14, p < 0.01)」および「認知の狭窄 (β = 0.11, p < 0.05)」の失敗傾向と有意な関連をみとめた.一方,中高年は,「認知の狭窄 (β = 0.29, p < 0.001)」の失敗傾向や「働き過ぎ (β = 0.17, p < 0.001)」の傾向,「仕事の困難さ (β = 0.12, p < 0.05)」および「連絡・コミュニケーション不足 (β = 0.13, p < 0.01)」のストレッサーの高さと有意な関連をみとめた.考察:中高年看護師は健康上の問題は増加するが,労働能力が低下するとは限らないことが明らかとなった.また,中高年看護師は若年看護師に比べて,仕事のストレッサーよりも失敗傾向の高さがプレゼンティーズムに関連していた.注意の狭小化により適切な行動がとれない経験は,自身の労働能力低下を自覚しやすいものと考えられる.このような失敗傾向のある者については特に配慮を必要とするとともに,疲労や緊張状態などは注意の狭小化を起こしやすくすることから,これらリスクの低減やミスの起こりにくい作業環境の調整の必要性が求められる.
著者
齋藤 とも子 錦戸 典子 松木 秀明
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.117-129, 2015 (Released:2015-08-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

目的:産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援状況,保有している知識・技術,自己研鑽・学習環境等の状況ならびにそれらの関連を明らかにする.さらに,支援についての関連要因モデルを作成し,産業看護職による心理社会的職場環境改善の支援を推進するための示唆を得る.方法:日本産業衛生学会会員で,企業または単一型健康保険組合に所属する産業看護職を対象に,無記名郵送式質問紙調査を実施した.356名(回収率46.4%)からの回答のうち,主要な項目に無回答がない産業看護職329名(有効回答率92.4%)を分析対象とした.心理社会的職場環境改善の支援7項目について因子分析を行い,抽出された支援因子ごとのモデルを作成し,共分散構造分析を行った.結果:因子分析より【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】と 【職場参加型の環境改善の支援】の支援因子が抽出され,平均実施割合は,それぞれ約5~8割,および4割未満であった.【ストレス状況の把握と助言による職場環境改善の支援】には,「管理職へ,理解を促すための説明を行う」や「ストレス調査結果を部署毎に集計・分析する」からなる支援技術が関連し,これには「個人のストレス調査票」や「一般的な職場のストレス要因」からなる支援知識が関連していた.支援知識・支援技術には,「日頃の職場環境改善活動を振り返り,活動報告を行う」,「論文を読む」からなる自己研鑽が関連していた.【職場参加型の環境改善の支援】には,「キーパーソンを中心とした職場討議を間接的に支援する」や「職場のストレス調査結果を管理職へフィードバックする」からなる支援技術が関連し,それには「職場環境改善のツール」や,「職場のストレス調査票の活用方法」からなる支援知識が関連していた.支援知識・支援技術には,「グループワークを効果的に行うための研修会への参加」,「大学や研究機関の指導者からサポートや助言を受けられる」からなる自己研鑽・学習環境が関連していた.考察:産業看護職による心理社会的職場環境改善支援の内容およびその関連要因が明らかとなった.支援の実施割合より,特に 【職場参加型の環境改善の支援】を推進する必要性が示唆された.今後は,支援推進のために,支援との関連が明らかとなった支援知識・支援技術の獲得を促していく必要がある.
著者
三橋 祐子 荒木田 美香子 錦戸 典子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.2022-016-B, (Released:2022-11-03)

目的:地域・職域連携は,生涯を通じた効果的な健康づくりを推進するため,国としても推進している事業であるが,健康支援活動を展開する専門職を始めとした実践者レベルでの連携には至っていない現状がある.そこで,本研究は,産業看護職における地域保健との連携の実態と連携経験に関連する要因を明らかにし,産業看護職が地域・職域連携を推進していくための示唆を得ることを目的として実施した.対象と方法:(社)日本産業衛生学会の会員である産業看護職2,574名を対象とし,自記式質問紙調査を2017年に実施した.調査項目は,基本属性,連携の必要性の認識とその理由,連携経験の有無,および自己研鑽や学習経験等である.結果:分析対象者756名中,地域保健との連携経験者は34.0%,連携の必要性を感じている者は80.8%であった.また,連携経験の有無には,産業看護職としての通算経験年数,ガイドラインの閲読経験や地域保健主催の研修会や勉強会などへの参加経験,連携の必要性に関する認識が関連していた.考察と結論:地域保健との連携経験者は少なく必要性を認識していない者もいたことから,産業看護職が地域保健との連携事例に触れる機会が乏しく,その必要性を見出しにくい可能性が考えられた.本研究により,ライフイベントによる学びを補強し,産業看護職が地域保健に関する情報を得られる仕組みをつくること,連携経験者が連携未経験者へ具体的な連携事例を通して伝える機会を設けることで,産業看護職が地域保健との連携を推進していける可能性が示唆された.
著者
石川 真子 錦戸 典子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-15, 2014 (Released:2014-02-28)
参考文献数
24
被引用文献数
5 1

目的:新人期の産業看護職によるメンタルヘルス対策に関する活動の実施状況と困難を感じた経験,知識・技術の保有感の特徴と今後の学習課題を明らかにして,今後の新人期の産業看護職に対する,メンタルヘルスに関する教育研修方策を検討するための示唆を得ることを目的とした.方法:日本産業衛生学会に所属する産業看護職を対象に自記式質問紙調査を行った.今回は,回答者のうち,企業所属で担当事業場がある産業看護職を主な分析対象とした.メンタルヘルス活動36項目の困難に関してクラスター分析を行い,カテゴリーに分類した.経験年数5年以下(以下,新人期とする)と5年より上(以下,中堅期以降とする)の2群に分け,それぞれの基本情報,メンタルヘルス活動の実施状況,困難,知識・技術の保有感,学習環境,自己研鑽等を算出し,新人期と中堅期以降の産業看護職との比較を行った.また,変数間の関連を検討するため,Mann-WhitneyのU検定およびχ2検定を行った.結果・考察:有効回答数は682名であり,そのうち,企業所属で担当事業場がある,新人期の産業看護職80名,中堅期以降の産業看護職369名を分析対象とした.1) 新人期・中堅期以降ともに,大多数の産業看護職がメンタルヘルス活動に携わっていた.中堅期以降の産業看護職と比較して,より多くの新人期の産業看護職が,[メンタルヘルスに関する個別相談のアセスメントと対応]に困難を抱えていた.また,メンタルヘルス活動に関する知識や技術について,中堅期以降の産業看護職と比較すると,ほぼ全ての活動項目で不足を感じている新人期の産業看護職が多かった.2) 新人期の産業看護職は,[労働者・管理監督者等との信頼関係の構築と情報収集],[メンタルヘルスに関する個別相談のアセスメントと対応]を,他の活動と比べて実施している割合が高かったが,そのための知識・技術を有している割合は他の活動と差がほとんどなく,結果としてそれらの活動に関する知識・技術不足を感じながら実施している人が多い状況が示唆された.今後,新人期の産業看護職への育成研修として,まず,これらのメンタルヘルスケアの基礎となる活動に関する知識・技術を確認・育成する教育から行っていく必要があると考えられた.3) 他企業の産業看護職から助言・サポートを得られる等の学習環境を有しており,また,関連雑誌を購読している産業看護職の方が,[復職支援と事業場内・外の関係者との連携]に関して,過去一年間に困難を感じた経験が有意に少なかった.また,研究実施や学会発表等の自己研鑽をしている産業看護職の方が,[対応が困難なケースへの個別相談対応]に困難を感じた経験が少ないことが示された.
著者
森本 泰夫 喜多村 紘子 空閑 玄明 井手 玲子 明星 敏彦 東 敏昭 佐藤 敏彦 相澤 好治
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-10, 2009 (Released:2009-02-05)
参考文献数
52
被引用文献数
2 3

トナー粒子における新たな生体影響調査と労働衛生管理について:森本泰夫ほか.産業医科大学産業生態科学研究所―トナーの加熱印字(プリントアウト)を行う際にナノ粒子のような微細粒子やvolatile organic compounds(VOC)の発生を伴うことが社会問題になったため,トナー自体の影響だけでなく,これらの付加的化学物質の影響もふまえた生体影響調査が必要となった.しかし,どのようなナノ粒子が発生したのか不明であること,及びその測定法も確立されたものがないことより,対応に苦慮した.このような状況を鑑み,トナーの構成成分より考えられる浮遊化学物質をリストアップし,疫学的及び動物試験等の知見を収集し,これを元に労働衛生管理の対応を検討した事例を紹介する.トナーの主成分のカーボンブラック,及び表面付着物質のナノ粒子である二酸化チタンやアモルファスシリカ,VOCを想定される対象化学物質として,生体影響の文献調査を行った.これらの微細化学物質やVOCのデータを基に,有効な曝露指標の検索,環境曝露や測定法についてまとめた.その結果から,微細粒子またはVOC曝露のバイオマーカーとして高感度CRP,尿中8ヒドロキシデオキシグアノシン,心拍間変動係数が有用であること,加熱印字の際のVOC濃度は低かったこと,ナノ粒子などの微細粒子が発生したこと,微細粒子の測定法として,scanning mobility particle sizer(SMPS)による個数基準計測が多く報告されていることが認められた.これらの結果をふまえ,トナーの印字により発生する付加的化学物質に対する労働衛生管理を展開することが検討されている. (産衛誌2009; 51: 1-10)
著者
松尾 知明 蘇 リナ 笹井 浩行 大河原 一憲
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.219-228, 2017-11-20 (Released:2017-11-30)
参考文献数
19
被引用文献数
6 8

目的:労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)では疫学調査での活用を企図し,労働者の座位行動評価を主目的とした「労働者生活行動時間調査票(Worker's Living Activity-time Questionnaire)(JNIOSH-WLAQ)」(以下WLAQ)を開発した.本研究の目的はWLAQの再検査信頼性と基準関連妥当性を検討することである.方法:国内在住の労働者138名が本研究に参加し,WLAQによる質問紙調査を1週間の間隔をあけて2回おこなった.妥当性の基準値評価のため,対象者には1週間,身体活動量計(activPAL)の装着と生活行動に関する日誌記録を求めた.WLAQにより,勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間および一般的な労働者を想定し分類した4つの時間区分,すなわち,(A)勤務中,(B)通勤中,(C)勤務日の余暇時間,(D)休日それぞれにおける座位時間が算出される.本研究では,信頼性の評価値として級内相関係数(intraclass correlation coefficients:ICC)を,妥当性の評価値として順位相関係数(Spearman's ρ)を算出した.また,系統誤差の分析にBland-Altman図を用いた.結果:ICC値は,勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間,座位時間すべてにおいて良好(0.72-0.98)であった.Spearman's ρ値は,勤務時間(0.80)と勤務間インターバル(0.83)が“strong”,通勤時間(0.96)が“very strong”,睡眠時間が勤務日(0.69),休日(0.53)ともに“moderate”,座位時間は,勤務中(0.67)と勤務日の余暇時間(0.59)が“moderate”,通勤中(0.82)が“strong”,休日(0.40)が“low”であった.Bland-Altman分析では,勤務中の座位時間に有意な加算誤差が,休日の座位時間に有意な加算誤差と比例誤差がみとめられた.結論:WLAQで得られる勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間および座位時間の信頼性や妥当性は一定水準を満たすものである.今後の疫学調査での活用が期待される.
著者
川村 小千代 森岡 郁晴
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.81-95, 2022-03-20 (Released:2022-03-25)
参考文献数
54

目的:高齢者福祉施設の介護職者には,強いストレスがあることが指摘されている.近年,労働者のポジティブな心理的側面に焦点をあてた概念のひとつとして,ワーク・エンゲイジメントが注目されている.本研究では,職場グループでのポジティブな出来事の筆記と読み上げが施設の介護職者のワーク・エンゲイジメントの向上と職業性ストレスの軽減を図る方策として有用かどうかを検討した.なお,本研究は,UMIN臨床試験登録システムに登録(UMIN30333)して開始した.対象と方法:参加者は,和歌山県の7指定介護老人福祉施設に勤務する介護職者173名のうち研究参加に同意した13グループ57名(参加率32.9%)であった.介入方法は,介入群と対照群の2群2期のクロスオーバーデザインとした.対象者の割り付けは,各施設代表者が施設内で勤務する介護職者で,2群が同人数になるようにグループ単位で群分けをし,研究者で全体のグループ数と人数が同一になるように2群に分けた.介入群は,個人が就業中筆記のできる時間にポジティブな出来事を筆記した.さらに,グループで朝礼の時間などを使用してポジティブな出来事を読み上げた.対照群は通常どおり勤務した.A群(24名)は第1期に,B群(33名)は第2期に筆記と読み上げを行った.実施期間は,それぞれ8週間であった.質問紙は施設代表者に手渡した.参加者は記載した質問紙を封筒に厳封し,施設内に設置した回収袋へ投函した.調査項目は,ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度日本語版(以下,UWES),職業性ストレス簡易調査票(以下,BJSQ),属性であった.介入量の指標として個人がポジティブな出来事を筆記した個数,読み上げを聞いた回数とした.筆記した個数,読み上げを聞いた回数は介入終了時に尋ねた.さらに,介入群と対照群の得点の変化量に有意な差を認めた項目では介入中における得点の変化量と介入量との関連を検討するために,重回帰分析を行った.結果:参加者が介入中に筆記したポジティブな出来事の合計は318個であった.筆記された語句を抽出すると,「ありがとう」「嬉しい」,「笑顔」の言葉が多かった.個人が介入中に筆記した個数の中央値は3個(四分位範囲1個–5個)であった.読み上げを聞いた回数は,「ほとんどなかった」と回答した者が22名(38.6%)であった.介入群と対照群の得点の変化量に有意な差を,UWESの没頭で,BJSQの仕事のコントロール,働きがい,家族・友人のサポートで認めた.重回帰分析の結果,筆記した個数は,UWESの没頭の得点の変化量と,BJSQの働きがいの得点の変化量とに関連を示した.読み上げを聞いた回数はいずれの項目にも関連を示さなかった.考察と結論:就業中にポジティブな出来事の筆記をすることは,没頭を高め,働きがいを改善する可能性がある.職場グループでのポジティブな出来事の筆記と読み上げは,介護老人福祉施設の介護職者におけるUWESの没頭とBJSQの働きがいの向上を図る方策のひとつであることが示唆された.
著者
松本 悠貴 内村 直尚 石田 哲也 豊増 功次 久篠 奈苗 森 美穂子 森松 嘉孝 星子 美智子 石竹 達也
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.128-140, 2014 (Released:2014-10-18)
参考文献数
55
被引用文献数
6 6

目的:ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)に代表される睡眠尺度の多くは,実際の睡眠時間や日中の眠気といった量的問題や,睡眠の維持・導入といった質的問題を捉えてある.それらに加えて,24時間型社会となった今日では起床時刻・就寝時刻といった位相の問題まで視野に入れていく必要があり,かつ睡眠の位相・質・量のいずれに問題があるのかを把握するためには各々に測定・評価しなければならない.そこで我々は位相・質・量の3つの睡眠関連問題について測定する3次元型睡眠尺度(3 Dimentional Sleep Scale; 3DSS)の日勤者版を開発した.本研究はその信頼性・妥当性を検証することを目的とする.対象と方法:対象は製造業およびサービス業に従事する日勤労働者635名(男性461名,女性174名)で,平均年齢は40.5歳であった.質問紙は全17項目から成り,事前研究結果および専門家との討議を参考に睡眠の位相・質・量に関する質問を設定した.回答偏向分析後,探索的および確認的因子分析を行った.信頼性はクロンバックα信頼性係数を算出して求め,尺度の得点化・上位-下位分析を行った.仮説検定ではPSQIおよびSDSより位相・質・量それぞれに関連した項目を抜粋し,3DSSの各尺度得点との相関をみて収束的妥当性および弁別的妥当性の検証を行った.また,PSQIの総合点と3DSSの各尺度得点との相関についても検証を行った.結果:回答偏向分析にて回答に大きな偏りはみられなかった.探索的因子分析の結果2項目が削除されたが3つ因子が抽出され,位相に関する質問5項目,質に関する質問5項目,量に関する質問5項目の計15項目となり,確認的因子分析においても15項目モデルの方が適合度が高かった.α 信頼性係数は下位尺度毎では位相 = 0.685,質 = 0.768,量 = 0.717であった.仮説検定では,収束的妥当性については仮説がすべて採択された.弁別的妥当性については新尺度および既存尺度の質尺度と量尺度の間で仮説をやや上回る相関がみられていた.PSQIの総合点と3DSSの各尺度得点との相関についてもすべて仮説が採択された.考察:本研究において,我々の開発した3次元型睡眠尺度(3DSS)の日勤者版について,日勤労働者を対象として使用するにあたり,必要と考えられる信頼性・妥当性が示された.今後さらに対象者数を増やし調査を重ねることで尺度の標準化およびカットオフ値の設定を行っていきたい.
著者
佐野 友美 吉川 徹 中嶋 義文 木戸 道子 小川 真規 槇本 宏子 松本 吉郎 相澤 好治
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.2019-010-B, (Released:2019-10-26)
被引用文献数
2

目的:医療機関における産業保健活動について,現場での事例をもとに産業保健活動の傾向や実施主体別の分類を試み,現場レベルでの今後の産業保健活動を進めていくための方向性について検討した.対象と方法:日本医師会産業保健委員会が各医療機関を対象に実施した「医療機関における産業保健活動に関するアンケート調査」調査結果を活用した.自由記載欄に記載された現在取り組んでいる産業保健活動の記述内容を対象とし,複数名の専門家により各施設の産業保健活動の分類を試みた.特に,1.個別対策事例(具体的な取り組み事例・産業保健活動の主体)2.産業保健活動の取り組み方を反映した分類の2点に基づき分類を行い,各特徴について検討した.結果:有効回答数1,920件のうち,581件の自由記載があり,1,044件の個別の産業保健活動が整理された.1.個別対策事例のうち,具体的な取り組み事例については,個別対策毎の分類では「B労務管理・過重労働対策・働き方改革(35.7%)」,「Cメンタルヘルス対策関連(21.0%)」,「A 労働安全衛生管理体制強化・見直し(19.3%)」等が上位となった.また,施設毎に実施した取り組みに着目した場合,「B労務管理・過重労働対策・働き方改革関連」と「Cメンタルヘルス対策関連等」を併せて実施している施設が施設全体の13.2%に認められた.産業保健活動の主体による分類では,「a:産業保健専門職・安全衛生管理担当者(71.7%)」が最も多く,「b:現場全体(18.4%)」,「c:外部委託(2.4%)の順となった.2.産業保健活動の取り組み方を反映した分類では①包括的管理(42.0%)が最も多く,②問題別管理(23.8%),③事例管理(16.5%)の順となった.考察と結論:医療機関における産業保健活動として,過重労働対策を含む労務管理・働き方改革,メンタルヘルス対策への取り組みが多く実践されていた.特に,メンタルヘルスにおける一次予防対策と過重労働における一次予防対策を併せて実施している点,外部の産業保健機関,院内の各種委員会,産業保健専門職とが連携し産業保健活動が進められている点が認められた.厳しい労働環境にある医療機関においても,当面の課題に対処しつつ,医療従事者の健康と安全に関する課題を包括的に解決できる具体的な実践が進められつつある.また,各院内委員会や外部専門家との連携によりチームとして行う産業保健活動の進展が,益々期待される.
著者
磯野 富美子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.50-56, 2003 (Released:2004-09-10)
参考文献数
21
被引用文献数
4 2

産業看護職に対する事業所の期待を探るために, 関東および関西地区の282事業所を対象にした自記式調査票による郵送調査を1998年に実施した. 研究の目的は産業看護職への事業所の期待と事業所の特性による違いを明らかにすることである. 149通の回答が得られ, 138通を分析対象とした. 結果は以下のとおりである. 1. 看護職が専門外の業務に関与することや, 組織優先に対しては事業所がそれらを期待している状況が示唆された. 2. 産業保健活動における事業所の期待は全体的には高かったが, 作業 · 環境分野では低かった. 3. 個別の事後指導, 生活習慣病予防のための健康教育および健康の保持増進のための健康教育, 労働に起因する健康障害予防教育, 労災防止のための安全衛生教育などで, 事業所の規模による違いがみられた.